サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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活動内容
平成21年度の活動方針

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第15回東部地区分科会 パネル討論  7月27日開催
「東部地区におけるコンベンション機能の促進」
第15回東部地区分科会 パネル討論

◆コーディネーター
青山 茂氏 ((株)シード取締役副社長、サンフロント21懇話会TESS研究員)

◆パネリスト
宮川 幸司氏 (日本大学短期大学部教授)
後藤 全弘氏 (沼津商工会議所会頭、静岡県東部地域コンベンションビューロー会長)
森口 巳都瑠氏 (日本実務出版(株)代表取締役)
福田 昌明氏 (近畿日本ツーリスト沼津支店長)


使う側が自由に選べる時代に

青山 '94年にコンベンション法が施行されて当時42都市が国際会議観光都市に指定されました。今は51都市になったと思いますが、実際に大型のコンベンション施設は全国で70カ所を超えており、公共の会議施設を見ても全国で850カ所、コンベンションビューローも70カ所を超えており、同時通訳などが可能な会議施設も60カ所に届こうとしています。そう考えますと全国津々浦々で競合するということになります。それだけ施設があるということは、使う側が自由に選べる時代になったということです。
 まず後藤さん、東部地域コンベンションビューローの代表として、コンベンションビューローとはどのようなものなのか、どういった活動をめざしているのか、後藤さんがお考えになるコンベンションセンターの東部地域に及ぼす影響、現状、これからの課題についてご意見をいただけますか。

6市4町が参加する東部地域のコンベンションビューロー

後藤 全弘氏

後藤 全弘氏
後藤 東部地域のコンベンションビューローは、平成19年11月に設立総会をしました。構成は沼津市、三島市、裾野市、御殿場市、伊豆市、伊豆の国市、そして清水町、長泉町、函南町、小山町の東部の6市4町です。メンバーとしては6市4町の行政、観光協会、商工会議所、商工会からなる広域の組織となっています。目的は、まず東部地域の連携、そして東部地域の活性化のために交流人口を拡大しようということ。一番大きな仕事としては、コンベンションの誘致と支援活動というようなことを、少ないメンバーですがやっております。何としても東部地域を、この素晴らしい観光資源を全国にPRしていこうと考えながら進めています。
 組織としては私が会長、栗原沼津市長、小池三島市長、伊豆の国市の観光協会の安田会長の3人が副会長、そしてアドバイザーの先生方が6人いらっしゃるんですが、そのトップは県立がんセンターの山口総長です。アドバイザーの方々にはコンベンションビューローの運営、事業、そしてコンベンションや誘客に関して専門的な立場からいろいろとアドバイスやお力添えをいただいております。事務局は沼津駅前に事務所を設け、市の職員3人が常駐しています。
 活動としてはコンベンションの誘致と支援です。これは目に見えた成果を上げていくのは大変難しいですが、昨年度は9件のコンベンションを新規に誘致することができました。中身は学会などを中心にしたもので、参加人数は50人から1,200人くらいの規模で、延べ7,000人ぐらいの宿泊客を呼び込めたと考えています。その会議、宿泊施設の紹介、関連業者の紹介、斡旋、観光モデルコースの紹介などの支援活動を行っています。
 一番の問題は、どのような方向を目指していくのかと、コンベンションの開催効果、地域活性化にどうつなげるのかです。
 まだ、コンベンションセンターが出来ておりませんので、今のところは誘致活動、支援活動が中心になっています。東部地域はまさにコンベンションを開催するには日本全国でもトップクラスではないかと考えています。恵まれた景観、観光資源、首都圏からの地理的な有利性、そしてファルマバレー関連の企業集積など高いポテンシャルがあります。
 これらを生かしていくために行政の枠を超えた連携や広域のPRなどが必要となってきます。非常に難しい問題は6市4町ということで、1つの市や町で完結できるものではなく、宿泊、観光などその町の特徴を生かした役割分担をしていくことが大事だと思います。多極分散型という言葉が出ておりますが、まさに各地の特徴、個性を生かした中で広域連携してコンベンションビューローを何としても成功させていきたい。
 幸い平成26年には沼津駅北に素晴らしい国際会議もできるコンベンションセンターができます。そして平成24年には今のキラメッセの跡に総合展示場として市民交流やいろいろな展示会、そしてスポーツなどができる素晴らしい環境を持った展示会場を沼津市がつくることが決まっています。そんなことで、時間的にも数年後ですので、何としてもこのビューローを成功させて、東部の活性化に役立てていきたいと考えながら進めております。

