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記念講演 平成19年11月26日

「サッカーが教える 社員育成とリーダーシップ論」
講師:プロサッカーコーチ 山本 昌邦 氏


プロサッカーコーチ 山本 昌邦 氏
 「沼津で生まれ育ち、三島の学校に通って、初詣では三島大社にという生活をしていました」という山本氏。3本の映像を交えて日本サッカーの現状や選手たちの指導方法などを語った。最初の映像は日本がブラジルチームを破ったアトランタオリンピックの映像。そして途中には2002年の日韓ワールドカップの映像、3本目が「スポーツでもっと幸せな国へ」と提唱している「Jリーグ100年構想」の映像だった。

世界の人口の半分が見ていたワールドカップ

 この15年、ずっと現場で仕事をしてきまして、ちょうど1年ちょっと現場を離れ、ピッチを上から眺めている立場です。
 昨年、ドイツのワールドカップ2006年がありました。世界の人口が今66億人といわれています。どれくらいの人がワールドカップの決勝戦を見たか。一説には、統計が取れないところもありますが、世界の人口の半分はあの時間を共有していたと言われます。30億人以上の人があの瞬間を生で見ていて、日本も時差の関係で真夜中だったんですが、眠い目をこすって見ていたと。それぐらい世界一のイベントなんです。
 結局、0対0で延長戦になり、PK戦でイタリアが優勝するわけですが、あのジダンの頭突きは連戦を繰り返してきて疲労の極致にあって、延長戦でああいうことが起きてしまうことになるのです。
 皆サッカーを見ていますから、あの時間は間違いなく戦争は起きないです。すごく平和な時間です。それぐらい時間を共有できるというのはすごいことです。日本はその半分までいかないと思いますが、ヨーロッパとか南米にいったらほとんどの人が見ているという状況になります。
 何でそんなにサッカーが盛り上がるかというと、国際サッカー連盟の加盟国数は200を超えています。一方の国連の加盟国数は200に届かない状態ですので、世界一の大きな組織と言えるかもしれません。ワールドカップは、その中の頂点を極める大会ですから盛り上がる。地球規模のお祭りみたいなのがワールドカップです。
 一生かかっても手に出来ないものを追っかけている。ワールドカップの頂点、オリンピックの頂点に行くなんて本当に難しい話なんです。そういう簡単に手に出来ないものを追いかけ続けられるサッカーに出会って幸せだと思います。その中で一つずつ自分が成長していく。強くなっていく。たくましくなっていくということが幸せなんだと、最近つくづく感じております。夢が簡単に手に入ってしまうと次の目標に向かってなかなかエネルギーがもてないというところがあると思います。


急に日本のサッカーが強くなったわけではない

 サッカーの場合は、17歳以下の世界大会と20歳以下の世界大会、23歳以下のオリンピック、そしてフル代表というカテゴリーで世界のチャンピオンを決める大会があります。
 急に日本のサッカーが強くなったわけではなくて、17歳以下の世界大会とか20歳以下の大会に常に出られるようになってきて強くなってきたということです。同じように歳は取りますから、その上の大会でまた同じメンバーで当たるんです。だから皆相手の選手のことがよく分かっている。そこで、またワールドカップで顔を合わせて、こいつには前にやられたから絶対今度はやられないと思ったり、相手の選手の特長が分かっていたり、そういう戦いがすごく大事だということです。
 急に強くなったわけではなくて、育成の段階からしっかり強化してきたということです。一つはJリーグが出来てサッカーで生活できるようになったことも大きいですし、指導者の質が上がったとか、いろいろな要素が重なったこともあると思います。


