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特別講演会 平成17年3月25日(サンフロント)

「どう動く、朝鮮半島情勢」
コリアレポート編集長 辺真一氏

■講師略歴

辺真一(ぴょん・じんいる)氏

コリアレポート編集長
1971年明治学院大学卒業。朝鮮新報社入社。英字紙、社会部記者を経て80年退社。82年朝鮮半島専門誌「コリア・レポート」創刊。現在に至る。99年参議院朝鮮問題調査会で参考人として証言。03年沖縄大学客員教授。拉致事件や核開発など一連の北朝鮮関係の諸問題に関してテレビや新聞、週刊誌などで精力的にコメントをしている。
サンフロント2懇話会は3月25日、緊迫する北朝鮮などの情勢に注目して、(社)静岡政経研究会と共催し、沼津市魚町のサンフロントビル9階のミーティングホールで、特別講演会を開催した。テーマは「どう動く、朝鮮半島情勢」。講師にコリアレポート編集長の辺真一氏を迎えた。会員や市民ら約50人が聴講し、拉致問題や核開発問題などをめぐる北朝鮮との関係について辺氏の解説と、手詰まりの両国関係打開策の一つとして小泉首相が日本好きの金正日総書記を日本に招待してはどうかという提案に耳を傾けた。

日本と北朝鮮

 拉致問題に関して、皆さんの怒りは十分お察しします。恐らく皆さん方を含めて日本国民の多くは北朝鮮という国はとんでもない国だ。核は開発するは、ミサイルは撃つ。覚せい剤を密輸するは、工作船は送り込んでくる。はたまた人はさらう。さらに最近は中国にある日本人学校や日本の領事館などに脱北者が駆け込む。とにかく日本にとって北朝鮮という国はトラベルメーカーであり、あの北朝鮮は何を仕出かすか分からない。金正日は何を考えているか分からない。これが
皆さん方の偽らざるイメージではないかと思います。
 しかし、皆さん方は一度でも北朝鮮の人たちが、日本のことを、日本人をどう考えているか考えたことがありますか。あの国も、恐らく日本に対してけしからん国だと。北からしますと36年間、植民地にしておきながら日本は今日まで謝罪も、償いもしない。韓国に対してはきっちりと40年前に謝罪も償いもし、けじめはつけたにもかかわらず、同じ36年間、植民地とされたわれわれに対しては何もしていないと。向こうは日本をそう見ていると思います。
 日本と北朝鮮は、今、非常に険悪な状態にあるわけです。向こうからしますと解放後、日本では戦後、人間に例えますとおぎゃぁと生まれて還暦になるまで隣の国と全く付き合わない。人間関係では、多分、こういう関係は耐えられないと思います。


小泉訪朝

 日本と北朝鮮はまさに国交がない。日本が唯一国交のない国が幸か不幸か、日本の隣にあるということです。これを何とかしなくてはならないということで小泉総理が2002年9月17日、平壌に乗り込んだんですね。小泉総理が言っていることは正しいと思います。不正常な関係を正常な関係に、対立の関係を友好な関係にしようと。それで小泉さんは、歴代総理として初めて平壌に乗り込んだんですね。
 小泉総理の平壌訪問、私も密かに間接的に、総理が自ら平壌に乗り込んでトップ会談をすることが拉致問題の突破口になると進言してまいりましたが、総理が平壌に乗り込んだ時には驚きました。片や金正日さんが拉致を認めなければならない。どうしたら彼は拉致を認めるかと。小泉さんが平壌を訪問しても、金正日さんが拉致を認めない限り小泉さんは手ぶらで帰ってくることになる。要は金正日さんは拉致を認めなくてはならないんです。訪問する直前まで北朝鮮は拉致については、知らぬ存ぜぬどころか、日本のデッチ上げだと言って開き直っていました。よりによってその国のトップが、自らの国家犯罪を敵国日本国総理の前で、「悪うございました。やっていました」というはずがない。自らの過ち、犯罪を認めることは大変なことですから。


青天の霹靂(へきれき)

