サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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基調講演 平成20年2月20日

「地域ブランドの確立」
中小企業基盤整備機構地域資源活用支援アドバイザー
日本総合研究所 上席主任研究員
金子和夫氏

略歴

金子 和夫氏

金子 和夫
早稲田大学政経学部、慶応大学大学院経営管理修士課程修了。昭和51年株式会社鈴屋に入社、ファッションビジネスに12年間従事したのち、昭和63年株式会杜日本総合研究所に入社。現在総合研究部門新社会システム創成クラスター上席主任研究員。地域ブランド、JAPANブランド、道の駅活性化などに取り組む。マーケティングとワークショップを得意とする。経済産業省「地域中小企業サポーター」、国土交通省「地域振興アドバイザー」、農林水産省「知財戦略本部専門家会議」委員、農林水産省「食と農林水産物の地域ブランド協議会」幹事、武蔵野大学非常勤講師。
愛知県豊橋市生まれ、55歳。


 現在、地域ブランドは国を挙げて取り組んでいます。私も山口県で観光と食の開発を行い、また高知県の馬路村というところで杉の木を使ったカバンを開発し、東北では青森県のおいらせ町、合併して奥入瀬という素晴らしい名前を付けた町の地域ブランド戦略を立てるなどのお手伝いをさせていただいています。
 今、各地で地域ブランドに熱心に取り組んでいるのは、つまるところ、住む人が誇りと愛着の持てるまちづくりに取り組むということだと思います。自分の町がいかに素晴らしいか、いかにいいものを作っているのか。これを上手に売って、住みよい、誇りを持てる町にしよう。これが地域ブランドだと考えています。


地域イメージのブランド化で勝負

 ブランド化するということは、その商品に名前とか、言葉とか、シンボルをつけることです。そしてブランド化によって他社の製品と差別化していくというところがブランド戦略の基本です。
 ところで、各地にお邪魔すると「これ、美味しいでしょう。良いでしょう」と言われます。しかし「美味しい。良い」というのは当たり前の基本的な価値です。モノの価値というのは基本的に丈夫で安全、美味しいだけではなくて、生産者の情報、生産地の情報、モノによってはデザインの魅力といったような情報的価値、さらに言えば地域の風土やイメージ、信頼や安全のイメージといったものを付けて、ブランド力がつくといいます。このように価値をつけていく作業がブランド化の重要な作業だと思っています。
 世の中にはマスプロダクションの大手の商品がたくさんあり、地方の生産者は、それに対してコストや高機能ではかないません。その時に、モノのブランド化だけではなくて地域イメージのブランド化で勝負するというのが、この地域ブランドのミソだと思います。
 例えば高知県の馬路村は1100人の村です。そこの農協が一丸となってゆずを使ったポン酢やジュースを作っています。従業員が70人、売上高が33億円の加工業になっています。彼らは馬路村のポン酢ということで売っており、ミツカンやキッコーマンと戦っているわけです。単純にコストや品質やバリエーションだったら大手にかなうわけがないわけですが、そこでなぜ30億円も売れ、スーパーの棚でミツカンの上の段に置いてもらっているのか。それは「馬路村です」というイメージをうまくつけて売っているからです。
 今、地域ブランドは大変注目を浴びています。一つは安全、健康などに本当に関心が高い。また一方では食の安全問題などで不祥事が起きていること。それから経済のグローバル化、つまり安くていいものは残念ながら海外から入ってきます。国内の商品は良くて高いものです。そういう発想でものを作っていくということです。それから宅配便やインターネットの整備で生産者が作ったものを消費者に直接売ることができるようになりました。地域ブランドは「私が作りました」ということを伝えることが必要ですし、その手法は今日、誰でも使えるようになっています。そして商品、サービスをどんどん改良していくことと地域イメージを上げていくことで地域ブランドは成功していく。いい循環を作っていこうということです。