一流の選手は負けず嫌い

 一流の選手を見たり、育ててきたりして思うことは、一流の選手の特長は、まず負けず嫌い。人の話もよく聞く。そして高い目標を持っている。この辺だと思います。本当に負けず嫌いだと思います。
 中山雅史が40歳で、まだJリーガーです。彼は練習でも若いやつらには負けないという気持ちで練習に入ります。彼は毎日2時間前に練習に来るんです。2時間前に来て、歳ですから、膝ももう曲がらないし、半月板もかなり取っているし、いろいろな筋肉を傷めていたり、ちょっと動けば腰が痛くなったりするんです。練習前にお風呂のようなものに入って体を温めて、マッサージして、悪いところがあればテーピングしたり、治療してもらったりして練習に入っていく。365日、練習のたびにやるわけです。終わってから2時間マッサージして、針をして、治療してということです。
 磐田の場合はレストランがないのでいいタイミングで食事ができないという難点があります。その辺が低迷の要因の一つであるかもしれませんが。人間の体というものはトレーニングしますと体が破壊されます。栄養と休養をちゃんといいタイミングで取ると1時間ぐらいで成長ホルモンが出てくるので、そのタイミングでしっかりと栄養をとっていれば理想です。時間、タイミングを逃すと効果が薄れます。ですから今、Jのチームの大半がレストランを持っています。栄養士もついています。
 例えば、アーセナルを見に行くと規模が全く違います。クラブの規模が400億円くらいで、食事会場はテーブルクロスにピカピカの食器が並んでいて、その中で温野菜中心の料理が食べられます。サラダをいっぱい食べようとおもったら大量に食べなくてはいけないですが、温野菜にしたらぐっと小さくなります。そんなことも全部栄養士、コックさんが工夫しているんですね。そういうことを365日やると、一流に到達するということがあります。
 中山の話に戻りますと、365日それをやって、それであのテンションですから。練習に入る時に一番自分の気持ちが充実していないと納得しないから「若いのしっかりしろ」と先頭を走る。この気持ちを毎日維持するというのは並大抵の精神力ではないです。ただ試合に負けないとか、練習の中で負けないんじゃなくて、負けない準備をしているんです。だから未だに現役でやれるんですね。こういうところを若い選手が見習っていけば長くサッカーもやれます。


1センチ遠くに跳ぶために必死になった川口

 川口能活、アトランタオリンピックの時にブラジルにシュートを25本ぐらい打たれています。あいつが防ぎまくったんですね。2002年のワールドカップで優勝した時のロナウドだとかペレットなど後のスーパースターがあのチームにはいっぱいいたんです。マイアミの奇跡と言われたゲームです。
 川口は1センチ遠くに跳ぶために必死になった。日本代表の場合は朝起きたらまず何をするかというと、グラム単位の体重測定です。トレーナーが確認しています。暑いときの練習もあるし、寒いときの練習もあるんですが、今日は200グラム落ちてしまったとか彼はぶつぶつ言っているんです。今は結婚して少し丸くなって来ましたので、体調をゆるやかに調整できるようになっていますが、当時、オリンピックは28年ぶりですから、出たいという気持ちがストイックなまでに自分を追い込んで体脂肪を落として1センチでも遠くへ跳びたいと。
 サウジアラビアとの準決勝で彼がスーパープレーで3本ぐらい決定的なシュートを防いだんです。それでオリンピックも道が開けた。もちろん前園が2ゴール入れました。そのときの映像を見るといいところで活躍しているのは大体静岡の選手なんです。伊東輝悦、清水東海第一がいて、小野が出てきて。渋い話ですが、アジアカップのレバノンで優勝したときに点を入れたのは望月重良、清商の。ほとんどが静岡の選手だったんです。残念ながら若い方の世代の代表に静岡の選手が少なくなりました。それを巻き返すためにいろいろなことをやらなければいけないということでがんばっているところだと思います。
 川口能活がそれだけ自分を追い込む。彼は白身魚のフライの衣のところを避けて、白身のところだけを食べていたんです。それを遠目で見ていて、こいつはそこまでして勝ちたいんだと思いましたね。自分の大きな目標のためにどれだけ我慢しているかということです。
 日本代表の選手の体脂肪はほとんどピタッと同じような数字です。20%くらいのところが大体健康的な体脂肪率です。日本代表選手の体脂肪率はどれくらいかと言うとほとんどが8%くらいです。10%以上の人はいないです。そこまで体を絞って脂肪を落とす。そのくらい自分をトレーニングによって追い込んでいく。
 川口は、こいつならやってくれるというくらい自分を律して、そういう体を作って、ブラジル戦でスーパーセーブを連発した。本当に指先にさわってポストに当たって外に出たシュートが2本ぐらいあったんです。すごいフリーキックとか。いい選手というのは気持ちをずっと持ちこたえることができるのがすごいなと思います。


