サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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特別講演11月28日開催
「道路行政の課題」〜伊豆地区の道路整備に向けて〜
国土交通省中部地方整備局道路部長
酒井利夫氏迎えて開催

  伊豆地区の道路の整備をめぐって、国土交通省中部地方整備局の酒井利夫道路部長を特別講師に招いて「サンフロント21懇話会」の特別講演会が昨年11月28日、三島市の三島信用金庫本部会議室で開かれた。テーマは「道路行政の課題〜伊豆地区の道路整備に向けて〜」。伊豆地区の関係者100人近くが参加した。あいさつに立った篠原光秋静岡新聞社・静岡放送東部総局長は「伊豆の道路をどうしていったらいいのか。ヒントをもらうのが今回の狙い」とし、大村俊之三島信用金庫理事長は「酒井部長のお話をつの糧にして伊豆の活性化に役立てていただければありがたい」と語った。県立静岡がんセンターを酒井部長の前任者が訪ねたのがきっかけでこの日の特別講演会になったとがんセンターの山口建総長は紹介し、医療面からも伊豆地区の道路整備の必要性を強調した。


「医療の壁も道路」  県立静岡がんセンター 山口建総長

 ひどく場違いの場に立っているような気がするんですが、今日は、伊豆半島の患者さんの代弁もさせていただこうと思っています。やはり道路が十分できていないと重病の方は命を落とすということが現実の問題となります。間に合わない。あるいは通院も大変です。伊豆から多くの方ががんセンターにみえているんですが、渋滞、あるいは長い時間のドライブはつらいものがあります。
 この10年間、静岡県の東部地域は、がんセンター、順天堂の長岡、沼津市立、それから静岡医療センター、元の東静と、かなり医療レベルは上っていますが、その高度先進医療に、なかなか伊豆半島の方々がアプローチできない。厳しい状況が続いているように思います。私は、絶対にもっと道路状況を整備しないといけないだろうと思います。
 こちらに住んで、もう4年近くになるんですが、一点、気になることがあります。それは本当に伊豆地区の住民の方々が伊豆縦貫道を切望しているのかどうか。静岡県人のある意味での特徴である奥床しいところが少々災いをしているのではないかなと私は想像しております。
 私の祖父が南紀の小さな村で村長をやっていたので、百年前の話をよく私にしてくれました。今の紀勢本線は、村人こぞって必死になって訴え、何度も何度も陳情し、やっと出来たんだと。そういう努力を地元もする必要があるのではないかなと思います。
 私は名古屋圏の人間なのでよく分るんですが、名古屋から見れば伊豆半島は一番遠い。このことをよく理解しておかないと、東京に近いからどんどん話が進むと思っていると大間違いです。その気持をしっかりと外に表す必要があるんじゃないかなと思います。私は伊豆の市長さんたちが一斉に伊豆は一つで、是非伊豆縦貫道は欲しいと。そのためには負担もいとわないという住民投票を是非やるといいのではないかなと思っています。
 最後に、医療の壁も道路ということを強調したいんです。このお部屋の中におられる方々の半数は、いずれがんにかかります。もしそうなった時、伊豆の方で、道路がもし整備されていないと、苦しみを味わうことになりますので、皆様ががんにかかるまでに、縦貫道を整備していただくよう酒井部長にお願いする(笑)ということです。


「道路行政の課題」〜伊豆地区の道路整備に向けて〜 
国土交通省中部地方整備局道路部長 酒井利夫氏

 とくに地域の魅力づくりという観点から道路づくりと絡めてお話を申し上げたいと思います。今日お話する項目は5つあります。つは数字で見た伊豆の現状、2つ目は魅力づくりという観点で私の思いを述べたいと思います。3つ目は地域作りの実例として地域の住民が積極的に関わってまちづくり、魅力づくりをした事例です。4つ目は、伊豆の、まさに今日のテーマ、道路の整備の現状と今後のお話をさせていただきたいと思います。5つ目は、さらにもう少し広く見まして、道路行政を巡る最近の話題、特定財源の現状も含めてお話できればと思います。


.伊豆の現状

富士山が大きな魅力

 数字で伊豆の現状をみますと、全国の人口の動向では、来年くらいにピークを迎えてこれから下り坂と云うところで、静岡県も10年前と比べますと2%増加していますが、伊豆地域では沼津、三島、伊東が1.0前後、それから南の方がちょっと少なくなっています。10数年後の日本の姿を、むしろ先行的に先取りをしていると言えると思います。高齢化率で見ますと、これも南の地区の方が高齢化率が高く、全国、あるいは静岡県全体の10数年先をいっているという感じです。