成功しているコンベンション都市は顔とか個性がある

青山 森口さんは、日本国内、海外のコンベンションに非常に詳しく、かつ東部地区のこともよくご存じです。ご経験から大型コンベンション施設が整備されることの効果と課題ということでお話しいただけますか。

森口 今、東部地区における明日の都市づくりが始まろうとしているというお話がありましたが、まさしく今、そういうところに皆さんは立っているのではないかという気がしています。
 コンベンションというのは都市づくりです。コンベンション施設のハードができて、そこに勝手にコンベンションが来て開催されるということではなくて、都市の未来像、都市の政策の中にコンベンションという機能をどういうふうに落とし込んでいくかというのがコンベンション施設を持つ都市の意味だと私は思っています。そういう意味では今、都市の未来に対する大きな可能性があるんだということを皆さんにまずご認識いただければと思います。
 成功しているコンベンション都市というのは、顔とか個性があるんです。顔とか個性がその都市の一つのブランドになっていて、都市の名前を聞くだけでイメージが出来て行ってみたいと思う。そこなら行きたいなと思うようなところなんです。それは基調講演にもあった「なら・では感」なんです。そうでなければ、日本では東京で、アメリカならニューヨーク、シカゴでやれば便利で効率がいいと思うのです。
 個性なりブランド、「なら・では感」をどういうふうに作っていくのかというと、まずは自分たちは何を持っているのか、自分たちのチャームポイント、自分たちの欠点でもいいんですが、そういったものを挙げてみて、自分たちのことをまず知ることから始まると思います。その上で、その資源をどうコンベンションの中に落とし込み、どう活用していくのかということを考えていくことが次の手段だと思います。
 新しいコンベンションセンターの概要が決定しているわけで、今度は何をしなくてはならないのかというと、都市の未来に役に立ってくれるコンベンションを誘致してくることです。例えば、東部地域、沼津であれば、ファルマバレープロジェクトがあると思いますが、先進医療とか健康産業というようないいネタ、それが市の考え方としてあるんであれば、それをうまく活用していく。そうするとコンベンションというものは世界中から人が集まります。それもトップの人が集まりますから、そこに照準を当てて誘致していくとファルマバレープロジェクトに必要な情報や人が自然と集まってくることになります。そうなってくるとネットワークやノウハウがどんどん蓄積されてくるので、企業もこの沼津に事務所を持ってここで仕事をしようということになっていく。そうすると企業がご自身で今度はイベントとかコンベンションを主催されるようになりますから、もっともっとそこに情報や人のネットワークやモノやコトが集積されていく。そうなってくるとこのテーマに関しては東京ではなくて東部地域なんだということになったらしめたものだと思います。ちょっと理想的な話をしていますが、そういった取り組みを信念と覚悟をもって是非、自分たちの未来ですから考えていただきたいなということが一つです。

稼動率が高いキラメッセ沼津の実績、ノウハウの検証を

森口 巳都瑠氏

森口 巳都瑠氏
森口 キラメッセ沼津という先行施設がありまして私も11年関わっています。「日本一親切で使いやすい施設」というキラメッセ沼津のポリシーがありますが、日本一と言っていいほど本当に稼動率が高い施設です。それはリピーターが多いからということで、そのリピーターはなんで支えられるかというと、満足度から支えられたリピーターなんです。この実績なりノウハウなりを是非、検証していただきたいというのが私が一番言いたいことだと思っています。
 都市の未来をちゃんと自分たちで見据えて、自分達がどう生きていくかというのを今、お考えいただくのが一番大事ではないか。それが最終的には皆さんに愛されるコンベンション都市になり、皆さんに利用されるコンベンション施設になり、都市にコンベンションが機能してくることになるんじゃないかと思っています。

