サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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第15回東部地区分科会  7月27日開催
基調講演
「これがコンベンション戦略だ!!」

情報伝達研究所代表取締役 渡辺 厚氏

 

情報伝達研究所代表取締役 渡辺 厚氏
 お話しするのは駅前の再開発でコンベンションセンターができると何が変わるのか、そこからいったいどんな可能性とどんな課題を背負っていくのか、これを共有していただいて、この課題や可能性に皆さん、チャレンジしていただきたい。

今までのすべての経験やノウハウを参考にできる立場

 1981年に神戸市が神戸アイランドに神戸コンベンションセンターという日本で初めての発想を展開しました。ホテルと会議場と展示場の三位一体の施設が、街のインフラとしてできました。それ以来30年、日本中にさまざまなコンベンションセンターができてきたわけです。
 そして、これまでのキラメッセがあった場所に複合のコンベンションセンターができます。会議場、展示場、ホテルができる。会議ができ、展示ができ、遠方からのお客様がホテルに泊まってくださる三位一体の施設です。
 21世紀になって地域、あるいは公共主導型の最後のコンベンションセンターといってもいいぐらい立派であり、なおかつ今までのすべての経験やノウハウを参考にできる立場に皆さんはおありだと思います。

これから地域は重大な責任と大いなる可能性を背負う

 実は複合コンベンションセンターになった途端に会場の運営にコストはかかります。逆に言いますと展示場のように空間を大きく売れば済むという話ではありませんから、収益性もある意味では下がります。ということはこの会場を通じて地域に還元できるような、もっと大きな経済、産業のシステムをつくっていかない限り、会議場が皆さんのお荷物になってしまう可能性すらあるのです。
 展示場のキラメッセ沼津は平方メートル単価100円です。平方メートル当たりの1日当たりの利用料金です。それでも展示場はほとんどが空間ですから収益性は良いのです。一方で会議場は平方メートル当たり220円というのはグランシップと同じです。椅子や机を皆さんのご要望のように並べ替えなければいけない。展示場は空っぽの空間の中に持ち込んでやらなければいけない。ですから安い。会議場はその分高い。これが静岡駅前のホテルですと平方メートル当たり1,000円ぐらいしますか。そうなったら恐らく、皆さんは使えないでしょう。
 東京都心ですと東京国際フォーラムは平方メートル当たり1,000円です。10倍です。民間の施設は20倍から35倍です。
 地方中核都市では、多分、他の施設と同じように稼ぎ頭は駐車場です。コンベンションセンターで、実際にお金を稼げる施設は3割ぐらいです。展示場は7割ぐらいでしょうか。今回は市のいろいろな交流施設ですからなかなかそこまではいかない。そういうことも考えながら、展示場の賃料をせめて富士市の富士山メッセ並みに抑えれば、恐らく今と同じように稼働率は満杯になるでしょう。でも展示場が満杯になっても会議場の方がなかなか収益性が上がってこない。それを埋めるために展示場を値上げしなければならないと考えていくと、皆さん、物凄く頭が重くなってくるのです。
 コンベンションセンターのある町というのは、それなりのホテルや会議場という負担を抱えながら、もっと大きな価値をこの町に見いださない限り、単体でコンベンションセンターは儲かるのか、儲からないのかという議論をしてはならない施設、あるいはそういう事業なんです。
 ということで考えますと、それでは市が望むような、あるいはこの地域の産業界が望むようなコンベンションとは何なんだ。こういうことを本気で考えなければいけない。
 そうしたらそのコンベンションは誰が、どんな形で誘致をしてくるのか。あるいは何のためにこの町はコンベンションを誘致し、そして地域の活性化に生かそうとするのか。その議論を本気で東部地域の市町村は考えないとコンベンションセンターは、また地域のお荷物となる公共の箱ものになりかねないのです。
 コンベンションセンターの整備によって、これから地域は重大な責任と大いなる可能性を背負う。そういうふうに認識してください。可能性は大いなるものがあります。でも皆さん方が本気でコンベンションセンターを担っていく気があるかどうか。コンベンションを町の戦略にできるかどうか。そこにかかっているわけです。

