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赤池東工大教授が医工連携で講演 平成17年3月28日(サンフロント)

「再生医療と遺伝子治療の現状と課題〜新しい医工連携を目指して〜」
赤池敏宏東京工業大学大学院生命理工学研究科教授

■講師略歴

赤池 敏宏(あかいけと しひろ)

昭和21年7月20日生まれ
昭和50年3月 東京大学大学院工学研究科合成化学専攻博士課程修了 東京大学工学博士
昭和50年4月 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所助手
昭和55年2月 東京農工大学工学部助教授
平成元年4月〜平成7年3月 (財)神奈川科学技術アカデミー第3研究室室長を兼任 「赤池高機能分子認識薄膜力プロジェクト」を担当
平成2年4月 東京工業大学生命理工学部教授
平成11年4月 東京工業大学大学院生命理工学研究科教授
平成12年4月〜平成14年3月 信州大学大学院医学研究科臓器移植細胞工学医科学系専攻教授併任
平成4年4月〜1年間 同大学院客員教授


 

私は旧吉原市の生れです。大昭和製紙の創業者の斉藤知一郎氏が作られました知恩会育英会の第2期生で地元のご好意で育てられたと思っております。
 県立がんセンターが出来、臨床部門は大変好評で全国的レベルの治療を展開中と伺っています。今、工事中のがんセンター研究所ができますと、医学部がなくて理工系が非常に強い大学として、東工大、早稲田大学、東京農工大の3大学が招請され、この中に入居します。できるだけいい共同研究をするようにということで、私は、そのいわばキーパーソンの一人として触媒的に送り込まれたわけです。医・看・工の連携で、クラスター的な活動をこれからやっていくことが、多分、東部地区の新しいファルマバレー構想の重要な柱になろうかと思います。


遠慮なくコンタクトを

 私の所属する東京工業大学を少し紹介させていただきます。学生数が約1万人で、大学院生の方がもはや学部生より多いという理工系の大学です。文部科学省が鳴り物入りで作った「2世紀COE」の採用件数を専門分野の狭さで標準化しますと東工大はダントツに高いものになるんではないかと自画自賛していますが、本当に実力で競わなくてはいけない時代が来ているかと思います。東工大も産学共同研究というのはあまり得意ではなかったのですが、昨年独立法人化して出来るだけ産学共同研究を伸ばすようにと、産学連携推進本部を設けました。産業界とのパイプを太くするため、さらに私達の大学内に学外組織として「リエゾンオフィス」を作り、東工大の産学連携や知的財産の確立に連携支援してくださっています。
 発明も随分学際領域的なものでいい成果が出始めており、財政の貧弱な国立大学を底辺から支えるものになって欲しいと願っているところです。産業界との共同研究、あるいは官公庁系の大きなブランドを頂くような受託研究はどんどん増えています。皆様方を含めていろいろな産業界と連携していくきっかけは、大学側に萌芽的ですが出来始めています。どうぞご遠慮なく、知人を頼りに、ある時は全くゼロからコンタクトしていただいて、産学連携の実を挙げて、わが国の国力を上げるということに貢献していただければと思います。
 知的創造のスパイラルとして、いろいろな研究活動しています。例えば知的所有権の確立、権利化をどんどんやりなさいと。それをまたベンチャーどころから大企業にもライセンスするものに高めろというわけです。一方では先ほどのいろいろなところと連携、協力していくリエゾン活動を通じて、これらをいい意味での良循環系にして、民間の研究資金を入れることによって、新しい新産業の創出、経済活性化に大学が一つの核になるべきであるという動きになっています。
 県立がんセンターとの交流事業も着々と進んでおりまして、COEプロジェクトなどで優秀な若い人たちがぐんぐん育っており、がんセンターとの共同研究に馳せ参じたいという学生が出てくることを祈念しているわけです。


