景気はしばらく「曇り空」 ね年は繁盛、年後半に回復へ
緩やかな拡大局面が長期にわたって続く日本経済。しかし「そんな実感はない」との声は一向に消えず、最近は米国のサブプライム住宅ローン問題に端を発した金融市場の動揺、原油高、政局不安、地域間や所得の格差問題に代表される社会のひずみが重苦しくのしかかっている。2008年を迎えて明るい景気を見通したいが、実際にはどんよりした曇り空がしばらくは日本経済を覆いそうだ。
新年の景気を占う前に、現状を簡単におさらいしたい。小泉、安倍両政権の間、日本は構造改革路線を突き進んだ。経済分野にとどまらず、医療や教育分野まで改革の嵐は吹き荒れたが、急激な変化に伴う国民の痛みへの不満が高まり、昨年7月の参院選では与党が惨敗した。その間、景気は02年から輸出が引っ張る形で回復局面に入り、一息ついた企業は徐々に設備投資を増やしていった。ところが景気を支える三本柱のひとつ、個人消費には火がつかないまま、現在に至っている。
では、新年を展望すると、悲観的な見方をせざるを得ない材料が、いくつか横たわっている。まずはサブプライム問題。本来は米住宅ローンの不良債権問題にすぎないのだが、高度な金融技術を用いて債権が証券化され、世界中の金融機関が購入していたことから、各国・地域の金融市場で大きな混乱が巻き起こった。米国の大手銀行や証券会社は大損失を被り、米景気の減速懸念は強まっている。その余波で日本の株式相場も低迷。やっかいなのは、世界経済が直面したことがない「新種の金融病」であるため、いつ問題が終結するのか、だれも分からないことだ。少なくとも年央まで、場合によっては08年を通して世界経済の足を引っ張るかもしれない。
二つ目が原油の高騰だ。1年前の原油価格は1バレル=50ドル程度だったが、いまはほぼ2倍の水準。日本でもガソリン、灯油などの値段が上がり、生活を直撃している。背景には産油国が集中する中東の地政学的リスクの存在、原油市場への投機的資金の流入などが挙げられるが、最大の要因は新興国の著しい経済発展だろう。中国の人口は13億人超、インドは11億人超。こうした国が栄えれば、石油需要が増えるのも当然。原油価格は高止まりすると見た方がいい。
三つ目が不安定な日本の政局である。衆参両院のねじれ現象で、法案はすんなり国会を通らない。しかも、総選挙の足音が近づき、与野党とも中長期的な進路を示すことよりも、目先の票を獲得することに走りがちだ。こうした政局不安が、企業の景況感や投資家心理のマイナス要因となるのは言うまでもない。
「暗い話ばかりではないか」と思われるかもしれないが、明るい材料もないわけではない。まず、サブプライム問題はたしかに米経済の景気減速懸念を強めているが、日本企業は一昔前と違って輸出が米国一辺倒ではない。中国をはじめとする新興国向けの輸出が対米輸出の落ち込みをある程度は補うだろう。
昨秋から大幅な落ち込みを見せている日本の住宅着工、特にマンション着工は景気に暗い影を投げかけているが、すべては審査に著しい時間がかかるようになった建築基準法の改正が原因。既に政府は審査時間短縮などの対策に乗り出しており、そう遠くない時期にマンション着工は回復しそうだ。
日本経団連が賃上げをようやく容認したのも好材料だ。少なくとも賃上げが実施されない限り、個人消費は上向かない。
昨年末に決まった08年度予算案も、年後半には地方経済に効いてくるだろう。ばらまき予算であるかどうかは棚上げするとして、地域重視へかじを切った福田政権の予算案は地方への配分を増やしている。一時的かもしれないが、じわじわと地域経済に好影響を与えると考えていい。
ところで「ねずみ年は繁盛する」との格言がある。非科学的だが、子年(ねどし)は株式相場が大幅に上昇することが多い。前向きな気持ちを保つためにも、この格言を信じるのもいいのではないか。総合的に判断すると、08年の前半は景気の減速感が続き、よくて横ばいであろう。しかし、年後半は再び回復への歩みを見せ始めると期待したい。
最後に消費税の行方を大胆、かつ独断的に予測したい。09年初めに招集される通常国会に消費税率引き上げ法案は提出され、同年10月から税率が上がるのではないか。税率は2%上乗せされ、7%になると個人的には見ている。
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