サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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活動内容
平成16年の活動方針

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伊豆地区分科会 平成16年7月6日(ラフォーレ修善寺)
パネル討論 
  テーマ:「国際観光時代、伊豆の課題」

<パネリスト>
平原英夫  (eRyokanサービス椛纒\取締役)
宇田倭玖子(伊豆天城湯ヶ島温泉白壁荘専務取締役)
大村義政  (県生活・文化部理事)
惟村正弘  (運輸審議会首席運輸審理官)

<コーディネーター>
青山 茂   (サンフロント21懇話会TESS研究員)

◆青山 第1部で国としての大きな政策をお話しいただきました。それらを頭に置き、第2部を始めて行きたいと思います。具体的なヒントを提示して行けたらと思います。まず、国のお話がありましたので静岡県に目を向けてみたいと思います。静岡県で言いますと、観光交流客数は昨年で年間億2900万人。これは日本のランキングで言うと第5位に相当します。その中に占める海外からの訪問数は第2位、3.9%、約20万人というのが実情です。第位は東京で52.8%くらい集客しています。第2位は大阪で27%くらい。東京と大阪で80%くらいです。3位、4位を京都と神奈川が争っています。第5位は千葉県、ディズニーランドの影響があるのかもしれませんが、5位の常連です。
ひるがえって伊豆に目を向けると、去年の観光交流客数でいくと4400万人を超えるくらい、宿泊客で280万人位です。
ざっくりした言い方をしますと平成元年から観光客で000万人、宿泊客で400万人落ちています。ただし、静岡県内に占める宿泊客のシェアは伊豆が65%を占めています。ということは、静岡県の海外誘客を振興していくにあたって伊豆の果たす役割は極めて大きい。伊豆が成功しない限り、静岡県の成功もないということになります。200年には海外に関しても静岡県は観光交流客数並みの第5位くらいを狙いたいとおっしゃっています。大村さん、お願いします。


200年には海外から20万人を静岡県に

◆大村 国では小泉首相が自ら大々的に観光立国を打ち上げました。静岡県でも知事はかねてから静岡は観光立県だといっております。
観光というと非常に範囲が広いですが、端的にツーリズムという観点から言いますとグリーンツーリズム、エコツーリズム、ウエルネスとか、産業観光、都市観光、海とか港を生かしたブルーツーリズムと、非常に広範な範囲に及んでいます。これを県の組織の中でやりますとまさに縦割りの世界になりましてグリーンツーリズムは農林水産部、エコは環境森林部、ウエルネスは健康福祉部、ブルーは土木部だと。こんな縦割りになりますので、実は私の職ですが、生活文化部理事ということで、そういうことに横糸を通せという指示もありました。観光振興をなぜやるかといいますと、人口減少社会の中で地域の、経済も含めた活性化を図るには、まず交流人口を増やすことが第一だという観点から施策を進めています。
今、知事が4つのKの立県ということで施策を進めています。これは環境、教育、健康、交流の4Kで、交流立県には当然交通インフラも入りますが、観光振興もその中の大きな課題です。観光振興はもちろん国際交流の推進、交通インフラの整備などを掲げているわけです。
静岡県の観光の現状をみますと平成4年の数字ですが、観光交流客は約億3千万人、その中の伊豆が34%を占めています。ピークは昭和63年の億4千万人です。国際観光ですが、来日の外国人が静岡県に立ち寄る率は3.9%、人数にして約20万。お隣の山梨県が4.7%、24万人です。人口は静岡県が380万人です。山梨県は80万人強だと思います。こういったことからまだまだ、静岡県には余地があると考えております。
一番何が必要かと考えますと、観光振興にとって一番大事なのは空港ではないかと思います。静岡空港は平成9年春の開港を目途に着々と工事が進んでおります。完成したあかつきには国際観光も含めて静岡県の観光の地図が大幅に変わるのではないかと期待しています。そういった中で、われわれは200年を目途にいろいろな総合計画を立てておりますが、国内観光はピーク時の億4000万人をめざそう。全国で5位前後。国際観光についてもいろいろな仕掛けをして全国の5位、人数にすると20万人をめざし、大半は伊豆に呼びたい。こんな目標を掲げておりますが、あと6年しかありません。是非、ここでの意見を施策の参考にしたいと考えています。