リスクを負わないことがリスク

 僕は金メダルには価値はないと思っているんです。金メダルは到達点の証ではあるんですが、自分にとって何が大事かといったらこの金メダルに価値があるわけではなくて、金メダルというすごい世界を目標にしたことで、一つ一つ階段を上がっていったことで自分が人間として逞しく、大きくなっていった。素晴らしい友達が出来ていろいろな経験ができたということが自分の人生にとって幸せな財産なんです。そのときの仲間とはずっと一緒に付き合って、サッカーの話が出来てと。
 本当にロッカールームは特殊な世界です。相手も強い。仲間同士で手を取り合って、この相手に絶対勝とうというその気持ち。仲間との連帯感とか、達成感とか、そういうものはすごいです。これはやはりロッカールームにいたものにしか分からない。そういう中で自分が成長してきたということが選手にとって幸せなことなんです。
 僕はよく選手に言うんです。失敗を恐れないでチャレンジしなさいと。成功の量と失敗の量は比例するんです。当然、失敗の量が多いんですが。失敗の量が少ない人は成功もこれっぽっちしかないです。成功したものを成功体験として残していくことが大事で、指導者が失敗を恐れる方向にいくと選手も失敗を恐れてチャレンジしなくなるから成功にもたどり着けないんです。
 「リスクを負わないことがリスクなんだぞ」ということです。リスクを負ってチャレンジする中から成功にたどり着ける部分をどれだけ残していくか。だから指導者が「何でお前そんなところでパスミスしちゃうんだ」って言っては駄目です。いやパスミスなんだけれども成功のプレーは、もう少しです。子どもは勇気を持ってチャレンジしたんです。その勇気を持ってチャレンジしたところを、やはりほめて、また失敗してもいいんだぞということを言ってあげないといけない。監督に怒られるからチャレンジしない。そんな子がうまくなるんですか。
 「よくあそこを見ていたな」と。「キックはとんでもない。でもお前はあそこを見ていたのか。すごいな。よし、今度はちゃんとあそこに蹴れるように練習しよう」と。到達点に対して一つ階段を上がったらそこをほめる。また一つ階段を上がったらそこをほめる。そうしないとなかなか子どもというのは育たないです。


怒るよりもほめた方が子どもは受け入れる

 小さい子の話になりますが、子どもというのは真似の天才です。12歳以下の子どもは神経の発達が95%ぐらい終わっていますから、大人の真似は何でも出来るんです。こういうふうに動きなさいといったら動けるし、あそこに蹴りなさいといったら蹴れる。
 われわれも50歳になっても今でも蹴れますね。神経の回路は消えないから。しかし体力は毎日練習していないとどんどん衰えていきます。子どもの時に目減りしないものに投資した方がいいじゃないですか。目減りは絶対しないですから。そういうものに子供のうちに投資して、体力はサッカーをやっている中で自然についてきますから、その辺を効果的にやることだと思うんです。
 子どもは認めて欲しいという気持ちがあるんです。熱中しやすいですし。否定的なことはほとんど受け入れません。お母さんによく言うんですが、あいさつしない子どもが、たまにあいさつして隣のおばさんにほめられたら、「隣のおばさんがあなたのあいさつが素晴らしいってほめていたわよ」といってあげなさいと。あいさつするとこんなにほめられるんだと思ったら、一生懸命にあいさつするんです。また、「こっちのおばさんもほめていたよ」と言ったら、またあいさつするようになるんです。9割あいさつしないことを怒るよりも、ちょっと良くなったことをほめた方が子どもは受け入れるんです。
 子どもが帰ってくると「試合勝ったの。負けたの。負けたら駄目じゃない」では、親とだんだん話をしなくなりますね。そこで大事なのは、「きょうは何が楽しかった。何が上手にできたの」と。ある子は「すごいシュートを打ったんだけどキーパーに防がれた」と。もしくは自分が3点取ったけれど、相手が4点とって負けたかもしれない。親というのはチームの結果よりも子どものプレーの本質に、プレーが良かったか、悪かったかを聞いてやるということがすごく大事だと思うんです。結果よりも途中のパフォーマンスをほめるというのがすごく大事だと思います。


