県の魅力を高めるために静岡県はどういう角度から県政に取り組むべきか。煎じ詰めて言えば4つのK、「交通条件」「環境」「健康」「教育」に現在重点を置いている。
第1番目のKの「交通条件」だが、静岡空港の問題では東部地域の方々はかねてよりマイナスの方向で関心のある方と、全然無関心な方と、それからようやく最近現れたのだが東部にも空港は意味がありそうだと思っていただける方と三者三様である。静岡空港はことしで事業採択から10年が経過した。公共事業に対する国民からの厳しい批判を受け、長期にわたる事業については継続の是非を問う事業再評価の仕組みが導入されたが、事業開始10年の静岡空港はことしその関門に差し掛かる。また土地取得に関しては地権者約200人のうち98%の同意を得たが、残り2%、4人が強硬にノーと言っている。これを放置すれば早ければ来年にも工事の進行に支障が出る状態で、土地が買えなければ事業再評価の関門をクリアできても机上の空論と言われるのは必至だ。いよいよ伝家の宝刀である土地収用法の適用をしてでも取得する、と県の意志を固めた。平成19年の開港を目指して早ければ8月下旬にも土地収容事業の認定申請の手続きを開始する。
こういうことになると反対する方々が色々な動きをしてくるが、我々としては機会をとらえて空港の必要性を訴え、各方面のご理解を得られるようにしていきたい。空港議論についての、特に東京の方を中心としたいわゆる有識者の方々の発想は、世界の動向から見るときわめて反対方向でどうかしてるんじゃないかと思う。静岡みたいな所は便利な場所で、わざわざ空港なんか造らんでもいいと言うが、詳しくその人たちの意見を聞くと、すべて自分たちの本拠である東京と静岡との行き来を考えて判断されている。我々は決して東京との関係で空港を造るのではない。東京よりももっと遠い国内の地域、あるいは国外との関係を考えて、空港はこれからの静岡にとって不可欠という確信のもとにやっている。なかなかそういうことに理解が得られず誠に残念だ。イギリスのバーミンガムはロンドンから北に170キロに位置するが、その空港は年間740万人の利用客がある。ヨーロッパの場合歴史的に各地の往来が激しく各地で機能分担ができているのだが、今東アジアで起きている現象を見ると、
今後は日本とアジア大陸との間にもお互いの技能を補う形の非常に濃密な交流がありうる。中国や韓国などの経済発展で日本の産業の空洞化が言われ途中経過でそういう現象も起こることは否定しないが、今後未来に向けていかに相手国の反映に合わせて我々もメリットを受けるように努力するかが、日本の経済の立ち直りの原動力になっていくのではないか。
「環境」「健康」「教育」の3Kについては順調に事業が進んでいる。特に東部に関連して言うと、昨年9月に開院した静岡がんセンターは順調なスタートを切り、我が国トップレベルのスタッフが新薬や新しい医療機器などに旺盛な研究意欲を持っている。そうした背景のもとファルマバレー構想も実行段階に移ってきていて、ことしは400床以上の県内の大型病院20が参加した治験ネットワークが動き出す。これは新薬開発のフィールドを提供することもさることながら、その前提として電子カルテを共通の様式で導入することで病院相互が診断技術や医療サービスなどの情報を共有化することができ、県の医療水準は上がるだろう。そういう基盤ができたのは我が国では静岡県だけだ。2年後に始動するがんセンター研究所には東京工業大学の生命工学の大学院が進出することも決まり、早稲田大の大学院、東大の研究者も参画を検討中で、ファルマバレー構想は全国の関係者から関心を集めている。何年か後には世界的にも評価される研究成果が出てくるのではないか。それがこの地域の産
業力アップにつながると期待している。
このように東部にはファルマバレー構想があるが、中部は食品関係を中心とした都市型の産業の拠点として、西部は光産業の世界的な拠点として今後花開くことを期待する。それぞれの地域が特性を発揮しながら、その効果を全県、全国に及ぼすことで静岡の魅力と実力を高めたい。現に、色々な取り組みが知られたためではないかと思うのだが、昨年の本県における企業の工場・事業所の立地件数は53件と全国第1位で、静岡県は非常に元気が出てきているという感じがする。ちなみにこのうち32件が東部だ。いずれにしても、この地域が素晴らしいと外から思われることで、本当にその素晴らしさを実現してくれるような高い能力を持った人がやってきて活躍してくれて、相乗効果で静岡の活力・魅力が高まる好循環に入るのではないだろうか。企業の立地件数の回復はその兆候の一つではないかと思う。
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