サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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平成17年度総会 平成17年5月17日(沼津東急ホテル)
「富国有徳 創知協働 しずおかの挑戦」
石川嘉延静岡県知事

製造品出荷額が全国第3位

 皆さんに静岡県の現状についてご理解いただきたいと思います。工業の動向ですが、静岡県は47県中、製造品出荷額が全国第3位です。長らく5位だった地位から脱却して平成4、5年と連続して3位に躍進してきました。1位は愛知県、2位は神奈川県、そして従来は東京、大阪が3、4位を占めていたのですが、静岡が東京、大阪を抜いて3位になりました。
人口規模等から考えますと、製造品出荷額が第3位ということは大変なもので、県民人当りでみますと愛知県についで第2位です。静岡県は製造業に非常に特化したものづくりに強い県だと言うことになります。


2007年問題

 2年後の2007年月に沼津の門池地区を会場に技能五輪の世界大会が開かれます。この2007年は、わが国の総人口が減少に転じる最初の年であると同時に今までの日本経済を支えてきた主力メンバーの団塊の世代が60歳を超えて最初に退職が始まる年として「2007年問題」ということがいわれています。以後3年間ぐらいで約700万人の団塊の世代がリタイアします。そこで日本の製造業を中心に団塊の世代の築いてきた力、技術、ノウハウを如何に若い世代に引き継ぎ、日本の力を低下させないようにしていくかが注目の的になっています。
早いところでは5年ほど前からものづくりの現場などで団塊世代を中心としたベテランが若い人たちを育てる特別な組織を作って技術の伝承に取り組んでいますが、政府も今年の予算で、職業能力開発を担っている厚生労働省、経済政策全般の推進の中心的役割を果たす経済産業省、そして人づくりという分野から文部科学省の3つの省庁を中心に、ものづくり閣僚懇談会が出来ました。そして各省も今年度予算にものづくりの力の伝承と向上、このための予算を組んでいます。
技能五輪世界大会に向け、いよいよ今年から組織委員会がスタートしました。私も地元代表でメンバーになっていますが、技能五輪世界大会はものづくりに国民の関心を集め、若い人たちをものづくり分野に引き入れていくいいチャンスになると大変力こぶが入ってきています。
5年前に2007年の技能五輪世界大会招へいを打ち出し、仕掛けた頃は本県の試みを冷ややかな目で見ていた方々も県内外にいました。しかし今は、国をあげてものづくりの技能をどう伝承するかが大きな問題となり、本格的な取り組みが始まりました。そして、日本のものづくりというのはもの凄いと、改めてあちこちで実感されるようになってきているわけです。


韓国と台湾にもコスト競争で勝つ

私の地元の旧大須賀町の例をあげましょう。コーニングジャパンというアメリカに本社のある日本法人の工場と研究所があります。旭硝子とか日本板硝子と並んで世界のガラス製品のトッププレーヤーで、今シャープにブラウン管や液晶に使うガラスを供給しています。大須賀町に立地をして0数年ですが、最近の液晶ブーム、あるいはテレビの大型化を背景に増産に次ぐ増産で、つい先ごろ工場の敷地内にほぼ倍の工場増設が決まりました。
この過程で競争相手が2つありました。一つは海外のメーカー、もう一つはシャープが主力の生産拠点を置く三重県の亀山市です。今、亀山は液晶関連メーカーの一大集積地になって、三重県は有効求人倍率も本県と並んで高い状態になっています。この亀山に行かないようになり、もう一つのライバルは、コーニング社の韓国と台湾の製造拠点です。本社は3つのうち一番安く、合理的で、投資効果が高いところに投資をするというんですね。その中で大須賀工場が勝ったのです。勝った要因は2つあります。まず、工場の建設期間でコーニングジャパンは9カ月で稼動できるとし、8カ月という韓国は、この段階で脱落しました。台湾は2カ月で、工期と建設コストを含んだ最終製品価格でどうかということになりましたが、そのコスト競争にも勝ったんです。
何で勝ったのか。それはトヨタ方式だというんです。5年前からトヨタ方式の勉強に行かせたと。その結果製造工程の改善、それによるロスと不良品率がどんどん下がり、物流に至るまですべてコストの軽減に貢献して、結果として新規増設の時に台湾にも打ち勝てるようになったというのです。


従業員がプレイヤーに

研修に行き始めた頃は、アフターファイブにおでん屋でも仕事の話をしているトヨタの社員にビックリして帰って来た社員の人たちが、5年たってみると、休憩時間中にも仕事の話をしている。パートの従業員も含めて自然に仕事にのめり込んできていると、工場長は言うんです。
少なくとも世界市場でプレーしていている企業は、大から小までそういう方向に行きつつあるということです。従業員1人ひとりが頭を使っているということですね。従業員をレイバーからワーカーに、ワーカーからプレイヤーにというんですが、世界市場で競争に勝ち抜いているところは、どうも従業員がプレイヤーになってきているんではないかと推測されます。