 伊豆地域は、観光が大きな産業でして、第三次産業の従業者の割合は、全国平均、あるいは静岡県平均に比べてもかなり多くなっております。やはり基幹産業であると言えると思いますが、つ興味深いデータがあります。全国、あるいは静岡県全体の観光客の入り込み数は、この10年間ほぼ横ばいですが、伊豆半島をトータルで見ますと減少傾向で、10年前の8割ぐらいに減少している。あるデータによりますと7割に減少というものもあるそうです。
 静岡県でも静岡空港を今、建設中ですが、やはり観光ということになりますと、外国、とくに東南アジアからのお客さんが今後のターゲットの1つだと思います。平成6年の日経新聞のデータによりますと、ソウル、香港、台北、上海での日本の人気地区のランキングですと、伊豆地区は香港、台北が7位、上海9位とベスト10に入っています。ソウルではベスト10には入っていませんが、注目すべきはいずれの都市でも5位以上の上位に富士山が入っていることです。世界中どこでも富士山が大きな魅力だと思います。伊豆の魅力を訴える上でも、伊豆から見る富士山が一番いいんだと売り出していくことが魅力づくりのつなのかなと思っています。
 伊豆のイメージですが、富士山が見えるきれいな景色、ワサビ田、天城トンネル、修善寺、きれいな森、桜、海岸等々いろいろあります。また文学ですとか、おいしい農産物、水産物、マリンレジャー、いろいろ魅力満載だと思います。

必要な交通アクセス

 そういう地域だからこそ必要な交通アクセスは当然の基盤として整備しなければならない。あれもこれもというよりは必要最小限の基盤をきっちりしていかなければならないと思っています。それは日常生活、医療のお話からの観点でも本当に必要だと思います。
 伊豆半島の南の方では年間200リットルの血液が必要で、沼津の血液センターから日おきに運んでいるということです。交通量が仮に少なくともこの地域の道路には、こういう重要さがあると思います。南の地域の人たちが第3次医療センターに行くのに30分以上かかる地域がまだたくさんあると伺いました。これは非常に問題であると思っています。

長野県の南部の高度医療ネットワーク

 つの例ですが、長野県の南部、人口35万人くらいが住む伊那盆地には3つ専門に特化した病院があります。つは伊那中央病院、これはがんの専門、真中に駒ヶ根市があり、ここに脳血管専門の病院、昭和伊南総合病院があり、それから南の飯田市には心臓病の専門の飯田市立病院があります。それぞれ専門の病院が中央高速道路を介すことによって伊那谷全体、あるいは木曽谷の人も含めて時間以内で高度な医療を受けることが出来る。それぞれの地域に専門病院をたくさん作る必要はないということで、地域トータルとして道路ネットワークを介することによって、高度医療が受けられる。これは非常にいい例でありまして、上伊那木曽地域高度医療ネットワークといっていますが、道路が福祉の観点からも必要であり、これをうまく利用することによってとトータルの医療システムが成り立つと思っています。この伊豆地域においても道路の幹線ネットワークはきっちり整備していかなければならないと思っています。


2.地域の魅力づくり

主体は住民だ

 交通基盤と併せて何といっても地域の魅力づくりが必要不可欠です。外から見て輝いて見える、そういう魅力があることが必要だと思います。そのためには、私は5つほどのポイントがあると思っています。そのつは、魅力づくり、地域づくりの主体は住民だということです。そこに住んでいる人は、自分自身では実感しない、分からない。そんな魅力が実はあるんじゃないかなと思います。
 かつて私が勤務をしていた町には、本当においしいみかんとトマトがありましたが、地域の人たちは当たり前だと思っているんです。そこに住んでいると当たり前だが、外から見ると非常な魅力にもなりうるんだということなのかと思います。
 自分の街の魅力を再発見していくことが先ず必要かなと思います。そういうことを売り出すことが自分の街の誇りになって、それが外から来る人にとってもやはりそうだと思わせるものになる。そういう運動が先ず必要なのかなと思います。