気づかせてあげることがすごく大事

 一流の指導者をずっと見てきたんですが、パーソナリティー、専門知識、もう一つ大事なのは指導能力だと思います。サッカーの専門知識はサッカー選手でも評論家でもみんなあります。でも実際に選手が良くなった、チームが強くなったというのは選手を、人を説得できていないと駄目です。育成というのは人の心をどれだけつかむのかということだと思います。
 教えるというのはすごくおこがましいと思うんです。子どもたちが良くなったとしたら、われわれが教えたわけではなくて、それは本人がなったわけで、われわれが教えたわけではない。
 われわれは気づかせてあげることがすごく大事だと思います。気づいたものは自分で掴み取っていくものですから、これは本物で、ゆくゆくこれは残っていきます。
 答えを言うことは簡単なんですが、サッカーの世界では、その答えは1回しか通じないんです。相手がすぐにその反対をやってくるから。そこで自分が答えを見つける方法をいっぱい持っていたら、いろいろなやり方の中で、自分で工夫して、それを財産にして大きくなっていくというようなことがすごく大事だと思います。


いろいろ伝えるテクニックがある

 僕は、例えば明日試合があるとき、今日の夜はリラックスルームに模造紙に相手のフォーメーションを書いて張っておくんです。次の日の試合前のミーティングの時に相手のフォーメーションを説明するのは時間がもったいないですからね。
 大体、ゲームの前のミーティングは15分ぐらいしかやらないんです。そしてバスに乗って試合会場に行くぞーと、ぐっと盛り上げていくんですが、その15分のために5、6時間は準備します。こいつに何を言おう、この選手に何を言ってやろうと。そこにいろいろ伝えるテクニックがあるんです。
 人によって上手く使い分ける。要するに結果でなく各自のパフォーマンスを強調するということです。これがテクニックの大事な一つ目だと思います。
 話し方のテクニックでいうと、選手によってプレッシャーに強い子もいるし、弱い子もいるので、テクニックの一つとして理想的なのは個人に向けつつグループ全体に伝えるような話し方のテクニックを身に着けることです。こいつに言っても絶対こいつは信頼関係があるし、もしくはへこたれないやつだと。
 例えば、「大久保嘉人、いいかお前はペナルティーエリアの中に入ったら後ろなんか向くな。1対1だったら絶対勝負を仕掛けろ。逃げるなよ」というんです。そうすると彼は「分かりました。いきますよ」って感じです。弱い子にいってしまった時は、それがすごくプレッシャーになって敵を恐れすぎてしまったりすると困るので、そういうことを言いつつ、チーム全体が「よし。きょうのゲームは絶対に勝負に行くんだ。絶対下がらない」というような気持ちを持たせるテクニックです。
 一人に言っているんですけれど、チーム全体に言っているわけです。そういうテクニックも多分みなさん、自然に使っておられると思うんです。だから怒る人を1人用意しておくといいんですね。そしてあとで、「ちょっと、一杯いくか」と。それもテクニックということです。


失敗した時は選手たちの中へ

 次は主語の使い方についてです。失敗した時、上手くいかなかった時は、自分が選手たちの中に入ることです。選手はそんなことは気づきませんが、「きょうはプレーが良くなかった。きょうのわれわれは自分達の力を全く出せなかった。何故なんだろう」と。主語は「われわれ」です。「われわれのきょうのプレーは最低だったぞ」ということを言わなければならない時には、自分がそのグループの中に入ることなんです。
 チームがいいプレーが出来て成功した時には、「きょうの君たちには感動した」と。そういうふうにほめる事です。成功した時は選手たちのお手柄でいいんです。失敗した時には自分もその中に入るけれども、成功した時は、選手のお手柄なんです。
 選手はそんなことは気づいていませんから、「山本さん、すげーいい人なんだよな」と思うだけです。失敗した時は、一緒にかぶってくれる。成功した時にはほめてくれる。選手はそこの使い分けは気づいていませんが、一緒にやれると思わせることなんです。