英語圏の方のモデルツアーを実施


宇田氏

◆青山 白壁荘といいますと「夕鶴」の木下順二さんとか、「しろばんば」の井上靖さんの定宿で、文人の宿というイメージを持っていますが、宇田さんは県旅連の女性部のあけぼの会で国内在住の外国の方にアンケートを取ったり、外国人の目で見た日本の宿、日本の温泉地は何が課題になってくるのかというような調査もなさっております。その辺も含めながらお話いただきたいと思います。
◆宇田 私たちも小さなお宿ですが、中伊豆地域は文化的にも優れたお宿が点々とございまして、私たちは女性なりに、そして宿に居ます現場の主任として出来ることをやっていこうと誓いまして、静岡県あけぼの会という女性部の会を作りました。会員が減ってしまいまして300人、それをどのように維持して行こうかと思い悩んでいるところです。
ご商売に向けて動きが具体的になるようにということで、今回、ジャパンタイムスの協力をいただいてモニターツアーという形で日本に在住する外国人、英語圏の方、コンセルジェを含めて、バス2台を用意して、私たちもコースの現場を作りながら、実際にバス2台に乗り込み、現場のおかみさんたちが外国人を迎えたとき具体的にどうしたらいいのかということを体験してまいりました。モデルツアーは昨年2月日、台風で新幹線が一時止まるという中で実施し、参加者の皆さんに具体的に23項目、それぞれにインフラ整備から私達がしていかなければならないことをかなり具体的に挙げてもらいました。
当日はまず三島駅に。伊豆の玄関口だと私たちは思っていますが、そこには観光バスを停めるところがありませんでした。まずスタートから、新幹線は遅れる。傘がない。荷物置き場がない。駐車場は高い。観光バスを停めるところがない。通訳をどうしたらいいのか。スタートからいろいろな問題がおきました。それを2日間、伊豆半島の7地区全域にわたってそれぞれのおかみさんが迎えまして、夜も接待しながら最後は土肥までやったわけです。
モデルツアーの感想ですが、やはり交通機関が不便であること、旅館内の案内など英語の説明があると便利、英語のパンフレット、案内、説明、紹介、それぞれがバラバラであること。修善寺町なんかは素晴らしく、英語と韓国語のインフォメーションがちゃんと出来ております。天城地区などは出来ておりません。伊豆地区全体がインバウンドではなくても外からお客様を迎えるに当たって情報発信が一律でないといわれました。そして英語のホームページがないですねと。県にホームぺージがありますが、その活用が出来ていないと。それから私たちがいろいろ静岡県のことをインフォメーションする時にはプロモーションビデオを県から借りて来るんですが、このビデオがお粗末な点があると。
大きいことはやっておりません。本当に具体的なことを、小さなことでも自分がやったらいいということをやっております。