3年連続、企業立地件数が全国トップに

日本の製造業の対GDPの研究開発費は世界最高の比率になっているそうです。そういうことを背景に今の日本の製造業の力があり、その製造業の力は研究開発に基づいているわけです。それは単にお金を投じているだけではなく、実際に製造業の現場を見るとどんどんR&D(研究開発)に従事する人の割合が増えている。この現象は研究機能の増加として日本の中で静岡県に集中的に現れています。
県民所得で言いますと、平成4年度の国民経済計算で人当たり県民所得は全国第3位になっています。私が知事に就任した時は5、6位でしたが、平成0年には第3位になって愛知県の背中もちょっと見えるようにな状態になってきました。企業立地も静岡県は過去3年、日本一を記録しています。
このように本県の製造業の出荷額が高まってきたのは、企業活動が旺盛になり、なおかつ研究所機能もどんどん集中しながら企業立地が続いているからです。これはなぜか。昨年月、政策投資銀行が日本国内上場企業2500社に立地を決めるときの要件は何を重視するかアンケート調査をしました。2000社から回答があり、これをみますと一番の重要な要件として挙げているのは5割の会社が交通条件です。
私も企業立地するときに担当者から何を相手先が重視しているか聞いているんですが、本県が東京と名古屋の中間にあり、両方の市場にアクセスが容易であるという立地特性だといわれました。企業立地は、私が知事に就任した頃は全国5番目くらいで、なかなかベストテンに入れなかった。徐々にランクアップしてきて平成4年以降、3年連続、企業立地件数がトップになっている。
なぜ、こういうことになってきたのか。それは投資銀行のアンケート調査もあわせて考えると、第2東名自動車道、清水、御前崎の港湾機能の高度化、そして静岡空港。この陸海空の3つの交通基盤が静岡は飛躍的に良くなってくるということが念頭にあるとしか思えないわけです。それに加えて東海道新幹線、あるいは在来線の利便性が向上したらもっと凄くなると思います。これに向けて県民運動を展開しなければいけないと思っています。


静岡県は元気

 雇用状況をみますと、静岡県は昨年年間を通じて完全失業率は低い方から全国2番目です。有効求人倍率も昨年6月から倍を超えて、全国的にも高い状態です。最近議論になっているのは、完全失業率とか有効求人倍率に、もう一つの視点を加えなければいけないといわれています。それは労働力率です。5歳から64歳までの人が実際に労働市場に参入しようとしている人の比率で、この労働力率ランキングを全国で見てみますと静岡県は3番目です。労働市場に参加する人たちが多い中でなおかつ失業率が低いということは、皆がフルに活動し、しかも活動に耐えうるような雇用情勢も発生しているということです。そういう意味で静岡県は元気がいいということにもなるわけです。

長期悲観、短期楽観

 そこで、私が提案する「富国有徳 創知協働 しずおかの挑戦」ということになるわけですが、日本はどうも先行きについて暗いイメージがある。堺屋太一さんが日本人は長期悲観、短期楽観で、だから何も抜本的なことに取り組もうとしないと言っていましたが、長期的には非常に不安になっているんですね。年金財政は大丈夫か、少子高齢化で将来は大丈夫かと。そして、長期に対しては非常に悲観的ですからお金を貯め込んでいる。しかし、本当に長期悲観すべき状態なのかなと。確かに少子高齢化で、人口が減りますからいろいろな規模が縮小していくことは必然です。


これからの大学教育、大学院教育

 ところが例えば教育の分野で考えますと、幼稚園から高校ぐらいまでは各段階における教育を2度繰り返す人はいませんが、大学以上のレベルになりますとアメリカなどでは社会に出てからもう一度別の学部に入り直すとか、あるいは大学院に入るとか、少なくとも2回、3回と行ったり来たりする人がかなり一般的になりつつある。しかもそういう人たちはスキルを身につけていろいろな分野で活躍しているわけです。日本でも金融とかいろいろなソフトを製作する分野で、そういう人たちがもの凄い力を発揮して稼いでいるわけです。日本も完全にアメリカ型になるかは別にして、アメリカ的な現象、即ち大学とか大学院に複数回入り直すという現象が増えてくることは容易に想像されます。


日本のGDPは減らない

 製造業の分野でももの凄く生産性を向上させているところがあります。例えば先程のコーニングジャパンの人件費は、台湾の3倍だそうですが、3倍人件費を払っていても最終コストで計算すると日本の方が安いと。これは生産性向上をトータルで実現しているからです。
また、トヨタ、キヤノンを筆頭に完全無人化ラインを拡大しつつあります。そういうことになっていくと労働力人口が減っていくから、日本の生産力が下がってGDPも下がると簡単には言えないと思います。人手がなくても、キヤノンさんは2006年ぐらいに全工場の4分のを全自動にするといっています。トヨタも06年か07年には国内の生産ラインの5分のを全自動にすると宣言しています。最新のロボット技術の実現で全自動が出来るようになたといっているんですね。コストダウンの必要性もあるけれども、人材が確保できないことなどをあわせてロボット化ということを徹底追及しながら目途がついたということになるわけです。ということを考えると、まだ労働力人口が減ってくるから日本のGDPが減るということはあり得ないですね。