コンベンション側は複合利用を求めている

 コンベンションの需要動向ですが、産業関係の展示会ですと、昨今ではセミナーとかシンポジウム、いわゆる情報を提供するような交流の場が別に必要だという時代が来ております。なぜかと言いますと、展示会だけではもう人が集まらないんです。さまざまなセミナーや教育研修の場を設けることで展示会そのものの集客力と集客の質が上がる。だから展示会には会議が欠かせない。
 逆に申し上げますと、医学会や機械学会などの学会を開くときに必ず展示会がついていないと会議そのものの予算確保ができない。だから会議には展示会がつきものだ。それによって売り上げや会議の収入を上げていく。こんなことがお互いに必要性を呼んで結果としてコンベンションは展示と会議、そして滞在をする人たちの憩いの場、あるいはさまざまな滞在のアメニティーがいる。そんなことでコンベンション側は複合利用を期せずして求めているということがあるかと思います。
 そういうことも含めましてコンベンションセンターというのは、これからコンベンションをやっていく町にとっては、あるいはキラメッセ沼津のような実績を上げてきた町にとっては必須のインフラだと考えます。やはり皆さんはコンベンションセンターの整備によって重大な責任と大いなる可能性というものを、これから担っていく。背負ったんだという意識を今日から持っていただきたいというのが、私の今日の重要なメッセージです。

コンベンションによって地域のブランディング効果を高める

 何のためのコンベンションか。もう一度皆さんと整理してみましょう。まず第一に滞在型交流行為というのはコンベンションを日本語に訳した言葉ですが、要は交流目的を達成するために、滞在型で交流を行っていく。それによって生じる消費効果、例えばホテルにお泊まりになるとか、展示会や会議の中でさまざまな飲食が伴ったり、あるいは交流行為によって生まれるさまざまな遊興、その他、お土産が必要だとか客の単価が高い。一般の観光客に比べて滞在日数が長いというだけではなく、付加価値が高い。仕事で参加する人たちが大半で、手土産も会社の方、取引先、家族と3倍買ってくれる。いろいろなことを含めてこうしたことが言えると思います。
 消費効果が上がれば上がっただけホテルや輸送業だけではなくて、そうした産業と雇用につながっていく。同時に地元に落ちてくるだけではなしに地域からさまざまな国際的、あるいは全国的な情報が発信される。東京の新聞にも北海道の新聞にも皆さんの町で、あるいは東部地域コンベンションセンターでこういう学説が発表されたと。これはインターネットの時代においては非常に重要な、地域の知名度を上げていく大事な要素だと思います。
 2番目の地域ブランディング効果にもつながります。今こうした時代に地域の情報を常に発信していく。あるいは地域ブランドに個性を持たせていかないと、なかなか世の中で沼津は勿論ですが東部地域全体の市町村のことは全国に知れ渡らない。あるいはそれ故に観光の集客力もままならないということもあるでしょう。そういう意味で地域のブランディング効果を高めていくこともこのコンベンションによって得られるでしょう。

滞在型のマーケットに徹底的に集中すべきだ

 私が申し上げたいのは、東京と完全にコンベンション戦略としては区別化をしていくこと。逆に言いますと東京のコンベンションの弱みを皆で握っていこうということです。
 まず1番目、滞在型交流は相思相愛でなければ困難です。滞在型、とくに2日も3日も4日も滞在して行われるコンベンションがいまや東京では非常に難しい。コスト面でも場所を探すのも難しい。ですから何が求められているかというと、東部地域に2泊でも3泊でも4泊でもしていただけるような滞在型のマーケットに皆さんは徹底的に集中すべきだ。これが1つです。
 それから学会は土、日曜日対応です。私ども学会のお相手を随分しておりますが、いまや土、日曜日でないと東京のお医者さんも地方まで行けないのです。大学も大学病院も独立法人になった。あるいは県立病院もそうかも知れません。一人ひとりのお医者さんの負担が高まってしまってなかなか普段、ウイークデーに医学会で県外に行くということが出来なくなっている。そうすると折角ですから出張も土、日対応で楽しく行こうよということになります。
 九州の大学の若手の先生方は意図的に冬でしたら宮城県の座王地域に研修会を設けて、そこで自分たちの仲間と会ってスキーもやる。若い世代ですから家族まで呼んでしまう。こんな学会が開かれています。