世界の旅行代理店で使われるシステム上に情報を


平原氏

◆青山 平原さん、背景を含めながら外国人を誘客するための仕組み「E旅館」を4年前に立ち上げた経緯をお話いただけますか。
◆平原 もともと私のところはIT会社でして、海外、アジア圏に子会社を作って20年以上になります。小さな会社で東京は50人ほどしかいないのですが、それでも自分の会社に来る人間だけで、年間2000泊くらいするわけです。そういう体験と、もう一つは0年ほど前から日本のホテルのマーケティングシステム、予約システムにシステム屋として関与させていただきました。外資系ホテルと日本のホテルの業績の格差が大幅に広がっていった時です。何だろうと。外国人客が来ているホテル、来ていないホテル、これはなぜだろう。そういうところから予約の仕組み、実際にお客様がどうやって予約してそのホテルにたどり着いて、泊まっていただけるのかを眺めた時、現在日本のホテルで海外の旅行代理店からその場で予約できるホテルは30ぐらいしかないんです。リアルタイムではないけれど予約できるホテルは50ほど。めちゃくちゃに異常な世界です。例えばアメリカの場合、ほとんどのホテルが同じ条件、世界中のどこからでもリアルタイムで予約できる。あまりにも違う。海外の旅行代理店は、日本に行きたいというお客様があったときに、そのシステムを頼りにするわけです。
例えば、「三島に行きたい。最寄の空港は」から始まって、旅行代理店の方がコースを設定してホテルを予約するわけですが、現状では「お客さん、三島にはホテルはありませんよ」という答えが返ってきてしまいます。世界中の旅行代理店が使っているのに航空機の発券システムで使われているGDS(Global Travel Distribution System)というのがあります。これが全世界60万の旅行代理店で飛行機のチケットの発券予約、ホテルの予約、レンタカーの予約、その他交通機関の予約に使われています。とくに欧米からの送客を考えるのであれば、ここにのっていないということは、全く致命的なんですね。アメリカの場合、99%の旅行代理店がこの仕組みに頼って予約をしているわけです。
先ほど、惟村さんの言われたターゲットを絞る。これは重要なことです。例えば欧米からのお客が欲しいのであれば、2つあります。自分で行き先をインターネットの上で探して予約をしてくる人がいる。これらバックパッカーと呼ばれる人たちは、このルートでやってきます。この人たちはインターネットで発信することによってある程度は集まるかもしれません。ただこの人たちは泊2000円、3000円のところを探している。泊2万円、3万円、5万円のところにお泊りになる方々は自分で探しません。旅行代理店で使われるシステムの上に情報が出ていなければ、テレビコマーシャルを何億円使って流しても、無駄なんです。この辺の理解が、まだされていないと思うんです。アジアの方はアメリカに比べますと、こういったシステムの普及が遅れています。しかし日本に比べると進んでいます。国外に客を送り出す旅行代理店ですと、大体5割はこのシステムを使っています。日本の場合は0%です。こういう面から見ても異常なんですね。
こういうところからこういう人に来てもらいたいというターゲットを絞る。これをはっきりさせること。そこに対して有効な手段を講じること。これが非常に重要です。私どもが4年前に立ち上げてから競争相手が現われることを期待したんですが、残念ながら未だに出てこないんです。これは既存の代理店を含めておやりになっていないんです。この辺を先行されれば、伊豆市は日本のモデルになれると思います。
もう一つ、他府県の例を言いますと、日本人が知らないような地名を、海外の人たちが非常によく知っている。例えば仙台空港にはドラゴンエアーが直行の定期便を飛ばしているわけです。大半が観光客です。千歳空港にも香港から直行便が観光客を乗せてやってきております。そこに至るまでには商品づくりと、こういう人たちに来てもらいたいという明確なターゲットがあって、そこに対する宣伝、それに向けた商品づくりというのを地域、受けいれる施設、交通機関、とくに行政が主導して、そういうことをやっていった成果であると思っています。そういうのがなくてもブランドが自然に形成されてしまった京都のようなところは、少しカテゴリーが違いますが、北海道、宮城の例は静岡県として非常に参考になると思います。


