サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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第8回伊豆地区分科会 平成14年7月9日(ニューフジヤホテル)
パネル討論 
  テーマ:伊豆観光の新展開−ウエルネスによる伊豆の活性化に向けて

<パネリスト>
内田 實  (NPOエイミック代表)
古賀 学  ((社)日本観光協会調査企画部長)
坂本 光司 (福井県立大学教授)
米田 誠司 (由布院観光総合事務所事務局長)

<コーディネーター>
竹内 宏  (経済評論家)

 


観光地でなく『目的地』として伊豆を見直す−健康産業にも可能性−


坂本 光司氏

◆竹内 伊豆をどう再生していったらよいか。まずはお一人ひとりにご意見を伺いたい。
◆内田 NPOエイミックは医師や観光関係者らが手を結び、熱海の活性化と医療を考える活動を続けている。近年の熱海の元気のなさは私たち医者が見ていても目に余るものがあり、医者として何かお手伝いができないかと非常に真剣に考え、平成年5月に有志でホームページを立ち上げて「持病があり旅行を躊躇している方はお手伝いをしますから熱海に来てください」と呼び掛けたところから話が始まった。その後、医療と観光・誘客を結び付けたときにカギになるのは温泉だろうと考え、温泉をキーワードに活性化を探っている。旅館の空いている時期に空いている部屋を利用して、熱海でも温泉療法ができる、健康増進ができるということをアピールしていきたい。
 温泉療法は広い意味で代替療法に入る。代替療法とは西洋医学に代わる伝統医学だが、鍼灸、マッサージ、漢方が分かりやすい例。990年にハーバード大の教授が行った米国の医療の実態調査で、西洋医学を受けている人の3分のが代替医療を受け、西洋医学よりも代替医療に多くのお金を投じていることが判明した。日本は政府の対応が遅れているが、世界の医療の流れはこの代替医療に来ていると考えていい。代替医療の利点はお金がかからないこと、環境にもよいことで、今後の医療の進むべき道の一つを示している。まだまだ危なげな医療もあるので、よいものを選別していかなければならないが、伊豆ブランドを考えたときに、伊豆全体を代替医療、健康産業のエリアとしたらどうか。
◆古賀 たとえば海水浴とは一体何なのか、もう一度考えてみる必要がある。今日本の海水浴場は99%が若い人が遊ぶための場所として整備されているが、海水浴は『浴』で、もともとは海水を体に浴びて健康にすることを言い、『塩湯治』という言葉があったように海浜環境は湯治の場であった。そうしたとらえ方では海辺を一番使うのはお年寄りとか体の弱ってる方とか、精神的に疲れている方とかになり、整備の仕方が全く変わってくる。炎天下は耐えられないから日陰が欲しかったり、風よけが必要だったりする。そうして初めて、海浜は本来持つ機能を十分に活かした、新しい健康の場として成り立ってくる。
 熱海の場合には温泉浴というもう一つの浴もあり、後ろには山もあるから森林浴もある。となると熱海は内田先生のおっしゃるように健康に対して最適な場所だ。伊豆半島全体もおそらく同じような環境を持っているから、気候条件や温泉の効能などの違いを考え、治療の目的に応じて場所を選択することができる。うちはこういう症状に効く、と健康の場としてきちっと売り込めば、選択がしやすい。そうして初めて、温泉だけに頼るということではない、個性が出てくるということを、まず考えてみる必要がある。
 今まではあまりにも観光観光と言い過ぎたのでは。うちは何もないから観光地化できないよとよく言うが、今はたくわんを作っても人が集まってくる時代だ。観光地という言葉があるのは日本だけで、外国では『目的地』DESTINATION。人が来る目的をそこに作り出すことが一番重要なのである。その目的は何でもいい。観光を広く移動、一般と考えれば、仕事に来てもいい。たとえばフィルムコミッションのように映画のロケに来た人も、泊まって酒を飲みに街に出るから行動は観光客と同じだ。そうした広い視点で伊豆を基本的な部分から見直してみると、可能性が見えてくるのではないかと感じている。


