サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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第14回東部地区分科会 パネル討論  7月18日開催
「『道州制』って何?−あすの都市づくりを考える」
第14回東部地区分科会 パネル討論

◆コーディネーター
大石人士氏 ((財)静岡経済研究所研究部長)

◆パネリスト
山村善敬氏 (静岡県企画部長)
須田徳男氏 (三島商工会議所会頭)
坂本光司氏 (法政大学大学院教授)
小笠原啓之氏 ((社)沼津青年会議所直前理事長)

 道州制の受け皿にふさわしい東部地域の地域づくりはどうしたらいいのか。第2部のパネル討論には4人のパネリストが登場し、静岡経済研究所の大石人士研究部長をコーディネーターに語り合った。

大石 道州制という言葉はよく聞いていますが、内容がなかなかつかみにくいテーマです。江口社長からお話をいただきましたが、当地にとってはこれから検討課題になるポイントをついたご発言もありました。この江口社長のお話に基づいてこれからの話し合いを進めさせていただきたいと思います。10年後、あるいは15年後に道州制になったとき東部地域はそのまま道州制に移行しても大丈夫なのか。道州制が導入された時に、東部地区はそのまま受け皿となれるのか。本当にそれだけの力がありますかと。
 きょうのポイントは、まず1つ目は地域の現状についてお話を伺おうと思います。それから地域の将来について皆さん、どのようにお考えになっているか。3つ目はそれを実現していくためには何が必要だとお考えになっているのか。4つ目は皆さん方とこれから考えていきたいポイントと感想、あるいはご意見を伺いたいと思っています。まず三島商工会議所の須田会頭から東部地域、あるいは三島の持っている現状、課題について自己紹介を兼ねながらお願いします。


共同で一つのものを考えてやっていきたい

須田 きょうは三島から何名ぐらいきておりますか。6名ぐらいですか。これが僕に言わせれば三島の現状かなと思うわけです。三島と沼津となりますと、三島で何かやっても沼津の方が少ない、沼津でやったときは三島の方が少ない。どういうわけかなと考えているわけです。合併について、この10年間の流れはどうなっているか見てみますと、11年11月に東部広域都市づくり研究会が発足し、16年11月に清水町で沼津、三島、函南、清水の2市2町の合併推進協議会設置の住民発議があったわけです。私はちょうどこの11月に会頭になりまして、12月の合併推進協議会に初めて参加しまして、その会が合併の人たちだけというのに私は気がつかなかったんです。それで前会長からお話がありまして、ちょっと待ってくれというようなことから合併が止まってしまったというのが現状でして、これについては私も責任があるわけです。ところで17年5月には清水町で住民発議された2市2町合併協設置議案を三島市議会が否決し、ここで合併の行き詰まりが出来たわけです。18年6月に研究会が2年6カ月ぶりに会合を開き、10年後をめどに政令指定都市を目指すという方針を確認してしまったわけです。そして10月には県市町村合併審議会が沼津、三島、裾野、函南、清水町、長泉町の3市3町の合併の組み合わせ案を答申しました。
 19年2月に御殿場、裾野、小山町が2市1町の合併を目指す方針で合意し、5月には県市町村合併推進本部が3市3町と御殿場、小山の1市1町の合併組み合わせ案を正式に盛り込んできました。6月には研究会の会合で一気の大合併か、あるいは段階的な合併かで意見が分かれまして、8月に研究会メンバー18人にアンケートを行った結果、一気に政令市をというのが6名、段階的に合併というのが12名で、20年2月には東部政令市実現に向かって5市4町で協議を重ねてきた東部広域都市づくり研究会は解散を決め、今後は5市4町の枠組みにとらわれないでお互いに合併の研究をしていこうというようになったわけです。そして今年の6月9日に三島で開催されました沼津と三島の商工会議所の正副会頭会議で商工会議所、商工会で進められた2市3町の合併を目指した駿豆地域市町村合併推進協議会につきましては発展的に解消することにしたわけです。併せて三島商工会議所に設置を致しました三島市町村合併を推進する会も解消させていただき、静岡県が提案した多極分担型の地域構想について新たに三島商工会議所としても取り組むことになったというのが現状です。
 とにかく伊豆半島の玄関というのは沼津と三島と熱海、ここが玄関になりますから、この玄関口がやはり伊豆半島を引っ張っていかなくてはならないじゃないかなという気持ちが私はあるわけです。三島と沼津はこんなに近いのですけれど、ものすごく遠いんですね。これを何とかしてお互いに何か共同で一つのものを考えて、それを皆でやっていくというように持っていきたいということです。