中国、韓国、台湾は団体客が中心


惟村氏

◆青山 惟村さん、海外客の誘客に成功している観光地と日本の観光地の決定的な違い、地域の環境づくりということになると、どういったことが、上がってきますでしょうか。
◆惟村 外国との比較で考えたことはないですね。日本には日本の良さがありますから。富士山ですとか、日本旅館、日本の料理、日本の春夏秋冬の風景も人気があります。日本独特の文化ですから、独自に磨いてPRしていくというのが私どものやり方でしょうし、それが政府が求めている光る国、光る地方、磨かれた地域を作って、それを売り出していくことだと思います。
今、私どもがこれから受け入れたいという中国、あるいは韓国、台湾もそうでしょうけど、これらはまだまだ団体客が中心です。とくに中国の場合は団体でなければ駄目だという制約がついていますし、必ずガイドもつけなければ駄目だということになっています。それを斡旋する業者は指定業者ということで、決まっています。ですから、欧米の方々のバックパッカーを対象にしたような観光とはちょっと、これから私どもが取ろうとしている観光客は若干違うんじゃないかというイメージを持っているんですけど。
◆青山 ターゲットということで言えば、静岡県もアジアを主体にしていきたいと考えて、正しいんだろうと思いますが、その辺、平原さん、海外で送客側とのお付合いの中で、何か指摘されたいことはありますか。
◆平原 伊豆地方、それから個々の旅館さんとして、この商品をこういうお客さまに売りたいというのをお作りになるのが第一歩ですね。そして自分たちは三島の駅まで来てくれれば、そのあとはお引き受けしますとか。これは海外から来るお客様にとっては、自分の家を出て帰ってくるまでが商品なわけです。その中で自分たちは何を提供するのか、それの足りない部分は誰が埋めてくれるのか。そことどういう連携をするのか。これをはっきりさせること。
それから現在、中国から日本に、海外旅行という意味で扱える旅行代理店は5社しかありません。中国からのお客が欲しければ、その5社と話をすればいいんですから、売り込みに行くターゲットは分かっているので、こんなに楽なところはないわけです。これは多かれ少なかれどこの国も同じです。日本に対する送客実績の多いところ、上位3社と話をすればいいんです。
家族4人で一泊して5万円、おお安いじゃないかというような人たちは、もうアジアにうじょうじょいるんです。日本の0倍はいます。その人たちに商品情報を提供する。予約の道をつなげる。それが出来るかどうかが、急速に立ち上がれるかどうかのすべての基本です。
その中でいろいろな障害があります。例えばクレジットカード。日本のクレジットカード会社は、海外で発行されたカードは扱いませんという会社が圧倒的に多い。こんな国は他にないんです。大変な障害です。それから海外から日本に来る人はJRのレールパスという非常に有利なチケットが買えます。でも列車の指定も座席指定も出来ません。レールパスを使おうと思ったらJRのチケットに換えてくれる所に行かなければいけないんですが、それがどこにあるのか見つけ出すのが大変なのです。こういうインフラ、これは国土交通省の行政指導でパッと変わるものですね。
いろいろな部分で欠けているところ、例えば他の国では観光は重要なものであるという認識、観光省があって観光大臣が大蔵大臣の次に偉いというのが多いんですね。日本では観光担当は国土交通省のはるか下の方にあるんですね。この辺の取り組みの違い。惟村さんの言うとおり、今、国全体で変わろうとしていますから、この変わろうとしている勢いを利用して伊豆地方への誘客に結びつけることをやれば、これは非常に有利だと思いますね。


静岡空港から伊豆へのルート設定が大事


大村氏

◆青山 大村さん、静岡県がアジア地域でプロモーション活動を行なっている中で、どんな商品を現地に提示されてるのでしょうか。
◆大村 県としては海外プロモーションということで、平成8年から行なっておりまして、これは現地セールスと、もう一つは外国のプレス、エージェントの招聘という形でやっております。ターゲットを絞れということになりますと、非常に絞りにくい部分もあります。国際観光を考えますと、何にも増して一番大事なのは空港があることです。静岡空港を視野に考えますと、やはりターゲットは東アジア、中国をはじめとする台湾、韓国、香港という形になるわけです。
その中で商品づくりといいますか、これを考えますと、県がまずルートを作ることだと思います。手をこまねいていては来てくれませんし、静岡空港から伊豆に来てもらうルート設定といいますか、二次交通のインフラ整備、これは非常に大事だと思います。その中で併せて、統一的なサイン、これも重要なインフラ整備ではないかと思います。道路の渋滞の問題もありますが、一つの方法としては海上ルートをもう一度考え直したらどうか。幸い伊豆半島には港湾が8つほどある。そのルートを使ってきてもらう。現に清水からのフェリーが非常ににぎわいを見せていますし、海から見える富士山、伊豆の温泉、こんなのが一つの商品づくりにつながっていくのかと思います。


