サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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第14回伊豆地区分科会 第2部・パネルディスカッション
「富士山静岡空港の開港を伊豆観光の新たな発展につなげるために」

◆コーディネーター
青山 茂 ((株)シード取締役副社長)

◆パネリスト
今井 利昭 (静岡県観光協会しずおかツーリズムコーディネーターチーフ)
鹿野内国裕 (全日空静岡支店長)
安田 昌代 (伊豆の国市観光協会長)
若杉 清一 (秋田二次アクセスを進める会会長)


青山 伊豆観光の新たな発展にどう富士山静岡空港を利活用し、つなげていくかをテーマに、さまざまな角度からディスカッションをお願いしていきたいと思います。まず、今井さん、伊豆では空港を取り込んだ着地型の取り組みはどうなっているのでしょうか。


人は楽しい思いがあれば遠回りしても来る

今井利昭氏

今井利昭氏

今井 伊豆地域の皆さんのマーケットは首都圏にはっきり向いています。ですからそういうものを少し空港の方に向けていくというのも一つの手法かと思います。俺のとこから空港は遠いと受け入れ側が勝手に判断しているんじゃないかと思います。発地の皆さんが果たしてそう思っているか。私がずっと「是非静岡に」という話を就航先にしていく時に、皆さんは決して富士山静岡空港から伊豆が遠いと判断はしていません。讃岐の150円のうどんを食べに東京から飛行機に乗っていく時代です。人は楽しい思いがきっとあるぞと思ったらお金を出して遠回りしても来るということを決して忘れてはいけないと思うんです。
 もう一つ、どうしても空港から直接入る伊豆の玄関口を何とか見つけたい。今までは三島、熱海、沼津がありますということですが、もう一つさらに伊豆の玄関口のルートとして私どもが空港から直接土肥に入るルートをどうしても地元の皆さんにもご理解いただきながら半ば強引に進めてまいりました。そういうことをやることによって中伊豆、修善寺、伊豆長岡、西海岸沿いの皆様も相当意識改革をしてくださいました。下田の皆さんも伊豆に着いてからのアクセスをどうしようか考えるきっかけになったと思います。そのきっかけが伊豆ドリームパスに繋がっていったんではないかと思っています。
 どうぞ受け地の皆さんが「俺のところは遠い」ということではなくて、遠くても楽しいことがいっぱいあるよと。観光とか交流のお客さんは静岡空港に降り立ってから伊豆の各地に行くその途中もきっと楽しみにしていると思うんです。そういうストーリーというのが旅の楽しさでして、そういうもので付加価値を付けるといいますか、色をつけていけば決して遠い地区ではないと考えていますし、そういう形の中でいろいろなものの開発をされたらいいと思います。
 稲取のミニツアーバスが最近非常に人気を博しておりますが、そういったものも上手に就航先、就航する国々に発信して、それを楽しみにしながら伊豆に来てもらうというような発想が大事ではないかという気がします。


ポイントは、まず相手の国、地域を知ること

青山 鹿野内さんは、かつて全日空が成田からフランクフルト線を就航させる時に、実は現地で商品づくりに従事されたという貴重な経験をお持ちです。そのお話をしていただけますか。