中規模な大会や学会が一番重要な標的市場

 全国大会になると3千人、1万人の大型の大会があります。これは東京や京都や福岡ということになるでしょう。でも、適正な規模であれば、コンベンションの担い手たちが望んでいるニーズに応えるのは東京ではあり得ないのです。明らかに地方です。とくにリゾート性をもった東部地区、ここが一つの目玉なんだと私は思います。
 そして東京は今や地域らしさは一切なくなっています。東京イコール世界ですから。そして東京のホテルはどこも高級に見えるけれども全てが同じです。企業のコンベンションの担当者とお話しするとホテルのつまらなさを指摘します。ですから東京と同じホテル、同じ宴会場で同じ洋食でというのでは意味がないのです。明らかに地域らしさを出していこうと。
 今、静岡というと静岡茶を使った静岡の味とか、静岡おでんとか富士宮の焼きそばとかいろいろなものが宴会場にも出てきますが、もっと広い意味で、皆さんの地域の創意工夫で、発見をしてほしいのです。
 100人、200人、300人というあたりの中規模な大会や学会やその他諸々。こうしたものが恐らく皆さんの一番重要な標的市場になってくるでしょう。また、そうしていかないと東京との差別化が図りにくい。もちろん今回の会議場は1,000人以上の人が入りますし、下手をすれば5,000人でも入れます。いろいろな使い方があると思います。

大切な地方都市ならではの心温まるおもてなし

 もう一つ申し上げれば、コンベンションの先進国のアメリカでなぜ開催地ナンバーワンがニューヨークやシカゴではなくサンディエゴか。カリフォルニアの南の町です。退職をしたら一番アメリカで住みたい町などという評価でいつも上がってくる町です。
 そしてテキサス州のサンアントニオ。テキサスならではの大らかな温かいおもてなしと同時に運河のある町、そこにコンベンションセンターがある。
 あるいは大水害に遭ったニューオーリンズ。ジャズの町であったり、アメリカの南部の非常に心温まるおもてなしの町とか、いろいろな評価はあると思いますが、要はどの町も、その町ならではのおもてなし、そして地方都市ならではの心温まるおもてなしがあります。それぞれの町に料理はもとよりお土産から様々なエクスカーションがコンベンションにはありますが、旅であったり、地域のアトラクションであったりとか、いろいろな面で独自性を持った町です。そういう町がコンベンションの利用者から見て全米の中でも最も高い評価を受けている。これが大事なところだと思うのです。

その地域ならではのおもてなしが満足度に

 静岡県はコンベンションの誘致推進ということで今、さまざまな勉強会をやり、その中で調査もやっています。静岡県立大学の岩崎教授と一緒に私もその会に入らせていただき、一緒に論文を書かせていただきました。簡単に申し上げるとコンベンション開催都市に対する顧客満足度モデルということで、コンベンションを開催した町の満足度とお客さまがその町に滞在して得た満足度。逆に何に不満に思えばその町が嫌だと思うか。さまざまな指標を用いてアンケート調査をしました。
 この5、6年で、学会であったり国際会議であったり、あるいは企業、団体の大会であったり、数千サンプルを調べました。結果、普遍的な結果が出てきました。結局、「ならではの」食とかお土産との出会い、もう少し広げれば「ならではのおもてなし」と言えるかも知れません。それができた、それに満足したと思われるコンベンションの参加者は、その開催都市、町そのものへの満足度も高くなる。逆にそこで、ならではのおもてなしに出会えなかったお客様は満足しなかった。この相関が非常に強く出ました。もちろんその下に観光の魅力、コンベンション会場の評価であったり、その会場への交通アクセスであったりということも相関が出ています。
 お客さまにとってはその地域ならではのおもてなしが、結果として開催した町への満足度になっている。これはすごく大きな成果でした。