社会経済統計が語る伊豆衰退の理由


米田誠司氏

◆坂本 私は社会経済統計を駆使して全国の市町村の成長、衰退の分析をしているが、地域活性化の代表的なメルクマールである人口増加率あるいは所得増加率、税収増加率等を縦軸に取り、横軸に各データを入れていくと極めて相関関係が高い事柄がいくつか発見できた。言いにくいが、この地域にとっては非常に残念な結果となっている。きょうのテーマは伊豆の再生だが、観光だけでは限界がある。
 一つは過去0年、市町村の規模と地域社会の盛衰、活力とは非常にきれいに相関が成立しているということ。市は人口規模で5万人以下と以上とで決定的に違う。町村は人口規模で万人がボーダーラインで、万人前後以下の町は90%以上の確率で伸びていない。二つには横軸に5−29歳の若年人口の増加率あるいは全体に占める割合を入れた場合、これもきれいに右肩上がりを描くということ。5−29歳の人が好んで住まうか、学校や職場を求めて昼間人口として増加するような所にこの地をしなければならない。
 三つ目は就業構造の問題で、一次産業の比率が相対的に高い、あるいは三次産業の中でもホテル、旅館、クリーニングといった対個人サービス産業の比率が高いと、地域の活力を示す指標は低下しているということ。四つ目は高収益型企業、ベンチャービジネス、上場企業、高額所得法人などいわゆるよい会社が多く立地しているほど、活力指標は上がるということ。全国の観光地を調べたところ、従業員300人以上の事業所もベンチャー企業もほとんど存在しない。労働時間が長いのに賃金は相対的に低いのが現実で、果たしてそんな地域に人々がUターン、Iターン、Jターンをするだろうか。


そこに生活する人々の地力の結集が磁場となる

◆竹内 米田さんは東京都庁から湯布院に行かれた方。お願いします。
◆米田 きょう駅から会場まで、久しぶりに熱海の街を見ながらゆっくりと歩いてきたが、オフシーズンのこの時期にしてはお客様がたくさんでうらやましい。坂とか傾斜地とかはたぶんとても有利な条件で、大温泉地が持つ条件とはこれかなと思った。ただ、こういう所でこれからの新産業づくりと言ったとき観光業は入るのだろうか、と気になった。古賀さんがおっしゃったように私も観光地というものは存在しないと思っているし、専業で観光に携わる人だけが町を支えるという状況は、どこかで行き詰まりを迎えるのではないかとつくづく思う。これは湯布院でも今一番の課題だ。住んでいる人の生活の文化とか生活の匂いとかが前面に出ている町の方が強い気がする。先程竹内先生のお話にあった小布施にしても観光で稼いでいるのは町の地域総生産の3分のぐらいで、あとは工業や農業がしっかりあって、仮に観光が傾いてもほかでカバーできる条件がある。湯布院も同じ規模の町としてあこがれていて、業界中心ではないところにいきたい。地形も町の雰囲気も本質的にいいものを持ったこの地域は、もっと可能性があるのではないか。
 きょうは私どもの機関紙『ゆふいん観光新聞』をお持ちしたが、その中の平成4年度の事業計画の中に観光行動会議事業委員会とあるのを見ていただきたい。この下にさらに情報、おもてなし、アートなど6つの委員会があるが、去年からこういう体制を取り始めた。湯布院は強力なリーダーシップでずっと頑張ってきた町だが、その思想や考え方を次に伝えることに取り組んでいて、この委員会も中心メンバーはほとんどが20−30代。この新聞は観光業に関係なく生活する人にも読んでほしいと、町内の全世帯にも配っている。もう一つ重要なのは、観光協会や旅館組合の会員でなくても委員会のメンバーになってよいとしたことで、これが広がりを生んだ。たとえば湯布院には待合室を活用したギャラリーなど小規模なアート空間があるが、ここを軸に何ができるかアート委員会で考えていて、先日は地元の源流太鼓を聴いて絵を描こうというイベントをやった。源流太鼓のチームの中心メンバーは主に一般の町民で、町外から駆け付けた愛好者もいる。業界だけが仕切っていくという時代はおそらく終わっているし、私たちの方からも終わりにしたい。


