サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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第8回富士地区分科会 平成15年2月4日(フジロイアルホテル)
パネル討論 テーマ:「価値づくり、人づくり」

<パネリスト>
青木 豊彦 ((株)アオキ代表取締役社長)
鈴木 善彦 (静岡県教育委員会教育長)
鈴木 光一 (マルスン(株)代表取締役社長)
岩谷 泰幸 (国立大学非常勤講師)

<コーディネーター>
大坪  檀 (静岡産業大学学長)

◆大坪 きょうは唐津先生のお話で明るくなったムードで、非常に弾んだディスカッションができるんじゃないか。まずは青木さんから。



Craftsmen In The Last Frontier “宇宙に拓く職人魂”

◆青木 東大阪は現在、50万の人口にものづくりの会社が8千社ある。しかし4年前は1万社だった。減ってきている。そんな状況で何か新しい産業を起こさねばならない、「メイド・イン・東大阪」を作っていきたい、と人工衛星開発プロジェクトをぶち上げた。昔から東大阪は歯ブラシからロケット部品まで作れますよ、というのがキャッチフレーズ。初めはロケットを造ろうとしたが、大阪府立大の東久雄先生(宇宙工学)にロケットは難しいが小型人工衛星だったらどうかとアドバイスをいただいて人工衛星やろうやないか、となった。すると夢やチャレンジの心があるとかなりの人が応援すると言ってくれる。一方で(特殊法人改革等で)宇宙開発も大変で産業の連結が求められる状況にあることなども追い風になって、去年の7月、東大阪商工会議所で宇宙関連開発研究会が発足した。人工衛星の構成はミッション機器とバス機器に分かれ、このうちバス機器には通信だったらアンテナ、制御だったらセンサーといった8つの技術がいることを知り東大阪でぶつけてみると、うち作ったろか、うち貸したろか、と皆応えてくれた。これをまとめようと12月、研究会を発展させて東大阪宇宙開発協同組合をつくった。しかし何せやったことないんで宇宙開発事業団とかから技術移転をしてもらおう、それによって東大阪に宇宙産業を地場産業として根付かそう、と考えている。
 東大阪は新しい産業を興す人づくりの町でもある。そう訴えて1年近くになるが、いろんな人がプロジェクトのことを「おっちゃん衛星」と呼び、マスコミも取材に来てくれる。そうしたら、衛星が造れるならこれはつくれるか、よそと見積金額が大体一緒だったら東大阪に出してみようか、と宇宙産業以外でもかなりの仕事の引き合いが来て、海外からも技術提携が持ち掛けられた。波及効果は大きい。我々は既存の技術を応用して宇宙部品を研究開発することで製品に付加価値を付ける。それによってオンリーワン企業を育てていきたい。それをやることで「メイド・イン・東大阪」が確立できるのではないか。
 今衛星開発は国が主導して8−10年の期間と何百億円という予算をかけてやっていて失敗が許されず、それがさらなる開発期間と費用の増大を招くという悪循環にある。期間が長ければ打ち上げ時には搭載される技術が古くなってしまい、開発現場はジレンマに陥っている。しかし我々がやるのは50センチ立方、20−50キロのマイクロサットで、ミッション要求にすばやく対応して旬の技術を搭載することを目指す。2005年には上げたい。衛星は造って、上げて、使うが、この「使う」ところにビジネスチャンスがある。マーケットは広い。去年アメリカのヒューストンで開かれた宇宙学会で、「Craftsmen In The Last Frontier―職人が宇宙を切り拓くんや」と訴えるとかなりの喝采を浴びた。僕は人づくりは物体でいかんとあかんな、と思っている。