大石 近いけれど遠いという、かなり前からの命題がそのまま残されて来ているのかなという感じがします。続きまして小笠原さん、JCの直前理事長として昨年も技能五輪の関係で1校1国応援ということで、この場に出ていただきました。地元の最近の状況をお話しいただけますか。

沼津のポテンシャルは素晴らしいものがある

小笠原啓之氏

小笠原啓之氏
小笠原 昨年、技能五輪国際大会が沼津で行われました。私どもは一昨年から携わり始めましたが、初めのころあまりにもまとまりがないという感じで、市民の皆さんからは「技能五輪って何」という声を非常に多く聞きました。私どもは何かの突破口をということで、推進協議会に入って市内の全小中学校の皆さんに1校で1国を応援してもらおうと呼びかけました。最初は国際理解から始まって、最終的にはモノづくりの素晴らしさというものが分かるような非常にいい事業になったと思います。
 その中で、われわれはとにかく市民の方にPRするということで、花いっぱいにしようとか、町をきれいにしようとか、いろいろな場面に出ていろいろな発言をしてまいりました。大会が近付くに従って機運が高まり、小中学生の皆さんもたくさん門池の会場に行ったのをご覧になった方もいらっしゃると思います。その1校1国サポート運動だけでなく、それぞれのエリアの皆さんがボランティアで集まったわけですが、私がすごいなと思ったのは緑のジャンパーを着た方たちが毎日夕方になると、その日咲き終えそうな花を全部摘みとって明日新しく来る人には素晴らしい花を見せたいと皆さんで花を摘んでいるんです。
 これって沼津の市民のポテンシャルなのかなと。正直この運動をやる前には沼津市民って本当にまとまらないのかなと思ったんです。ふたを開けてみてびっくりで、世界中からの人をお招きするという一つの目標に向かって一丸となれる素地があるんだということをすごく感じました。簡単に保守的だというような言葉で片付けないでいただきたいというのが、去年活動していてすごく感じたことです。率直に沼津のポテンシャルは素晴らしいものがあるなと感じました。

大石 技能五輪の時は、この地域が一つのまとまりを持ってやっていくことができるのかどうか非常に心配した部分もありました。しかし結果的に非常に成功し、私も地域のポテンシャルは非常にあると感じました。
 県企画部長の山村さん。道州制も絡めながら県が考えていらっしゃる東部地域の位置づけからお話しいただければと思います。