満足すればリピート意向、他者への推薦意向も高まる

 このアンケート調査では、例えば東部地区ならではのおもてなしに出会えたと評価をいただければ、そのお客様は今度また会議で来たい。あるいは仕事でもう1度来てみたい。あるいは観光でもう一度来てみたい。こうしたリピート意向も高まるということが数千サンプルのアンケート結果から出たのです。これは大事です。
 つまりコンベンションセンターでコンベンションをやっていただき、満足していただいたら、この次は仕事や会議や家族観光で来ていただける。そこにもつながっている。これがどれだけアンケートの精度を高めていっても必ず出てくるのです。
 それから他者への推薦意向、つまりその会議でこの町に満足したと考えたお客様はほかの会議や会社やいろいろな所に対して、「あの町でやるといいよ」という推薦意向まで高まる。逆はまた真なりです。そういう気持ちにこの町でなれなければ、もう二度とそういうところは推薦しないし、リピートもしない。
 そんなことまで分かってきた中で「ならではのおもてなし」とは何だろうかということを皆で更に考えていきたいです。
 コンベンションの滞在型というのは、最初に全体会議があって、それから様々な分科会があったり、グループディスカッション、そしてレセプションやアトラクション、あるいはエクスカーション。このエクスカーションというのは単なる観光旅行という意味ではなくてその業界に、あるいは学会にかかわるような産業観光であったり、工場視察であったり、そういうことも含めてエクスカーションといいます。レセプションだってさまざまの「ならではのもの」があるだろうと思います。じっくりと主催者が成果を上げようと思えば、どんなに少なくても1泊2日のコンベンションが求められるのです。

「もてなしアイデアコンテスト」を実施

 静岡県は、静岡ならではの演出で成功した事例を掘り起こして、各ビューローとしてこれを取り込んでいただけるよう努力をしてきました。
 一方で、市民を巻き込もうということで、この一連の作業の中でコンベンションの「もてなしアイデアコンテスト」を実施しました。静岡ですから1回目は静岡茶というものを基本にしてどんなアイデアが出るだろうかと実施しました。
 結果として当選された皆さんは遠来のお客さんをおもてなしするホテルの方たちでしたが、お茶を使ってさまざまな滞在型の交流の演出をされていました。例えばお客様が入ってこられるホールの手前で静岡茶を香炉でたいて非常にいいアロマを発するとか、いろいろお茶の使い方を披露してくださいました。
 やはり県外の人間から見るとハッとするような、静岡県内のさまざまなもてなしがあるんです。この目的はその地域でコンベンションをやって「ならではのもてなし」の満足度が高まれば、またそのまちに来てくださるリピート効果や推薦効果が高まる。先ほどの調査結果を裏付けにして、ますます地域の知恵を発掘していこう。そしてその知恵を実践できる人を発掘していこうということでやってまいりました。

2つの大賞

 伊豆の国市で開かれた「パン祖のパン祭」。パンを日本で初めて作った町として全国区の子供たちのパンを作る大会を自ら企画して実施しました。地域で縁のある歴史的なイベントだからこそ、この町ならではのおもてなしを全部この中に込めているのです。それが大賞の評価の要因でした。
 もうひと1つの受賞者は一昨年、浜松市で学術会議を開かれた大学の先生です。まさか法学部の大学の先生がコンベンションで表彰されるとは思わなかったということです。浜松ですから音楽のレセプションをパーティーで披露したり、浜松ならではのさまざまなもてなしを学会としてお考えになったんです。それが大変に評判でした。われわれ大賞を審査する側にとってもものすごく感銘を受けるような内容でした。
 そういうことが静岡県内の各市町村に眠っている。あるいはそれをコンベンションに活用して下さっている方がたくさんいらっしゃることが、まだ3年目ですが、このもてなし大賞を通じて見えてきたわけです。
 こういうことがコンベンションセンターを生かしていく。このまち全体を、地域全体を生かしていく1つの方法になっていくんじゃないかという事です。

地域PCOの時代

 そういうことをいろいろやっていく中で、実は私どもは地域PCOというものを全国で提唱してまいりました。これは「パン祖のパン祭」や浜松の先生のように結果としてコンベンションを、その中で地域ならではのもてなしを実践していく専門家というか、志を持った人たち、そういう意味合いです。
 コンベンションセンターは管理運営の人たちが頑張ればそれで済むかもしれないけれど、今申し上げているような「ならではのおもてなし」によるコンベンションのまちの満足度を高めるのは、もう市民の志です。そういう人たちを1人ずつ探していこうということで、私どもは地域PCOの時代と申しています。
 では、PCOって何か。プロフェッショナル・コングレス・オーガナイザー。本来はコンベンションの裏方、事務局ビジネスを代行するサービスとお考えいただければいいかと思います。そこと旅行代理店業者の皆さんが組んで輸送、ホテルの部分をやっていただく。そうした職能、専門職が成り立っているわけですが、この地域の部分はなかなか見えてこないんです。見えてこないと他から専門家が入ってきて食い荒らして帰ってしまうんです。これから必要なのは、この地域PCOで、地元にお金を落とす仕組みを作るための人材です。

