サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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第9回伊豆地区分科会 平成16年7月6日(ラフォーレ修善寺)
「国際観光時代の課題と戦略」


■講師

惟村正弘氏
運輸審議会首席運輸審理官(前国土交通省観光地域振興課長) 

 生まれも育ちも富士宮で、両親は浅間大社のそばで乾物屋をやっております。高校が沼津東高でして私の友達も下田から伊東、熱海にいます。就職しましてからは沖縄県の勤務を皮切りに全国を点々としております。
 前任の観光地域振興課長の時には、ビジット・ジャパン・キャンペーンの立ち上がりにタッチしました。役所は2年から3年でどんどん変わります。一つの政策で見ますと、タネを播く人、育てる人、そして最後に一番おいしいところを食らう人といいますが、ビジット・ジャパン・キャンペーンのメンバーの一人として私も種を播き、芽が出るまで育てたかなという自負があります。そういうことで、きょうここでお話させていただきたいと思います。
いろいろな地域を回らせていただき、各地域の観光協会、あるいは温泉組合の皆さんともお話しさせていただいておりますが、全体的に見まして観光は派手ですが、中小企業が多く、どの地域も観光で町おこし、地域おこしといっておりますが、その中心となっている観光業界、とくに旅館、ホテルの皆さんは苦しんでおります。その中で国際観光という新しいマーケットをめざしまして、どの地域もがんばっておりますので、この地域も一生懸命新しい市場をめざしていただければと思います。


アジアからのお客さんが伸びている

 現在の観光の情勢を簡単に見てみたいと思います。外国に行く日本人は平成4年度で年間600万人、5年度は329万6千人、2割近い落ち込みでした。また国内旅行は5年度の数字が国民人あたり.28回宿泊旅行をしております。これはずっと継続的に落ちています。一時、3年度、例の9・事件があった後、国内は若干持ち直すのかなという期待が全国に広がり、3年度から4年度にかけて.42回で横ばいになったのですが、5年度はまた大きく落ち込みました。この原因は何でしょうか。私どもが分析したところ、やはり可処分所得が減っている。あるいは少子高齢化や雇用調整等で先行き不安があることが相当影響しているようです。特に旅行という消費財は所得弾力性が非常に大きく、苦しくなったときは最初に削られてしまうところかと思います。
一人当たりの国内旅行の消費額も非常に減っており9万3000円。一昨年の4年度と比べると2・6%減っている。そして国民生活世論調査によると、今後の生活の力点は、やはり貯蓄です。後は食生活、そしてレジャーは落ち込んでいるんです。景気の影が相当影響していると思われます。
 日本に来る外国人は、昨年度52万人。日本人が外国に行くのが2割近く落ち込んでいるのに対し、SARS(サーズ)があって前半は落ち込みましたが、最終的には0・5%増になっています。
 外国から日本に来るお客さんが、今年は4月の速報値で対前年に対し50%伸びているそうです。ビジット・ジャパン・キャンペーンが効いたのか、その辺の分析を観光部門に指示したところです。一つには香港の人たちが日本に来る対日旅行ビザが今年4月からノービザになり、その影響もあって伸びていると思いますが、全般的にアジアからのお客さんが伸びております。日本人は元気がない。外国の方々の方は元気がある。それが最近の情勢です。


観光部門は輸入超過で2.5兆円の赤字

 もう一つ、海外旅行に行く日本人と日本に来る外国人の方々のアンバランスの問題があります。よく4対という言葉が出てきます。2002年の数字ですと、300万人と500万人ですから、いまは3対になっておりますが、それでもまだまだアンバランスです。日本人が外国で使うお金が267億ドル、これに対し外国の方が日本で落とすお金は35億ドル。差額が約2・5兆円ですから、日本国としては2・5兆円の赤字です。
 景気が悪いからといっていろいろ輸出振興を経済界はやっていますが、観光の面から見ましたら輸入超過です。黒字減らしに一生懸命の頃はこれでいいでしょうが、今は情勢がガラッと変わっていまして日本国もそんなに余裕がない。むしろ輸出を増やして外貨を経済のテコにしたいというのが一つの国の方向ですので、この2兆5000億円の赤字というのは相当に大きいと思います。
 もう一つは文化的な面ですね。外国の方々が日本に来てくれないというのは、何か日本に問題があるんじゃないか。お隣の韓国、国土も人口も日本の3分のくらいの国ですが、その韓国ですら日本以上に世界中からお客さんがたくさん来る。海外からのお客さんが少ないのは、やはり文化的にもマイナスですし、国が世界から尊敬される国かどうかといいますと、若干それは疑問だと。このような点から、このアンバランスを何とか解消して行かなければいけないということです。