おもてなしの心があれば7割は通じる

◆青山 宇田さん、地域で、あるいは団体で、独自に商品作りをしてやっていこうというような気概も含めてお考えを伺いたいのですが。
◆宇田 あさって、国土交通省からの動きがありまして、私たち全国おかみサミットというものがあります。全国からおかみさんが集まって、星野監督と弁護士さんの話を聞くんですが、そのあと商談会があります。その商談会のために、あなたのお店では何が出来るのか具体的に持ってきてくださいといわれています。国土交通省がお店のパンフレットを英語に直してくれまして、「おかみさんも商品として売れるんですよ。それは着物を着て、四季折々の、自分が歩いて、それが商品なんですからね」といわれ、改めて私たちは日本の文化なんだと自信を持って、商談会に臨みます。「着物を着て、四季折々の言葉とお顔を持っていらっしゃい。そして商談会には英語のパンフレット、サービス料を含めた込み込みの料金、そういうことを具体的にして、まずは動いてください」ということで、まずは一歩を始めております。具体的に私たちが動けることはそういうことで、もう否が応でも外国からのお客様はプレゼンテーションしなくても、いらっしゃっております。
2年前にロンドンから弁護士さんが来まして、「結婚式をやりたい」と言われ、三島大社さんと三島プラザホテルの協力をいただいて、80人ばかりの結婚式を行ないました。白壁荘を選んでくださったのは、素晴らしい景観とともに文学の流れがあること、それが日本にあこがれるところだと。自然と日本庭園とおかみさんと、商品は幾らだってあるということで、もっと自信を持って具体的に動いてくださいと言われました。今私が出来ることというのはそんなことです。あとは笑顔です。
◆青山 旅館の受け入れの問題として言葉の問題ということをおっしゃる方が多いんですが。
◆宇田 外国人のために合わせるのではなくて、文化に誇りを持って、私たちはこういうふうな温泉の入り方をしますというふうに案内をするとか、ホスピタリティーがあれば、もう7割はオーケーだと思います。まずは外国からお客様を迎えたときに英語が出来ないけどどうしようかなといった時に、外国人を迎えるためのセンターが必要じゃないかなと思います。でもトラブルになる前に、おもてなしの心があれば、やはり7割は通じることですので、先ほど惟村さんが言ったようなちょっとした壁を取り除く、偏見を取り除くということから始まれば大丈夫だと思います。是非皆さんも笑顔と、生産量は日本一という地域ですのでわさびの美で、笑顔を絶やさないように外国のお客様をお迎えする。それぞれに個人で光ってもらいたいと思いますので、その偏見をなくすというのが一番だと思います。