多様化、多元化するニーズに対応を

 2つ目の要素は、お客さんのニーズというものが本当に多様化し多元化しているということです。静岡県の行った「伊豆半島に求める理想の観光地像」のアンケートをまとめますと、25%の方が自然系、自然を体感出来る観光地がいいと答え、17%が温泉系で、温泉療養やヒーリング、タラソテラピー等の体験施設が充実している観光地等を求め、それぞれ少しずつ違う魅力を求めているわけです。
 かなりニーズが多元化していると思います。ですからこういうニーズに対応するためにはか所で全てをやることは不可能で、伊豆地域のようにそれぞれの町に、それぞれの魅力があるとすれば、それこそ地域全体で何か訴えるものが出てくるのかなと。全体として魅力が備えられるのかのと思います。


連携が必要だ
 
 3番目は、そういう意味での連携が必要になってくるのではないかと思います。つは伊豆の中での連携、あるいは伊豆とその外との連携、ニーズが多様化、多元化していますので、折角それぞれの地域にたくさんの魅力がある伊豆ですから、それをうまく連携させて行けばトータルで大きな魅力になると思いますし、それから地域はなくて分野、例えば医療と観光、農業と観光と、いろいろな例があるんじゃないかと思いますが、温泉療法でお客さんが増えてきたという九州の温泉の例も聞いたことがありますが、本当にがんセンターと温泉という魅力づくりもあると思います。
 それからお客様との連携、これはまさにその地域の魅力を外の人からいろいろ言ってもらうという意味もありますし、それからその地域の人と行政、市町村、県、あるいは国、こういうところとの連携も非常に重要だなとおもいます。そういう意味ではたくさん魅力のある伊豆がつになって、魅力を訴えて行くことは必要なんだなと改めて思っています。
 
 アイデア次第
 
 4番目は、何をやるにしても、アイデア次第だと思います。例えば、行くのに不便だとすれば、その不便さを魅力として売り出そうということもあるのかなと思います。
 
 リーダーが必要
 
 5番目は、主体はあくまで住民、その住民の一人ひとりに「わが町は」というような思いがあればいいのですが、そこにさらにコーディネートをする、上手くリードする方がいて、熱心な方がいらっしゃると爆発的にうまく進むという事例がこれまでもありましたが、こういうリーダーが必要だと思います。
 以上、5点ほどが魅力づくりの上で必要になってくるのではないかと思っているところです。


3.地域づくりの実例

 次に地域の活性化、魅力づくりの具体的な事例をお話したいと思います。とくにここでお話したいのは、ハードをニーズに合わせて作っていくというのではなくて、今あるハードを、その使い方を変える事によって、あるいは地域のローカルルールを作って地域の皆さんと使い方を少し変えることによって既存の施設を有効利用して使い勝手をよくするというものです。地域の方、あるいは利用者が主体になって行政はお手伝いをすると、そんなイメージのものです。

島根県松江市の事例

 島根県の松江市のお城の近くの中心街は2車線の道路と片側に歩道がある普通の商店街ですが、最近はかなりシャッターも閉まって郊外に大型店が出来たりして、あまり人通りもなくなってしまった。ではどうしたらいいのかと地元の方たちがいろいろ考え、道路を一方通行にして人が集るようなイベントをやったらどうだという案が出て、とにかく一度やってみようと平成11年にカ月ほど、道をスラロームのようにして通過交通がスピードを出せないようにし、本当に必要な車だけが入って荷降ろしでき、人々が自由に回遊できるようにした実験を行いました。上手くいったというので、その後実際にそういう形の道路にしてかなり成功したということです。白線をちょっと変えるぐらいで使い勝手が良くなって、かなり人が来るようになって、商店街、お客さん、行政の3者が得をしたという事例です。

東京の渋谷の事例

 大東京の渋谷では、常に違法駐車や荷降ろしの車があってかなり通過交通も渋滞していました。先ず2車線を一方通行にしてしまって、荷捌きのスペースを特定の場所にする。いつも違法駐車があるところを駐車できないように狭くして、その替り歩道は広くし、荷捌きも特定の時間に限定するという地域のローカルルールを作りやってみたところ非常にメリットがあったということです。この経験を生かして、とくに交差点の周辺は絶対に駐車させないということで赤い色を塗って、そこはレッドゾーンとしましたが、効果的だとして東京都では他の地区でもやり始めています。このようにルールを決めて既存の施設を有効活用するというようなことが各地で始まっています。
 これをそのまま、この伊豆地域に当てはめることができるかというと、これも前提条件が違うわけですが、いずれにしてもそれぞれの地域ごとに、そこに住んでいる皆さんが、本当にここをどういうふうにしたらいいのかと、例えばまちづくりなんかでは、どのように利用すればもっとよくなるか、もっといろいろ知恵を出すと、いろいろな回答が出てくるのではないかということで、ご紹介させていただきました。