青山 キラメッセの話が出ましたが、キラメッセ11年間で平均稼動率71%、リピーター率が69.1%です。実際にずっと黒字状態できております。累積1億7,600万円余の黒字を生み出している全国的にも稀有な施設であって、その成功体験をしっかりと引き継いでいくということがなければ今後の複合コンベンションセンターとしての戦略もないだろうということは私も同感です。

競争を勝ち抜いていくには地域ならではのもてなしを磨いて発信していくことが大事

青山 宮川さん、日本大学で教鞭を執られ、伊豆の観光振興に関してもNPO等で日常的に活動されているということですが、コンベンションの効果と課題ということでお話しいただけますか。

宮川 交流人口というお話がありましたが、交流人口の中心は観光客です。定住人口が減少傾向の中、短期間でもいいから地域に来ていただいて、いろいろな効果を発揮していただこうというのが交流人口ととらえています。その中心が観光客です。我々の大学にいる学生もそうなんです。三島キャンパスに4年間なり、2年間なり、滞在してまた帰っていくわけですが、滞在しているとき多少なりそこで経済効果を発揮して、あるいは交流効果を発揮して帰っていくということです。
 交流人口の中にコンベンションももちろん入るわけです。コンベンションを含む交流人口を増やすことによって、この地域に何をもたらすかということになります。その一番大きなものは経済効果ではないかと思います。経済効果が上がれば当然雇用も促進されるでしょうし、他産業への波及効果もあると思われます。
 もう一つ大きな効果が交流効果です。そこの土地に人が来ていただくということは相互理解につながり、人と人、企業と企業、組織と組織という交流効果が非常に高いと思いますので、これは推進していかなくてはいけない。そのためにコンベンションは大切な役割を担っているということになります。
 それからもう一つは、コンベンション効果といいますか、そういったものを永続的に維持していくことが大事だと思います。例えば観光白書で国際コンベンションはどれくらいアジアで開かれているのか見ますと、平成18年度の資料で、日本で開かれている国際会議は減ってきており186件です。逆にシンガポールは増えていまして296件です。シンガポールと言いますと面積は淡路島ぐらいで、人口は430万人です。そこと比べて、日本は差があり、いかに競争が激しいかということだと思います。シンガポールに次いで多いのは中国、韓国で、日本はアジアで4番目だそうです。そういうことで、いかに競争を勝ち抜いていくかでは、この地域ならではのもてなしを磨いて発信していくことが大事になると思います。

旅行業もコンベンション事業に携わっている部分が非常に多くなっている

福田 昌明氏

福田 昌明氏
青山 福田さん、複合型コンベンションセンターが東部地域にできることによって旅行ビジネス、仕掛ける側としてどの様な影響があるのか。それをプラスにするためにはどのような課題があると思いますか。