地域ブランド政策に積極的な政府

 政府は各地の地域ブランド政策に積極的に取り組んでいます。政府に知的財産戦略本部があり、日本ブランド、日本の素晴らしいものを世界に売るという基本的な方針を出し、経済産業省で地域団体商標という優れた地域のまとまりのある商品には商標を認めることが始まっていますし、経済産業省が地域資源プログラムということで、5年間で1千社の素晴らしい地域資源活用企業を生むという活動を開始しています。
 日本の優れたものを世界に売ろうというジャパンブランドもやっています。例えば新潟県の加茂は桐ダンスの産地です。国内ではもはや新婚さんも桐ダンスは買いません。彼らはヨーロッパ向けにデザインし、ヨーロッパのお金持ちに、大体リビングでワンセット500万円ぐらいの桐ダンスをデザイナーと組んで直販することに挑戦しています。
 このような経済産業省の政策とともに農林水産省が平成20年度から地域ブランドを開始します。私も委員として昨年11月に農水省で静岡県の三ケ日みかんの組合、高知県の馬路村農協と一緒にシンポジウムをやりました。また総務省のがんばる地方応援プログラムや国土交通省にも地域資源活用構想といった、このように大変多くの事業がついていますから、是非、団体の皆さんや事業者の皆さんもどんどん手を挙げていただきたいと思っています。


長野県小布施の取り組み

 地域ブランドのイメージですが、長野県の小布施を例にあげますと、小布施はもともと栗菓子の生産地でした。しかし栗の菓子を首都圏のデパートで売るだけでは、他となかなか差がつきません。そこで小布施は素晴らしい町だと。小布施という町が有名になって、小布施の栗ですということで売れるようになる。その仕組みを作ろうじゃないかということで、昭和50年頃から積極的に取り組んできました。
 基本的には熱心な社長がリーダーとなり、訪れた人たちが素晴らしい町だと感じる、そのように人を迎え入れることが大事だという考え方に基づき、次に江戸時代に北斎を招いて描いてもらった絵が町の宝だと。そして町のブランド化の範囲を200メートル四方ぐらいに限定し、その中に栗菓子屋さんだけではなくて郵便局、銀行、コンビニ、町役場などを入れて、その一角を磨いたわけです。
 シンボルとして北斎館があり、その周りに栗菓子の文化がある。美しい街並みがある。これで年間120万人以上が訪れることになりました。町の人もいろいろな人をもてなして喜ばれ、それがまた誇りと愛着につながる。この結果、長野県内でワインを作るなら小布施にワイナリーを作ろうかとか、食品産業が小布施に立地したがる傾向になってきました。


地域ブランドにどのように取り組むか

 地域ブランドにどのように取り組むのか。まず最初に地域資源の発掘と再評価です。うちの町に何があるかを語り合って探す。今回、富士市では皆でワークショップ形式でやったわけです。次にビジョンづくりです。はっきりしたビジョンを持つ。それから地域内での共有です。地域ブランドについては事業者だけではなく行政、住民、学校とか、いろいろな方が参加するネットワークとパートナーシップを作った方がいいと思います。
 その中で具体的に食品だとか、産業振興をしよう、街並みを作ろうと。それからたとえば都市の中にある種の拠点を作ろうと。それぞれ担う人たちが集まって進めていくことで、地域の情報が出てくる。このように考えたらどうかと思っています。
 ところが、いろいろな町に行きますと、いろいろ混乱があります。まず地域資源について十分検討していない。うちの町の魅力は何だろうかという議論が少なかったり、生産者発想の商品開発が多い。作ってしまってから売ろうというんですが、これは難しいです。極端に言えば流通チャンネルを考えてから商品づくりをしたいと思います。
 送り手のビジョンや夢、物語というのは何でしょうか。例えば高知県の四万十川の流域といいますと条件不利地域ですが、四万十川を守ろうということでいろいろな方が集まって地域振興をやっており、地域ブランドづくりは思いのほか弾んでいます。やはり四万十のドラマがあるからなんです。川と山と人間の暮らしという物語がスラスラ出てくる。こんなものをというものを作って、それを四万十川の物語として売る。そうすると都市部の人は「四万十に行ってみたい」「面白そう」「これ買ってみようか」と思うわけです。
 ブランド認定制度は悪いわけではないですが、認定制度の次がなかなか見えない。これが課題になっています。モノづくりとか、情報発信はあくまで手段であって、最終的にはビジネスモデル、地域の資源を使って商品化してマーケットに出て行って、注文が来て、そのことで産業が生まれて、雇用が生まれて、地域の次の産業になっていく。こういうようなところまで考えていくべきだと思います。