非常にポテンシャルの高い東部地域

山村善敬氏

山村善敬氏
山村 まず、本県の全国的な位置づけについてお話ししたいと思います。皆さんご承知の全国総合開発計画、全総に代わるものとして国土形成計画が作られ、今年7月4日に閣議決定されています。この中身ですが、概ね10年間の国土づくりの指針を示し、新しい国土像として多様な広域ブロックが自立的に発展する国土の構築ということを標榜しています。北海道と沖縄を除く地域を全国で8ブロックに分けており、本県は長野、岐阜、愛知、三重、静岡ということで、中部圏に入っております。
 実はこの国土形成計画は道州制とは切り離して議論をしますということにはなっていますが、道州制で議論されている区割りとかなり近似値なところがあると感じています。その中で本県の位置づけですが中部圏に入っていますが、首都圏とも隣接しているわけで、隣接圏という形で首都圏の方の計画作りにも参画しております。ですから両方に現在は首を突っ込んでいるという状況です。その中では特に神奈川、山梨に隣接する富士箱根伊豆地域については3県が一緒に共同でいろいろなことを検討しておりますので、それを首都圏の計画の中に入れてくれとわれわれは首都圏の計画の中に入り込んでいるところです。
 静岡県は、西は名古屋、東は東京という大都市の求心力が非常に強い地域とくっついているわけです。そうしますと、どうしても辺境の地域として下手をすると埋没してしまう恐れを持っておりますので、少なくとも本県が力強い地域になることが大切であると思っております。
 8つの広域ブロックの規模ですが、それぞれ1国に相当する規模で割ってあります。例えば首都圏はGDPでいくとイギリスとかフランスに匹敵する。中部圏はカナダです。静岡県単体で見ても実は県内総生産はニュージーランドの約1.3倍です。ですから静岡県1つでも1国となんら遜色がないという状況で、そういう力を持った県であるとわれわれは自負しています。もう一つ、今後富士山静岡空港が開港しますので、アジアとの交流が盛んになると思います。
 次に東部地域をどう位置付けているのかということですが、総合計画では県内を5つの地域に分けてあります。伊豆半島地域、東部地域、中部地域、志太榛原中東遠地域、これは空港を中心にして一つにまとめてあります。それから西部地域。この5つに区分けをして、それぞれ広域的な地域づくりを推進しようとしているところです。
 その中で東部地域の特徴は、首都圏への近接性。これが今生きていて企業立地が進んでいること、新幹線を利用した通勤通学客が増大して人の交流が非常に活発で、しかもファルマバレープロジェクトのような産業集積も進みつつあります。そういうものを反映して東部地域は県民所得の水準が高い。富士山、駿河湾などの世界レベルの自然環境を持っている。そのために多くの交流人口が発生している。言ってみれば非常にポテンシャルの高い地域であると考えられます。
 一方で県内の中部地域や西部地域に比べると都市的な魅力が若干低く、広域的な求心力のあるところがあるか、ちょっと首を傾げざるを得ない。しかし県立がんセンターとか、国立遺伝学研究所、大手メーカーの研究所が立地して非常に先端分野の研究者が活動しています。優秀な人材が来ているのですが、なかなかその人たちが定住できる環境にないというのも一つ問題だと思います。
 将来を見てみますと、富士川以東で伊豆地域を除きますが、その東部地域で97万人います。人口規模からいいますと政令市に匹敵する。非常にポテンシャルの高い地域でありますので、地域全体が自立性の高い都市圏を形成していくということが、県としても一つのポイントだと考えています。

大石 坂本先生は全国各地を飛び回っておられますが、現在の道州制の議論も含みながら東部地域の都市づくりの現状、課題のようなものをズバリ言っていただければと思います。


このままで地方政府としての機能が果たせるか

坂本光司氏

坂本光司氏
坂本 私は法政大学大学院の静岡サテライトキャンパス校長という名刺をいただいて、来年4月に静岡市内で大学院を開学する準備を進めています。どこに大学院を作ろうかと大学の中で随分と検討しましたが、最終的に静岡市を選びました。全国各地から誘致の話がありましたが、やはり政令指定都市、県庁所在地でやろうと。これは法政大学だけではなくて、恐らくマンモス大学がこれからこぞって地方に出てくると私は思います。一方で、地方の大学が東京に出ており、大学間の非常に競争が激化している中で、先頭で実は戦っているわけです。
 沼津、三島も最初は選択肢の中に入りましたが、都市規模というか、池の中に泳いでいる魚の数というか、その中で静岡ないし、浜松を選択しようということで、最初の段階で沼津、三島は切られてしまったということであります。恐らくそういう目線で見ている企業とか大学はいっぱいあるのではないかと思います。そんなことがありました。これは自己紹介絡みで核心のところをちょっと言いました。
 道州制ですが、同時並行的に内閣総理大臣の特命で「地方が主役の国づくり」という議論がかなり頻繁に行われています。毎年のようにここから地方分権改革推進委員会レポートが出されています。私はこのレポートを読んでみて、県の東部の方々はここで言おうとすることを理解しているのか、読んだことがあるのかということを思わざるを得ない状況です。
 どういうことかと言いますと、国とか地方自治体という関係性を中央政府と地方政府にするという視点で見ている。国が持っている権限、県が持っている権限を基礎自治体におろすという方向で、現在議論を重ねている。もっと具体的に言うと、この基礎自治体にほとんどすべて立法権、財政権、行政権だけではなくて、税金をどうするかとか法律をどうするかということも付与していくという議論が実は一方で国の方にあるわけです。住民の幸せを念じながら祭り事をしなければいけない行政が500人や1000人の公務員で、地方政府としての機能が果たせるかどうか。あるいは自主財源というか予算規模を持っていないと受け皿としての機能を発揮することができないというふうになると私は思うのです。
 いずれにしても静岡、浜松は、例えば公務員の数を見ても6千7、8百人です。沼津が2000人前後、三島は900人くらいということで、地方税なども浜松、静岡を調べてみると、大体1200億円くらいありますが、沼津は多いといっても350億円で、三島はわずか160億円です。そういう形ですから思い切ったことができにくいということもあるでしょう。行政権だとか立法権だとか財政権までも基礎的自治体に機能を移そうという形で、実は動きつつある。そのときの受け皿として機能を発揮できなくなるという危険性がある。東部は少し動きが遅いのではないですかということを敢えて指摘しておきます。
 2つ目は、先ほど市町村合併の話が出ましたが、私は静岡県の市町村合併の審議会委員を務めております。その中で具体的に線引きをする作業部会の責任者を仰せつかっています。どうしたらこの地域の方が幸せになるか。どうしたらこの地域が世界的な都市間競争に勝てるかというようなあらゆる可能性を想定しながら出した結論が、3市3町、場合によっては御殿場、裾野、小山あたりも入れるという案です。とりあえずという形で出したんですが、私は今でもそれに勝るものはないのではないかと思っています。つまり行政は生活者のためにあるのであって、行政のためにあるわけではないのですから、生活圏と行政圏を一体化することが生活者のためになる行政ということを考えて出したというわけです。
 同じようなことは静岡の中部でも浜松でも出しました。浜松は何とこの東部でいうならば伊豆半島も合併したという形です。もしも強い者同士が合併して北遠地域を残してしまったら弱いもの掛ける弱いものは、やはり弱くなるんです。兄貴分として浜松、浜北がそこに手を差し伸べるというかなり戦略的な意味合いがあるわけです。あの山に住んでいる方が平野部に住む私たちの生命、財産を守ってくれているわけですから、彼らを残すわけにはいかない。かなり議論があった中で、ああいう形になりました。
 もう一つ、この地区はもったいないなと思っているんです。なぜかというと、伊豆半島という心も体も安らぐところがあり、富士山もある。沼津、三島などそれぞれ特長があり、それぞれ連携していけばもっと魅力が高まるのではないかと思います。中部は足し算的、西部は掛け算的になっていると思いますが、少し乱暴に言うとこの地域は引き算になっているような感じです。失礼ですが。