 しかし、なぜかよく分かりませんが、彼が拉致を認めたんですね。北朝鮮にとっては青天の霹靂(へきれき)だったと思います。「殿、ご乱心」という言葉があります。金正日さんが拉致を認めた瞬間、北朝鮮の側近たちの間で、こういう声が飛び交ったといういうことを聞きました。「将軍様は気でも狂われたか」と。
 韓国の在野勢力、進歩的団体の中にはこういう声があったといいます。金正日総書記を指して日本に土下座外交をしたと。恐らく朝鮮総連に属している関係者の方たちは「金正日の馬鹿野郎」と、こういう声を発した人もいたと思います。
 それほど、北朝鮮にとっては屈辱的な、苦渋の選択といいましょうか。本人たちにとっては背に腹は替えられない。何とか自分が拉致を認め、そして日本と国交正常化し、戦争賠償金、即ち経済協力を得ようと。側近たちの声を無視して、俺は決断するといって、2002年9月7日、認めました。そうしましたら日本国民の中で、「この野郎、やっぱり拉致していやがった」と。こういう怒りが沸騰したんですね。


日本国民のバッシング

 拉致を認めさえすれば、恐らく明日にも国交正常化できるだろうと思ったところ、とんでもないような日本国民のバッシングに金正日さんは直面したんです。話が違うと、ひょっとして彼はそう思っているかもしれません。
 日本国民が怒ったのは、金正日さんが拉致を認めたから怒ったんじゃないんですね。たった5人しか生存していなかった。残り8人に関しては訳の分からない理由、交通事故にあったとか、海水浴で溺れて死んだとか、そういうようないい加減な、とても信じられないような話で、日本国民は、まだ生存者はいるだろうと。それを怒ったんですね。
 5人のお子さんたちの帰国問題をめぐって北朝鮮と綱引きが行われました。年4カ月ぐらい掛かりました。なかなか北朝鮮は子どもたちを日本に引き渡そうとしない。向こうにもそれなりの面子があったでしょう。話が違うじゃないかと。しかし最終的に北朝鮮が折れました。なぜ折れたのか。せっかく将軍様が小泉総理の前で謝罪し、そして今後の日朝関係をやっていこうと。その謝罪を無にすべきではない。小泉さんと交わした平壌宣言を無にすべきではない。そういう声が大半を占めたんですね。それで金正日さんがもう一度仕切り直ししてやろう。お子さんたちを連れて帰ってくださいと。それが去年5月22日、小泉総理が2度目に訪朝したときの北朝鮮側の対応だったわけです。
 これも子どもたちとジェンキンスさん一家を帰しさえすれば、それで少し納まるだろうと思って決断したんですね。そうしたらどうなったか。経済協力どころか、今度は経済制裁という、そういう羽目に追い込まれてしまった。一体全体、何がどうなっているんだろう。これが向こう側の、今の心境ではないでしょうか。


分かっていない日本国民の怒り

 5人を日本側に引き渡したのは良かった。しかしめぐみさんの遺骨問題を含めて、これまた訳の分からない、とんでもないような嘘八百を並べ立てたので日本国民は怒ったんですね。それで経済制裁という声が湧き起こった。その点を、どうも金正日さん以下、党幹部の皆さんは分かっていないと思います。
 しかし、向こう側の立場はもう金輪際認めることはない。日本という国はそういう国なんだというような意見、声が金正日さんを中心にあり、恐らく金正日さんがこれ以上拉致を認め、生存者を日本側に引き渡すという可能性は、きわめて低くなったと思います。
 もう一度、金正日さんに「拉致被害者たちの死亡というのは嘘で、生存しています。日本に引き渡します」と言わせなければならないわけです。どうやって言わせるか。私たちは知恵を絞らなくてはなりません。そこに出てきたのが経済制裁でした。経済制裁しかないと。経済制裁しますと、北朝鮮には大きな打撃を与えると思います。カニ、アサリを止めただけで50億円の損失ですね。これは北にとっては大きいです。