地域ブランドのポイント

 そこで地域ブランドについては、いくつかのポイントがあると思います。いくつかそれをご紹介します。
まず、地域資源の再発見と評価から始めましょう。平成17年度、富士で取り組んだものですが、最初は7回ほど皆で何があるか話し合いました。
 2番目はマーケットインの発想で商品を考えましょう。こんなものがあるけどというのではなく、今、何が求められているのかというところです。新潟の燕三条地域は、かつて洋食器をたくさん作って世界中に売りました。今、それは全てアジアのものに取って替わられています。そうしたら何を作ればいいんだと。彼らはそこで猛烈に勉強を始めて、一つはユニバーサルデザイン、人にやさしい道具とか付加価値のある道具を次々に開発しています。もう一つは三条が持っている素晴らしい技術を世界に出そうと。例えば刀鍛冶の技術でナタや包丁などを作って、これをジャパンブランドでヨーロッパに持って行っています。1本30万円、40万円もする包丁を向こうの人は目を輝かせて見るんです。キッチン専門店に入れることに成功しています。このように海外から見た時に国内の職人はすごい評価を受けて引き合いがありました。いずれにしろマーケットから考えることが大事だと思っています。
 3番目が商品に情報の価値をつけることです。高知県馬路村の事業ですが、林業関係は材木を売ると考えがちですが、そうではなくて山を元気にするとか、環境を考える。そういった価値というかメッセージを付けることで消費者に響いていくと思います。また、デザインも大事です。巷は商品で溢れています。お客さんはどのように商品を選ぶでしょうか。やはりすぐれたパッケージデザインなどによって引き付けられるものがあると思います。馬路村のゆずは最初のころは1升瓶に入れて売っていましたが、ある段階から一人のデザイナーを選んで馬路村の山の暮らしを漫画にしてもらいました。それ以来10数年、そのイラストレーターがすべて絵を描いています。パンフレットも看板も全部この絵です。村に行くとポン酢の世界がそのままになっているということで、大変強烈なメッセージを発しています。
 4番目は、地域ブランド商品というのは、こだわり、情報の価値、デザイン、そういったものを付けて生産しています。ですからそれを問屋任せにはできません。自ら店頭に運ぶとか直接消費者に伝える。こういうことでその価値を分かってもらうということがあると思います。
 5番目は、地域ブランド商品は基本的には高コストだと思っています。問屋、小売りのマージンなどで消費者に届くときには生産者の出荷価格の4倍近い価格になっているモデルは馴染まないと思います。やはり直販型のモデルで行くべきではないかと思っています。
 6番目、地域ブランドは作られたウソの話であってはならないと。やはり地域が普段こういうふうに食べていた、使っていたといったものが、意外と外の人が見ると面白いということで売れるケースが多いわけで、やはり「地産地消」の仕組みを地域の中に作るべきだと思います。さらに言えば地域のブランド、地域のイメージというのは本当にその町の暮らし、伝統、歴史なんです。それを「行ってみたいな」と思うわけです。   
 そこで7番目は、地域の中に参加体験施設が是非欲しいと思います。例えば富士は紙の町だと。では富士に行けば紙のことが分かるのかと誰もが思います。日本の紙の3割、4割を生産しているのだったら紙のことについて学べるだろう、楽しめるだろうと。そこで参加体験施設を町に作り交流にもつなげていくということです。
 そして大変いいものが生まれ、生産者がまとまり、地域内外で知名度が上がった時にはその商品のブランドを守ろうということで、8番目は団体商標に登録することになるわけです。
 こんな8つの観点で取り組んでいくわけですが、完成するまでには時間がかかるものと考えていただいた方がいいと思います。