はっきりしたポリシーを打ち出す必要がある

大石 次にこの地域の未来をどう考えていったらいいのか。これから進んでいく方向は道州制のような形であり、その途中の段階はいろいろなものがあろうかと思いますが、徐々に進んでいくことは間違いないと思います。そういった意味でこの地域の広域的な街づくりをどういうふうに進めていったらいいのかというところを、それぞれの立場から伺いたいと思います。小笠原さんからお願いします。

小笠原 考えなければいけないのは、自分たちが見た魅力と外から来た相手が見た魅力を勘違いしないことが大事だと思います。どこに行っても同じような土産物屋があって、どこに行っても同じような文化センターがあって、同じような診療所があってそれぞれ点在している。1個にまとめればもっとすごいものになるのにと、いつも思うんです。外から来た人にとっての魅力を常に念頭に置いてやっていかないと、これから先、この地域は置いていかれるのかなと思います。
 とくに観光を持っている伊豆半島もそうだと思うんです。我々が戦う相手は、やはり世界であり、頑張っている九州とか北海道です。そのようなところとさらに戦っていくためには、一歩外から見て、われわれに何があるのと。この地域は何ができますというはっきりしたポリシーを明確に打ち出す必要があると思います。それにはこの地域が一つになって、行政ばかりに頼まないで、われわれはどう見られているか。いつまでも観光都市、商業都市でいいのかということをもう一度自問自答して、考えてみる必要があるのかなと思います。

大石 何か若手の方々の活動が具体的にありますか。

小笠原 一昨年、SKY、静岡、山梨、神奈川各県の富士箱根地域で共有する観光資源も含めて活動していこうと、われわれも提唱させていただきました。道州制という形では10年以上前からわれわれも取り組んでいまして、具体的に縛られない青年団体としてこの地域にある各青年団体と協調して、若者の方からこの地域を変えていこう、行動しようという活動を進めてきました。