コーチの重要な要素

 いずれにしてもコーチの重要な要素というのは、大きな情熱を持っているのと同時に謙虚さも持っていることが大事だと思います。そしてサッカーへの使命感、情熱はもちろんですが、同時にトレーニングとか、伝えること、みんなが進歩していくことにすごく情熱を注げることです。それが重要な精神になると思います。
 日本代表選手であってもすぐにはコーチになれないんです。ライセンスが下からC、D、A、Sとずっとライセンスを取り続け、その間に現場で経験しないといけないし、S級のライセンスを持っていないとJリーグの監督は出来ないんです。そのS級のライセンスを維持するためにリフレッシュ講習で年間決められたポイントを取っていないと免許が取り消しになるんです。そういう状況がありますので、勉強は常に継続してやっていかなければならないということが世界で戦うスポーツの大事なところだと思います。



是非、子どもたちに本物を

 子どもたちは、無限の可能性があると思います。ですから本物を見せたり、好きな時に好きなスポーツを楽しめる総合スポーツクラブのような環境を作って刺激してあげられたら、すごく子どもたちにとって幸せなことだと思います。
 サッカー発祥の地イングランドでは、サッカー専用のピッチ、芝生がロンドンだけで100面以上はあります。サッカー場もサッカー専用のスタジアムです。だからピッチとスタンドがすごく近いです。ボールも余り外に出ない。インプレー時間、つまりプレーする時間が増えるんです。当然中身は濃くなります。
 共用のスタジアムでは、ボールがどんどん転がっていって、マルチボールが外に置いてあっても距離があり、戻ってくるのに時間のロスがあります。積み上げていくとすごいロスになり、インプレー時間がどうしても減るんです。ピッチの上でいろいろなことが起きた方が見応えがあるわけですから、少しずつサッカー専用のスタジアムの方向に行くことがスポーツ文化の発展のためには大事なのかなと思います。
 子どもというのは真似の天才なので本物を見せたらそれを一生懸命やろうとしてくれるんですね。言葉で幾ら言っても理解できない。イメージできないんですが、本物を見せたら、「あっ、こうやってやるんだ」って。家に帰ったら一生懸命、ご飯を食べるのも忘れて練習する。多分、そういう子が上手くなったんです。
 本物を見せに連れて行くということはすごく大事なんですね。そういう環境を、静岡はサッカー王国といわれて、そういうものが揃っていると思うんですが、これからますます王国としてのリードを保つためにはさらなる努力が必要な時代になったと思います。


静岡も早く気づいてやらないと駄目だ

 浦和のサポーター、すごいですね。たまたまこの間、浦和と鹿島の試合を解説していたんですが、浦和のサッカー専用のサッカー場に6万2000人入っている。そして必死になって選手を応援します。あそこのサポーターは必死になって応援しないと「お前、もう出ていけ」という感じなんです。ここが日本代表と違うところです。日本代表のサポーターは大衆劇場です。サッカーを知らなくても1回この選手を見てみたいからといって来るんです。パシパシ写真を撮って「日本がんばれ」って。それはすごくありがたいことなんですが、浦和はもうそこを追い越しましたね。
 ものを食べて応援しているなんて雰囲気は何にもないです。記念写真を撮るのは多少はありますが、「俺たちは絶対、日本一になるんだ。アジアでチャンピオンになるんだ」ということをみんなが必死に願っている。そういう熱さがあるんです。
 一見さんはお断りという雰囲気です。そのくらいクラブの時代がそこまで来ているんですね。静岡もそこら辺に気づかないと、ますます水をあけられます。それに近づいて来ているのが新潟で、試合ごとに平均4万人集めています。いずれその資金力がいい選手の獲得につながっていくんです。皆さん、静岡も早く気づいてやらないと駄目だよということなんです。


高原と小野の二人の握手した写真

 僕がとやかく言うといろいろ問題があるかもしれませんが、折角の機会なんで合併の問題について一言言わせていただきます。
 三島の高原、沼津の小野、彼らが握手をしたポスターを街中に張ったら子どもたちは皆、「沼津と三島が早く合併して仲良くなってもらったらいいよな。二人ともうちのものになるぞ」と思うじゃないですか。高原も小野も俺んちの町の出身だぜって、子どもにとってはそれはすごい誇りじゃないですか。顔に沼津市、三島市と書いてあるんだから二人の握手した写真に「合併」と書いたポスターを街中に張ったら、「ああ、合併するんだ」って、子どもたちはみんな思いますよ。高校生が「いいな、いいな。高原と小野が一緒だろう。いい町って日本中にアピールできるもんな」というような戦略はどうですかということです。みんなで一つになって高原と小野を応援しようよっていう雰囲気作りがいいんじゃないかと思いますね。余分なことを言いましたが。