鹿野内 まず、私ども全日空としましては静岡空港と沖縄、北海道に一往復ずつ毎日運航予定です。開港が遅れるそうですが、間違いなく飛ばすということで確約をとっておりますのでご安心いただきたいと思います。今日は明るくやろうということですので、夢を持ってたくさん伊豆地域にお客様をお呼びしたいと思っています。
 航空会社が新規路線を引っ張るということは皆さんと同じように需要喚起をやるわけです。一人でも多く乗っていただくということで、地元の観光施設、行政の方と一緒になってその路線を盛り上げ、成功させるべくやっています。
 成田からフランクフルト線が就航した時に、当然ながらわれわれはプロジェクトチームをつくってドイツは何があるのかから勉強会を始めました。例えばドイツだとビールとか、音楽、文学などがあるわけです。しかしどうもピンとこないんです。もうあきらめようかという時に、たまたま早稲田大学のワンダーフォーゲル部出身の男がいて、「もう、僕の趣味でやりませんか」と言ったんです。要するにドイツを歩くということを提案されまして、ピンと来たんです。
 実は南バイエルン州にヒュッセンという小さな町があります。ノイシュヴァンシュタイン城というディズニーランドのシンデレラ城のモデルになったお城がバイエルンの森と湖の中に建っているということで、日本人の観光客に大人気のお城です。われわれがやろうとしたのは、そこの小さな村に2泊してお城を目指して歩きましょうという話です。
 半信半疑でドイツに乗り込み行政の担当官と話をしましたが、極東の国から来て何でこんなところを歩かなければいけないんだと言われました。僕らは真面目にお城を見ながら歩いて違う体験をしたいんだと何とか説得したら簡単なのです。実は歩くコースはいくらでもあるというんです。つまりドイツはウオーキングの発祥の地でもあり遊歩道から何から完成されており、隅々まで歩かされましたが、非常に完備されたいいコースでした。
 後で知ったことですが、ワンダーフォーゲルを含めてサッカー、アイスホッケーの合宿所がありまして、そういうスポーツ合宿ではヨーロッパ、あるいは世界でも先進地であることが分かったんです。それを商品化しまして爆発的に売れました。体験型で村の人たちと交流会を設けました。だんだんいいアイデアが浮かんでくるわけです。例えばウオーキングの後、公民館を使って踊りの保存会と交流会をやってみたらどうかとか。だんだん膨らんでいきまして、最終的には業界でいい商品に1等賞をあげようというツアー・オブ・ザ・イヤーの1回目に選ばれました。
 これを10年ぐらい続けて、いろいろな各地で体験と交流を深めようということで世界中で現在展開しています。静岡県となじみがあるところでは浙江省の杭州の西湖で今も地元の人たちとウオーキングをしようとやっております。
 何か一緒になって交流しようということが非常に大事じゃないかと思っています。恐らく一番ポイントになるのは、まず自分たちが相手の国、あるいは地域のことを知ることだと思います。何を欲しているかを考えるといいヒントになるんじゃないかと思います。
 航空会社の支店長として不謹慎かもしれませんが、静岡県にいっぱい人を運ぶということを考えれば、鉄道もありますし、電車もあります。航空機だけに限定して着地型をやるのはいかがなものかなと。本当にここはどんな魅力があるかということが一番大事でして、要はどんな乗りものに乗っても、先ほど今井さんがおっしゃいました通り遠くても人は来るんです。ですから飛行機が出来たから、すぐに来るということは本来ないということで、むしろ静岡県に本来あるもの、魅力的なものをどう発信するかということが重要でありまして、自分たちの一番自信があるものを外に出せば、どんな乗りものに乗っても来るようになると思います。

ビジネスとしてプログラムを

青山 もう一点、日本の場合、新しい商品づくりは県などの補助金で商品化して実験でやるんですが、補助金が絶えた時に事業はなくなってしまうことが多いんです。なぜ10年続いたのでしょうか。

鹿野内 これはお互いにビジネスとしてやっていこうということなんです。実はだんだん発展してきまして、ヒュッセン市が700周年を迎えまして「全日空さん、何か日本の出し物を持ってきてやってよ」という話で、私どももいろいろな太鼓だとか踊りだとかボランティアを募りまして200名ぐらいで村に行ったわけです。そこでドイツの村人に見せるわけですが、その時一番もめたのが入場料の話なんです。われわれは当然、無料にしますと言いました。ドイツ側は「タダのものは誰も来ない。いいものには金を出すんだ」というわけです。それで折衷案でお金を取りましてドイツ側に対しては寄付金という形でお金を納めました。お金は縁の切れ目といいますが、ビジネスになれば続いていくんです。
 よく海外の修学旅行で問題になるのが、日本人はサービスはタダということで行きますね。向こうの受け手の家族は貰っている分しか出さないわけです。そうしますと粗末なものを食べさせられたと問題になって、もう交流をやめようという動きがあった時に、いい先生がいて、「そうじゃない」と問題点をクリアにして、お金がかかるものはかかるビジネスとしてやっていい結果になったと聞いています。サービスはタダじゃないということ。よく着地旅行でやっていて、一生懸命やっているんだけれど儲からなくてくたびれたという話を聞くわけですが、皆さん、ボランティアではなくてビジネスとしてプログラムをやっていけば長続きするんじゃないかなと思います。

開港でいろいろなお客様が降り立つチャンスが増えた

安田昌代氏

安田昌代氏
青山 安田さん、伊豆は他所のまねでない観光地づくりが求められていくだろうとおっしゃっていますが、それでは他所のまねでない伊豆づくりに向けてどのような取り組みをなさっていらっしゃるかお話しいただけますか。