癒しの地・伊豆半島を滞在型リゾートに

◆竹内 内田先生、代替医療を熱海でやるには具体的にはどのような形でやるのかお聞かせいただきたい。今東京では指先マッサージが丸の内の中で大変繁盛しているが。
◆内田 これは0年、20年先の長いスパンの構想で、きょう明日、熱海市で代替医療を行うためにはどうするかという発想は今のところない。病気を持った人をどうやって熱海に呼んだらいいかという年2年のうちにできることと、将来に向けて掲げた大きな目標とを分けて考えている。代替医療のエリアの構想は、伊豆ナンバーの実現を目指す動きや静岡県の富士山麓先端健康産業集積構想とも矛盾しない。
 観光業は門外漢なのだが、医療や健康を目的に中国などに旅行する人が増えているような印象がある。一方で日本は外国人観光客を迎えるのが非常に下手だと思う。その外国人観光客の60%以上は東京に滞在するそうで、東京から近い伊豆に代替医療のエリアがあるとなれば、ひょっとしたら西洋から来た方々が東洋の神秘に触れてくれるかもしれない。
◆竹内 古賀さん、集まる目的が必要だというご指摘だが、伊豆で集まる目的は何にしたらよいか。目的がないから伊豆に来てしまうという人が案外多いのではないか。
◆古賀 強いて言えば精神的な癒しを一つのテーマとしてとらえてもよいのでは。伊豆高原に美術館が多いように文化もあり、温泉もあって、伊豆は多様な対応ができる。一つの地点で滞在するのは難しいが3日かけて半島を回るというふうに、伊豆半島全体で滞在型リゾート化を図っていったらどうか。健康は滞在しなければ得られないのはみんな分かっているけれど、そこには至っていない現状をいかに打破するかが最大の課題だろう。


観光地の新産業に向くのは健康・医療・福祉、IT、教育
 −もてなしの原点に立ち返り観光産業を進化させることも急務−

◆竹内 坂本先生のご指摘を聞くと、地域の活性化のためには町村合併をしたらよいという気がした。若年層を引き付け、産業構造を変えるために伊豆はどういう戦略を取るか。
◆坂本 新しい観光産業というのも重要なキーワードだ。景気が悪いから全国みな観光地は駄目というご意識の方も伊豆にはいるが、この0年間で下がっているのは4県で、うち一つが静岡県。あとは伸びていて、熊本県は観光客が0年で.6倍に増えている。
 伊豆に対して、世間の目は特に冷たい。全国訪ねるとよく分かるのだが、この地域の業者の方は市場調査をちゃんとしているのかと思わざるを得ない。もちろん例外はあるが、価格の面でもサービスの面でも自らが変わってもらわなければもうどうしようもない。また静岡県のホテルや旅館の大半は家業の延長で私物化されている。そういった所に夢多き若者が職を求めるだろうか。企業経営に進化しない限り駄目である。
 おそらく観光とは町全体だと思う。たとえばTDLやディズニーシーのように町全体がなって、タクシーの運転手さんも喫茶店のおかみさんも含めてもっと心を一つにすることが大事。それが伊豆に限らず静岡県全体がお粗末至極という感じがする。博多ではタクシーに乗ったときにおいしい魚を食べたいと運転手さんに言ったら、ホテル周辺の店5軒の特徴を説明し、あなたのお腹の空き具合を考えるとこの店がよいのではと言ってぴったりの店を紹介してくれた。一方、静岡の観光産業は内部崩壊を起こしているのではないか。
 全国の観光地でどういう新産業が向くかと調べて私が到達した結論は、健康・医療・福祉。これにIT関連の情報産業と、教育産業が加わる。これらは東京からの距離とか過疎とかはまったく関係ない。こうした産業はほとんどが東京圏に集積している。あの過密の状況だからちょっとひとひねりでこちらに持ってくることができると思う。具体的な方法としては誘致もあるし、育成もあるし、インキュベーションもある。遊休ホテルや旅館、商店を活用すればいいから、新しいハードをつくる必要は何もない。