人を大事にすれば働いてくれる

◆鈴木(光) 当社は富士で金型をつくっている。金型には色々な種類があり、ゴムもガラスも鋳造も鍛造もダイキャストも、いわゆるマスプロ的な物はほとんど金型で作られている。我々が造っているのは自動車関係、なかでも大物が多い。この商売も大変な不況で仕事がなくて、10年前は日本で約2万社メーカーがあったのが、今1万6千社に減った。従業員20人以下の会社が80%を占める本当に零細で中小の産業だが、しかし世界の自動車メーカーが車を造る際、その車の骨格はほとんどが日本の金型屋がやるのである。
 近年は、あるメーカーさんに外国人さんがいらしてカッターカッターと言ってめった切りに切って、我々の商売でもつい3年の間に35%、ひどいのになると40%ぐらい価格が叩かれた。納期も約半分になって、我々も色々な面で変わった。そんな中でお前らの会社はよく黒字でいるな、と自慢をするわけではないが言われる。そうじゃない、うちの社員はみんなの工場よりよく働く、倍働く、だから儲かるんだ。私は2世だが人を大事にすること、人をうまく使うことを親父に徹底的に言われ、徹底的に実行している。
 ただ一つ、役所の方や色々な方に言いたい。儲けるというのは、本当に血のにじむ思いの中で儲けているのだ。その中で税金を払っている。やっぱり感謝の気持ちを持っていただきたい。今我々仲間うちで、(政治のでたらめを見るに付け)何でこんな馬鹿な、税金払う必要ねえじゃないか、とよく言う。(こんな状態に陥ったのも)お役人に何にも感謝の気持ちがないからだ。我々は本当に大変な中でやっている。是非分かってほしい。

育てるべきは感受性豊かなリアリスト−鈍い人間を拡大再生産する学校教育−

◆岩谷 私は団塊の世代の一人。学生時代にベトナム戦争時のアメリカに1年間滞在して、アメリカはすごい国だと思うとともにいろんな意味で大変な国だなあと思った。それがきっかけで社会人となって以来30年間、海外でいろんな国とのビジネスを経験した。卒業後入社した商船三井で世界の物流と貿易実務をみっちりと教育され、31歳で金属加工会社のアマダに転職、アジアを中心に特に中国関係の仕事をした。昨年退職し、今は横浜国立大学の非常勤講師をしたり、中小企業の方々の中国進出を手伝ったりしている。
 やはり海外は文化も言葉も違うので、価値づくり人づくりこそが重要なポイントとなるが、現地法人をつくったりするとこの難しさを痛感する。価値づくり人づくりとは、ある物とか現象、技術、他人の言動に対し、感受性豊かに反応できるかどうかではないか。唐津先生はセンスと言ったが、そういう人が生まれる教育をしていただきたい。価値づくりなくして人づくりはできず、人づくりなくして価値づくりもできない。ましてものづくりはその2つが融合しなければ絶対できない。この教育こそが有形無形の価値を生む。
 私は33歳の時、アメリカの現地法人でパンチング金型の製造責任者を命じられた。そこで7人を採用したが、4人が刑務所出身。ある日見ると、工場にラジカセを持ち込んで、この方が効率が上がると言ってドンドコかけてやっている。「君らは早く死にたいのか。加工機械が不調になったら音が変になるのに、これでは分からんだろう」と言ったらむこうも「そうだ」と言う。「じゃあこれで君ら死んでもいいと言うなら一筆書いてくれ」と言って搦め手から説得した。学者さんはマニュアルづくりが重要だとかよく言うが、それはマニュアル人間だけに当てはまるのだ。刑務所からいらした方にマニュアルなんてない。それ以来、私は対個人のコミュニケーションを大事にしている。
 現在の教育には大きな問題がある。学生を見ても、知識があっても知恵がない、というのが本音。知恵とは苦労して勇気を出して経験しなければ得られない。いくら恋愛小説をたくさん読んでも意中の女は口説けないのだ。西宮のある一部上場の企業に頼まれて中国の状況を説明に行った。海外戦略室長が出てきて「どちらのご出身ですか」と聞くので「和歌山です」と言ったら「和歌山大学ですか」。その程度、これが現実なのだ。しかしこういう考えは我々の世代に多い。東大に行ってノーパンしゃぶしゃぶに行く人もいるわけだから、こういう教育こそが間違っているんじゃないか。学歴と教養は違う。戦後いわゆる有名進学校、有名大学を出て何か新しい物や新しいシステムを発明した人はいない。この間ノーベル賞を取ったお二人だって劣等生だ。この教育の偏重を直さなければ、大きな意味で日本という国の将来がないように思う。