ビジット・ジャパン・キャンペーンの始まり

 それで、何で今観光か。一番大きいのはやはり経済の波及効果だと思います。観光産業は経済の中でも非常に大きい産業です。2002年で生産波及効果が49・4兆円、雇用創出効果が398万人、これは日本の自動車産業が40兆円産業、金融保険関係の雇用者数は約200万人ということですから、観光というものを産業で見た場合は、雇用者数では金融保険を上回り、生産波及効果は自動車産業以上の産業なのです。
実はこの産業の持つ経済の大きさ、私が観光地域振興課長をやっていた時からこれに非常に関心を持っていた人がいました。それは竹中大臣です。経済財政諮問会議で骨太の方針を検討している時、特に経済効果の面について時々諮問がありました。この関心が観光立国のビジット・ジャパン・キャンペーンにつながる政府の政策として大きく伸びていくきっかけになったのではないかと思います。
 実はビジット・ジャパン・キャンペーンが始まるまでは国土交通省の観光行政は非常に予算も少なく、どちらかといえば淋しい部署でした。4年度までは4億円にも満たない観光予算でした。しかも観光業界の皆さんも訪日来客の方にはあまり熱心ではありませんでした。とにかく日本人を外国に送り込むこと、アウトバウンドに熱心でした。地方公共団体もどちらかというと国際観光の方にやはり関心があるといいながらお客さんも少ないしちょっとした飾り、刺身のつまとしか思っていなかったんではないでしょうか。
 平成4年2月、小泉総理大臣が通常国会の施政方針演説で観光について言及した、これがすべての始まりです。担当部署のわれわれも正直言って非常に驚きました。歴代総理の施政方針演説で観光について触れた総理は一人もいませんでした。私どもが観光行政をやっておりまして、当時の大蔵省に予算要求しても、まず言われるのは「遊びにつける金はない」と。これが霞ヶ関の認識でした。
 下地がなかったわけではありません。竹中大臣からは資料要求がちょこちょこありました。もう一つはその2年ぐらい前からの日本と中国の交流です。特に平成2年5月、日中文化観光交流使節団ということで、5000人が中国に行き、人民大会堂で大会食会をやりました。その時に江沢民国家主席がわざわざ出てくれ、次の年は日中国交正常化30周年で中国から5000人の方々を招いて東京フォーラムでやりました。この時小泉総理も出席しました。そのような下地がありましたから官邸の方も観光は重要だというのがインプットされていたと思います。
 この施政方針演説から観光がワッと動き出したわけです。諮問会議の骨太の方針パート2には外客誘致の必要性を盛り込んでいただき、政府の中で観光の重要性をどんどん盛り上げていきまして、ようやく4年度末の5年度予算編成では、当時の塩川大臣と扇大臣のトップ交渉で今まで3億8000万円の予算を思い切って20億円まで上げていただき、ビジット・ジャパン・キャンペーン予算として認めていただいたわけです。


200年には000万人まで倍増を目標に

 こうなったら国交省としてもやるしかありません。大臣がヘッドで主な観光団体の長、あるいは航空会社、旅行会社の関係者の皆さんを集めて、国交省にキャンペーン実施本部を作り、いろいろ運動を始めました。同時に官邸も動いてくれました。予算が付いた後平成5年月3日に総理大臣が2回目ですが、観光について施政方針演説でさらに踏み込んだ発言をされ、約500万人の訪日外国人旅行者数を200年には000万人まで倍増させることを国の目標にするということを明言されたわけです。
 総理が言った以上は国交省も官邸もすぐに動きました。小泉総理大臣、福田官房長官、木村尚三郎先生ですとか、慶応の島田先生らをメンバーとします観光立国懇談会が組織されました。観光立国を推進する必要性、何で観光が必要なのか、日本にとって観光を推進する意味は何なのか、その意味、哲学について数回議論があったと思います。その報告が4月24日に出まして、さらに報告書を受けて関係閣僚会議が行われ、観光立国行動計画が決定されたわけです。これは関係閣僚会議決定ということになっており、観光関係の全省庁が横断的に今後やるべき計画243項目が書かれています。