官主導の別府、民主導の石川県

◆青山 惟村さん、今、非常に活性化している能登空港についてお伺いできますか。
◆惟村 2つ紹介させてください。つは外客誘致を官主体でがんばっている事例、もうつは民主導でがんばっている事例をご紹介します。官主体で一番がんばっているのは別府市であり、大分県だと思います。別府温泉はバブル崩壊後、バブル期の設備投資もたたりまして、非常に落ち込みました。もう一つは由布院という隣にすごいいい温泉ができてしまいましたので、日本人のいいお客さんは由布院に取られてしまいまして、別府温泉、危機感をもたれました。その中で別府市が何とかこれを起死回生しなくてはならないということで大分県とやりましたのが、韓国からのお客様の誘致です。一村一品運動と県庁職員みなセールスマンというのが当時の平松知事の口癖でした。観光もそういう姿勢で取り組まれ、ターゲットを韓国に絞りまして、ソウルに専属の職員を置いていました。誰のアイデアかわかりませんが、韓国のビールをホテルのすべての部屋の冷蔵庫に入れていました。朝のレストランにも韓国の方にはキムチを並べ、このキムチとビールが最後は決め手になったといろいろな方がおっしゃっていました。本当に別府は韓国で有名になっています。それをベースに最近はまた、国内観光にも力を入れだしております。
もう一つ。石川県の和倉温泉です。石川県は台湾に集中してやっています。これを主導しているのは観光協会でして、バブルが崩壊した平成4、5年ごろから台湾に力を入れております。やり方が立派だなと思うのは、無駄がないんです。石川県は、台湾に行くと旅行会社にあいさつし、旅行会社から主な大口のお客さんを紹介してもらいましてそこまで行っているんです。そういうことを集中して何年もやっております。その中で和倉温泉の加賀屋さんが独自に事務所なんかを作ってやっている。そこまで徹底してやっています。ピンポイントで突っ込んでおやりになっています。この和倉温泉を中心とした能登半島広域観光協会はおらが空港の能登空港が出来ましたので、非常にルートの設定がしやすくなったと喜んでいました。能登空港ができる前から運動を始め、まず能登の観光協議会が東京の大手の旅行会社をみんな巻き込んで戦略会議をつくり、毎回、能登に担当の方々を招くということをやっておりました。能登空港が出来るとなると東京に集中してキャンペーンをやりまして、テレビCMなどと同時に有楽町に能登ふるさと館という拠点を設けました。さらに立派だと思ったのは、能登空港を中心に乗り合いジャンボタクシー網をつくってしまったんですね。よくバス会社やタクシー会社と話をつけたなと思いますが、能登空港を中心に主な温泉はみんな乗り合いジャンボタクシー網を作って、さらに能登空港自体を道の駅にしてしまいました。やり方は集中して、結構深ぼりでやる。これは多分、加賀屋の会長さんの経営信念が全体の運動にも反映しているんではないかと思います。
中国に絞ると、中国はすごい大きなマーケットです。WTOでも海外旅行者億人、泊数で言うと日本の国内旅行に匹敵するのではないかと思われるほど大きいものです。中国の場合は団体旅行しか認めておりません。旅行社も指定制です。必ず通訳をつけなければ駄目だということをやっています。何時まで続くのかわかりませんが、ある意味では言葉なんか心配する必要はないです。日本の高度成長期時代の団体旅行を思い出すんですね。団体旅行って伊豆はお得意にしていたところではないですか。あんまりこういうと昔に戻ってしまって本当の観光の発展がちょっとつぶれてしまいますが、そういうマーケットもあるということを認識して何かの参考になればと思います。


熱海、伊東で「外国人が一人歩きできる町づくり」


青山氏

◆青山 官と民の話が出ましたが、県観光協会の中に国際観光研究会がありまして独自のプロモーション活動をやっていると思うんですが、大村さん、ちょっと触れていただけますか。
◆大村 やはり観光行政を進めていくのは人のつながりでやっていく面が非常に高いと思います。そういった中で民間の研究会として活動し、今7名ぐらいオブザーバー的にいろいろな意見を伺っているんですが、そういった方々にアドバイスをいただいております。今回、国際観光ということでモデル地域を県内に2カ所つくりました。つは東伊豆地域、これは熱海、伊東をモデルにしまして、ここのテーマとして「外国人が一人歩きできる町づくり」をやってみようと。もう一つは浜松地域ですが、「産業観光を中心にした町づくり」をやってみようと。この2カ所に絞っています。そういった中で、この研究会のメンバーにアドバイザーとして具体的な事業の企画立案等に携わっていただく。それからマップの作成とか、サインなどの支援、接客技術、おもてなしの心といいますか、そういった研修もやっていきますので、研究会の人にはこれからも活躍をしていただきたいと思います。
◆青山 国際観光研究会に参加している宿泊施設が、まだ33施設。その他の観光業者を含めると60ぐらいあるというお話だったんですが、これは入りたいといえば入れる組織なんですか。
◆大村 大歓迎です。