医学との接点

 今日の話題であります再生医療ですが、いろいろな東工大ならではのバイオとの接点があります。私は、つい2、3年前まで信州大学の医学部の教授を兼任していました。それから東大のドクターコースを終ったあと、最初に就職したところは東京女子医科大学日本心臓血圧研究所というところで、昔、東京女子医大というと心臓外科、心臓外科と言うと榊原仟(しげる)教授というふうになっていました。その榊原先生の肝いりで基礎的研究をやりなさいというわけで「理論外科」ができ、そこに助手として呼んでいただいたのが、医学との接点で、3、2年前のことですが、それ以来医学と関わってきました。
 人工臓器等で医学との接点を持ち、それから人工臓器が移植医療の代わりにならないというので、とうとう臓器そのものを作ってしまおうという流れになってきています。


われわれの体は60兆個の細胞で出来ている

 何かの役に立つと思いますので、DNAに関する数字を少しご紹介します。
 われわれの体は60兆個の細胞で出来ています。もとをただせば一個の受精卵です。精子と卵子がドッキングして、大きさもわずか10ミクロンか15ミクロン。それが分裂して分裂して大体270種類の細胞に分化するといろいろな臓器が出来て、皆さんの体になるのですが、その細胞の数は大体60兆個です。皆さんの腸に飼っている微生物も大体60兆個あるといいます。皆さんの体がこんなにコンパクトに60兆個の細胞で出来、大腸菌等の微生物も60兆個と共存共栄しており、人間の体も表社会と裏社会が上手にバランスが取れています。微生物が全部無くなってしまうと人間の体はおかしくなるんだそうです。
そして60兆個の細胞の一個、一個の中にDNAが一個の糸巻きにきれいに2周まわりながら納まっていますが、実は長さが2メートルあります。幅は5ミクロンから0ミクロン。細胞全体が大きくても20ミクロンくらいしかありませんから0ミクロンの中になんと長さ2メートルもの情報単体がきれいにパッキングされている。その秘密は糸巻きにあります。上手に折り畳まって、必要な時だけ、必要な個所の糸巻きが出てきて、それを解きほぐすと、その中に遺伝情報が入っています。


ES細胞

 最近、ES細胞(ヒト胚性幹細胞)による再生医療が話題になっています。ES細胞、EMBRYONIC STEM SELLという細胞によってあらゆる臓器ができる可能性が出てきたといわれています。とりわけわが国では、サルやマウスはわれわれでも扱えますが、人のES細胞は厳しい倫理的なチェックを受けて、文科省の管理の元で許可されるわけです。
クローン胚を作るという手もありますが、これはほとんどの国は非合法ということで、大体は試験管ベービーを作るために試験管の中でお父さんとお母さんの卵子と精子をドッキングさせるという受精卵は、普通2、3個入れて、残りは全部捨てるというわけですが、厳しい倫理的なチェックの元で、残りのものでES細胞を作ってよろしいという許可が得られる場合があります。
 アメリカの方が先行して、もう何百種類か、即ち何百人かのこういうものから作られたES細胞ができています。このES細胞は無限に増殖します。繰り返して増殖し、同じものを再生産する能力も持っていますが、ある条件が整うと分裂して、一つはより分化が進む。即ち臓器の元に近づくというプロセスを取らすことができます。そうすると一方では、単純再生産する中で、一方では臓器を最終的に作れるもとになるというわけです。2分化性を持っているけれども必要ならば分化を誘導させることができて、最後は臓器になる。極端に言えば一個で個体を発生させることも、もちろんできるわけです。