観光業は入り口に過ぎない
−顧客のニーズを汲んだ確かな情報伝達と地域の底上げとの好循環−

◆竹内 米田さん、湯布院はすっかり成功して羨ましい感じがするが、新しい方向を探っているというお話はどういうことか。
◆米田 湯布院は農村としては古くても観光地としては歴史が浅く発展途上の町で、成功したかどうかはまだまだ答えが出ないと思う。今、湯布院では連泊をする方が増えている。不景気になってこの傾向が出たが、低価格のツアーも増加し、二極化の状態。しかしそれ以上に連泊のお客様が増えていて、自分の目的に応じてあまりあちこち動き回らず、大切な人との時間を過ごすために来てくださる場合が多い。そうなるとごちそうを毎日出し続けるわけにはいかず、懐石料理を出す風習自体が問われる。それでも勉強会を重ねて地元の食材を使ったメニューを工夫しているが、お客様にとって色々なことが選べる状況をつくるには、我々供給者だけの理論でできることには限界がある。けれども地元の人が食べているおいしい物があればさっとご紹介できて済む。そういうところこそ育てたい。
 また、最近町民の温泉施設で水中運動が流行っているが、観光客の方もよく来られる。保健婦が常駐し、町民でなくても健康相談にのっているのが背景にあるのだが、住民自身がリーダーを00人ぐらい養成して、赤い帽子を被ったリーダーに聞けば何でも分かるという状態にまで持っていった。それを外から来た人はうらやましく思ってくれるようで、滞在して体調を整えたいという要望に応えようと、週間滞在のパックを検討したり病院と連携したりと取り組んでいる。こうしてみると、観光業はほんの入口に過ぎないのだと思い知らされる。いかに情報を持ってきちんと伝えるかということが入口の役割かと思う。


産業が育てば人が動く−本当の観光振興とは−


古賀学氏

◆竹内 最後にもう一巡、伊豆はどうしたらよいか、お考えをまとめていただきたい。
◆内田 米田さんがお話しになったクアージュゆふいんを初め、別府温泉地医療研究会、高知県中村市の東洋医学の里など、医療や温泉をキーワードに町の活性化に取り組む例は多い。ぜひ熱海でも、と思う。高知の東洋の里でネックになったのは、日本では日本の医師免許がなければ患者に触れられないために、せっかく中国から来た先生方が自ら治療できないことだったそうだ。竹内先生が講演で話された医療特区は面白い考えだと思う。
◆古賀 日本観光協会は毎年優秀観光地づくり賞を出しているが、受賞団体に話を聞いてみると、温泉でありながらそれ以外で色々なことをやっていて、温泉もあるよ、という意識のところが、今うまくいっているような気がする。また、昭和39年からの観光動向の調査では、宿泊観光旅行の参加率は男が下がり女が上がり、今ちょうど半々。男風呂が大きくて女風呂が小さいシステムはもう完璧に成り立たない。年齢別で見ると若い人がどんどん減って、高齢者は上向き。20年、30年前の在り方とは変わったということを念頭におき、今の感覚を大事にして物事を始めるのが、市場をつかまえるには重要かと思う。
 まちづくりとして交流という意味で観光をやることと、産業としての観光とは全く違う。完全に産業と考えてやっていくことが重要ではないか。たとえば温泉地でもう度原点に返ってみると、ISOの宿泊施設の定義付けはベッドとトイレがあることで、要するに衛生が基本。そこから先どういう産業にするかはそれぞれが考えるべきことで、何もいわゆる温泉旅館でなくていいし、健康産業としての宿泊施設になってもいい。温泉の風呂がある宿、という方向にみんな一律に向かったところに一番の問題があるのではないか。観光は市場がどんどん変わるのをとらえていかないと駄目という意味で、新産業にふさわしい。 伊豆には色々なものがあっても、質的にどれほどのレベルがあるかは外の者にはまったく分からない。それをきちんと整理して分かりやすくすれば、もっと行きやすくなるのではないか。その意味でも、産業という視点で物事を起こしていくことは重要だと思う。
◆坂本 4点提言をしたい。つには、先程述べたように地域の盛衰には4つの因子がはっきりし、これを変えずに再生や活性はもはやありえず、市町村合併も受け皿として必要である。2つには伊豆の観光産業が非常に魅力的な就業の場として優れなければならない。若者の就業につながるように、観光業の私物化を避ける。3つにはサービスで違いを出す。伊豆は風光明美で海の幸がおいしいと言っても、さらに上を行く観光地はある。
 4つ目に言いたいのは、魅力的な商店街は魅力的な個の点の集まりであるという意識を持って、個々が自己改革をしなければならないということ。変わるべきは商店街ではなくあなたの経営である。このことを施策として伝える義務があり、これに感じた男と女には可能な限りチャンスを与え、点から変えていくべきではないか。