経済制裁の効果

 しかし、経済制裁が拉致問題の早期解決、あるいは生存者の早期救出につながるかどうか。私は、効果があるというのは錯覚だと思います。ですから経済制裁はいやだということではありません。偽のお骨を返してきた事に関して、日本の国民の怒りを表すための経済制裁には賛同します。しかし拉致問題の早期解決のための経済制裁ならば、おやめになった方が良いと思います。
 アメリカの訪朝議員団が平壌を訪問して、その後日本にやってきました。平壌に行った際、北朝鮮に拉致の問題を聞いてくれたかと聞いたら、問い質したが何の反応もなかったと。そして経済制裁については、われわれはキューバに対して50年近く経済制裁を加えてきたが全く効果がない。カストロ政権は今もってつぶれないというんですね。国連が経済制裁をしましたがイラクのサダム・フセイン政権も、リビアのカダフィ政権もつぶれなかったですね。ですから日本一カ国で北朝鮮を完全にギャフンと言わせることは、相当な時間と忍耐を強いられることになると指摘していました。


平壌宣言

 しかし日本は北朝鮮が拉致問題で全く誠意を示さない。ですから経済制裁を求めているわけです。問題は小泉総理がなかなか重い腰を上げないといわれますが、重い腰を上げないんじゃないです。上げられないんです。理由は簡単です。平壌宣言があるからです。小泉総理は平壌宣言を後生大事にしています。小泉総理に批判的な人たちに言わせますと、そんなのは破棄してしまえばいいじゃないかと。こういう声があるのも事実ですが、一体全体、平壌宣言には何が書かれているか。
 4項目から成っています。まず一項目目は、「双方は日朝間に存在する諸問題に誠意を持って取り組む強い決意を表明する」。北朝鮮は、日朝間の諸問題の重要な問題である拉致問題に全く誠意を示さなかった。ですから北朝鮮は平壌宣言に違反しています。ということは、日本はこれを破棄して北朝鮮に経済制裁することを正当化できます。しかし日本が経済制裁をしますと「双方は国際法を重視し、互いの安全を脅かす行動を取らないことを確認した」という3項目目に触れます。経済制裁というのは兵糧攻めです。ものの流れ、金の流れ、人の流れを止めてしまう。今、北朝鮮の経済はにっちもさっちも行きません。それに輪をかけて日本が経済制裁をしますと、北朝鮮は安全を脅かされるという認識に立てます。そうなりますと、3項目目に、今度は日本が違反するわけです。最後の項目で「北朝鮮側はこの宣言の精神に沿ってミサイル発射の保留を2003年以後もさらに延長する意向を表明した」とあります。このたった一枚の平壌宣言が北朝鮮のミサイル発射を阻止するブレーキになっているんです。そのブレーキを日本自らが外してしまう。
 ですから小泉総理としては拉致問題での経済制裁発動が出来ないんです。総理の立場からしますと確かに拉致被害者の救出もかなり重要な課題ですが、一億数千万の国民の生命、安全、財産を守る立場上は、そう簡単には経済制裁に入れないんです。
 経済制裁をすれば北朝鮮が暴発するのか。99%、日本が経済制裁をしたからといって北朝鮮が日本にミサイルを撃ち込むことはあり得ないと思います。しかし日本が経済制裁を発動すれば、これは宣戦布告だということを北朝鮮が何度も言っています。それをハッタリと受け止めるか、単なる脅しと受け止めるかという問題です。私は脅しだと思います。脅しだと思いますが、北朝鮮が宣戦布告と言った以上は日本が望むと望まぬとに関わらず、経済制裁は国際法上で言いますとまさに戦争の一歩手前なんです。経済制裁の次は軍事制裁ですから。ですから交戦状態に置かれる。交戦状態に置かれたときに、どういう状況が起きるかということです。
 拉致問題の原点というのは、本当に解決するなら短期に、できるだけ早くです。どんなことになっても長期戦では駄目だということです。時間をかけては駄目だということです。それは拉致被害者の両親、家族の皆様方が病弱、高齢だということ。5年、0年待っていられないということですね。今日にでも、明日にでも、今年中に、解決しなくてはならないんです。経済制裁というのはあまりにも時間を要するということ、さらにリスクが伴う。


