◆青木 東大阪は現在、50万の人口にものづくりの会社が8千社ある。しかし4年前は1万社だった。減ってきている。そんな状況で何か新しい産業を起こさねばならない、「メイド・イン・東大阪」を作っていきたい、と人工衛星開発プロジェクトをぶち上げた。昔から東大阪は歯ブラシからロケット部品まで作れますよ、というのがキャッチフレーズ。初めはロケットを造ろうとしたが、大阪府立大の東久雄先生(宇宙工学)にロケットは難しいが小型人工衛星だったらどうかとアドバイスをいただいて人工衛星やろうやないか、となった。すると夢やチャレンジの心があるとかなりの人が応援すると言ってくれる。一方で(特殊法人改革等で)宇宙開発も大変で産業の連結が求められる状況にあることなども追い風になって、去年の7月、東大阪商工会議所で宇宙関連開発研究会が発足した。人工衛星の構成はミッション機器とバス機器に分かれ、このうちバス機器には通信だったらアンテナ、制御だったらセンサーといった8つの技術がいることを知り東大阪でぶつけてみると、うち作ったろか、うち貸したろか、と皆応えてくれた。これをまとめようと12月、研究会を発展させて東大阪宇宙開発協同組合をつくった。しかし何せやったことないんで宇宙開発事業団とかから技術移転をしてもらおう、それによって東大阪に宇宙産業を地場産業として根付かそう、と考えている。
東大阪は新しい産業を興す人づくりの町でもある。そう訴えて1年近くになるが、いろんな人がプロジェクトのことを「おっちゃん衛星」と呼び、マスコミも取材に来てくれる。そうしたら、衛星が造れるならこれはつくれるか、よそと見積金額が大体一緒だったら東大阪に出してみようか、と宇宙産業以外でもかなりの仕事の引き合いが来て、海外からも技術提携が持ち掛けられた。波及効果は大きい。我々は既存の技術を応用して宇宙部品を研究開発することで製品に付加価値を付ける。それによってオンリーワン企業を育てていきたい。それをやることで「メイド・イン・東大阪」が確立できるのではないか。
今衛星開発は国が主導して8−10年の期間と何百億円という予算をかけてやっていて失敗が許されず、それがさらなる開発期間と費用の増大を招くという悪循環にある。期間が長ければ打ち上げ時には搭載される技術が古くなってしまい、開発現場はジレンマに陥っている。しかし我々がやるのは50センチ立方、20−50キロのマイクロサットで、ミッション要求にすばやく対応して旬の技術を搭載することを目指す。2005年には上げたい。衛星は造って、上げて、使うが、この「使う」ところにビジネスチャンスがある。マーケットは広い。去年アメリカのヒューストンで開かれた宇宙学会で、「Craftsmen
In The Last Frontier―職人が宇宙を切り拓くんや」と訴えるとかなりの喝采を浴びた。僕は人づくりは物体でいかんとあかんな、と思っている。
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