福田 旅行業は以前ですとバスや飛行機を使って1泊2日とか、2泊3日の旅行を皆さんに斡旋するというのが主な仕事でした。もちろんそれを中心にいまでも仕事をさせていただいていますが、全社的に考えますと、イベント、コンベンション事業に携わっている部分が非常に多くなっています。うちの会社も名古屋、大阪、広島、仙台など各支店の名前にイベント・コンベンション支店という名前をつけさせていただいており、地域のイベントのお手伝いをさせていただいております。これはイベントを誘致するということもありますが、皆様がご苦労される宿泊の手配、輸送、食事、そして駐車場の手配、警備員の手配まで旅行会社で準備しています。
 今回、本格的な複合コンベンション施設ができるということで、沼津も気候、景色、食、そういうものに関しては恵まれ、アフターコンベンションについてこの地域は圧倒的に有利な部分で、大きな期待があります。キラメッセの稼働率がナンバーワンという実績もあります。
 去年4月から来年2月までに24件、この地域でコンベンションが計画されています。この数字が多いのか少ないのか分かりませんが、個人的には非常に多いと思いました。この中で4つ医療関係にかかわっているイベントが計画されています。これはがんセンターがあることで誘致されていると思いますが、医療関係というのは非常にイベント、コンベンションを行う業界でもありますし、ファルマバレープロジェクトとつなげて有利なことではないかなと思っています。
 非常に競争相手が多いという指摘がありましたが、これは滞在型のコンベンションに絞っていったり、あまり大きなものを狙っていったりしなければお客様の方も、この地は静岡県のリゾートというイメージもあると思いますので、十分それで傾斜販売していけば大丈夫かなと思います。
 もう一つ大事なことは6市4町のコンベンションビューローという形を取っておりますので、全体的に協力をし合って、最終的に皆で利益を分担できる方向で考えていきませんと、問題のある施設になってしまうのではないかなと思います。

同じ方向を向いて行政や企業、団体が勉強していくことが大切

青山 後藤さん、広域的にまとまっていくために何をしていったらいいのでしょう。

後藤 市と町が多いんですね。それだけに魅力も大変多いんですが、同時に連携の難しさもあります。それぞれが抱えるコンベンションの情報もなかなか伝わらなかったり、施設の申し込みにしても利用条件など各市や町の施設によってまちまちだったり、非常に難しい問題があるのですが、コンベンションに対する認識を深めて、同じ方向を向いて行政や企業や団体が勉強していくことが大切かなと思います。観光面で広域連携をしていくと。そして一つの取り組みの大きな力にコンベンションビューローがなるのかなと感じています。
 今日はたままたま三島の会頭もお見えになっており、さっきの渡辺先生のお話を聞きながら「早速、話し合おう」というありがたいお話をいただきました。観光面での広域連携をもとに伊豆の一本化を果たすということは、このコンベンションビューロー、あるいはいろいろなコンベンションが大きな力になると思っています。それぞれ何をターゲットにしていくのか。そしてその意思統一と具体的なビジョンが必要だという感じがしております。
 大変、大きな目玉が東部にはあります。これががんセンターを中心にしたファルマバレープロジェクトではないかという感じを持っています。東部地域のコンベンションビューローでは昨年度、がんセンター関係で6つの学会やセミナーについて支援をさせていただきました。そのいろいろな会議をきっかけに地域の企業の連携や新たな企業誘致が進んだりしました。また、昨年、全国のがんセンターの総長、病院長の先生が集まった大会で、がんセンターの山口総長の発案で、懇親会に静岡ならではのB級グルメの紹介をしようと三島コロッケ、裾野の水餃子、静岡おでん、富士宮のやきそばを集めて大変好評だったと聞いております。まさに食の魅力をキーワードにした東部だけではなく、静岡県全体をアピールできたよい例ではないかと考えております。そういう意味ではアイデアと連携が大切だということで、これをきっかけに交流人口の拡大ということを私たち商工会議所としても早速、三島の会頭と勉強して参りたいと思っています。
 そしてコンベンションの中で一番大事なことは人とモノと、そしてそこに情報が集まる。情報が集まって大勢の人が国内外からこの地域に来ていただけるとアフターコンベンションということで滞在型になっていくのかと。そしてお土産などいろいろな消費に使うお金、これはある資料によりますと普通の観光客が使うお金の2倍使うという事があるそうです。そういう意味でも大変な経済効果をもたらしてくれる。
 東部地域はなかなか広域連携が進みませんが、商工会議所、商工会を通じて連携を進めていく努力をしていきたいと思っています。
 県でも昨年4月から観光局ができ、国でも観光庁が出来て、日本全国、観光というものに力を入れています。そういう中では東部地域も富士山、温泉、海の景観、緑、それに豊富な食材、さらに遺伝学研究所とか多くの企業の研究所、開発部門がファルマバレーに関連したいろいろな集積ができております。そういう意味では何としてもこのビューローを成功させて、それを一つの起爆剤になるような、東部地域のいわゆる観光中心地と経済を中心にした連携が進まないかなと思っております。これを一つのきっかけに東部地域がまとまって広域行政にも発展していけば大変素晴らしいことだと思っております。