北朝鮮の考え方

 金正日に代わって北の考えを説明します。なぜ北朝鮮が核を持とうとしたか。動機があります。950年、朝鮮戦争でマッカーサーは中国が参戦し撤退を余儀なくされた時に、核を使おうとした。そして、アメリカはなぜ北ベトナムに負けたか。つは、これはアメリカが北緯7度を突破しなかった。2つ目は首都ハノイを攻撃しなかった。3つ目、核を使わなかった。これがベトナム敗戦の3つの理由です。
 こうした中で北朝鮮は50年にわたって食うものも食わず、国民を犠牲にし、餓死者が発生したにもかかわらず、ひたすら核とミサイルに全てを費やしてきたんです。経済を犠牲にして核を持った国を、経済で核を捨てさせるというのは論理に合わないんです。これまた無理です。


中国の影響力の限界

 では、ここは中国に任せようと。北に影響力があるだろうと。どうしてそういう見方をするのかといいますと、日本だと日米安保条約があり、米軍基地があります。日本はアメリカの核の傘に守られている。韓国も同じです。ですから日韓のアメリカに対する依存度、アメリカの日韓に対する発言力は絶大なものがあります。
 北朝鮮はどうか。北朝鮮には中国の基地もロシアの基地もありません。軍人もいません。北朝鮮は中国、ロシアの核の傘に守られていません。おかしな国ですね。日本と同じように安全保障を全て中国、ロシアにおんぶに抱っこすれば、こんなに経済的に苦しまないですんだと思います。
 どうして北朝鮮はその道を選ばなかったのか。大国は小国を裏切るんですね。960年代初めのあのキューバ危機。あの時も資本主義の親分のアメリカ大統領ケネディと、共産主義の親分、ソ連共産党書記長のフルシチョフは、激しくにらみ合い、結局、フルシチョフは後退するのです。これを見て金日成は、ソ連を信ずるに足りないと思ったんです。では中国はどうか。中国は970年代、北ベトイナムがアメリカと国の存亡を賭けた戦いをやっている真っ只中に、何とアメリカの親分ニクソンを北京に呼んで、毛沢東は握手をしたんですね。この中国とロシアの行動から北朝鮮は自らの安全保障を外国に委ねるわけには行かないというので国防は自前でずっとやってきたんです。これが中国の北に対する影響力の限界です。
 もう一つ、中国はかつてアメリカの封じ込め政策にあって、国連に中国は議席を持っておらず、台湾が持っていた。アメリカは中国の国連加盟を断固阻止したのですが、これに対して中国はどういう戦法を取ったか。964年に核実験を成功させ、72年に入って人工衛星を打ち上げたんです。その結果、ニクソンは中国を認め、北京に飛んで行ったのです。核実験を成功させ、そしてミサイルを手にして初めてアメリカは中国を認めたわけですね。北朝鮮からすると、核を保有し、テポドン2の発射実験を目指す。つまり中国がやったことをそっくり北朝鮮はやっている。960年、中国が核実験に成功したときに世界の袋叩きにあったんですが、その時唯一おめでとうの祝電を送ったのは北朝鮮です。その祝電が中国人民日報の一面を飾りました。北朝鮮はいまだ中国の核実験に対して度も抗議したことはありません。その中国が北朝鮮の核とミサイルに抗議できますか。
 中にはこういう人もいます。北朝鮮の核とミサイルは北京も射程圏内に入っているから中国は黙っていないと。ならば中国の核と中国のミサイルは当然平壌を射程圏内にしています。国と国は大小ではないんです。国と国は対等なんですね。ですから中国は北朝鮮に対して影響力を発揮できないのです。もし中国にそんなに影響力があったら、とうの昔に核の問題も拉致の問題もあっさり解決していると思います。難しい問題です。