伊豆マラソンで連携を

須田徳男氏

須田徳男氏
大石 お話に出たSKY、静岡、山梨、神奈川のSKY県。200万人ぐらいの圏域で県でもしっかり位置付けていただいているということですので、これは一つの大きな東部地域のポイントになってくると思っていますので、是非、進めていっていただきたいテーマだと思っています。
 須田さん、今までの市町村合併問題の流れをご説明いただきましたが、実際、経済界とか、住民の活動はかなり広域化した活動が行われていると思います。その辺も含めて都市づくり、東部地域の連携のあり方についてお願いします。

須田 昨年、伊豆マラソンをやったわけです。町おこしのためには、こういうスポーツが一番早いというようなことから行ったわけですが、民間の私どもがやってしまったので、お小言がだいぶありました。2回目をやりますが、今度は三島の小池市長さんが先頭になって会長を務めると言っていただきました。
 下田までやるのが伊豆半島が一つになっていいんですが、交通とか警察の問題もあり一度にできないので、だんだん奥に入って行きたいと思います。今度はスタートが伊豆市になりますので伊豆市長さんにも会長になってもらい、伊豆の国市の市長さん、函南町の町長さんには副会長になっていただきます。そうしますと行政関係も全部動いてきます。
 私は三島で生まれて三島で育ち、伊豆半島は週に2回も商売で歩いていましたから伊豆を良くしたいということが私の頭から離れないわけです。いろいろなことを言われてもどうしても何かしていきたいというのが私の願いです。
 東京へ行った若いものが、今だと行ったきりです。ですから何とか私たち経済人としてはいい人材に帰って来てもらいたい。このような気持ちでいます。

大石 確かにマラソンは広域的なところを通過しながら行きますので、いろいろな調整が必要になり、必然的に連携が生まれてくるイベントなのかなという気がします。

多極分担型の地域構造

大石 山村部長、この2月に多極分担型の地域構造、ポリセントリック型というちょっと耳慣れない言葉が出ております。この中では東部地域はどんな風に考えていったらいいのでしょうか。

山村 簡単に言いますと、圏域の中に核になりそうな都市がいくつかありますので、お互いが機能分担・連携をして、その圏域全体を発展させるようなことを目論んだ地域をポリセントリック型と呼んでいます。
 実際にこういうものがどこにあるかといいますと、ベースはヨーロッパです。イギリスのウエストミットランドとかオランダのランドシュミットという地域はよくみますと、1極がボーンとあるのではなくて20万〜30万、大きくても50万ぐらいの都市がある距離の中に幾つか点在しているわけです。それがお互いにそれぞれ分担をし、お互いに協力しながら地域全体として大きくレベルアップしている。こういう地域が現実にあるものですから、そういう地域づくりができないだろうかというのがそもそものこのポリセントリック型の地域構造に着目した理由なのです。
 この東部地域の都市圏形成のポイントですが、各都市が機能分担等を図り地域全体としての高次な都市機能を整備すること。それから富士、箱根、伊豆の観光資源を活用した交流人口の拡大や多彩な産業集積等による一体的な100万都市圏を形成すること。それから神奈川、山梨も含めたSKY構想と言っておりますが、その県際地域を含め200万都市圏になるのです。これらも将来的に視野に入れた地域づくりをしていったらどうかという提言を受けました。
 東部地域にとって中部圏に入ろうが、首都圏に入ろうが、どこに入ってもこの地域が自立できる。しかも大都市の力を借りながらこの地域がますます発展できるという要素を持つ地域になるということですので、それに向かってわれわれも努力したいと思いますし、東部地域の皆さんもそういう方向で是非地域づくりをしていっていただけたらなと思います。

生涯かけて働きたくなるような企業、職種が必要
 

大石 坂本先生の「日本でいちばん大切にしたい会社」という本が大ヒットしております。日本で一番大切にしたい地域、あるいは都市と読み替えると、この地域は本当にそういうふうになっていくのか。須田さんがおっしゃったように若者が帰ってこない地域は大切にされている地域じゃないなと、こんな風に思ったりしています。アドバイスをいただければと思います。

