水口氏は高度情報化社会の進展によるグローバル化で全世界がパラダイムシフトに直面し、その陰で富の格差の偏在が起きている実態を指摘。「グローバル化は現実であり逃げられない。大事なのは、そこで得たものを世界の中で十分に『循環』させること」と述べた。
また昨年9月のアメリカ同時多発テロ後盛んな「文明の『対話』」論議に疑問を投げ掛け、「生きてきた歴史、文化、宗教が違う人間同士が話し合ったときに、自分が正しいと思ってきた価値観から降りて妥協できるだろうか。単純に『対話』というだけでは解決できない。そこで『寛容』という気持ちが大事になってくる」と訴えた。その上で、お互いがお互いの違いを理解して生きていく『棲み分け』の理論を重要とした。
続いて現在のアフガニスタン情勢や中東和平問題、イラクの問題、イスラムの教義などを説明し、アメリカの姿勢や国際社会の対応について考えを述べた。イスラム原理主義については、『原理主義(ファンダメンタリズム)』という用語は正しくなく本来は『回帰主義』と前置きした上で、「イスラム原理主義が悪いのでなく原理主義をもって暴力を使うことが悪い」と強調。「西洋の合理主義、近代化にアレルギーを持つ人間もいる。どうしても価値観の衝突が起きるのがグローバリゼーションの怖さ」と国際情勢の行方に厳しい認識を示した。
最後に水口氏は、「社会的規範を身に着け、自己を認識する力があり、他者を思いやる力があれば個人はバランスを取って生きていけるが、そのうちの何かが欠落した人間たちが群れると、いい部分をも打ち消し合ってしまう」と話し、ビンラディンの一派がアフガニスタンで群れたことが未曾有のテロを引き起こしたとの視点を提示。日本の青少年の暴力犯罪の増大、悪化傾向も同じ『群れ』が起きているためとした。グローバル化が価値観の変動を生み、個人の心の問題に根ざす難問を世界各地が抱える現状を指摘して、「日本は生きるために何が必要なのかを見失った社会。9月日を他人の問題として考えている日本人が多いが、なぜ身近に青少年の犯罪が起こるのか、なぜ自分と子の関係がうまく維持できないのかを考える上でも、グローバリゼーションの姿に目を向けていくべきではないか」と締めくくった。
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