4.伊豆の道路整備の現状と今後

信頼性の高い道路が必要

 伊豆半島の道路ですが、昨年8月13日から17日にかけ630ミリの雨が降って、いたる所で道路が寸断され、全面通行止めは4カ所に及びました。本当に地質的にも大変で、防災性も非常に低いというところです。これは言わずもがなで、皆様方の方がよくご存知だと思います。だからこそ、少なくとも信頼性の高い道路が必要になってくるということです。
 伊豆縦貫自動車道ですが、いま事業、あるいは準備をしていところが、大きく分けて3区間あります。一番上の沼津、三島地区は東駿河湾環状道路ということで、沼津、三島地区の交通渋滞緩和、とくに東西方向、あるいは環状方向の幹線道路を整備することにより町の中の渋滞を解消する非常に大きな効果が期待されています。早いところで平成19年、2年後には完成を目指しています。一部、オオタカが出てきて少し延びるようですが、なるべく早く供用をしようと今、頑張っているところです。
 また、天城北あたりも早いところについては2年ぐらいの間に整備をし、残るところも引続き一生懸命がんばろうと思っています。南の地区も、現道ではなかなか大変なところについては整備を進めていこうとしており、少なくとも10年ぐらいの間には一部県道を活用しながらも、今よりも信頼性の高い道路としてその整備効果を地域の皆様に実感していただけるようにしていきたいと思っています。
 その前提となるのは、道路投資全体が今とほぼ同じ、同程度ぐらいであれば集中と選択によって本当に必要なところに投資をして、今申しあげた目標で整備を出来るのかなと思っております。

伊豆縦貫自動車道の効果

 伊豆縦貫自動車道が出来たらどうなるか。その効果ですが、本当に北の地域においては全体で15ヵ所渋滞ポイントがあるようですが、それらの大半が集中する沼津、三島地区、この辺の解消が期待されます。南北の時間の短縮、これも非常に大きなものがあります。それから緊急輸送路、地震防災上も非常に重要ですが、医療機関との関係でも60分以内に南の地区から第3次医療機関まで行けるようになる。60分圏内100%カバー率というものが、全部出来た暁には期待できるというものです。
 繰り返しになりますが、重要な医療機関と道路ネットワークによって長野県の伊那谷のような効果も期待できるということで、われわれとしては医療、福祉の観点からも道路整備、とくに幹線道路の整備をきっちりやっていきたいと思っています。
 そして背骨となる道路と合わせまして、それにアクセス道路、これは静岡県で整備をしていただいているわけですが、ネットワーク全体が上手く機能してこそ道路で、本当に人間の血管のように、動脈とそこに至る毛細血管がうまく機能してこそネットワークとしてシステムがうまく動くというものですのです。トータルで限られた財源でありますけれども、国、県、さらには地元の市町村とそれぞれ効率的に、一番必要なところが整備できるように、これからもいろいろと調整を進めながら整備を進めて行きたいと考えております。


