この講演会のお話をいただいた時が当選して間もなくで、本当に文字通り「霞ヶ関から永田町へ」ということでした。私は8月の第1週まで10年ぶりに古巣に戻って財務省国際局の開発機関課長という世界銀行ですとか、アジア債銀とか、累積債務、開発援助関係の仕事をやっており、ワシントンに出張して世界銀行総裁の事務局とアフリカ支援や北朝鮮の今後をどうするかとか話し合っていました。
ワシントンに行くと、やはり郵政民営化で小泉政権はどうするのということが結構話題になっていました。その時点で、小泉総理のご性格ですから万が一参院で否決になったら解散されるんじゃないかという見方が大勢を占めていました。しかしいままでの政治常識では、まさか自民党が今の時期に解散という選択をすると霞ヶ関ではみていなかったのですが、帰ってきたら、どうもこれは反対票がかなりの数にいくでしょうと。8日が採決だから、その後すぐに解散かなと、まるで他人事のように「大変だなこの暑いのに。選挙する人は」と、思っていました。
そして8日に「ああ、否決されちゃった」と思っていたら、その日の夕方ぐらいに2つの派閥のかなり上の議員さんから電話がありました。「大変な選挙になる」と。で、各派閥はいい人材の確保に必死で「あなたの場合は、いままで何回か声を掛けたがお断りになっているから可能性はないと思うが、他から出るんだったらうちから出てください」というお話があり、その2日後、今度は総理官邸とか党のトップからお話があって、「今回は選挙のやり方も構造改革です」とおっしゃる。
確かに翌日、翌々日の世論調査は非常に支持率が上っていました。小池環境大臣がいわゆる刺客で立つとか、立たないとか話になったのも確か0日ぐらいだと思いますが、そのころお話があって「第弾の候補として片山さんにお願いしたい。総理もそういっている」と。選挙のやり方も構造改革で、政策で立ってもらい、比例ブロックは全部女性を、当時は位にするとか上位にするといっておられましたが、全部女性枠にすると。自民党は女性の議員が多くないんです。それを一気に改革するにはこれぐらいの方法しかないというようなお話も含めておっしゃって、「ただしその代わり小選挙区も立ってくれなければ困る。小選挙区において国民に選択肢を与える」と。国民に選択肢を与えるということは青票を出したか、民主党の人しかいない選挙区は、30幾つかあるわけです。それに全部、反対候補を立てるという。自民党公認、党主導、官邸主導の人選で立てる。絶対に立てるという中で小選挙区はやって欲しいと。
その時はブロックや小選挙区の具体的な話は私のところにはなかったですね。どうも言葉の端々に出てくるのが中国地方とこの東海地方です。なぜかというとこの2つは大物反対議員が多いんです。ですから小泉総理のお怒りがいかに強かったかということはわかるんですね。つまり郵政民営化をやるぞといって総裁になって小泉総理は2回総裁選挙で選ばれているんです。選挙のマニフェストにも郵政民営化と書いてあるのに、その党の中から反対票が出て通らなかったという非常に強い無念さですね。それを真正面から打ち出した選挙をされるということでした。
いろいろな説得があるうちに、どういうわけだかその翌々日ぐらいには私が出ると一部報道されたんです。それで外堀も埋まってきました。主人も今まで3回か4回声を掛けられたときには、「どうかな」と言っていましたが、今回は、経団連も珍しく自民党公認候補の支持を非常に早く打ち出した。そういう流れの中で経済人であるうちの主人も、「今回は片山家としてお役に立つなら、大義があるでしょう」と。
そこはやはり自民党というのはすごいなと思うんですが、いつの間にか外堀はきれいに埋まっていまして、「じゃあ総理にお会いして最終判断をします」ということになりましたが、通常、私が官僚の身分で総理にお会いし、それで断わるという選択肢は事実上ないわけです。
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