「観光は住んでよし、訪れてよしの国づくり」

 観光立国懇談会の報告書について、かいつまんで言いますと、何で日本が観光立国として政策を進めるのか。懇談会は2つの理由を挙げています。つは世界が変わるという認識の下で国際文化交流の重要性を説き、日本が独自に文化をプレゼンス出来るような国になり、最終的には周辺の国々から尊敬される国にならなければならないと。そのために観光振興をやるんだということが書かれています。IT革命や大型ジェット機の開発で世界はどんどん小さくなっています。20世紀の初頭は世界周するのに50日かかりましたが、今は30時間で周できます。本当に世界は小さくなり、大交流時代が来ております。日本は大交流時代に乗り遅れています。これは制度的な面もそうですし、日本人の持っている人の心も大交流を閉ざす傾向があるのではないかということをうたっています。
 その大交流を進めるもととなるもの、国民のレベルで進める一つの方策が観光です。20世紀は軍事力や生産力といったハードパワーが他国に威力を及ぼした時代でしたが、2世紀は知力、文化力、情報力のようなパワーが他国に影響を与える時代に移り変わっております。そういう中で日本が積極的に文化交流、国民一人ひとりがやる観光交流を通じて、日本が世界の中で独自のプレゼンスを示すことが出来る。それが尊敬される国造りというものに通じるのではないかということをうたっております。
 2つ目は観光の革新という項で、文化の磁力を高めた国づくり、地域づくりをうたっております。観光をやっている皆さんなら観光の語源をよくご存じでしょうが、中国の古典「易経」に記されている「観国之光」、国の光を観るに由来するといわれております。その意味は、一国の治世者はくまなく領地を旅して民の暮らしを観るべしと。民の暮らしは政治の反映である。政治がうまく行われていれば民は生き生きと暮らしていける。生き生きとした暮らしは光となって、他国に威勢光輝を示すことができる。そういうことによってあの国は侮れないということで国の安全保障にもつながることから「易経」で観光という言葉が出ていると思います。
 この観光というのは、一つの地域に住んでいる人々がその地域の誇りを持って磨いていく。為政者、政治もその国土を磨くことに努める。その国の光を磨き、示すこと。これが観光であると、深く読むとそういう意味でして、観光という本来の意味、原点に戻るべきではないかいうことをうたっております。
 すなわち、観光は地域づくり、まちづくりと密接に関わると。それで基本理念としまして、「観光は住んでよし、訪れてよしの国づくり」というキャッチフレーズが出てきたわけです。この言葉は小泉総理の発案だと間接的に聞いております。やはり観光の革新によりまして、それぞれの地域が光を増す。そして外国の方々が、日本はすごく光っている、回行ってみたいな、学んでみたい、できれば住んでみたいと、ある意味では周りから羨ましがられるような国土をつくる。そもそもこれが観光を進める、観光立国の原点ではないかと思います。以上のようなことが観光立国懇談会の第1章に書いてあります。