安田 やっと県の観光局ができ、国の方も観光庁ができました。これはどういうことかなと思いますと、国内経済が低迷してきまして、ちょっと外からの力を借りたいと。それには観光だということで、私たち観光業者の担う力がいよいよ試されている。期待されているんだと。これはいい面で、私たちは頑張らなければならないと思って、皆さんにぜひ頑張ろうよと言いたいんです。
 そういう意味で私が観光協会長を引き受けさせていただきました。女だてらに組織の長は難しいと思っていましたが、とくに3町が合併しまして、いろいろな悩みもありました。ただ思いますのに伊豆の国市に宝ものがいっぱい増えたわけです。韮山の江川邸などは素晴らしいですよね。韮山の方にとっては長岡温泉がうれしいわけです。大仁の方にとってもいい相棒が出来たと。さあ観光に頑張ろうという機運はすごく高まっておりまして、そういう意味では観光プロデューサー事業とその前の観光ルネッサンス事業という補助事業の2つにパスしまして資金を頂戴して、3町合併したんだから一生懸命これで盛り上げてみようよということで、着々と今事業を進めております。
 実は、このルネッサンス事業の一番メーンで、遅れていますインバウンドの誘致を強力に進めてまいりましたが、どうも研究している間に外国からのお客様が求めているのは、もしかして国内のお客様も同じではないかなと。ですから観光ルネッサンスというのは新しい意味の観光の見せ方だと本当に今、切実に感じています。私たちは、意外と自分たちの良さが分からない。観光プロデューサー事業で外から見ていただいて、「あなた方、これが光っているよ」というものをちょっと取り上げていただく。ルネッサンスは、そういう形で国外も国内も新しい観光の方向に行こうよという事業だと思っております。
 もう一つ、パスポート事業。これは市役所と有志で始めましたが、市内の観光、それから商工、すべての108つの店舗が自分の得意分野を持ち出して同じパスポートを持っている方は伊豆の国の市民だという考えで市民を増やそうよという形でお客様たちのためのパスポートを作りました。新しく作ろうよというものは余程悩まないとなかなか出てこないものです。ポンと「いいじゃないか、それぞれ一つずつ自分の裏メニューを、あそこに行ったらこれ板場の賄いで食べられたんだよとか、そういうものを出してみようか」という意見で自縛から解けたような気がしまして、裏メニューを皆出そうということでパスポート事業が発足したわけです。
 この3つの事業が観光協会の大きな柱となりましてやっております。伊豆の観光は、東名高速ができました、新幹線ができましたというと、その都度、すごく変化してきたんです。伊豆は意外と近くのお客様、東京とか県内のお客様が得意でございましたが、沖縄、九州、北海道、そちらのお客さまが空港ができることにより本当に新しいお客様が来るようになるんだなということを最近つくづく感じております。いろいろなお客様が降り立つチャンスが増えたんだと私は大いに期待をしております。

空港から定額制の乗合タクシーを実現

青山 もうおひと方、秋田二次アクセスを考える会の会長若杉さんをお招きしております。若杉さん、秋田二次アクセスを進める会の活動のご紹介と、始められた理由、空港という広域な施設ですが、それを地域の観光資源にどう生かしていったのか、そして課題を含めてご紹介いただけますか。