臓器移植の現状

 臓器移植は今、デッドロックの状態ですね。わが国でも脳死者から得られる臓器移植は、臓器移植法案が成立して以来、もう4、5年たっていますが、00例に満たないというわけです。どうしてもというなら順番待ちを覚悟でアメリカに行きましょうと。産経新聞の日曜版に、知る人ぞ知るですが、中国の死刑囚の腎臓をそのまま移植に使うということが慣例化し、ビジネス的になっているということが出ていて、日本人でもその適用を受けた方がいるといいます。1回800万円とか、900万円とかで、こういうサービスを提供すると。インド辺りでは貧しい家庭の親が自分の娘の結婚の費用とか病気の治療費を稼ぐために片腎をあげるという状況があることを是非知っていただきたいと思います。
ES細胞から上手に持っていくと、ある臓器だけができます。内胚葉系ですとすい臓とか肝臓。私の得意なところです。中胚葉系ですと筋肉とか腎臓をつくり、外胚葉系ですと神経をつくるという訳です。こういうものを従来の移植医療や、人工臓器といわれている部分と照らし合わせて考えてみたいと思います。


全身に9万キロの毛細血管

 健全な体と精神を持っていれば再生する臓器が結構あります。まず血液です。60兆個の人の細胞のうち赤血球が25兆個あります。赤血球は酸素を運ぶだけに特化したタイプで8ミクロンくらいの大きさです。これを運ぶ毛細血管は全身のなんと9万キロ、皆さんの体に走っています。それを平たくならしてみると何と6000平方メートルもの面積に広がる。
皆さんの体は良くできていて三次元的に見事に9万キロの毛細血管がネットワークをつくっていて、その周りに主要臓器の細胞が60兆個のうちの25兆個と血管の細胞を除いた部分は20兆個ぐらいあると思うんですが、それがきれいに血管の周りに養われていまして、そして口を開けて待っている。血管から染み出た栄養を。ちょうど雛鳥が親鳥から餌をもらって待っているのと一緒です。
 そして骨髄は何と毎秒500万個、健康な人は赤血球を再生しています。ものすごい勢いで全身を、9万キロをまわっていると磨り減るんです。血球は自ら再生しないけれど骨髄で同じものをつくり上げます。つまり、損傷した戦士に対し新たな兵員を作り上げる。他の白血球も同じですし、それから血小板も同じです。皆さん、ここで覚えていただきたいのは、血球はちゃんと骨髄で再生することです。だから、再生不良性貧血という特殊な病気は、その再生能力を骨髄が失った方、特に女性に多いんですが、そういう方につく病気です。


再生する皮膚

 皮膚も再生します。これは日常茶飯事、経験されていると思いますが、真皮層と表皮、実はここの層には幹細胞というものすごい増殖性の高い細胞があります。ただし皮膚になる運命はちゃんと分かっている。役割はできている。ES細胞とは違っている。ここにある増殖性の細胞は必ず上に上がってきます。分裂して分裂して、だんだんと分化を完成していくというわけで、最後はこの辺は角質、ケラミン層で髪の毛と同じような死骸の蛋白の層になります。これが垢になって落ちるわけです。この層を垢すり療法と称してごしごしやって生きた細胞まで落としてしまうと大変不健康なことになります。新陳代謝をあげているように見えるけれど、あまりよろしくはありません。
 皮膚も普通は再生します。ナイフで切られたとか、手を切ったとか、そういう時には見事に再生します。しかし、大やけどのように面積が広かった場合にはそうはいかなくて、今各地の大学で、とくに聖マリアンナ大学で精力的ですが、本人のあまっている細胞、あるいはやけどに遭わなかったところの細胞を取って、患部に当てる。顔が大やけどだと、お尻の細胞を少しとって増やす。再生するくらいですから外で買うこともできます。増やしてシート状にしたものを使う。これをビジネスにしようとするわけですが、豚からとか、健康人から少しいただいて、それを大量に作って保存して認可を取って、必要なときに、ウイルスも全部チェックして、大やけどで担ぎ込まれた赤ちゃんやお嬢さんに移植する。こういうのが一番ビジネスとして成立するというわけです。


