サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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活動内容
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会員リレーエッセイ
成果主義の行方
千谷 基雄(富士通(株)沼津工場長)

 昨今多くの企業が争って労務管理に「成果主義」を導入している。厳しい競争の中で年功序列や終身雇用が維持できなくなってきている状況では、「仕事に対する成果を基準に報酬を与える」というのはいかにも尤もらしい。高齢化が進む中で、総労働コストを迎えて競争力を維持するためには、報酬を直接成果に対応させるべきだというのも経営者の本音だろう。しかしだから「成果主義だ」というのはやや短絡的にすぎないか。

 成果を評価するためには、もともと達成成果目標があらかじめ決められている必要があるから、通常いわゆる「目標管理」という考え方と対になって「成果主義」というものが制度化される。客観性を持たせるために一般に目標は数値で表現されるべきだとされる。売上目標や生産台数あるいは故障率等企業活動の各場面で数値目標が使われる。顧客満足度なども受けたクレームの数など数値目標に還元可能だ。殆どの企業活動は何らかの形でその成果を数値で表現できるという仮説に立ったとしよう。そうであってもその数値で表現された成果を処遇や昇格に使うためには、多くの困難がともなう。

 先ず、成果は通常、チームや組織によって達成される。それを個々人の貢献度に数値的に分解するのは至難の技だ。貢献度を数値で表現しなければ公平な処遇はできない。無理な数値表現をすれば著しい不公平感を醸成し、チームや組織のモラルは一気に崩れる。

 次に、企業活動の多くは自ら制御できない要因によって強い制約を受けている。他社の動向、市場の変化、景気、天災や事故、主要メンバーの病気などなどである。これが著しく成果を左右する。運・不運の世界だ。運・不運で自分の処遇や昇格を決められて納得する人はいない。また故障率を著しく下げた技術者と製品を多く売り上げた営業マンのどっちが企業価値により多く貢献したか、など言えるだろうか。さらには、数値目標で管理するなどと言われれば多くの人は自ら与えられた目標の達成に集中し、他人の仕事は顧みない。企業活動全体も忘れてしまう。これは悲しいかな人間の性だろう。

 強い企業とは、全従業員が絶え間ない環境の変化に、その場その場で迅速かつ適切に対応する力を持っている企業のことだが、数値目標による管理にやっきになっている企業では人々は環境の変化を無視する。環境の変化はないという前提に立った方が目標達成の可能性は高まるからだ。これでは「成果主義」が機能するとはとても思えない。
 チームや組織に数値目標を与え、チーム同士を競わせたり、目標達成を楽しんだりすることには大いに賛成だ。わかり易いし、緊張感も生まれるし、やりようによっては職場も大いに活性化される。異論を唱えているのは、それを人々の処遇や昇進・昇格に結びつける考え方だ。運・不運は一過性だから凌ぐことができる。運・不運を永続的な価値に結びつけてはいけない。

 処遇や昇進・昇格などその人の価値を表すものは、その人が実際に果たしている役割で決めるのが基本だと思う。高いパーフォーマーにはさらに難易度の高い役割を担ってもらう、あまり実績を生み出せなかった人にはより容易な役割で十分に力を出してもらう。実績とはその人が何をなしたかということであり、生み出したものの価値・難易度・企業実績への貢献・組織への貢献などいろいろな尺度を明示的に用意し、上司が責任を持って実績を評価することが大事だ。この評価の仕組みにこそ知恵を絞り、客観性を持たせることが重要だ。結果は通信簿のように表現できた方がわかり易いし、評価された方も行動の修正がしやすい。おなじような役割を果たしている人同士なら相対比較しやすいだろう。要は、企業は必要としている役割構造を明確にし、それぞれの役割に最も最適な人を配置していく、人々はそれぞれの役割を果たす専門家として企業活動に貢献するという形を作り上げていくことだ。これが来るべき労働流動化への対処の鍵にもなる。これはスポーツや芸術の世界では当たり前のことで、一般企業の常識になっていないのが不思議だ。



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