ないものねだりでなく、あるもの探し
−ヒューマンな原点に素直に戻ろう−


竹内宏氏

◆米田 自動車がどこまでも入って果たしていいのか、ということも大きなテーマだと思う。町が車中心の町になりつつあり、歩きにくい環境になっているのではないだろうか。
 それから、これだけお客様のニーズも多様化して我々のできることにも限界がある状況になってくれば、小さなビジネスをたくさんつくっていく方がより安全で、参加者も多くなって面白いのではないか。そのときに必要なのは地域に何があるのか見つめ直す作業。三重県は県庁が音頭を取って、市町村の職員に地元学を勉強させている。地元学とは水俣市役所の吉本哲郎さんが始め、地域にあるものを見つけて磨くという実に単純な作業で「ないものねだりではなくて、あるもの探し」と吉本さんはおっしゃっている。湯布院でも伊豆でも、資源をもう一度再評価する時期に来ている気がする。そういう意味で私たちが意識しているのは農業で、今はグリーンツーリズムという言葉だけが先行しているが、もっと地域に根付かせていけば我々観光業が足りないところをしっかり担ってくれると思う。古賀さんのお話のISOの宿泊施設の定義のように、お客様から見れば気持ちの良いベッドときれいなトイレがあればそれで旅行は成り立つはずだから、こうしなければいけないという概念は捨てて、本当にシンプルに原点に立ち返りたいと思っている。
 もう一つ、ある観光地に行って次の町に行こうとしたときに、次の町の情報は意外と得られない。お互いを紹介する、ということが大切である。湯布院で別府のことが分かることが大事だし、別府で湯布院のことが分かることが大事。そういう意味では伊豆という一つのイメージの下に各地区があるのは強みで、ネットワークを組んでいったらよいと思う。
◆竹内 全体のお話の中で、まちづくりと観光とは同じことではないし、観光には一種の目標がないといけない、という重要なご指摘をいただいた。そう言えば、お宮参りは祈りと現世利益と会話という、本当の目標と観光がうまく合わさった日本固有のやり方かと思う。巣鴨のとげ抜き地蔵はお地蔵さんにお参りするという目的があって、来るのはもっぱら年寄りで、若者と年寄りとでは会話が成り立たないから店員さんも50歳以上の年代で、ごちゃごちゃした中で買い物をしながら世間話を楽しむ。広い道路になって、コミュニティがなくなって、肩が触れ合うところがなくなってしまうと、日本中が元来のヒューマンな原点に戻りつつあるのか、という感じがする。ここに素直に戻っていくことが、ことによると観光地づくりの原点になるのかもしれない。


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