新潟の事例

 1つ事例を紹介しましょう。新潟は平成15年にコンベンションセンターができ、初めてホテルと会議場と展示場が一体になりました。それを作るにあたって地元の人たちが地域のPCOを何とか立ち上げて、自分達でこのセンターのお披露目、そのイベントをきちんとやっていきたいということで、医学系の学会を新潟に誘致しました。
 誘致が決まると同時に新潟大学医学部の先生方と一緒になりまして、地域のボランティアで、その方たちが必死になってそのコンベンションを支えた。こういう大型の大会になりますと中央の大手のPCOという専門職が必ず一緒に入ってくることが多いです。ですがその方たちの本来得意とする分野と地域ならではのもてなしというものが、相反する部分があるんです。逆にいえば地域の方たちにしか分からないノウハウや人脈というものについては地元でやっていこうと。この時にはちゃんと新潟大学の先生が中央に対して「新潟ならではの部分は新潟でやります。この部分から向こうは中央でやってください」というようなことまでピシッと言っておられる。
 この時は佐渡の有名な和太鼓の演奏集団「鼓童」、彼らは世界中を巡っていましてなかなか新潟で演奏してくれないんですが、地元が誠意をもって当たった上、この学会のための記念演奏会をコンベンションホールでやっていただいた。学会に合わせて「鼓童」のスケジュールを変えていただくという地元ならではのネットワークを生かし、あるいはこの学会のために先生と地元のPCOの方々が雪中貯蔵米という魚沼産の「コシヒカリ」をとくに雪の中で寝かせることでうまみを出す、こんな最高級の地元魚沼産のコシヒカリを使い、四季折々の海、山の幸を込めたおにぎり弁当「ようきなさった新潟弁当」を作りました。駅前で売っているお弁当を出していれば、この会議ならではの評価は半分に減ったでしょう。あるいは有名な酒蔵が集まった新発田市のオリジナルな酒蔵巡りをこの学会のために地元の関係者を含めて提案をした。こういうことが受けて、「新潟でしかない、新潟だからできる精一杯のおもてなし」をコンセプトにまさにお客様の満足を得たということです。

コンベンションの戦略の基本

 実は静岡市もコンベンションビューローが中心になり、静岡ならではのお弁当をつぎつぎと開発し、いまや数十業者が提案をしていると思います。値段も大事です。新たに作ったからと言って2千円、3千円では誰も買ってくれない。学会や大会弁当と言えばお茶つき千円。こういう価格と「ならでは」をどこまで折り合いをつけていくか。東部地区でも、ぜひコンベンションセンター開業前に十分に皆さんで知恵を出し合って練り上げていただきたい。
 静岡では弁当に続いて静岡ならではの交流パーティーを入れようと、ホテル、宴会場と協力して新たなものが生まれてきました。県内でもこれからは競争です。静岡や浜松のような強いライバルもいる。しかし東京に1番近い東部地区です。頑張ればいくらでも材料はあるでしょう。そして一番リゾート性を持っているかもしれません。
 さあ、東部地区ならではの、あるいは伊豆ならではの、なんでも結構です。生活の知恵、もてなしの心、歴史や風土、産業と文化、そういうものをコンベンションの交流の舞台、道具、台本として提案実施していく人たち、そういう人たちやそういうことを業とする様な企業、ぜひ皆さんの懇話会の中からも出てきていただきたいし、これが結果としてコンベンションセンターの繁栄と東部地区全体のコンベンションの戦略の基本になってくるということです。