子供の「こころざし」を育みたい−自分の原点を形成する体験を与えたい

◆大坪 私も大学の学長をやっていて、今のご意見は大変よく分かる。どうしてこうなっていったのか、また今何をやっていらっしゃるのか、いよいよ教育長にお伺いしたい。
◆鈴木(善) ことしは「教育改革元年」。これは家庭や社会が総力戦で子供を育てよう、学校だけが教育の独占機関ではないということを制度・システムにきちっと取り入れることだと私は解釈する。その中で週5日制や新しい教育課程が起こったのだろう。我々は国の教育改革ではない、静岡というローカルな教育改革を目指そうと、昨年9月、「人づくり」2010プランを策定した。この根幹にも同じ認識があるが、特に学校教育の役割として「『こころざし』を育むこと」をキーワードとした。どうも日本の子供たちは元気がなく、前向きに生きる姿勢を欠く。「こころざし」を持たせたい。それには基礎基本を大事にしよう、子供たちに頼もしい先生になろう、といろんな切り口でやっている。
 ただものづくり、人づくりということに絞ると、今の子供たちはものをつくるという場面に出合えず非常に気の毒。私は農家の二男で家族総出で農作業をやっていた。種をまいて緑の芽が出る時の、ものづくりの原点のような感動とか、親父がお茶を刈る姿とか、そういうものが自分の原点を形成したと思っている。今の子供たちにもそうした第1次、第2次産業に触れる機会を与えたいと、体験や経験、実験を教育計画の中に入れようと試みている。また本県のものづくりの拠点となる、新しいタイプの総合科学技術高校を東静岡につくる構想も進めている。静岡はものづくり立県というテーマで、小中高で体系的に学んでものづくりに向かう子供をつくっていきたい。富士地区では富士宮農高を総合学科高校・富岳館高校につくり変え、吉原工高でも基礎基本、ものづくりを教育方針にしている。
 21世紀は自己実現の時代になるだろう。100人いれば100人の生き方、100人の得意な分野を伸ばすような社会を子供たちにつくっていきたい。地球上狭しと活躍してほしい。ぜひ皆さんの力もお借りして、自分の「こころざし」を実現できるようなシステムや環境を子供たちに提供していきたい。

ものづくりプラス人を集めるのが大事

◆大坪 今日のテーマは「価値づくり、人づくり」で、「ものづくり」としてないところがミソ。これからはむしろ価値をつくることが重要。どうも我々は一生懸命働くと報われると思って単純に物を作ってきた。物が売れないと言うが、よく見るといらない物、時代遅れになった物、新しい価値を買い手が認めてくれない物を一生懸命作っている。今は非常に難しい、大競争時代。そんな中で新しい価値は何か、競争の中でも価値を認められるものは何か。そのためにどういう人が必要になるか。どうやってそんな人材をつくるのか。
◆青木 皆さんどうですか、人づくり価値づくりと言うけど、お師匠はん持ってますやろか? 私は30過ぎの時にダイハツ自動車の常務さんからカンバン方式を習った。私大阪では厚かましい方かと思うんだけど、当時は真剣に考えすぎて正直ノイローゼになりかけた。今先生は88歳だが、今でもいろいろ教えてもらっている。ものすごく有り難いし、人工衛星を造る時にもまた新しい先生に素直な気持ちで接することができる。僕は一人のリーダーが思い切り頑張ったらものはつくれる、人づくりはできると思う。それにはいいお師匠さんを見つけること。師弟関係は夫婦愛よりきついと言うじゃないですか。
 人口衛星を造っていると、若い子が、それも有名校のドクタークラスが手伝いましょうと来てくれる。製造業は一頃3Kとか言って人が離れていったが、今は来る。絶好のチャンスだ。人工衛星なんて我々河内のおっちゃんがホッと考えることではないと思ったけど、やってみると大きい力になっている。価値は我々大人が付けていかなくてはいけない。若い子が悪いのではない。我々が悪いとは言わないが、真剣に考えないと。僕はものづくりだけでは価値は生まれないと思う。ものづくりプラス人を集めるのが大事。そのときに世界の英知が集まってくるようにしないといけない。パリには世界中から観光客が来て金を落とす。フランスのある人に聞いたら、フランスは技術も盛んだけど、世界の金を集めてものづくりをしているよ、という。金というのも大事だ。だから何か一発かますのが必要と思う。ものづくりにプラスして何かを付けていったら、自然に価値が出てくると思う。