一貫した計画と推進体制が必要

 大体、地域ブランドづくりには3年はかかると思います。最初は目指す方向の明確化をして発掘、創出。それから次に品質、名称、管理、ここでしっかり名称とか品質基準をつくることが大事です。品質基準をどこで作るかが大事です。これも今、富士ブランドで問われてくるところだと思います。それからマーケティング、ブランドの確立、そして継続発展、商品の改良と関連商品の開発、さらに取り組みの検証、フィードバック。これを一体的に進める人は誰ですかということです。多分、これは事業体でないと難しいと思っています。商工会議所が今、一つのステージを用意して盛り上げているわけですが、今後は推進力のある、ビジネスにしていく意欲と腕力を持った事業体に引き継がれていくものだろうと思います。こういったことを3年やっていく。
 それと優れた商品を作っていく場合には、プロデューサーシステムが有効だろうと思います。例えば、地域に何があるかを発見し、コンセプトを作って、こういう商品ができると、ここのところによそ者を入れた方がいいんです。
 高知県の馬路村では、杉の間伐材を使って、スライスし合板にして金型プレスのお皿を作って、これをスーパーマーケットの発泡スチロールに代わる材料として売ろうとしたんですが、コストが高くなって全く売れなかった。何とかしようということで、コンサルの私どもとデザイナーが入りまして、デザイナーが見たら別の見方ができたんです。木がこんなに曲がっているのはすごく面白いと。可能性がありますよということで、お皿ではなくてカバンやインテリアや電卓といったものを出してきました。エコデザイン。そこから生産しようと。これも地元に製造技術は限られています。塗装は石川県の塗装工場にし、縫製は埼玉県のゴルフバッグ屋に頼み、それを高知の山の中に持ってくる。こういう生産工程手配、品質管理をやったんです。
 次にPRはそのデザイナーの力で国内外の展示会を確保し、2年目にはミラノに進出しました。3年目にはニューヨークのモマという美術館のミュージアムショップの扱い商品になりました。現在、5年商売をやっているんですが、一連の流れをデザイナーとコンサルタントがプロデュースしているというのが、特色です。農水省は農林水産物についてこれをやることになりました。このように一貫した計画と推進体制が必要だということです。


富士ブランドへの取り組み

 富士ブランドの取り組みは、優れた地域産品を全国に発信して地域のイメージアップを図っていきましょうということです。最初は平成17年1月に集まって、富士にはどんな宝があるのか語っていただき、そこからその宝を整理していったわけです。
 富士のキーワードは、何といっても富士山。それから水、かぐや姫。農林水産物もたくさんある。そして工業製品は何といっても紙を筆頭に非常に産出高は多いわけです。特産品があり、イメージアップは花に取り組んでいるということでした。富士にはいろいろあるということで、富士ブランドの認定とPRが始まり、富士と景観ということで花を活用した運動が始まったわけです。
 平成18年から具体的に取り組まれたのが、まず掘り起こしの作業です。これは本当に商工会議所の皆さんが精力的に企業や市民から提案を集め、その上で消費者などによるモニタリング調査に取り組んでいます。それから富士ブランドの認定制度、これはもう第5次まで数え、たくさんの製品が出てきています。
 情報誌として静岡新聞社と組んで「ぐるぐるマップ」が発行され、地元の人も知らなかったいろいろ面白いものが一冊にまとまりました。18年度は広報活動、新たな販路開拓に主に取り組んだと思います。
 続いて大きなものは富士のイメージアップです。会員の皆様が「わが社の富士山活動」に取り組まれたのと「富士山検定」、これは大きかったです。それから花エコプロジェクトということで、ヒマワリを植えて景観づくり、環境問題を考えるというのが始まったわけです。
 次がオリジナル商品づくりでした。これは食の開発ということでいろいろ試行錯誤していますが、まだちょっと形になっていないと理解しています。一方、紙のまち、これをどう生かしていくかということで、工場見学ネットワークとか紙バンド手芸というものが全国的な広がりを見せています。
それから紙の可能性、こういうことを18年度、議論して、デザイナーさんに入っていただいて、関係の皆さんと議論を始めました。
 平成18年度の活動ですが、2月にコンセプトが「富士山と水の恵み」に決まり、8月に認定マークが決まり、PRを始め、9月から第1期のブランドの認定が始まって、優れたものを物産展に出すようになりました。