東部にサッカー場があったら

 サッカーチームも静岡にエスパルス、磐田にジュビロがあります。Jのチームは18チームだけじゃないんで、J2もありますから、東部に例えば一つあって、伊豆箱根鉄道のどこかの沿線にあったら修善寺や伊豆長岡などに泊まって見に来てくれる。浦和が来たらサポーター3000人は絶対来ますから。駅が真っ赤になってしまいますよ。
 彼らはジャンボ機を自分たちでチャーターして、韓国に4000人行ってしまったんです。500人乗りのジャンボ機を何機もチャーターして応援に行って、応援したらそのままチャーター機で帰ってくる。そのくらいの経済効果を彼らはもたらしているんです。だから伊豆長岡とか、韮山、大仁辺りにサッカー場を造れば真っ赤な伊豆箱根鉄道が走るようになるんですね。そういう戦略で町づくりをしていくと、子どもたちも本物を見て、すごく幸せになれるんじゃないかなと思います。
 いろいろなイベントをやろうと思ってもそれだけの人を抱えられるイベントホールだとか、宿泊施設もないと来られません。例えばユースの世界で結構いい大会としてツーロン国際大会があります。ツーロンという5万人ぐらいの小さな町に世界中の20歳以下のユースの各国代表が来てやるんですが、そこに金の卵がごろごろいるから世界中からスカウトが皆見に来ているんです。ユースの子たちが一生懸命でプレーして、それを町が盛り上げている。
 熱海とか舘山寺温泉とか、宿泊施設もあるし、フットサルなどがすぐ出来そうな感じがするんです。シーズンじゃない時にお客さんを呼んだりすることが出来るのかなと思います。サッカーだけじゃなくていろいろのスポーツでやれると思ったりしています。地元のために、いっぱいやれることがあるなって、つくづく地元に帰ってくると思います。


勝つことではなく、勝とうと思うことが大事

 よく子どもたちに言うんですが、試合の時に勝つことじゃなくて、勝とうと思うことが大事なんだと。勝とうと思う中で、自分が成長していくことが大事だと。要するにお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんは、君の勝った姿に期待しているわけじゃなくて、君が最後まで歯を食いしばってがんばっている姿に誇りを持っているんだから、結果なんかを恐れることはない。勝ったことがすごいんじゃなくて、勝とうと思うことが大事なんです。
 「勝とうと思う中で、自分がチャレンジして、最後の1秒まであきらめずに走った姿、それがお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんにとっては誇りなんだぞ。だからあきらめずにがんばれ」と。それをずっとあきらめずにいったら上に上がっていけるんです。
 そこを今の時代、テレビゲームと同じでリセットできると思ってしまう。上手くいかないと、また最初からというような。早くそういうものから脱して、サッカーやいろいろなスポーツを通して歯を食いしばってやって欲しいものです。
 お母さん、お父さんが子どもの試合で、きょうはレフェリーが駄目だから負けたと、子どもがいる前で言っては駄目です。1対0で確かに負けました。あきらかにレフェリーミスのPKでした。だとしても言っては駄目なんです。大きくなったら都合の悪いことは全部人のせいにするようになります。俺らはいい選手だがレフェリーが駄目なんだと。
 そうではなく、レフェリーが下手でも、1本PKぐらいあげるよ。俺ら5点取るからといえるぐらいの選手になれと言えばいいじゃないですか。子どもの試合に国際審判員が来ているわけじゃないですから。子どものためにやってもらっているんです。そこを批判してしまったら大変なことになってしまいます。是非、そういうふうにならないように親が気づいていったらたぶん社員育成もずいぶん楽だと思います。
 要するに、いろいろなリーダーシップも、社員の育成も人の心を育てるということだと思います。持ち場持ち場で持っているものを、その人たちが最大限生かせるようにしてあげる、気づかしてあげるということが上に立つ人たちの仕事なのかなと思っております。





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