札幌、沖縄の取り組み

青山 森口さん、全国的に地元への開催サポート、事業者の動きについて何かあればお話しいただけますか。

森口 例えばNPO法人の札幌コンベンションネットワークという会がありまして、かなり熱心に活動をされています。今はグリーンコンベンションというのをテーマに掲げて、自分たちがコンベンションと言いながら環境にどれだけ貢献できるのかということで、先般のサミットでもカーボンオフセット事業という仕組みを彼らが作りまして、昨年は12件で10ヘクタールぐらい植林する実績をお持ちだと聞いています。いまでは大きな動きになっています。
 もう1件は沖縄の例ですが、パシフィコ横浜という横浜の大きなコンベンション施設で働いていたスタッフの方が沖縄でディストネーションの紹介をする会社をつくって活動を始められ、その方が中心となって「明日のMICE(マイス)を考える沖縄の会」をつくりました。 MICEというのは、Meeting (会議・研修など)、Incentive (報奨旅行・招待会など)、Convention,Congress (学会・協会など)、Exhibition,Event (展示会・大会など)の4つの頭文字を取った造語ですが、自分たちのスキルアップとともに自分たちに足りないものは何なのかをかなり真剣に勉強しており、この間はホテルの宴会場すべてを沖縄にしてしまう、そういうテーマパーティーをみんなで考えまして、それをパッケージ化して販売できるような仕組みづくりなんかもしています。ここでもそういう取り組みが今後は必要なのかなと思います。

旅行で受けた感動というものは心に深く残るもの

宮川 幸司氏

宮川 幸司氏
青山 コンベンションというのは、一種のまちおこしといいますか、地域おこし的な要素が強いということになるかと思いますし、まちづくりには情熱をもったいわゆる“気違い”が必要だと言われています。コンベンションの推進にあたっても同じだということになりますか。宮川さん、さきほどは地域ならではのおもてなしは必須であるということですが、宮川さんの地域ならではのおもてなしとは何でしょう。

宮川 他の地域との差別化をしなければいけないということがあると思います。その中でこの地域で考えたとき、富士、箱根、伊豆という素晴らしい環境の中にあるわけです。アフターコンベンションということで考えた時は、他地域との差別化ができる場所だと思います。
 例えば、2泊、3泊のコンベンションが行われる。最後に温泉につかって、おいしい旅館の食事を食べられるというのは他にないものではないかと思います。コンベンションの種類によっては夫婦同伴で来るとかファミリーで来て、会議に出席する方以外の方は地域の観光をするということも結構あります。この地域はそうした時、たくさんのメニューを用意できると思います。他との差別化が図れるところではないかという気がしています。
 もう一つ、残念なのは夜の過ごし方です。どんなのがあるのかと考えたとき、海外に行って会議に参加して夜はショーを見たり、特別な料理を食べに行くとか、船があるところですとディナークルーズ。そういったものがありますが、この地域にそういったものがあるのか。ちょっと淋しいものがあるという気がしています。そんなところも工夫されるといいのかなと思います。
 そして企業コンベンションの場合は参加者の懐に余裕がある方が結構多いと思います。あとはこの地域に来ていただいた方にどれだけのおもてなしが出来るか。つまり満足して帰っていただけるかということを考えることでしょうか。ホスピタリティーという言葉でよく言われますが、その代表がディズニーランドとよく言われています。お客様に楽しんで頂いて、感動して頂いて、またリピーターになって頂く。あそこのリピーター率は98%と言われています。
 小さな例でいいますと、ディズニーランドにかかっている音楽、午前中、お昼ぐらいにかかっている音楽はわりとマーチ風で心浮き浮きとさせ、夕方、帰る時はちょっと悲しめの音楽が流れています。気が付かないように、もう1回来たいなということを感じさせる音楽をかけています。そういった面までのホスピタリティー、ハードの面でもソフトの面でもたくさんあるんですが、そういったことをこの地域でも考えていくことも大事だと思います。
 その旅行で受けた感動というものは心に深く残るものですから、そういったものを出来るだけ与える。与えるためにはどういう事をしたらいいのか。そういったものも考えていくことが必要かなと思います。