現在国が進めている政策の方向

 本当に観光をどうやって進めるか、それを政府の中、官邸の中でも意思統一を図り、これをもとに観光立国行動計画を作り、国民に周知し、国づくりに向かっていく。これが国の指針となる大きなやり方かと思います。このような経過で、去年7月に観光立国行動計画がつくられました。これをもとに現在、政策を進めております。全部で5章に分かれております。
 つ目が、2世紀の進路、観光立国の浸透というとことです。工業国、貿易立国一辺倒からの脱却でして、国民に観光に関する価値観の転換を求める観点から、いろいろな政策が述べられています。例えば、総理官邸に日本にお客さんを送っている主な国20カ国の大使を招きまして、招客の理解を求めました。あるいはNHK教育テレビとタイアップして観光シンポジウムを今年2月に放映しました。こういうことで観光立国の必要性を世界に示し、国民に理解を求めるという政策です。
 2つ目が、日本の魅力、地域の魅力の確立。ここの副題は1地域、1観光とついております。観光立国を進めるに当たり国の役割と地域の役割というものがあるという発想に基づいています。各地域がそれぞれ持つ魅力を自主的に発見して高め、競い合う。国は外に宣伝しましょう。外からお客さんを引っ張ってきます。直接的、間接的、ハード、ソフトでお手伝いはしますということを述べています。15年度は各地域が自主的に、うちの地域はこんな魅力がありますよということを情報提供して、それを集めて海外に発信するデータベースを作る「発見観光宝探しデータベース事業」とか、あるいは「観光交流空間作りモデル事業」、これは運輸局と地方建設局、国土交通省あげて地域を指定し、その地域を集中的にハード、ソフト面で支援する。例えば道路整備、河川整備等についても配慮して政策を進めようとしているわけです。あるいは景観法の改正、電柱類地中化の推進で幹線道路ばかりでなく、観光地域で必要なところをある程度優先しましょうと。このようなお手伝いはしますが、その前提として各地域ががんばってくださいというのが、この2番目です。
 3番目が、日本ブランドの海外への発信。これは日本の自然、文化、伝統、生活などの魅力を効果的に外国へ発信する。これはそれぞれの地域もいろいろと誘致活動をおやりになるでしょうが、国の方も責任を持ってやりますというところです。ここのところを、私どもビジット・ジャパン・キャンペーンと呼んでいます。具体的に昨年度、トップセールスの実施ということで、小泉総理に英語でお話いただくビデオを作り、海外のマスメディアに配り、テレビ等でも流させていただいております。また、前の扇大臣は、日本語で、そして今の石原大臣は中国語でおつくりいただきました。それ以外に海外等の旅行博への出展、旅行会社等の招聘旅行、新聞、雑誌、テレビなどのメディアを通じた放映、メディア関係者の招待と、大体どの地域もおやりになっていることです。日本に送客してくれる主な国々の現地で大使を中心に日本の主な旅行会社の支社等を交え、現地のビジット・ジャパン・キャンペーン現地推進会というのを全世界20か国で立ち上げました。あるいは地方連携事業ということで5年度は新幹線が青森の方まで延びましたので、それとあわせて東北3県と一緒に国の方もキャンペーンをさせていただいております。
 4つ目が、観光立国に向けた環境整備。これは制度的な面で国が主体的にやらなければいけないものです。一つは案内標識等の整備です。とくに個々の観光地はいろいろと工夫をされて、観光標識を作っています。私が非常に印象に残っているのは北海道の定山渓温泉で、地元の小学生に絵を描いてもらい石の板のようにしていました。それぞれの地域が独自の案内板を作っていますが、メインとなる道路関係の標識を、道路局と一緒に全国の道路関係案内板の整備のマニュアル化と整備をやっており、もう間もなく動くのではないかと思います。
 また、外国人が日本に来る時はビザを要求している問題があります。まだ韓国、台湾から日本に来る場合でもビザが必要なんです。実は香港がようやく今年4月からノービザになりました。中国についてはもっと厳しくて団体旅行でないとビザを発給しません。それもビザを発給する対象地域は北京と上海、広東省だけ。これからの有望市場であります中国についてすら、まだ制限的です。私ども国土交通省はノービザでお願いしますと、お願いする立場にありますが、いろいろな警備上の問題、法務上の問題、犯罪の問題等があり、なかなか進展しないのが現状です。そうはいっても日本が窓を閉ざしていましたら、日本だけ置いてきぼりを食らいますので、徐々に解決していく問題だと思います。
 もう一つ大きい問題は、成田での入国手続きの長時間滞留です。日本人はすっと通れるのですが、外国の方は30分以上待たされるのが普通です。これはなかなか難しい問題でして、はっきり申し上げて英語のほかに中国語や韓国語が出来るような方があまりいないんです。頭の痛い問題です。その他観光情報の提供、外国人向けの割引制度だとか宿泊情報の提供、こういういろいろな政策もやっていかなければなりません。こういうことを観光立国行動計画の中で進めましょうといっています。しかも5番目にありますが、この行動計画は毎年反省をし、見直して、やっていきましょうということが書いてあります。
 6年度につきましては、予算も32億円に増やしていただきました。制度的な改正も含めてこれから特に観光立国行動計画は官邸主導で動いており、私ども観光の部署につきましても人員の増強も順次なされておりますので、積極的な対応を今後できるのではないかと思います。以上が、現在国が進めている政策の方向です。