新しい紙のブランド「cuiora」誕生

 そして平成19年度は実行の年だったと思います。一つは紙のまちを全国に発信するということで、具体的に新商品を開発し展示会に出しました。
 それが新しい紙のブランド「cuiora」(キヨラ)です。紙による紙のための紙のデザイン。このような実験的な新商品は、まずブランドの名前が大事で、コンセプトがスパーンと出てきます。なぜキヨラなのかというと、富士山、水、恵みという中で、清らかなということをデザインしたということです。昨年11月に開かれた「100%デザイン東京」という国際的なデザインショーに出展しました。
 その時のブースは、壁面は段ボールをカットした壁で作られています。そこに紙パイプで作った家具、それから紙バンドで作ったカバンとか、紙管で作ったトイレットペーパーホルダーです。こういったデザインアイテムを出しました。このように紙のまちから世界に向けた紙による紙のための紙の製品というメッセージがキヨラです。
 アンケートによりますと、一番面白かったのはペーパーバッグです。そして花瓶。引き合いもありました。紙という素材を生かすとこういうものができるのかということで、非常に面白かったと見学した人たちが回答しています。このことを通じて企業、市内のデザイナーさんたちと一緒に作っていくことで新しいモノづくりのプロセスを地元に下ろすことにも挑戦しています。


カテゴリー別のブランド戦略を

 さて、今後どのように考えるのか、私なりの私見を述べさせていただきたいと思います。
まず一つは、富士ブランドの認定商品のパワーアップの問題です。今、150余りのものが一堂に会しているわけですが、150余りの商品で売り場は作れません。何らかの形で今後は整理していく。つまりカテゴリー別のブランド戦略を考えていかれたらどうかと思います。
 つまり食品は食品で一つ括る。紙関係は紙関係で一つ括るとか、観光交流だったら観光交流で括る。そのことによって例えば食品であればフードショーに出ましょうとか、観光であれば国際観光コンベンションに出ましょうと。産業用機械であればハイテクショーに出ましょうという形で、攻めていくマーケット、顧客が見えてきます。
 例えば、日光のおいしい水が育んだ地場の食材を生かした新商品を集めた「日光水物語」では、日光水物語というブランドで束ねて出していくことによって首都圏の百貨店からも引き合いが来始めているそうです。カテゴリー別に分けて、束ねて、その中でストーリーを作っていくということが、課題ではないかと思います。


トップブランド戦略で世界へ

 2番目がハイエンド商品によるトップブランド戦略です。ハイエンドというのは一番トップの最高級品です。最高級品で富士のトップブランドを作って世界に飛び込んでいくというやり方はいかがでしょうか。
 新潟の三条は刃物、食器、鋳物と金物は何でもある街ですが、一流のものがあまりないような感じで、イメージは高くない。そこで彼らは、ジャパンブランド事業に手を挙げて三条が持っている一番素晴らしいものを厳選して世界に出していくようにしました。
 例えば、三条では爪切り屋さんで須和田製作所があり、ここの爪切りは世界最高です。ヨーロッパのネイルアーティストの皆さんが使います。彼らは単独では出ていたんですが、「スワダ」と書いても、お前どこの国だということを言われていました。
 今回、商工会議所が3年間、三条の優れたものを選ぶ。三条というのは関や堺と同じように刃物の町で、素晴らしい技術がありますと、三条のイメージをグンと引き上げることを目的にして「三条ジャパン」というブランド事業に取り組みました。
 長岡造形大学のデザインセンターの先生に監修していただいて、少しずつ商品を厳選し現在10社、初年度は4社だったそうです。ドイツのアンビエンテというヨーロッパ最大のインテリアリビングショーに毎年出展し、三条はこういう素晴らしいものができるということで注文が来るようになってきました。特に刀鍛冶のつくる刃物は高い評価を得ています。ナタ1本10万円、20万円。ちょっとした鉛筆削りのようなものが3万円、5万円という、2人の職人が手作りで作っているもので、何かすごみのある美しさを持っています。そのようなハイエンド商品で地域のイメージを一気に引き上げるという作戦があります。
 三条も次はどうするか。人材育成も含めて新しいタイプの事業体を作るとか、そこら辺のビジネスモデルが三条には残念ながら今なくて、ジャパンブランドが3年で終わってどうしようかと悩んでいるところです。


