小泉内閣が改革断行の期待を担って登場したが、年を経過した今日も進展を見せず、いらだちを感じることが多い。行政改革を実現しなければ地方はもちろん我が国自体も衰退の憂き目に遭うことは必至だ。改革は掛け声だけでは駄目で、実際に実効の挙がる手段、ツールを用意して取りかからなければ実現しない。痛みの程度によっては国民が我慢しきれなくなり改革がとん挫することは十分ありうる。到達しなければならない地点、姿をあらかじめ描きながら、そこに着地するための手順を入念に考えて進めなければいけない。
本県では、アメリカの企業経営の革新の手法であるリエンジニアリングに着目し、行政バージョンとして業務棚卸表を導入して、想像以上の効果を挙げることができた。事業シートとして目的、目標、経費、達成段階などを表記した結果、事業の一つひとつを根本にさかのぼって洗い直すことができ、組織のフラット化、人員の合理化などを客観的に進めることが可能になった。また「富国有徳の地域づくり」という大理念から派生する小目的として自分の仕事の位置づけが明確になり、予算編成の上でも行政評価システムとして有効に働いている。各市町村にもぜひ導入をお勧めしたいし、国にも適用できる。行革をみんなが分かる格好であつれきも少なく、望ましい方向に前進させられるのではないか。
この秋には静岡がんセンターがオープンし、いよいよ富士山麓先端健康産業集積構想が発車する。各方面から情報提供を求められることも多く、この地域が東京から至近距離にあるという利点が生きて、構想が相当な確度で実現すると自信を増している。それを確実にするには高次都市機能をこの地域に確保することが不可欠。どこの地域でも行政水準のナショナルミニマムは達成されたというのが国の判断で、乏しい財源を効率よく展開するため全国一律に市町村合併を推し進めているが、それをマイナスに受け取るのか、好機とするか、地域の盛衰を左右する判断が問われている。私はこの東部に高次都市機能を整備すれば、首都圏に集積している様々な機能をうまい形で地域に引き出すことができると思う。チャンスが目の前にあるのだから、その実現の手段としても大型合併をぜひ視野に入れて、長期展望のもとに今後の行政展開を考えるべきだ。清水、静岡が合併して政令市に見込めるようになったが、政令市は有効な手段である。
各地の市町村で合併が進めば、都道府県の在り方を考えることに発展していくだろう。理論、議論ではなく実際に手をつけざるを得ないところに導く導火線になるのではと期待する。そうして初めて内政レベルの行革が実現し、2世紀に向けた我が国の体制が整うことになる。改革は永田町・霞ヶ関の議論だけに任せていては進まないし、現実に地方の我々にも影響が出る。行革を地域が主体的によりよい形で実現させるため、積極的な取り組みが待ったなしで求められている。
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