伊豆は国際観光にターゲットを

 次に、伊豆の国際観光について話をさせていただきたいと思います。私もいろいろな観光地を見させていただいておりますが、どの地域に行っても私が静岡出身ですというと、ああいいですね、恵まれていますねと、よく言われます。
確かに、日本で横綱級の観光地といったら伊豆と京都、沖縄、北海道ぐらいだと思います。ただ残念ながら横綱である伊豆が最近休場ばかりしているようなイメージを受けます。国際観光についてはこれからスタートで、どの地域も今、がんばっていますから、新たな場所≠フ始まりということで、いろいろと作戦を皆さんで練っていただきたいと思います。
その中で2、3言わせていただきます。
 まず国際観光をやるターゲットをはっきり絞られた方がいいと思います。今まで皆さん、国内観光をやってきました。国内観光と国際観光、まずどちらに比重を置かれるか。ターゲットをはっきり絞られた方がいいと思います。国内観光は若干、市場が縮小気味です。日本の市場はこれから横ばいということはあっても大きくなることはないと思います。その国内市場を巡っては多くの自治体が観光で町おこしということで一生懸命やっています。例えば湯布院にしても黒川温泉にしても温泉で成功している観光地はいっぱいありますが、彼らがめざしているのは、やはり「古き良き日本」を作るという発想が根底にあるような感じがしてなりません。彼らは日本の観光客をめざした国内観光です。この大きい有名な伊豆で、そのようなところを真似してやっても、規模的にもあいません。そういう意味では国際観光をターゲットにしていった方が、いいのではないかというのが、私の気持ちです。
 国際観光は、何も難しいことではございません。韓国、台湾、中国の方々も皆さん、温泉が好きですし、火山が好きです。雪が好きで、富士山にすごく憧れています。日本のナベ料理は最高だと。私も中国の方と何人か付き合っていますが、普通の日本人とまったく変わりません。日本海という大きい川の向こうに韓国とか、香港とか、中国があるわけでして、本当に川向こうです。川向こうにたくさんいらっしゃるんです。後は橋を何本も架けてやれば、これからどんどん来ると思います。


韓国で有名な別府温泉と小樽

 2つ目は、ターゲットを絞ったら国も絞った方がいいと思います。全方位外交で中国もやりたい、アメリカもやりたいというのは分かりますが、そんな宣伝のお金も多分ないと思いますので、それは集中的に攻められた方がいいと思います。成功したら次の国をやればいいわけです。
 日本に一番お客さんを送っているのは韓国です。韓国は昔から九州が一生懸命運動をやっておりました。別府温泉、これはもう韓国では非常に有名です。別府温泉に入り、阿蘇に行って、阿蘇の火山を見て、福岡で買い物をして帰る。キム・デジュン大統領と選挙を争った大統領候補も選挙が終わったときから別府温泉の方に来ておりまして、それが韓国で非常に話題になったと新聞でも読みました。非常に身近なものになっております。
 鹿児島と香港の結びつきも昔からあります。韓国の女性たちに一番有名な日本の町、これは北海道の小樽なのです。「冬のソナタ」が日本でブームですが、実は2000年に「ラブレター」という中山美穂さんの映画が韓国で一斉公開されたんです。小樽が舞台になっており、これがすごいブームで、私が観光地域振興課長をやっているとき市長に伺いましたが、あの映画以降、毎年8000人から9000人の韓国の女性が小樽に来て泊まってくれるといいます。小樽もそれに合わせて一生懸命まちづくりをやっています。