北の核は日本に向けられている

 中国が期待できないとなると、問題はアメリカがイラクに対してやったようにやれるかどうかです。私は出来ないと思います。なぜかというと、北朝鮮は核を持っていますから。アメリカはこれまで一度も核を持った国と戦争をしたことがありません。第二次世界大戦の日本がそうでした。朝鮮戦争の北朝鮮が、ベトナム戦争の北ベトナムが、さらにその後グレナダとかパナマとか次々に侵攻しましたね。アフガニスタン、ユーゴと。でも今の北朝鮮は核を持っているんですよ。核を持っている国とは戦いはできますか。やれば核戦争です。ですから金正日は、アメリカは手を出さないと思っている。
 北朝鮮が核を何発持っているか分かりません。しかし明らかに北の核は日本に向けられています。それはもう断言できます。韓国には核は使いません。使う必要性がないんです。通常兵力で十分なんです。アメリカには、まだ届くミサイルを持っていません。唯一日本に届くミサイル、ノドンを持っているわけです。
 皆さん方の多くには楽観論が結構多いです。「いや、核実験していないから核は持っていない」と。ではイスラエルはどうですか。南アフリカはどうですか。こと有事とか安全保障とかでは楽観論は許されないわけですね。
 北朝鮮は確実に核を持っている。しかし核を乗せるだけのミサイルの小型化、核爆弾の小型化、つまりミサイルの弾頭につける技術を持っていないという人が結構います。北朝鮮に行って確認したのか。本当だったらどうするかということなんです。
 もし北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射した場合は、0分以内で着弾します。これはすでに国会で石破茂前防衛庁長官がそう答弁しています。したがって発射する前に察知して叩かなければ日本は守れません。ただし、このケースは前提があります。北朝鮮のミサイルが発射台に乗せられ、それで液体燃料を注入する時間が大体3、4時間です。その間に叩くと。もし固体燃料を持っていたらどうします。


弾頭部分は固形燃料

 98年8月3日のテポドン号、北朝鮮は人工衛星といっていますが、テポドン号の射程距離は200、ないし400キロとマスコミで言われています。あれは3段ロケットなんです。3段目、弾頭部分は5400キロ飛んでいった。それも固体燃料を使ったんです。
 去年2月に韓国の専門家、朝鮮半島エネルギー開発機構、KEDOの韓国側代表の一人が書いた本を私は翻訳しました。あのテポドンの弾頭部分は固形燃料を使ったという記述があったからなんです。私は驚いてその本を去年出版しました。「北朝鮮が核を発射した時」です。全く売れませんでした。ところが2月0日、北朝鮮が核の保有宣言をしたところ、突然売れ始めました。
 北朝鮮の工作員と防衛庁の関係者を東京で引き合わせました。外務省の人間と私が立ち会って、すさまじい意見交換が行われました。工作員は2度、日本に侵入したといいます。彼が衝撃的な発言をしたんです。われわれ工作員が班を組んで中国に潜入し、中国の実験場から固形燃料を北は盗んできて、それを研究して開発したと。手段を選ばないんです。また、ソ連科学者の中にはソ連共産党崩壊でソ連を見捨てて北に、あるいは失業してしまって路頭に迷う科学者を北朝鮮のかつての教え子留学生が協力させた。これが北朝鮮の核とミサイルの開発の今日の現状です。
 いや困りましたね。戦争も出来ない。どうするかということですね。これはもう金正日政権の崩壊を待つしかない。去年は北朝鮮から2000人が脱北したわけですから崩壊間近だと。これは楽観論ですね。脱北者の数が年々増えているから北朝鮮は東ドイツのようになるか。なりません。なぜならないか。キューバの例があります。キューバは980年、一年間、2万5000人が脱出したんですよ。それまでの間に70万人以上がキューバを去っているんですが、それでカストロ政権はつぶれましたか。韓国もクーデターが起きました。北はどうか。北朝鮮では全て軍を優先している社会です。亡命した人の中で最高位の軍人は上佐。即ち将軍クラスは誰一人亡命していない。権力の中枢は非常に強固だということです。


