略歴に東北大学歯学部卒業とあります。歯医者が何でアメリカの政治を話すのか。解説をちょっとさせていただきたいと思います。
おやじは政治家ですが、おふくろは歯医者で福島県会津若松市でまだ現役でやっています。親孝行のつもりで歯学部に行き大学を卒業する頃におふくろにうちに帰ろうと思うと言ったところ、患者さんも少なく、私一人でやるからいいといわれました。1988、9年ごろで、バブル経済の絶調で、日米貿易摩擦、日本バッシングが起きた時代です。うちのおやじはずっと通商畑の仕事をやっていまして、その時おやじが話してくれたのは、日本の政治経済がこんなにうまくいった例は歴史上にもないだろうと。経済成長を見事に成し遂げ、しかもその過程で貧富の差を作らなかった。これは特筆すべき点だと。ただし、日米貿易摩擦が心配だという話をしました。
私はもともと留学したかったんです。そこで「ちょっとアメリカを見てきていいかな」と言ったら、おやじは余り英語がしゃべれないので、英語が少しはしゃべれるようになって来いと言われまして、行ったのが1989年。私は結局、それから15年間アメリカにいて帰ってきたのが2005年、3年前です。
私はニューヨークのニュースクールフォーソーシャルリサーチという大学で政治学の修士号を取り、折角だから働いてみようと働くわけです。働き先はワシントンにあるシンクタンクCSIS、戦略国際問題研究所というところです。
そこで10年間働くことになりました。激動の時代です。世界の歴史の中でも忘れられない2つのことが起きました。2001年9月11日、同時多発テロです。今ちょうど5周年ということでテレビ、ラジオでやっていますが、2003年にイラク戦争が始まった。こういうアメリカの状況をアメリカの政策を作っているワシントンで身近に見てきたものですから、何としてもこういう経験を日本の皆さんにお伝えしなければいけないと「今のアメリカが分かる」という本を出しました。特にシンクタンクに正式な社員として10年間働いた、そういう日本人はあまりいないんです。
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