事業者主体の推進組織づくりを

 それから事業者主体の推進組織づくり。つまりこういったブランドものというのは、いいものを作っていくわけなので、全員がそのまま上がっていくということはないわけです。最後まで残る企業は数が限られてきます。しかし、そのやる気のある方たちが新しい事業としてこれをやるんだと決断をしていただいて新会社を作るということが望まれています。
 先ほどの三条ジャパンの展示会、事業者の皆さんにこれからどうしたいですかと言ったら、補助金で商工会議所にやって欲しいと言っているんですね。これは国としてはノーです。いつまでやればいいのかということですね。
 いいものを選んでいくといった時に、第3者による認定という問題も出てきます。なぜこれを選ぶのかということです。それはどちらかというとマーケットサイドとか客観的なデザイン評価とか、そういったところから選ぶことが必要かなと思っています。
 こういう中でカテゴリーを選び、ハイエンドを選んでいくと専門的な展示会に非常に攻めやすくなって、マーケットがぐっと広がるということです。


市民側もみこしを担ぐような仕掛けが必要

 ブランド戦略はいろいろあって、一つが(1)地域ブランドを認定していこうという戦略で、これは基本的には既存商品を認定してプロモーションしていくということで、現在の富士ブランドはこの活動です。
 その次が(2)既存商品ブランド化戦略で、プロモーションの次には一部新分野を作ろうよと。
 そして(3)新商品を新会社でブランド展開しようと。この中でブランド戦略を進化させていくのは(2)、(3)へどう進化させていくかということだと思います。
 例えば富士ブランドも今いろいろなものがあって、プロデューサーのもとに束ねるコンセプト、カテゴリー別のコンセプトを作り、デザイナーと共に新ブランド商品をA´、B´、こういうものを作り、それを世界の市場に出していこうという考え方です。
 こんなモデルというものが先ほどのハイエンドの分野で一つ考えられます。これはどうやっていくかということですが、是非皆さん候補企業がチャレンジしていただいて、それを会議所が応援し、その中から一定の要件を満たした参加企業が集まって、例えば新ブランド会社を立ち上げて、新ブランド会社がプロデューサー、デザイン、審査委員会のもとに商品企画、販売促進、営業管理、ブランド管理をやる。そのチームのもとに参加企業は商品企画、生産、品質管理に取り組んでチャレンジしていく。選ばれたものが一括りのブランドで市場に出ていく。こういうモデルが考えられます。富士ブランドの情報としても富士の物語と、それだけではなくて富士が提案する上質なライフスタイル、何かマーケット側の価値を作れないかということです。
 最後に、もう一つは富士市内におけるインナーブランディング、つまり富士の内部における皆さんの富士ブランドに対する参加の推進です。どのように参加を推進していくのかがもう一つの課題だろうと思います。例えば特に地産地消をどう実現していくのか。富士の優れたものがいつでも買える、目にできる。このようなことが必要だと思いますし、また食については、むしろ市民主体の推進組織があってもいいのかなと。つまり市民側もみこしを担ぐような仕掛けが必要ではないかなと思うわけです。








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