健康をキーワードに

青山 宮川さんがお勧めになるジス・イズ・東部となるとなんでしょうか。

宮川 がんセンターの山口総長が提案された「かかりつけ湯」事業があります。伊豆地域の活性化は健康というものをキーワードにしようと。そして昔のように多くの人に来ていただこうというのが「かかりつけ湯」事業です。今、伊豆全域で50軒の宿が加盟しまして健康プログラムを考えたり、健康食も旅館さんの方で出したらどうかなということもあります。それから伊豆には素晴らしい環境、自然があります。そういったものを癒し環境としてもっとアピールしていこうと。隠れたものがたくさんある。そういうものをもっともっと見いだしてたくさんの人にアピールして、伊豆に戻ってきていただこうというのがかかりつけ湯事業なんですね。私の方で事務局をさせていただいていますが、そういったものも材料になるのかなと思っております。

圧倒的な富士山の存在感
 
青山 福田さん、コンベンションを持ってくる側として地元はこうあって欲しいという地元に対する要望、また選んでもらう場所になるための差別化の課題をお聞かせください。

福田 器が出来ても選ぶのはお客様ですから、どこに沼津に来るメリットがあるか明確に話をしなければいけないと思います。ここが一番大切なことだと思います。
 観光のことから考えれば、日本国内の方も海外の方も富士山の存在感が圧倒的です。これは必ず使わなければいけないと思います。それからおもてなしという言葉が出ていますが、冬は富士山が見える確率が非常に高いけれども春から夏にかけてはなかなか見えない。そういうこともインフォメーションしなければいけないと思います。富士山が見えない春だったら桜エビが食べられるとか、細かいインフォメーションが必要だと思っています。
 コンベンションセンターがどういう名前になるかわかりませんが、どこからきてもわかるようなネーミングにすることも考えないといけないと思っています。そういうことがしっかりしていければ、最終的にはリピーター、口コミがあれば黙っていてもお客様は来ていただけると思います。初めは大変だと思いますが、みんなで知恵を出し合って、そういうような事業に仕上げていくということが大切なことだと思っています。

1人でも多く賛助会員としてご協力を
 
青山 後藤さん、地域を高めていくという中で、今後、コンベンションビューローはどのような役割を担っていこうかと思われますか。

後藤 コンベンションセンター、コンベンションビューローも活力のあるまちづくりのための社会資本の一つではないかと考えております。その理解と活用を図るということが必要かなという感じがしております。そのためには地道な活動の積み重ねと、また予算の問題もありますので、今日おいでの皆さんに1人でも多く賛助会員としてご協力をお願いしたい。これから法人化などによる体制の強化も考えていかなければいけないと考えています。
 そしていろいろな機能を十分果たしていくために求められるものが高い情報の収集・発信能力、そしてコンベンションに関するノウハウの蓄積とその人材の育成、そして医療機関、研究機関、大学、地域の企業、あるいは団体、キーパーソン等の強い連携と社会的認知度の向上などを進めていかなければならないと思います。
 東部地域には恵まれた景観と観光資源、そして首都圏からの地理的な優位性もあります。ファルマバレーの関連企業もあります。この高いポテンシャルを最高に生かしながら進めていくわけですが、これらを生かすためには行政の枠を超えた連携や広域なPRも必要となってきます。それは1つの市や町で完結するのではなく、会議や宿泊、観光などそれぞれの町の特長を生かした役割分担というようなことを考えながら、各市、町の役割分担を大切にしていくことが一番重要だと思います。
 いずれにしましてもコンベンションセンターが数年後に出来るわけですので、そのコンベンションセンターの活用、そしてそれを活用したまちづくりなど、いろいろ皆さんと共に考えていきたいなと考えています。