坂本 東部地域をどうするか。2、3点話をさせていただきます。1点は、繰り返しになりますが、静岡県の人には申し訳ないですが、東京都との関係をもっと強めるべきだという感じがします。残念ながら多くの産業も人々も東京に向かって動いている中で、それに抗することができないわけです。この5年、10年間で人口が一番増えたのは東京です。好きとか嫌いではなくて行政区は静岡県ですが、商売的にはもっと東京と関係を強めた方がいいという感じがします。
 法政大学の八王子キャンパスに中央線で行きますと東京駅から1時間近くかかります。中小企業のメッカの東京・大田区には50分ぐらい。三島まで「ひかり」で60分です。住宅地の地価は大田区の1平方メートル当たりが44万円、沼津は11万円と出ていました。商業用地では大田区で56万円、沼津は21万円。工業用地が大田区20万円、沼津は7万円くらいです。現実的にはほとんど時間的距離は同じということを私は言いたかったわけです。プロポーズの仕方によっては、いろいろな機能がこちらに来るんじゃないかという気がします。東部地区の地域づくりというのは東京圏を無視してこの地域の将来を占うのは難しいのではないかと思います。
 もう一つ、私は5つの魅力がある地域が魅力的な地域だと言っています。その1つだけ紹介しますと魅力的な企業が立地、集積していることに尽きると思います。魅力的な地域というのは、生涯かけて働きたくなるような、わくわくするような企業とか、職種があることが大切だと思います。大学で講義をしておりますと、学生たちに必ず田舎に帰りなさいと私はよくいうのですが、彼ら、彼女らから必ず出てくる言葉が、先生、おらの町には生涯かけて勤めたくなるような魅力的な企業がないと。恐らくこの東部地区を魅力的な地域にするということになると、私は商店街も同じことが言えると思いますが、今どちらかというとこの地域は産業的に発達していますが、あえて言うと落下傘型というか移転型です。本社機能があって人事機能、研究機能、調査機能がある企業はわくわくするじゃないですか。私はいかにこういった地域の中で生み育てていくかというようなことを皆で相談し合うことも大切じゃないかと思います。

自分が先頭に立って一緒にやっていきたい

大石 ポイントを絞りながら、これが東部地域には必要なのだ、広域的な都市づくり、あるいは広域的な都市圏を作っていくためには、というところをお話しいただければと思います。須田さんからお願いします。

須田 三島、沼津には大きな工場はあるんですが、沼津工場とか、三島工場となっているわけでして、何とか本社が来る、そういう企業を持ってこないといけないなと思います。それとやはり工場、本社が来ないのならば工場とわれわれはもっと話をしなければいけない。われわれはほとんどそういう話し合いというのはないなと思います。行くときには何かもらいに行くようなもので、非常にこれはまずいものですから、これから自分が先頭に立って自分で持っていかなければいけないなと。人に頼るのではなく自分が行かなくてはいけないと思っています。そしてまた、三島、沼津、それから熱海もそうですが、もっとやっている問題について話し合わなければいけないなと。もっともっと一緒になってやっていきたいなと思っておりますので、よろしくお願いします。デメリットのことはあまり言わないで、メリットを追求して、メリットの方で行かないと前に進みませんので、進む方法でやっていきたいと思っています。

やらない理由を言う前に行動しよう

大石 掛け算でどんどん町が、地域が発展していくような形でメリットを追求していくことが大事かなと思います。小笠原さん、お願いします。

小笠原 なぜこの地域で合併話が出ては消えしているのか。よくも悪しくも東京依存というものがあるからじゃないのかなと思います。やはり東京で潤っているし、南関東州とか、出来ればほとんどの人が関東州に入れてほしいと思うのではないかと思います。それが名古屋州であれ、関東州であれ、どちらに組み込まれようが、この地域が魅力的でないと、どちらに行っても同じ話で、恐らく10年後もこの地域がこのままでいたら、この地域は駄目だと思います。
 その中で必ず引き合いに出るのが沼津と三島という話でありますが、人によっては源平時代まで遡って文化が違うとか言う人がいますが、今の県の区割りも明治以降の話です。とにかくやらない理由を探すのであれば、一歩やろうよという声をどんどん上げていかないといけない。若者がやらない理由を言う前に行動しようというところからどんどん運動を広げていかなければいけないなということを改めて感じました。

大石 例えば静岡と清水の合併ではJCという、どちらかといえば静岡、清水の過去の歴史をあまり知らない人たちが進めた部分があると思います。沼津、三島、あるいは周辺を含めて若い人たちは、いわゆる昔型の意識を引き継いでしまっているのか、どうでしょうか。

小笠原 今はほとんどないと思います。それは合併すればいいという議論になるかどうかは別として、われわれは普段でも同じ事業をやったりしていますし。源平の文化を考えるよりもわれわれが文化を作っていくんだという気概がないとこの地域は変わらないと思います。