5.道路行政を巡る最近の話題

道路特定財源

 まず、道路特定財源ですが、先日、小泉総理大臣が北側国土交通大臣に対して特定財源を見直すように指示されました。具体的にいいますと、道路特定財源を一般財源化しろというのが点目。2点目が税率は変えないという、この2つの条件を満たして基本方針を年内に作れというご指示でした。
 道路特定財源制度は、もともと道路整備が非常に遅れているので、とくに道路の利用者の方にご負担いただいて道路整備にあてる受益者負担と道路整備に使途を限定して税金をいただくシステムです。どういうところに税金がかかっているのかといいますと、ガソリン税、そして自動車重量税、これは車検時に徴収されたり、自動車の取得時に徴収されるものです。
 昭和29年からガソリン税(揮発税といいましたが)として特定財源になっています。もう50年たっているわけです。この財源は国税、地方税にもなっています。例えばガソリン税は、揮発油税、地方道路剰余税として、今、地方税、国税合わせてリットルのガソリンに53円80銭かかっています。実は税法上、本当はその半分なんですが、道路整備がなかなか進まないので、2倍の税率をかけて速く道路整備をしろというふうになっています。2倍にするということで暫定税率といっていますが、これがこれまで5年ごとに見直しをされ継続してきております。平成15年に改めてこれから5年間に限って2倍の税率で徴収して、それを道路財源に充てろということで、道路整備緊急措置法という法律を定め、2倍の税率でガソリン税を徴収しており、平成7年度の道路特定財源は国、地方合わせて5兆7830億円になります。
 小泉総理が指示された一般財源化しろというのは、ガソリン税でいただいた税金を目的を特定するのではなくて一般に使えということです。それから税率は2倍の暫定税率を変えないという、ちょっと矛盾するご指示ですが、この2つを満たす回答をしろということで、国土交通省としては非常に難しい宿題をいただいています。税源、税率については納税者のみなさんのご納得をいただくということが非常に難しい。そこが大きな課題だということですし、一方で道路整備がすでにある程度終っていれば、勿論、税率を下げる。あるいは他の方に回すということもあるかもしれませんが、その辺がこれからのいろいろな議論になってくると思います。
 道路整備の投資の状況ですが、公共投資の全体が、とくに最近ずっと補正予算等で多くて、無駄な公共事業があったのではないかと。それを平成2、3年ごろの水準まで戻せというのが、財政諮問会議のご指示で、これまでずっと投資量を下げて来ています。17年度はすでに平成3年度の水準ぐらいまで落ちてきております。8年度の概算要求も今年度のマイナス3%で、さらに下がっていくことになっております。
 
 道路関係予算の使い道
 
 17年度の道路関係予算をみますと、収入は特定財源、大半が揮発油税、自動車重量税等で出来ているものですが、それを支出の部で見ると、道路の新設、改築、修繕に関する事業に充てるということになっています。通常の道路整備に加えて、例えば連続立体事業、鉄道と道路が交差しているような場合に鉄道を連続的に高架にして地域全体の渋滞を解消するような事業とか、あるいは道路の下に地下鉄があるような場合、その地下鉄に関する事業、あるいは電柱の地中化、バリアフリー、あるいは景観確保というような観点の事業、あるいはまちづくりに関する事業、こんなものに使われております。
 まちづくり交付金というものが最近出来ましたが、道路だけではなくて公園、下水道、河川、まちづくりに関するもの一切合財、それぞれの町の自由な発想で目的を明確にしていただければ、こういうものに使ってもいいよという交付金だったり、道路整備に密接に関連する事業、例えば有料道路の社会実験ですとか、環境対策としてディーゼル車のマフラーにSPSという、ススを吸着させるような装置の助成なんかにも使われています。
 18年度の概算要求ですが、本州四国連絡橋の赤字をこれまで補填してきたわけですが、多分19年度以降はこれが不用になってくるということでして、その部分があまって来ちゃうんではないかと言われているわけです。しかし、これはあまっているものではなくて、本当は必要な事業なんだけれど毎年、シーリングがかかって、対前年何%かで押さえられているために使いたくても使えない。本来だったら本当に必要な伊豆半島の道路整備にあてるべきもの、あるいは東海、南海地震に対応するために必要な耐震対策に使うべきもの、そういうものがまだまだたくさんあるわけですが、そういうものはシーリングということで、そういうものはトータルの中に入って来ないというわけです。
 如何にも道路特定財源制度があるために、この財源を使い切るために無駄な投資をしているのではないかと思われているところが、もともとの誤解の根源にあるのかと思います。もしも本州四国連絡橋への補てんがなくなれば、いままで我慢していた整備に、本来であればあてるべきなのですが、それが今、押さえられているというところが、つの大きな問題です。これらをどう解決していくかというのが、18年度、あるいは19年度のこれからの課題ということです。