産業界から教育界に望むこと

◆青木 人づくりで一言。僕の友達の校長先生が窓ガラスがバリバリに割られるような荒れた中学に赴任した時に、教育のやり方を見直して図工と理科の時間を増やした。そうしたら3年後にはガラスが割られることがなくなった。これをどう思います?大人も一緒だが、子供というのは物を作るのが楽しいのだ。そのことと校長先生の何とかするという熱意とがリンクして、学校を変えた。いい学校はどこにもある。悪い学校をどうするんや、と考えた方がいい。いい学校ばかりつくってもしゃあないと思う。
◆鈴木(光) 今の先生は、教える先生自体が教えることを知らない。先生自体が小さい時から可愛がられて育って大学を出て、苦労を知らない、いろんなことを知らないまま教育者になっていることが問題。民間に何カ月か研修に行って実社会を見るという形を取らないと、いつまでたっても考え方が我々と乖離したままだ。我々も勉強が足りないところがあるが、先生方もやはり勉強していただきたい。人を教えるからこそ、世の中を広く見ていただきたい。社会に出てからの人づくりについてだが、我々の会社では社員を競争させ、優劣を付けている。人間はだれでも負けたくないという意識があって競争相手がいるから、あんちくしょうこの野郎負けるなとやる。競争のない世界はまったく伸びない。
◆岩谷 企業というのは結構勝手で即戦力が欲しいことは間違いない。私の行っている大学は結構有名だから、実力はともかく企業の方で迎えに来てくれると思っている学生がほとんどだ。だから学生に「君が社長だったら自分たちを採るかい。今世の中に40代、50代で君らより優秀な人がいっぱい余っているんだよ」と言うと、黙っちゃう。
 実は私がいた会社は10年間新入社員を採らなかった。その結果やっぱり若い血が入らないから血が澱んできて、大変なことになっている。この10年間というのはもう取り返しがつかない。あんまり即戦力に走るとこうなるということで、私は条件付きながら終身雇用制度に賛成である。いい大学に行っても頑張らなければ企業は迎えに来てくれない時代になり、今の大学も変わりつつあって、学生にとってはちょうどいい時代かな、と思う。
◆大坪 大学の学長をしている立場から申し上げたいが、ぜひ教育の現場を見てほしい。私の大学は教師の教え方が悪いから学生ができない、という考え。教授を含めた先生方が、教え方を評価し合い成果を挙げている。また企業提供の講座を設けて学生にも人気だが、我々には新しいことを創造して学生にやる気を持たせる努力が今まではなかった。
◆鈴木(善) 県下でも子供たちを色々な角度から育てるため大学との連携に取り組み、東部では静大が高校11校に出張講義を行うなどしている。教員自身も狭い殻に閉じこもっていてはいけないと、期間はやや短かったが過去3年で全教員を企業に派遣して実習させた。半面、私は教員が単に世の中の動きだけを知ることよりも、やはり学校で生徒とどう向き合うか、生徒にどう基礎基本を伝えるかが教員のもっとも教員たる所以と考える。分担して子供を育てる中で、逆に学校の大切さがますますそこに見出されてくるだろう。
 先程出た競争ということでちょっと紹介すると、全国の小中学校で習熟度授業が6割行われている。私もたくさん見に行ったが、生徒たちは分かることの喜びで生き生きと勉強していて、静岡でも進めていきたい。教員についても今後は教えたことに対する成果をきちっと評価するよう、研修で取り入れることになっている。