大石 その辺で須田さんどうでしょうか。実際に経済界を動かしている方々もその辺の意識は変えざるを得ないという意識を持っていらっしゃるということでいいでしょうか。

須田 いいですね。若い人の時代ですから、年寄りは思い切った発想の転換をしないと駄目かなと思っています。

まず沼津駅北にコンベンション施設の整備を

大石人士氏

大石人士氏
大石 ありがとうございます。安心しました。山村部長、多極分担型の都市圏を実現していくために、地元のお2人のご意見を伺いましたが、その辺も踏まえながらお願いします。

山村 まず、県もその方向で進めつつある手段ですが、東部では、まず拠点都市の魅力づくりです。もう1点がネットワークの構築、この2点かなと思っています。
 県は具体的に何を始めたかといいますと、まずポリセントリック、多極分担型の都市圏域をつくる1つのテコとして沼津駅北にコンベンション施設をつくろうと考えています。沼津をある程度この地域の拠点にする。そういう都市の魅力を作りたいと県が乗り出したところです。それから東部地域ではファルマバレープロジェクトも進めておりますし、もう一つは富士山の世界文化遺産の登録に向けた取り組みを進めています。東部地域では富士山を地域振興に絶対生かすキーワードだろうという思いを持っています。
 ネットワークですが、特に交通ネットワークだと思います。多極分担型といいながら隣接する町同士がなかなか自由に行き来できないのであれば、これは絵にかいたモチですし、情報も行き来しません。従ってなかなか進んでいないのが実情だと思いますが、新東名だとか伊豆縦貫道、山梨と結ぶ国道138号のような既存道路のネットワーク化ともう一つは南北の交通体系にも目を向けて整備していこうという状況になっています。
 情報通信についてですが、これは全国で初めてですが、県も光ファイバー網の整備について一応助成制度をつくりました。それから地域での、お互いに市、町が連携するような方策が非常に重要なものですから、昨年から東部地域サミット、知事と6市6町の首長さんによるトップ会談を始めました。これは続けていきながら現実的にはいろいろな問題があろうかと思いますが、やはり一つの方向に向かいながら、皆さん、ベクトルを合わせていくという環境の醸成も大変必要だろうなと思って、これも取り組んでいきたいと思っています。

サンフロント21懇話会には引き続き地域のオピニオンリーダーとして積極的に提言を

大石 明日の都市づくりに向けて、今日集まっていただいた方たちに訴えたいこと、伝えたいことがありましたら順番にお願いできますか。

小笠原 本当に一言、やらない理由を並べるよりもやりましょう。行動しようというところだと思います。それに尽きると思います。

須田 行動あるのみですね。

山村 民間の役割が東部地域では他の地域以上に大きいのではないかという思いを持っています。そういう意味ではサンフロント21懇話会には引き続き地域のオピニオンリーダーとして積極的に提言をしていただきたいと。しかも実行力が伴ったものでやっていただければなという思いを持っています。
 最後に1つ、私がいつも東部地域について思っていることですが、首都圏の力を使えと。確かに使うんですが、この地域に力がなければ東京の強力な吸引力に飲み込まれて、単なる東京の外延部の一地方になってしまう。ですから、そうならないためには、例えば住むところ、働くところ、楽しむところは東部地域だと。だけれども東京の近接性を生かしたこの地域でなければできないような場所にしていく。東京に1時間かからない地域という地の利を生かした地域づくりが非常に大事ではないかなと常々思っておりますので東部地域の方、どうぞよろしくお願い致します。