住宅投資と教育投資を

 400兆円もある日本の金融資産、これがお金として溜まってしまっている。国内に投資先がないということで、海外の為替相場とか、その他の投資に回って、大体損をして日本に戻ってくる。他の地域の富を増やすために援助するのをODAといいますが、日本はこの巨額な金融資産で先進国に対してODAをやっていると同じではないかと思うんですね。このお金を国内の資産とか、人間の能力を高めたり、われわれの生活がより豊かになるように、より豊かなことが実感できるようなものに、どうして回らないのかと、ずっと考えていくと、住宅投資と教育投資、この2つの面でもっと日本はお金を使う方がいいのではないかと思います。その資源として400兆円のお金があるんですね。
 その400兆円が現金からモノの方へ、あるいは消費の方に回っていけば、これは経済が拡大するわけです。経済の成長は単純な算術計算で分かるんですね。00の所得を上げて次に80しか使わなければ、経済が縮小するわけです。過去10年以上、日本はそういう状態を繰り返してきたわけです。
 それを00の所得を上げたら少なくとも00は使う。あるいは場合によったら将来のリターンを考えて0を使えば拡大していくわけです。今、われわれは拡大したその0を借金して使わなくても、過去に400兆円の個人金融資産が蓄積しているんですから、これを取り崩して毎年の消費市場に投入するだけで、実は日本の需要が増えるわけです。


実物資産を増やすという方向へ転換を

 その需要を増やすきっかけとして、もっといい住宅の獲得なども目の付け所だと思うんです。現にエコノミストのリチャード・クーさんは、日本人は何でお金で貯めるんでしょうかと。もっといい住宅を獲得するようにした方がいいんじゃないかと書いているわけです。これを実現するのは何かというと、大豪邸でもいいから住宅投資した人は税制上優遇する。今の日本の住宅政策はローンの金利を5年間所得控除しますというしみったれた住宅政策です。そうではなくて、ゆとりのある人にお金を意義ある方向に使ってもらって、経済を拡大し実物資産を増やすという方向へ経済政策と税制を変えるべきだと思うんです。
 そういう方向に、私は政策を変えるべきだということをまとめて「富国有徳 創知協働 しずおかの挑戦」として提案したわけです。小泉内閣の財政金融政策の総元締め役を果たしている経済財政諮問会議が今年4月にこれと同じような論旨の経済成長を実現するための「日本の2世紀ビジョン」を出しました。
 基本的な考え方は全く同じことをいっておられる。政府がもしそういうことをやっていってくれれば、これから地域においても、われわれは今までと違って、そこそこの税収増も期待できるし、それをもとに、もっとより地域の満足度が高まるような行政運営も出来るようになってくると思うのです。


希望を持つことが大事

 経済成長について国民の中にもひょっとしたら、日本経済もまだまだ捨てたものではない。成長できそうだというイメージが少しずつ形成されつつあります。そして3%の経済成長を遂げれば、これはもの凄いことになるわけです。日本の人口が減って行きながら3%成長できるということになると、一人当たりの所得は20年で倍になるんです。平成6年、2004年の一人当たり国民所得は287万円です。ところが3%平均で20年経つと約2倍になるんです。
 700兆円前後の国、地方を含めた累積債務で大変だといっていますが、3%成長を成し遂げていけば大したことはなくなります。
 問題は3%成長するかどうかなんですが、人間への投資、そして実物資産拡大への投資、これが出来るよう誘導する税制、経済政策をやっていけば400兆円が動き出して、3%成長は不可能ではないと思います。経済財政諮問会議は私よりもっと意欲的で3%台後半と4%台後半の2つのシナリオを書いています。
ということで長期悲観ではなくて、長期楽観のシナリオもあるということです。しかしそれは手放しでは駄目ですから政策努力をしなければいけない。まずは、そういう希望、願望を持たなければ、そういう希望、願望に沿ったような社会は実現しないわけです。希望を持つことが大事で、それも十二分に私は可能性があるものだと思っています。
 そういうことをベースにして地域づくりに励んで行きたい。静岡県がそういうことでやっていって、成果が出るかどうかは、実は日本の他の地域にとっても通用する現象だということになると思います。その証拠に、静岡県は日本のテストマーケットになっているし、政治意識の面でも社会現象の面でも日本のどこでもあるような現象は必ずここで起きる。このテストマーケットで長期楽観、短期悲観という逆のシナリオで励んでいけば、いい成果が出せる。今その兆候が出つつあると思うのですが、ここのところをもう少しはっきり分かるような格好になっていけば、より説得力のある訴えが出来るのかなと思っているところです。



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