57歳にして青春−大人の情熱に子供たちのスイッチが入る−

◆鈴木(光) 言いたくないけど今の学生は、マニュアル的なものをやらせると素晴らしく能力を発揮しても、創造性となると欠けているんじゃないか。先程唐津先生は「創造性がないだなんて言う馬鹿が」と言われたが、実際はそんな感じを受ける。今の若者は小言を言うとすぐつむじを曲げて下手するとやめちゃうので、特に中小企業では使いにくい。我慢、忍耐ができなくて、ちょっとしたことでキレたとか言って、すぐ違う考えになっちゃう。感謝の気持ちも持てていない。朝のあいさつ一つとっても満足にできない。だから我々企業は一から教えているが、本来は学校教育や家庭の中で身に着けてくるもので、そうなれば我々はもっと人間教育だったり実戦力になる鍛え方だったりができるのだが。
◆青木 まったく鈴木さんと一緒。会社で教育できることは限られている。ただ学校で教えられることもわずかだと思う。家庭が一番大事。大坪先生のお話を聞いていて僕、先生の学校行きたいなと思ったんだけど、この、子供に訴える大人が少なくなったのが一番問題かと思う。語り合うということが一番大切なことではないか。衛星をやりだして一番よかったなと思うのは、私57歳だけど、自分自身が今なんか青春時代だ。だから相手にもおそらくそのような形で接触できるんで、若い子だとか大人だとかいう感じがあんまり自分ではしないようになってきた。それが若者がついてきてくれるもとかなと思う。
◆岩谷 海外で会社をつくると文化が違う、バックグラウンドが全部違う人間を採用するところから始めなければならない。面接しても、言葉は悪いがどこの馬の骨か分からない。オハヨウとコン二チハぐらいしかできなくても私は日本語ができると平気で書くような国の人もあるわけだ。だから人を見極める目というのが大事で、採用したとしても一からのスタートなのである。私が教えている学生はもう20歳を超えているから、ある部分もう変わらない。一番いいのは授業が終わった後に学生を連れて社会人と会わせて、酒を飲ませて社会人から色々教えてもらうことで、今実践していて結構効果がある。
◆大坪 最近社会人の方が随分大学に見える。学生と机を並べて勉強すると、学生は社会人の勉強態度にびっくりし、社会人は学生の勉強している先端的な内容にびっくりし、相互作用がある。これからはいつでも学校に、大学に行く時代じゃないかと私は思っている。それではこの辺で会場の皆さんにご質問、コメントなどをお願いします。

出過ぎた杭は打たれない。出過ぎましょうや

◆長谷川浩之氏(エッチ・ケー・エス代表取締役社長) 夢が大きいことはいいことで、私の会社も飛行機のエンジンを造っていて、世界を相手に富士山の麓で大きな夢をぶち上げている。しかし、役人があまりにもうるさい。産学協同としてなら簡単にはんこが押されるが、民間だけだと駄目。私は規制があまりにも日本のものづくりの自由度を奪ってしまっていると思う。衛星プロジェクトを協同組合でやるのももしやその辺かと思うのだが。
◆青木 まったく同感。だけどね、出る杭は打たれる。出過ぎた杭は打たれない。沈んでいる杭は抜かれてしまう。出過ぎましょうや、とことん。その代わりどんなバッシングに遭うか分からないから勇気がいる。信じていく勇気が今一番大切。やろうと思ったらできると思う。暗い話をしたから暗いことが直る、ということではない。確かに東大阪でもあちこちシャッターがしまっている。しかし逆にそれは、きつい言い方だけど変わるときは仕方ないだろう。何としてもよくするんだという気持ちだったら、何か動かないといけないのではないですか。その動き方は顔が違うように違うと思う。