4つの学校が集まり、まちづくり団体、学生たちと一緒にやっていく集まりがスタート

青山 茂氏

青山 茂氏
青山 人づくりのプロでいらっしゃいます宮川さん、例えばアメリカのコンベンションセンターでは大学生がそこで働くと単位になるとか、そのような仕組みもあるようですが、大学のコンベンションセンターにおける人材力といいますか、人づくりにおける大学の役割とは何でしょうか。

宮川 地域の大学としては非常に大きなものを背負っていると思っています。ここにコンベンション機能が出来るということであれば、積極的にあるべき役割を果たしていかなければならないと思っていますし、現実に各市、町でまちづくり団体が結構あります。そこに学生が集まっています。ただ今まではそれぞれの市、町での活動でしかなかったのですが、それを今度はもう少し広いエリアで協力し合っていこうという話がありまして、大学も協力しようということで私どもと東海大学、富士常葉大学、長泉高、この4つの学校の有志の先生たちが集まり、まちづくり団体、学生たちと一緒にやっていこうという集まりがスタートしました。
 これからそれを広げていこうと。やはり地域の魅力を高めるためには1つの点よりもある程度のエリア、面で考えた方が効果がありますので、そういったことで地域に貢献していきたいと思っています。それがコンベンションに結びつけばいいなと考えています。若い人の力は、地域を刺激してくれると言われていますが、若者を育てるという意味でわれわれの担っている役割は大きいのかなと思っています。

青山 森口さん、どこかで学生、大学も一緒になってコンベンションを支えるという事例はありますか。

森口 具体的な例は存じ上げないんですが、そういった何かの会を作る、それがコンベンションビューローなのかわかりませんが、そういう学生さんを受け入れる仕組みを作ってあげれば必ず学生さんはそこに参画していくと思います。ぜひそういう仕組みづくりをお願いできればと思います。
 
セールスに行くことが必要
 
青山 コンベンションは東部地域活性化のエンジン役ということで、そういう仕組みも併せて作り上げていきたいなと思います。福田さん、最後に一言いただけますか。

福田 沼津にこういう施設ができるということがまだほとんど認識されていないと思います。今回、こういう機会を設けて頂いた事で変わってくると思いますが、1つの地方都市でいくら発信しても限界があると思うんです。こういうことは旅行のエージェントや広告代理店とか、そういうところが扱っていることが多いので、そういうところに沼津にこういう施設ができるんですよということをセールスに行くということは必要かなと思います。
 例えば河口湖町ですと町長さんが直接エージェントの支店などに営業に行って、今かなりのお客様が来られるようになりましたが、そういうことも1つひとつ必要ではないかと思います。最終的には口コミとリピーターでたくさんのイベント、コンベンションが行われることになって地域のいろいろなところに寄与できることになれば一番いいんじゃないかなと思います。
 今回、こういう施設が作られるということで私たちもそうなんですが、1つの旅行商品をつくってしまうと、そこで満足してしまって後は自然に集客できるという錯覚があります。是非、コマーシャルといいますか、イベントやコンベンションを考えている人たちをマスコミを通じて記事にしていただいたりすることが必要だと思います。できる前の情報発信、それからイベント、コンベンションが開催されれば、そのあとの記事、ニュースなども使って、圧倒的な効果があると思いますので、ぜひ協力し合ってやっていけばと思います。