それぞれのリーダーに少なからず問題がある


大石 最後になりますが、坂本先生、これから東部地域が変わっていくため、あるいは何がこれから必要になってくるのか。お願いします。

坂本 あるべき姿というのは今日の議論の中で少し見えてきたのではないかと思います。後は須田さんではないですが、実行力あるのみということになると思います。
 私は東部地域がなかなか一つの方向に向かっていかない理由の一つは、それぞれのリーダーに少なからず問題があると言わざるを得ないと思います。もし民間企業で決めたことに関して3年も5年も議論していて、おしゃかになってしまうなんてことで、ぬくぬくしているということは常識的に考えられないと思います。できなかったことに対して当然のことながら何らかの形で責任を取るということが民間感覚でいえば常識だと思うんです。
 もう1つ、なかなかうまくいかない原因の1つに未だにドブ板みたいな、おらが町の云々だとかという議員さん方の問題があるわけです。もしも首長さんがだらしないならば、もう1人の主役の議員さんが頑張るのが当然のことと思うんですが、残念ながらここにも問題があったと言わざるを得ません。議員さん方にもきょうの議論を是非踏まえていただいて、是非おじいさん、おばあさんのため、孫子のために働いていただきたい。方向が見えてきたのですから。
 最後に、その方々を選んでいるのは市民です。どぶ板的な意識を変えるような動きも、サンフロントとしてせざるを得ないかもしれませんね。上手い方向に、私たちが予定した日に行かなかったとしても、動いていることは事実です。是非この火を絶やさずに続けていただきたいと、そんな思いです。

まとめ

大石 まず、きょうなぜ道州制議論が出てきているのかということを、行政の担当者だけでなく、企業、個人を含めて皆がもう一度考えてほしいということです。2つ目は、東部は時の流れるままに過ごしていっていいのかということをもう一度皆さんが考えてみる。そしてできることから取り組んでいくと。1つのイベントでもいいですし、目的、目標がしっかりしていれば、それが次につながっていくのではないかと思います。3つ目はその際に多分単独ではなかなかできないことだと思います。いろいろなところと連携を取りながら、都市づくりもやっていく必要があると思います。4つ目として、市町村合併も道州制の導入も1つの手段に過ぎないと私は思います。要はここが生き生きとした地域になるということ、そこに住んでいる方々がいきいき生活できる、そうした地域を作っていくことが1番の目標であり、大事なことですので、それを忘れてはならないと思います。坂本先生の本の言葉を借りますが、日本で、あるいは世界で1番大切にしたい地域であり都市であり、故郷であると、そういったものを作っていきたいと思います。そのためには今日お集まりいただいている皆さんには、一致協力して進めていっていただきたいテーマだと思っております。
 

< 略 歴 >

◇大石 人士(おおいし・ひとし) 1979年大学卒業後、静岡銀行入行。82年財団法人静岡経済研究所出向。研究員、統轄研究員、研究課長を経て、96年研究部副部長、05年研究部部長。地域振興ビジョンの策定、総合計画審議会委員、中心市街地活性化基本計画策定委員、自治体職員の地域課題研究講座講師等を務める。現在、キラメッセぬまづ運営推進協議会委員、TMOぬまづ企画運営委員会委員、藤枝市補助金制度検討委員会委員、静岡英和学院大学短期大学部非常勤講師、サンフロント21懇話会シンクタンクTESS研究員。

◇山村 善敬(やまむら・よしたか) 東北大学法学部卒業。静岡県総務部人事課行政改革室長、総務部財政室長、財政統括監などを経て、平成13年4月〜平成15年3月総務部財政総室長。平成15年4月〜17年8月企画部空港建設室長。平成17年8月〜平成19年3月都市住宅部長。平成19年4月より企画部長。現在に至る。

◇須田 徳男(すだ・とくお) 三島職業養成校機械科 (現三島技能開発学院)卒業後、一木ゴム渇c業部長、(有)三島ゴム商会設立などを経て、昭和51年6月三島用品株式会社設立(代表取締役社長)。平成15年、凱Yコミュニケーションズに社名変更、代表取締役会長就任。現在、三島商工会議所会頭をはじめ、三島泉ライオンズクラブ会長、その他に三島倫理法人会顧問、社会保険協会三島支部理事、NPO法人三島緑の会副理事長など。

◇坂本 光司(さかもと・こうじ) 1970年法政大学経営学部卒業。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授等を経て、法政大学大学院政策創造研究科教授・同経営大学院(MBAコース)兼担教授。他に中小企業庁経営革新制度評価委員会委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。主な著書に「日本でいちばん大切にしたい会社」(あさ出版、2008年)など多数。

◇小笠原 啓之(おがさわら・ひろゆき) 1992年3月上智大学卒業、4月国際電信電話株式会社(現KDDI)入社。98年宇徳通運株式会社入社。99年沼津青年会議所入会、2002年渉外委員長、03年50周年情報委員長などを経て、07年第53代理事長に就任。08年直前理事長。現在、宇徳通運株式会社専務取締役。



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