自助能力を超えて酷使すると悲鳴を上げる

 再生する臓器としては腸もあります。腸は何と2メートルくらいの長さなのに実は大きな襞があって、この襞を拡大すると、その一部が一個の細胞になっています。こいう細胞が石垣のように上手に並んで、スチームヒーターのように面積を稼ぐ。なぜ面積を稼ぐのか。大きな襞からナノのオーダーの襞まで、次々に小さな階層構造で面積を増やしているのは、ここを栄養物が通り、この下に毛細血管があり、襞が栄養素を吸収して毛細血管に渡すためです。これが肝臓にいって肝臓は化学工場ですから、そこで一体加工する。腸は下腹部に上手に納まっていて、しかも人間が60兆個の細胞を育むために必要な栄養は全部ここから吸収するわけですから、これがいかに重要かということが分かります。
 がんに冒されたりすれば切り取るしかないんですが、日常茶飯事、強い酸性の液で侵されて、食物が大量に通りますから、壊れては再生、壊れては再生します。だから一定のスピードで壊れている分には、ほとんどの臓器は再生する。それを自助能力を超えて酷使すると遂に悲鳴を上げて、病気になる。

骨は同じ数壊れて同じ数が出来ている

 筋肉も再生します。逆に宇宙飛行士のように使わないとか、あるいは老人が長期入院したときには筋肉が減ってしまいます。しかし筋肉も再生します。必ずステムセル(造血幹細胞)という増殖性の旺盛な、しかし筋肉になる役割をちゃんと担っていて、シナリオを持っている細胞がポツリポツリといまして壊れて数が足りなくなるなと思うと出来るわけです。後は鍛えて増やすということです。
 骨もそうですね。骨は毎日同じ数壊れて、同じ数が出来ていると聞くとビックリするでしょう。こんなに硬い物が再生産しているのかと。破骨細胞と造骨細胞とが見事に一定の量を確保するために、これ以上増やそうと造骨細胞がすると、破骨細胞はそうはさせじと食べちゃうんです。つぶした分はカルシウムの根源として体の中にさまざまなカルシウムのイオンを必要とするところに送る。ほとんどの細胞はカルシウムなしには、信号を送ることは出来ないといわれていますが、見事に出来ます。だからカルシウムはある意味では貯水池であるともいわれています。骨も中には血管がありますし、骨髄もありますし、非常に良く出来た再生産です。
 骨だってご存知のように運動しなければどんどん劣化していきます。歳をとってホルモンのバランスが崩れると、閉経後の女性のようにどんどん骨粗しょう症になることがあります。あれは結局造骨細胞より破骨細胞の勢いの方が強くて、見かけ上、すかすかな骨で、実質的な骨が少なくなっているという状態です


免疫系の働き

 いろいろなリンパ球などの免疫系も再生系です。皆さんの体の中では毎日、200個から000個ぐらいのがん細胞が発生していますが、免疫系のパトロールがそれをつぶして、食べているわけです。ところがそのバランスが崩れると、がんは増殖し、どんどん増えていくというわけです。
 免疫系は異物、よそから来た身体の中の変なものを解体処理します。分子認識して区別して処理するという役割を免疫系が担っているわけですが、過敏に反応すると、私もそうなんですが花粉症とか自己免疫疾患になってしまう。平たくいうと花粉症ぐらいは我慢して免疫力が強いんだと思っていただいた方がいいと思います。免疫がなくなったときの悲惨さを考えると、もう大変です。
 臓器移植をして大量に免疫抑制剤、即ち臓器の拒絶反応を押さえるための薬を飲みますと、感染症に悩まされます。ひかなくてもいいような風邪や感染症に悩まされる。アメリカの白人では何か皮膚に免疫抑制剤を塗って皮膚の自己免疫疾患とか、過剰応答を直そうとしたら今度は皮膚がんが多発したそうです。要するに紫外線を浴びてメラニンのあの黒い色の細胞が少ないから光を吸収する能力がないんです。もろに紫外線を浴びるとメラニンの遺伝子は紫外線、UV光によって変異していくんです。狂ったら異常増殖するとか、がん化する可能性もあります。そういうことがあるので免疫系をあまりいじらない方がいいと思います。