サービスエリアの出口でもETC専用レーン
 
 次は高速道路の話です。日本の高速道路は、一応計画上は1万4000キロのネットワークを考えています。これは各地域から少なくとも時間以内に何らかの高速道路に乗れるようにしようというネットワークでして、道路公団、JHがこれまでやっておりました高速道路、あるいは本四連絡橋、一般国道の自動車専用道路、こういうもので構成されるネットワークを今、計画、構想しておりますが、出来ているのは62%です。
 残るものは例えば第2東名・名神、あるいは伊豆縦貫自動車道、あるいは静岡、愛知、長野県を結ぶ三遠南信自動車道等々があります。計画されているところを今後どう進めていくかというのが課題です。
 最近、高速道路ではETCがかなり普及してきました。ことしの秋で50%の利用率です。ETCが普及してきますと、今までは有料道路に乗るのに料金所で料金徴収していたわけですが、今度はサービスエリアの出口でもETC専用レーンを設けて、ここから出入りすることも出来るようになるわけです。すでに幾つか実験が始まっておりまして、静岡県内では富士川のサービスエリア、遠州豊田のパーキングエリアの2カ所で実験しておりました。現在、一端中止して拡張工事をしています。実験の結果、利用者の数がある程度見込める、あるいは安全上も問題がないということが確認できれば本格的に導入する制度もこれから出来てくるようですが、これも地元の自治体のご熱意、その他いろいろなことで入ってきております。最近では三重県の亀山でも認められまして、いよいよ準備に入ったところです。
 その他、料金所がかなりコンパクトになるので、インターチェンジも安く出来上がるとか、通勤時間帯は半額だとか、夜間の割引は何割だとか、きめ細かい料金体系もETCを使うことによってできまして、とくに民営化された会社では、そのサービス向上のつとしていろいろお考えになっているようです。

日本道路公団の民営化

 ことしの10月日、日本道路公団が民営化されました。他に4つの公団がありますが、これらが民営化されました。とくに道路公団は3つの会社、東、中、西に分割されています。
 今までは道路公団という特殊法人が国土交通大臣から命令を受け高速道路を作り、一定期間が過ぎたらその高速道路を国に返してこの組織を消滅する仕組みだったわけですが、今度は債務と道路の本体を所有する機構が出来て、民間会社としての会社が料金徴収をし、使用料をここに払って、管理をしたり、あるいは整備をするという仕組みになりました。
 民営化にあたっては、まずは債務を45年間で確実に返済をしようということ、必要な道路、必要なネットワークをきちんと作るということ、すでにあるものをきちんと保全をするということ。もう一つは民間事業者として新しいサービスをして行こう。それでトータルとして国民の皆さんによりメリットを享受してもらおうというようなことで、今進めています。
 民営化してから4カ月、ないし6カ月以内に国と協定を結びます。会社はこれから45年間、料金の徴収をし、それをどういうふうに債務を返していくのか、どこを、いつまでに整備をするのか。そういう計画等を国と協定を結びます。それが結ばれると、それを5年ごとに見直す機会があるわけですが、これから45年間、その計画に従って整備をすることになります。それがここ数ヵ月、年内ないしは遅くとも来年の4月までに決定をしていくことになります。ですから第2東名がいつできるのか、今まだ着工していない部分はどうなるかとか、そういうことがはっきりしてくるということです。われわれとしては、よりスピード感を持って必要なネットワークを着実に整備して、いろいろなサービスが今まで以上に向上するということを期待をしております。

名古屋の高速道路のネットワーク

 名古屋でことし万博があり、新空港が開港しましたが、それに関連して120キロの高速道路のネットワークがここ1、2年で一気に出来上がりました。それぞれ20年ぐらいかかって最後の締めがことしの3月に合うようにしてきた結果ですが、それによっていろいろなメリットがありました。
 もともとあった高速道路のネットワークの混雑がかなり緩和されて、名古屋市内の渋滞がかなり解消されました。東海環状のあるインターの近くに土岐プレミアムアウトレットというのが出来ましたが、本当に商圏が広がって、高速道路ができた前と後では来場者数も極端に違ったということです。
 企業団地にもかなり企業が入りました。ここ数年で団地が増え、しかも今まで自治体が企業が来なくて大変だと言っていましたが、17年度には100%完売ということで、軒並みほとんど満杯状態ということです。本当にこのネットワークの効果、とくに企業立地にも大事だなという実例です。
 いずれにしても私ども本当に必要なネットワークを、限られた財源の中で着実に作っていかなければならないと思っておりますし、また各地域の熱意、思いというものを実現すべく、本当に地域の皆さんと一緒になって連携を図りながらやっていきたいと思っております。今後とも、道路財源の話もありますが、いろいろな意味でご支援いただければと思います。


 酒井利夫氏略歴 1981年3月東京大学大学院工学系研究科土木工学専門課程修士課程修了。同4月建設省採用。1990年4月同道路計画第一課長。2001年4月国土交通省道路局地方道・環境課道路交通安全企画官。2003年4月同国道・防災課道路防災対策室長。同年7月和歌山県県土整備部長。2005年同中部地方整備局道路部長。



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