強い金正日の日本に対する関心

 結局のところ金正日政権を相手に交渉しなくてはならないということなんです。しかし、それは時間も要します。そんなに待っていられないですね。拉致被害者の家族の皆さんのこともありますし。困ります。
 でも私は最近一つ、ある策を考えつきました。それは金正日の料理人という藤本さんの話を聞いて閃きました。誰が引田天功を呼んだのか。誰がアントニオ猪木を呼んでプロレスをやったのか。北朝鮮の2200万の国民は引田天功もアントニオ猪木の存在すら分からないんですね。誰が呼んでプロレスを、マジックを見たいといったのかですね。
 金正日さんのファミリーだけが衛星放送で日本のテレビを自由に見ることができる。この前出ていたあのマジックの人を生で見たいと、それで引田天功を呼べと。プロレスも同じです。プロレスに至っては中国もまだご法度ですよ。そのプロレスを北朝鮮でやったんですね。
 藤本さんという人は、面白い人で、埼玉ですしを握っていたら常連客に在日朝鮮人の方がいて、今の給料の倍出すから北に行ってみないかと誘われて向こうに行ったんです。82年に行き、3年近くたって金正日さんのお抱え料理人になりました。でも本人は、あまりにも知りすぎたといいますか、金正日さんのプライバシーを知ってしまったから消されるんじゃないかと心配し、逃げてきたんです。
 先だって仙台でいろいろ話を聞かされたんですが、彼は防弾チョッキを着ているんです。その彼が金正日の日本に対する関心は普通じゃないというんです。私も今なお信じられないんですが、宴会でアルコールが入りますと皆で軍歌を歌うというんです。それも北の軍歌ではなく日本の軍歌なんです。日本の軍歌は北朝鮮の軍人のフィーリングにぴったりだというんです。そして最後の、宴会のお開きの歌、これが「草津よいとこ一度はお出で」でだそうです。また、藤本さんが必ず歌わされる歌が2曲あるというのです。一曲は島倉千代子の「東京だよ、おっかさん」、もう一曲は小柳るみ子の「瀬戸の花嫁」。「東京だよ、おっかさん」は分かりますね。金正日さんは6歳のときに母親と死に別れたんですから。この歌を歌うとしんみりと聞くというんです。


今度は日本に金正日招へいを

 私の友人は、拉致問題を解決するために小泉総理が平壌を訪問すべきだといいますが、それは出来ないと思います。国交のない国に一国の総理が3度も足を運ぶということは外交慣例上考えられないことです。過去2回は金正日さんの招待で小泉さんが平壌を訪問したわけですから、首脳外交は相互主義です。ならば今度は金正日さんを呼んでみたらどうか。意外でしょう。
 寅さんの映画も本人は好きだといいます。寅さんの映画への入れ込みは半端ではないです。だから日帰りではなく泊2日で来れば、柴又を案内してもいいし、場合によっては島倉千代子さんに一曲歌ってもらってもいい。
 金正日さんは拉致問題をそのままにして手ぶらで来れると思いますか。来たい日本であっても、拉致問題を解決しない限り来られないと思います。ですから招請というカードを回切って、投げてみたらどうかと思うんです。経済制裁をやる前に。
 これは、実はクリントン前大統領のアイデアなんです。クリントンさんはアメリカにとってきわめて重要なミサイル問題解決のために平壌に乗り込もうとしたんです。ところがアラファトに、先に中東和平を解決してくれと言われて、結局彼は中東を選んだ。そしてクリントンは金正日にかわりにワシントンに来てくれと招待状を出したんです。招待状をもらった金正日は驚きました。行こうか行かまいかと悩んでいる間に大統領選挙でゴアが負けて、ブッシュが大統領になったために、この話はぽしゃってしまったんです。
 それを小泉さんが使ってみたらどうかと思いますね。それでなおかつ日本に来たくないと。拉致は一歩も譲歩しないということなら、最終的にアメリカと共同歩調を取るなり、あるいは核問題を国連安保理に働きかけるなり、経済制裁するなり、何なりとやることに対して、私はなんら反対する立場にありません。


歩み寄って同時解決を

 ただ拉致問題の早期解決のためには、小泉総理がこのささやき外交をやってみれば、ひょっとすれば展望が開けるかもしれません。ただし、その前にどうやって招待するのか。拉致問題と北朝鮮が求めている過去の清算、即ち国交正常化を同時解決しようと。日本が拉致問題の解決なくして国交正常化はないという。北朝鮮は国交正常化すればその他の問題は必然的に解決するという。それを、お互いが歩み寄って、同時解決しようと。
 過去の問題では日本人が加害者で、拉致問題では北朝鮮が加害者なんです。ですから、ここはお互いが被害者の立場に立って、被害者の苦痛と、そして痛みを和らげ癒すという気持ちで、真摯に腹を割って話せば、私は、このきわめてエンドレスな拉致問題も、難しい核問題も、ひょっとするとうまく行くんじゃないかいう希望を持っています。



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