コンベンションビューローに魂を入れるのは皆さん

 東部地域の強みという意味では新会場ができる。これはお客様にとっては新しい会場でやってみたい。企業の立場、団体の立場、みなそうです。でもそれは初年度だけです。その方たちをどうリピーターとして囲い込んでいくか。
 それからコンベンションセンターを新たに作る地域はこの町と違って実績がないですからみんな苦労してしまいますが、皆さんはキラメッセ沼津の実績がある。日本一稼働状況のいい展示場、この良さは当然生かしていかなければいけませんが、そことさまざまな複合コンベンションセンターとなった時の矛盾、いろいろなことが起きて出てきます。
 皆さんの手によってコンベンションビューローが設立されました。これが一つ強みになります。しかしコンベンションビューローは何でもやってくれるオールマイティーではないのです。そこで3人、4人、5人の方たちがやってくださることは皆さん方をつないでいく窓口、コーディネーターの役割です。
 コンベンションビューローができると、うちの会社のために、地域のためにコンベンションビューローが何かをしてくれるんじゃないかと期待ばかりで依頼心が起きてしまって、結果として3年、4年で賛助会員が抜けていくような馬鹿げたことがよくあります。コンベンションビューローは皆さんが魂を入れるんです。決してコンベンションビューローの常駐の数人の方がすべてを、何かをやってくれるという期待では先は持ちません。
 それからがんセンターの先生方の「学会を持ってきたいが、今の施設ではできないじゃないか」というご要望に応えられる。これは素晴らしいことです。世界最先端の医学、技術といったものがこれからこの東部地区に集まって議論され、新たな学説や技術が発表されていく。それからファルマバレー構想、こうしたものを推進していくために、これから逆にいえば世界中から知恵者を集めたり、専門家を集める道具としてコンベンションセンターを使っていただければいいんです。
 コンベンションと地域の産業活性化ということでは、今、日本全国、あるいは世界中で新たなテーマになってきています。シンガポールのような、アジアの先進国では、シンガポールの新産業をこれからどうしていくか。それを推進していくためにはコンベンションで、その新産業をけん引していくような人々を1人でも多く集めることだ。そして議論し、そこから新たな説を発してもらう。そういうふうに言っています。決してコンベンションに来た方たちから滞在費を落としてもらうことだけにコンベンションの効果を求めないことだと思います。

東部地域全体の総意と創意、そして市民の本気度にかかっている

 さて東部地域の弱みも当然あります。空港の問題は別としても、新幹線で三島乗り換えだ。静岡や浜松と比べたら、その部分をどうやって今度は心理的にといいますか、この町にアクセスしやすいようにして差し上げるか。
 私は今日も小田急のロマンスカーで沼津に参りました。これからもっと東京圏の人間が全国大会をやれば、あるいは東海地区、関東地区大会をやれば、たくさん来るわけです。もっと小田急のロマンスカーも使ってもらうように仕組むべきです。もっと沼津の良さというものは、これから外に向けて交通アクセスも含めてアピールしなければいけないんです。
 自分の身の丈を超えすぎた大型の案件ばかりに取り組むことは、皆さん自身も体力を消耗してしまいますし、むしろ先に申し上げた100人、200人、300人、大きいものでも500人という適正規模の、そして「ならではのもてなし」が、十二分に発揮できる様なコンベンションの誘致が大事だろうと思います。
 そして滞在に必要な都市の魅力の部分については、まだまだこれから必要な都市整備、都市の魅力づくりということがあろうかと思います。
 弱みというものは如何様にでも皆さんの知恵と創意で変えられるだろうと思います。やはり問われているのは東部地域全体の総意と創意、そして市民の本気度、ここにかかっているというふうに思っています。
 これがコンベンションセンターの開業までに十二分に議論され、それをまたけん引していく代表者といいますか、志のある人間、そういう方たちが動いていかないとやはりコンベンションセンターに依存しきった箱もの事業になってしまう。決して皆さんはそういう風にはしないだろうし、このサンフロント懇話会があるからこそきっとこういった方向に皆さんが引っ張っていって下さるだろうと私は期待しています。
 
< 略 歴 >

◇渡辺 厚(わたなべ・あつみ)
(株)情報伝達研究所代表取締役
慶応義塾大学理学部修士課程修了。昭和52年UG都市設計入社、平成元年まで同社取締役。平成2年(株)情報伝達研究所を設立し現在に至る。平成15年から静岡県コンベンション誘致推進事業アドバイザー。平成19年から静岡県「コンベンションおもてなし大賞」審査委員長。平成20年、神戸市コンベンション経済効果研究会委員。東京観光財団コンベンションアドバイザリボード委員、千葉県幕張メッセ懇話会委員。平成12年、東京工業大学工学部社会工学科非常勤講師。平成13年、立教大学観光学部兼任講師(コンベンション産業論)。
 


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