キーワードはファルマバレープロジェクト
 
青山 まだまだ周知不足ということで、実際、キラメッセを開館する時もSBS、静岡新聞さんには大変なご協力をいただきました。コンベンションセンターができるに当たってもメディアの果たす役割というのは大きな役割があるということで、よろしくお願いします。サンフロントと致しましても今日を皮切りに、これからコンベンションセンターにかかわる問題提起ですとか、周知を図る広報関係などと継続的に取り組んでいきたいと考えています。コンベンションは、後藤さんのお話にもありましたが、東部の広域連携を図っていくためのエンジン役を果たしていくと思います。他の地域との決定的な違い、キーワードはファルマバレープロジェクトで、医療、製薬、温泉、健康食品まで含めたトータルなテーマとして他の地域と決定的な差別化を図るためのキーワードになるだろうと。
 それからやはりキラメッセで11年間積み上げてきた成功体験、これをいかに引き継いでいくかということが新たな成功に向かうキーになるだろうと。そしてやるのは人ということですので、人づくりをどう進めていくのか。地元でいかに開催を支え、運営を受け入れていくような人たちをつくっていくかことがあると思います。そして地域ならではのもてなし。これはB級グルメとか、かかりつけ湯というようなキーワードもありました。現状ではコンベンションセンターについて、まだまだ皆さん理解不足ということで、周知を図っていくための活動にまずは力を入れるというようなところで、まとまりができたかと思います。
 
< 略 歴 >

◇青山 茂(あおやま・しげる)
早稲田大学法学部卒業。(株)オリエンタルランドを経て、現在(株)シード取締役副社長。日本航空民営化イベント「NewJALレセプション」、第10回全国スポーツレクリエーション祭「スポレクおきなわ」、栃木、群馬、沖縄の観光誘客プロモーション事業、九州沖縄サミット関連事業などをプロデュース。県内では伊豆新世紀創造祭、第15回海の祭典しずおか、東海道四百年祭などに参画。サンフロント21懇話会のシンクタンクTESS研究員として研究・提言活動をサポート。

◇宮川幸司(みやがわ・こうじ)
高崎経済大学大学院地域政策研究科修了。地域政策学修士。七尾短期大学、育英短期大学を経て、2004年から日本大学短期大学部商経学科助教授〜准教授。2008年度から教授。観光ビジネス論、観光実務等の科目を担当。ふじのくにしずおか観光振興アドバイザー。NPO法人伊豆地域振興研究所理事。かかりつけ湯協議会事務局他。

◇後藤全弘(ごとう・かねひろ)
中央大学商学部を昭和31年3月卒業。同年、有限会社ゴトー洋服店入社。平成元年に有限会社ジーティ企画を設立し代表取締役就任。平成3年(株)ゴトー代表取締役社長就任。平成13年(株)ゴトー代表取締役会長就任。平成17年(株)ゴトー相談役就任。平成19年11月沼津商工会議所会頭、静岡県東部地域コンベンションビューロー会長、同年12月学校法人静岡文化芸術大学理事、平成20年4月社会福祉法人あしたか太陽の丘理事・評議員、平成20年7月東部コンベンションセンター整備事業、事業提案審査委員会委員。

◇森口巳都瑠(もりぐち・みつる)
同志社女子大学を卒業後、日本実務出版(株)に入社。全国展示場連絡協議会監修「展示会情報」(現:E&C)に配属される。2001年、編集長を経て、日本実務出版(株)の代表取締役に就任。全国展示場連絡協議会の事務局の代行の傍ら、2002年、広島市より「メッセコンベンション等交流施設における展示会開催意向調査」を受ける。キラメッセぬまづ運営推進協議会委員、静岡県コンベンションおもてなし大賞選考委員(第1回、2回)、名古屋市国際展示場整備構想検討委員(2007年)、MPIおよびMPIJapan会員。

◇福田昌明(ふくだ・まさあき)
富士市出身50歳。静岡県立吉原工業高校電子科卒業。昭和53年日本国有鉄道静岡鉄道管理局採用。昭和62年3月退職。同年4月近畿日本ツーリスト(株)入社。沼津支店、川越支店を経て平成18年沼津支店次長、平成19年同支店長。
 



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