慶応義塾大学教授
小此木 政夫氏が講演
サンフロント21懇話会は静岡政経研究会との共催で3月7日、慶応義塾大学の小此木政夫教授を招き、沼津市魚町のサンフロントで特別講演会を開いた。朝鮮半島情勢の第一人者として各メディアでも活躍中の小此木氏は「朝鮮問題と日本の外交」と題して講演。イラク情勢と共に緊迫している中での講演とあって会場は130人余の聴講者で埋め尽くされた。
小此木氏は「今の北朝鮮の状況は冷戦が終結した10年ほど前と違って世界史的な問題になろうとしている。それはイラク問題と連動しているため」とした上で、北朝鮮が核兵器やミサイルといった戦略兵器に手をつけたこと、一昨年9月のアメリカでの同時多発テロ事件以降、アメリカの北朝鮮を見る目が変わってきたことを理由に挙げた。
アメリカでの同時多発テロ事件から1年後に小泉総理の電撃的な訪朝が実現した根底には、「北朝鮮側が、アメリカからイラクと同じような扱いをされることを避けたいという狙いがあった。日本外交の、北朝鮮に対する立場が次第に強くなっていき、そのピーク時に小泉訪朝が実現した」と述べた。
しかし核問題を巡る今の状況は「お互いに一歩も引かず突っ走るチキンゲームのような状態」と述べ、現段階ではアメリカが北朝鮮に核を廃棄させる決め手はないとした。
その上で、今後の北朝鮮情勢がどう展開していくかはイラク戦争がどんな形で終結するかによるとの見通しを示した。
イラク後に考えられるシナリオについては、(1)アメリカの武力行使(2)米朝当事者間の合意(3)日本の仲介による戦争の回避を挙げ、「武力行使は大変危険なシナリオ。また米朝の頭越し合意では拉致問題が入り込む余地はなくなる。日本の仲介で事態が収拾できれば、拉致問題解決の道筋も開けてくる」として、日本外交の果たすべき役割に期待して締めくくった。
|