糖尿病をまずなくそう

再生医療というのは、臓器の再生を本当は上手に誘導してやればいいんだけれども、非常に大きく切り取ったり、気づかないうちに大きなダメージを受けている時には臓器移植しかないと言われます。しかし臓器移植が追いつかない。じゃあ中間段階として何をするのかといいますと、人工腎臓で機能を補おうと。実は皆様方の腎臓はほとんど片方だけで十分予備能力も含めてあるんです。だからお金に困った人は一つ譲ってでも娘の幸せを願うと。こういう話が発展途上国ではあるわけです。
腎臓病の疾患で人工透析が必要な人は現在、国内に2 3万人います。週4回、ないしは3回、一年間に50回ぐらい透析すれば救われる。わが国には500万人ぐらいの糖尿病の患者さんがいらっしゃるそうですが、そのうち毎年万人ぐらいが糖尿病の合併症の一つで透析患者になります。9万キロの健康な毛細血管もさすがに動脈硬化に敏感に反応してつまり始めるんですね。これが0分のになったりすると透析能力がなくなって、人工透析を受けなくてはなりません。
どうか皆さん、糖尿病をまずなくしましょう。厚生労働省はまず糖尿病患者を減らそうと一生懸命です。透析は全額、保険で治療していまして年間兆円かかっています。30兆円の日本の年間医療費のうち兆円がわずか23万人の透析のために使われている。これが毎年万人増えるということを考えると、厚労省としては財源を確保できるか心配し、糖尿病をたたけばこれが減るという戦略でやっているわけです。皆さん、是非ご協力をお願いします。


至るところにある異物を識別する機構

 血液は人工的なプラスティックの中を通ると必ず固まってしまいます。人工心臓も一種のプラスティックの細いファイバーで出来ているものを使っているわけです。血液は異物をことごとく認識して固まってしまう。それは大量の出血で死ぬということを守るための、本来は生体防御反応だったんですが、人工臓器の助けを借りないと生きておれない体の人にとっては非常に辛いことです。心臓の中、腎臓の中が詰まったら全く機能しないわけですね。
私の女子医大時代の助手からスタートした研究はまさしく、どうやったらプラスティックの性状をうまくデザインすれば血液を上手くだませるかというものでした。免疫にしろ異物を識別する機構が至るところにある。肝臓だって大事な役割の一つは薬を解毒することです。薬と毒は紙一重。毒も上手に投与すれば切れ味の良い薬になります。薬の投与を間違えると毒になるということはご存知だと思います。肝臓が解毒をしている理由は、異物である薬のような、外で作られた違うものに対して肝細胞の中で解毒機能が働く。そうすると肝細胞は全ての異物的なケミカルズを識別するが、良いものと悪いものを判断する倫理観は持っていないんです。その辺が問題で、薬を設計する時の難しさになります。