ポリシーをはっきりつくることが大前提

◆青山 平原さん、グローバルトラベルディストリビューションシステムですか、GDS(旅行業務支援システム)という世界標準の予約インフラにつなぎこむ仕組みまでは作ってあるが、まだつないでいないということですが、世界標準の予約システムにつないでチャンネルがしっかり組み上がるというような視点でお話いただけますか。
◆平原 GDSは、全世界の旅行代理店が予約をする時に使うシステムなんですが、そこにつなぎこむためには、まずチェーンコードというものをもつ必要があります。一つの方法は、チェーンホテルに加盟すること、例えばハイアット、ヒルトンというチェーンに加盟することでGDSの上に一つのチェーンコードが持てるわけです。もう一つは、バーチャルチェーン、独立のホテル、旅館が集まって一つのブランドを作って、GDS上のコードを登録して、そこに登録する方法。あるいはバーチャルチェーンに加盟させてもらう方法です。「E旅館」は、以前にJPというチェーンコードを作って旅館さん9軒をGDS上に登録して売ることを試みました。見事に失敗しました。何故かというと、2つあります。まず、つはブランドを確立するためのマーケティングが出来なかったこと。その出来なかった根本的な原因は旅館がそこに商品をきちんと提供する能力がなかったこと、これで大失敗でした。その反省を踏まえて、どこにでも共通に出せる仕組みをシステムとして構築し直しました。つまり、ここに出せば国内のネットワーク、他の全世界のいろいろな旅行サイト、旅行代理店のGDSにもつながる。そういった仕組みを4年前、数億円をかけて構築しました。この仕組みはすでにアジア圏では利用が始まっております。いずれにしましてもGDSの世界につながるためには、ゲートウエーは2つしかありません。ウイズコムという仕組み、もう一つはウルトラスイッチというゲートウエー、このどちらかにつなぎこむことが必要で、それにつながっているCRS、セントラル・リザーベーション・システムと呼ばれるものの中に登録することが必要なんですね。GDSに対して出す時には、旅行代理店のコミッションを勘案した値段を出さないといけません。そういうマーケッティング、旅館がどこに対してはこういう商品を幾らで出すというポリシーをはっきりつくることが大前提になります。それがあれば明日からでも出来るんです。


■講師略歴

惟村 正弘(これむら・まさひろ)
富士宮市生まれ。沼津東高、東京大学法学部卒業。1977年運輸省に入省。九州運輸局企画部長、関西国際空港渇c業部長、同事業部長、国土交通省総合政策局観光部観光地域振興課長、同航空局飛行場部管理課長、同海事局国内貨物課長などを務め、2004年7月から運輸審議会首席運輸審理官。50歳。

青山 茂(あおやま・しげる)
早稲田大学法学部卒業。潟Iリエンタルランドを経て、現在潟Vード専務取締役。日本航空民営化イベント「NewJALレセプション」、栃木、群馬、沖縄の観光誘客プロモーション事業、九州沖縄サミット関連事業などをプロデュース。県内では伊豆新世紀創造祭、第15回海の祭典しずおか、東海道四百年祭などに参画。サンフロント21懇話会のシンクタンク<TESS>の研究員。52歳。

平原 英夫(ひらはら・ひでお)
早稲田大学理工学研究所博士課程修了。東芝中央研究所研究員日本語処理を担当。
GeneralAutomation(米国)日本駐在代表。インフォーテック社(現セル・インフォーテック)設立。マレーシア、インド、中国などに関連会社設立。現在マレーシア、日本などの会長職及び各社取締役、その間、日本EDS設立援助、専務に就任。その他外国IT企業の日本進出をサポート、eRyokan設立代表取締役。62歳。

宇田 倭玖子(うだ・いくこ)
伊豆市中伊豆町に生まれ、短大卒業後中伊豆町役場に勤務。1980年白壁荘に嫁ぐ。文化人でもあった先達の遺志を夫と共に引継ぐべく目下おかみ修行中。経営モットーは、常に地域の文化を見つめ続けてゆくこと。地場産品を活用した山葵の料理研究に力を入れている。99年12月葵倶楽部を立ち上げ地域産物と観光を考える会を生かし活動中。国際化する観光に対し県旅館組合女性部伊豆地域特別委員で"THE OKAMI"という独自の会を立ち上げ活動中。

大村 義政(おおむら・よしまさ)
静岡大学法経短期大学部卒業。1968年4月静岡県採用。96年4月土木部港湾課港湾企画室長、98年4月生活・文化部観光レクリエーション課長、2000年4月熱海県行政センター所長、02年4月企画部知事公室報道監兼広報室長、03年4月企画部知事公室長兼知事公室報道監、04年4月生活・文化部理事。56歳。


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