台湾は和倉温泉

 次に台湾。台湾で一番有名な日本の町は和倉温泉なんです。非常に台湾の企業は元気です。日本の高度成長時代と同じようなことをやっています。優秀な従業員やお得意さんを旅行に連れていったり、インセンティブツアーが日本以上に盛んです。それがめざす先は大体、和倉温泉です。台湾から日本に来ているお客さんをみますと、まず石川県の小松空港に来て北陸の温泉郷をめぐって関西から関空で帰るとか、その逆とか、ということです。
 今、能登空港、あんなに駄目だと前評判だった空港が5カ月連続で東京便は90%を超えています。驚異的なお客さんが入っています。特に加賀屋さんの今の会長さんが県の観光協会の副会長をやりまして、先頭を切って熱心です。能登空港が出来たから、次は中国だと、この前言っておりました。台湾でもう一つ特徴的なことは、成田空港がいっぱいということもあり、台湾と中国との関係もあって、台湾との行き来はチャーター便が非常に多いです。台湾から来るチャーター便は、結構、福島空港を利用しています。福島空港で降りていただいて、五色沼だとか日光を見て、これで潤っているのが草津温泉なんです。それで東京に流して秋葉原というコースなのでしょうが、中国との関係もあってなかなか台湾の飛行機をメイン空港に入れにくいということで福島空港ががんばっているわけです。
 岐阜県などは最近アメリカに非常に熱心です。それぞれの地域ががんばって自分の得意とするターゲットを絞って、おやりになっています。


2020年には海外旅行をする中国人が億人を突破か

 そして中国、今は2市省ですが、それにプラス4省市が加わりまして現在の旅行マーケット億人が3億人近くになるはずです。これからどんどん成長します。WTOの試算でも2020年には海外旅行をする中国人が億人を突破するだろうと言われております。日本人の国内旅行の回数が・28回ですから、国内旅行する日本人が延べ億5000万人くらいだと思います。国内旅行だと、せいぜい2泊。中国の方たちが日本に来ると大体4泊となりますと、中国人の海外マーケットの方が国内マーケットより大きいということになるのです。
 中国はとてつもなく大きいというご認識をいただきたいと思います。ですから中国を巡りましては日本の各地ばかりでなく周辺の国、韓国はもちろん、シンガポールですとか、インドネシア、ベトナム等皆さん虎視眈々と狙っております。そして香港、今年4月からノービザになりました。香港は非常に個人旅行が多い地域のようです。裕福な方々はリピーターでもう何回も日本に来ている状況もあるようです。


やはり伊豆は交通が大きい問題

 このような中で、皆さん方がターゲットを絞って狙いを定めておやりになられた方がいいと思います。具体的な宣伝の仕方、戦術につきましては、そんなにやりかたに王道はないと思います。ただがんばっている地域は、和倉温泉は和倉温泉なりに工夫している面はありますが、大まかなやり方はどの地域も同じだと思います。後は熱意だと思います。そして地元の環境整備の問題です。
 伊豆は本当に素晴らしい自然と立派な旅館がいっぱいあります。地元はそれを磨いていけばいいんだと思います。ただ2つ言いたい。つは交通の面です。交通がルートを描くのに難しい。福島空港から東京に入るルート、あるいは関空から和倉温泉に来るというと非常に行きやすいです。中国の方々は富士山と秋葉原は絶対的外せないポイントだといいますが、そのルート、私、きょう三島駅からタクシーでここに来るのに時間かかりました。渋滞なんかしているともっとかかる。これを関空から降りて、あるいは中部国際空港から降りてどういうルートでどう描いていくのか。やはり伊豆は交通が大きい問題ではないかと思います。


心の中の偏見を取り除いて

 最後におもてなしの心で一つ言いたいのは、そんなに難しいことではございません。笑顔も大切ですし、一輪の花も大切でしょうが、つ私がおもてなしの心でお願いしたいのは、心の中の偏見を取り除いて欲しいということです。
 実は私が関西国際空港の営業部長をやっているとき、ほんとに苦労したことがあります。最後にそれをお話したいと思います。空港には約90のレストラン、物販販売店があります。国際空港といいながらどの店も韓国語、中国語がなかなかできませんでした。そこで会社の方で各レストランのメニューとか商品の韓国語、中国語の説明札をみんな作って差し上げました。この時、最初はみんな賛成していたんですが、いくつかの店が反対を言い出しました。店に韓国語や中国語の表示を置いて、韓国人や中国人が来ると高級感がなくなると。本当にこれを説得するのに苦労しました。
 もう一つ、何カ月かたって各店からヒヤリングしたのですが、店長がいくら熱心にやっても従業員が嫌がるというのです。煎餅一個売るのに頭を使いながら中国人に売るより、日本人のサラリーマンにパッと売った方が楽だと。やはり総論は賛成でも、皆さん、どこか心の中に偏見がおありのような感じがします。これを私、取り除いていただくことが、まずおもてなしの心の第一歩だと思います。



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