安全な所にいる人間は鈍感。そんな人間が国を動かしている

◆渡邉惣蔵氏(角山代表取締役) 5年で日本は変わると言うが、私はこのままじゃ日本は変わらないと思う。政治家が庶民の苦労を知らない。色々経験したことがない人が政治を執っていては日本はよくならない。私は日本を変えるためにも、どうか民間から総理大臣を出したい。ぜひ国民がここで決起して政治の流れを変え、血のにじむ思いの経営者が日本の国を執るような制度にしていただきたいと私は思う。
◆鈴木(光) 経営者というのは、現実には夢よりもことしいっぱい持つか、来年持つかと、いつもこんな心配の中でやっていると思う。今我々が持つ金型のノウハウを、大企業が中国に持って行っている。そして我々は、中国では日本の半分のコストだ、お前らも半分でやれと言われて、同じ土俵の上で勝負させてもらえない。ご存知のように中国には日本からODAが行われているが、この金が今、中国の新しい技術や機械、設備のために使われている。もし金型の技術が取られたら、その国でいい製品が作られてしまう。だから今政府があわてているが、それでもまだODAで金をばらまいている。これが現状なのだ。

「価値づくり、人づくり」そして「人使い」

◆戸塚好之氏(県富士工業技術センター所長) 教育は非常に難しい。こうやれああやれと言われて伸びる人もいれば、何も言われなくても立派な人を見て伸びる人もいる。人によって教育の仕方はものすごく違うんじゃないか。教育とはこうだ、というものはたぶんない。ただ、教育をする人はやはりそれなりの努力をし、人間性を磨かないと駄目だと思う。親を見て子供は育つ。会社の社長や学校の先生、そういった人を見て人は育つ。
◆齊藤公紀氏(大昭和製紙取締役会長) 非常に世の中がペシミスティックな流れの中で、どうやって価値を付けやる気を出させるかは、すごく大きなテーマだ。我々も試行錯誤しているが、海外から製品が入ってくるから設備も過剰になり止めるといった現状で、やる気を出させる難しさも感じている。フリーターでも食べていける世の中だが、テクノクラートを増やすためどうやって動機付けするか。弱気になった時にどうやって元気を出すか。
◆大坪 悲観からは何も生まれないという。楽観から価値は生まれる。教育の現場にいてもできない学生を動機づけると光ってできるようになる。
◆青木 先生のおっしゃった通りで、私批判されたらやる気起こしません。ほめてもらったらどこまでも伸びます。だから人間単純なんじゃないかな。センスをお互いに磨き合うというのをしとかんといけないのではないか。僕らまだ何もしてません。口一本でここまで来てるんだから。これでできなかったらどうします?大阪のホラ吹きがと思うでしょ。うちの業績言うと、同時テロがあってドーンと下がってて、本当はここへ来て話してる場合と違うのが実態。だけど皆さんと知り合う、こういう縁を大事にしたい。僕は自分で言ってます。しんどい時はしんどいんや、こうやでーと言うと何言うてんねんという調子で皆、答えてきてくれるんです。そりゃ苦しいけど、中小企業というのは社長がつぶれないと言ったら絶対つぶれませんよ。なんぼ儲けてる社長さんでも、ちょっとつぶれると思ったらすぐつぶれます。やっぱりいい嘘つかなきゃいけない。立場上、やっぱり元気出さなくてはいけないのでは。
◆大坪 今回は教育の話が多かったので、最後に鈴木教育長にお話をいただきたい。
◆鈴木(善) 子供のこころざしを育むには、子供にかかわる者がそれにふさわしい生き方や姿勢を取らないと駄目だ。特に教師はたとえば自らが夢を追い、子供の成長を本気で楽しみにする、そういう姿勢が大事。合わせて、私たち自身も学び続けると同時にぜひ子供たちを長い目、ゆったりとした目で幅広く育てていただきたいと、改めてお願いしたい。
◆大坪 日本をよくするのは、私は経営者だと思う。経営者が元気を出して新しい創造をすれば日本は絶対によくなる。また人材活用の創造も経営者の責任。なかなか難しいが、私はいつも私が人使いが悪いのだと自分に言い聞かせている。日本は人材大国だ。日本の再生は人材活用法にあるだろう。「価値づくり、人づくり、人使い」として終わりたい。


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