移植を待つ人が非常に多い肝臓疾患

 最肝臓のがんで毎年3万人から4万人、わが国だけでも死んでいます。アジア地区で00万人ぐらい亡くなっていると思われます。実は肝がんだけをみると、ほとんどがウイルスによる肝炎で亡くなっています。今、一番困っているのはC型肝炎ウイルスに感染した人で、輸血、手術をした時に感染するケースも目立ちました。
実はそのC型という最強の恐ろしいウイルスの検査キットを開発したカイロン社はベンチャー企業からスタートしていますが、今や世界最大の検査会社になって、わが国からの検査一項目ごとにも料金を取る基本特許をとっている。ですからウイルスの遺伝子つとっても場合によると大きなビジネスになる例です。
肝炎ウイルスに感染して肝炎になります。軽い肝炎が続きます。そして数年経つと慢性肝炎から肝硬変になります。肝硬変になると最後は肝がんになる。その確率を見てみると、何と肝硬変はほとんど00%、ほぼ確実に肝がんになってしまうんです。だからこのどこの段階で食い止めるか、治療法を考えるかという戦略も重要です。
原発性の肝がんの場合には患部を切り取って再生医療の適用になる。あるいは、ほとんどががん化していればそれは取り除いて移植に頼るしかない。しかし生体肝移植には、極端に言えば脅かして臓器移植をさせるケースもあり、いろいろな問題があります。切り取った肝臓も決して完全ではない。再生肝というのは必ずしももとあった肝臓と同じではないんです。しかし肝疾患にはあまりいい人工臓器がない。唯一活性炭を詰めたもので、解毒機能だけを補う程度のもので、これはほとんど今の重篤な疾患、3万人、4万人をレスキューすることにはなっていないわけです。ということで移植を待つ人が非常に多いわけです。


遺伝子治療

 最後に遺伝子治療の話をしたいと思います。特定の遺伝子が一個足りないために血友病の因子である蛋白が肝細胞で作れていないんだったら遺伝子治療で補ってやればいいということになります。これは今、チャレンジされているわけです。
遺伝子治療もいろいろな方法があって、遺伝子がない場合は遺伝子を入れる。遺伝子の制御がトラブっているなら制御のためのいろいろいろな方法もあります。従来はウイルスでウイルスを無害化して、その遺伝子を入れていたんですが、最近はそのウイルスが原因になって白血病になってしまう人が結構出てきたのです。効率がいいということで使われていたのですが、ウイルス自体は生きものですから相当封じ込めたウイルスといえども後で暴れ出して、遺伝子の本体を狂わせたり、がん化させるなど副作用の方が目立ってきて、アメリカでも禁止されたし、一番高らかに宣言していたフランスでも今、反省期に入っています。
 遺伝子をウイルスでないもので作っていこうというわけで、しかも普通は外に取り出してその細胞に遺伝子を入れてもとに埋め戻すという方法だったのですが、私たちは、ラットで尻尾の静脈から打ち込んだら必ず肝臓にいき、そして肝臓のがんや肝臓の遺伝子疾患を治すような遺伝子キャリアシステムを開発しようと研究してきまして、肝臓に目的とするものを送り込むということぐらいは出来るようになってきました。
 本当はいい人工肝臓を作るという作業がこの肝臓の移植に変る事業として必要です。この辺は工学と医学の医工連携なしには成り立たないというわけで、私たちがちょうどカスガイのようになって、医学と工学を繋げて、ここでも地元のエイブルさんなんかの装置を上手く転用したようなラジアルフロー型というものを使って、私たちは人工肝臓を立ち上げつつあります。
 大きなレベルで人工肝臓ができたら、それをさらにマスでやると凝固因子を大量につくるためのケミカルプラントが肝細胞の培養系でできます。それから小さくすると何と薬の開発上、解毒機構をシュミレーションする系が確立する。ミニ肝臓を小さなチップの中に埋めてやるという作業をやっていますが、こういうふうなことが出来ると製薬事業にものすごく貢献します。


新しい時代に入りつつある再生医療

 肝臓の細胞を再生といいますか、組み立てあげる技術以外にES細胞から作る技術も着々と進んでいます。今、再生医療で一番重要な細胞の一つ、EC、ないしはES細胞、とくにES細胞でも自由に増やし、必要な時に増やした後回収して、いよいよ臓器づくりのために大量に増やしたES細胞を使う技術が出来るようになってきています。
 再生医療というのは、こうやって新しい時代に入りつつあります。新しい遺伝子を入れる技術も次々に人工的に生まれています。ファルマバレー構想を担うような会社や大学は、こういうことを先駆的にやることに長けた方々が多いわけです。特にこの静岡県に馳せ参ずる人たちは。どうか地元の企業の方にも協力していただきまして、こういう世界を発展させていただければと思います。



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