若杉 私は町に降りた時は歩くんです。特に食のイメージがわっとわくようなまちづくりをすべきだと思って力を入れているんです。私は秋田県横手市の観光協会の専務理事もやっておりまして、富士宮の焼きそばと横手の焼きそばが明日から九州の久留米で開かれるB級グルメの全国大会で激突することになっています。来年の全国のB級大会を横手市で開催するということで、実は来年のために横手市の市長以下10数人が同じ便に乗って久留米に行きました。私は空港の話で静岡だというと「空港、できるの」という話になりました。開港は延期になったというだけでそういう話になっていまして、全国的に静岡空港の知名度を上げる効果があったんじゃないかと思います。
 二次アクセスを進める会がどうしてできたかというと、実は高速が出来た、新幹線ができました、空港がありますということで、秋田県の高速交通体系網がほぼ整備されました。さて、そこから先の観光地はほとんどが青森側、岩手側、宮城側、山形側と県境にあるんです。県境ですから秋田というのは観光地としての明確なポジションというのがないんです。でもそれは逆に隣近所と仲良くなれるという、県境にあったが故の連携が進んでいますが、空港から遠いんです。
 例えば私は田沢湖スキー場というスキー場の社長をやっていますが、近くに乳頭温泉鶴の湯があって、秘湯ブームの火付け役になったんです。絶対近代化しないと。トタン屋根がいけないというので茅葺に替えたり、金属をなるべく見せないとか、電灯も電柱もなるべく見せないとか、景色として必要なものは、そこに緑があったり、花があったりとか、人工的にやりますが、人工的に見えないようにやっている。で、人気があります。
 そこにどうやって空港から行くんでしょうかと。空港からですと一旦目的地と反対側の秋田市に向かってリムジンで1500円ぐらい払って行く。そこから新幹線に乗って大曲、角館、田沢湖と行き、そこで降りてバスで40分です。ここに直接入ってくるバスはありませんでした。直接、乳頭までタクシーで来ると3万円ぐらいかかります。これを1人3000円の定額制で、しかも10人までは1台、11人目からは2台出すという乗合のタクシーの方法を考えたわけです。
 いろいろ苦労はしました。最初、バスに話をかけましたらお客さんがいてもいなくても走らなくてはいけないという定めがありまして、このコストをお客さんに負担させるには非常に高くつくということがあります。そして客を集める腕前というのはバス会社にはあまりないということに気づきました。
 そこでタクシーに目をつけました。福島県の小高町というところに、過疎化が進みバス路線が赤字でどんどんなくなって、住民も高齢化で交通弱者、つまり年齢の高い人がどうしても引きこもりになります。町中に行って買い物もしなくなる。それから閉じこもると医療費負担も高くなるということで、お年寄りに町中に出ていただこうと。そうする為には何が必要かというと、教育委員会や福祉のバスに乗せて行こうということで議会で条例を変えてもらったと。そのことによってコストが下がったし、バスの有効利用が出来たという話を聞いて、まずそれだということで、研究したんです。
 その先にあったのがタクシーです。衛星と地図情報を使ってタクシーをどんどん走らせながら予約を取ったら、その予約情報がタクシーの画面に入っていくんです。タクシーはワンコインです。500円以内でそのゾーンを走り回っているんです。予約が入った。それも乗せる、降ろすというような情報が全部プログラム化されて、運転手さんの画面に出るんです。その通りに走ると、コンピューターの仕事と衛星、地図情報は非常に優れていて、何分かかるかも計算した上で走ってくれるんです。おばあさんたちはそのことによってタクシーが出来て、町中に出るようになったんです。これが参考になりました。
 あと青森空港で相乗りのジャンボタクシーが走っていました。これを有志の人たちとどうしたらいいんだろうということで話をして、行政に頼ることなく、任意の会を作ったんです。需要に合わせてとか予約によってということではなくて、その乗り物の特徴をもう一つ作るべきだということで、これは平成14年から始めたことなんですが、食用油の廃油をネットワークで集めて精製をして軽油の代替エネルギーとして、CO2が非常に少ないということを売り物にして関西とか名古屋に行ってマスコミに売ったら実はそちらの方が有名になってしまいました。今、空港から8路線走っているんです。放射線状に走っています。それと大館能代空港からも実は3路線ぐらい走っていて、放射線状のものを結び付けるラインを何とか完成したいなということで今動いております。
 最初3年間で補助金をくださいと手を出しましたが、4年目からはいらないと言おうと、最初から自立ということを前提にスタートさせました。採算をとるのが難しいだろうということでタクシー事業者が大変敬遠しました。一本釣りをやりますと絶対にうまくいかないので全員に話をしたんです。みんなでやってほしいと。これが良くて結局成功するんだなと思ったらどんどん仲間に入ってくるということが結果的に良かったなあと思います。
 今も幾つか課題があります。それは何かといいますと、先ほどからお話が出ているように、飛行機ばかりじゃないんですね、高速交通は。レールの使い方だとか、高速バス、高速道路、こういったものと組み合わせたアクセスの仕方ということが最初からイメージを作って進みませんと、空港のためだけということで考えますとビジネススキームが作りにくいんです。マーケットはもっと大きいはずだということに着目していただけるような事業者に対するプレゼンテーションをしないと、誰かがやって成功するのならやってもいいという話にどうしてもなってしまうというのがポイントではないかと思います。
 相乗りっていうことでキャンペーンをやっていますので、愛という大きい字を書いて味付けのりを作りまして、これを会員になると差し上げると。「愛のり」というんですが。これで会員を増やし、誘って来てもらう。これが一番の集客です。1人足りなかったらポイントにならないので、誘うという。誘って来てくださいというのをやっている。世の中にあるコストそのものを分け合うということで、1人だけで何とかしようというのは難しい時代だと思いますし、そういう努力、工夫がいい商品を生み出していくと思います。それからこういったサービスというものは意外にお客さんがつくってくれることがありまして、こうしたらということで結構アドバイスを頂きます。
 最初、運転手さんは嫌がったんです。見ず知らずの人を乗せて、何の話をしたらいいのかと。ところが旅は道連れとはよく言ったもので、同じ方向に向かう人って仲良くなるんですね。これには運転手たちがびっくりしたと。「みんな仲良くなるんですよ」って。そんなタクシーの良さを是非事業者の方々に、「そういうことは自分たちで出来るんだ。そのことで役に立つことができるんだ」ということで、新しい需要とかビジネス機運はできるんだということを是非静岡でも広めていっていただきたいという思いでいっぱいです。もう一つは住民の方々の足に必ず役に立つはずだと思います。

青山 乗合タクシーを使われる方々は、個人客、その方たちが秋田について乗合タクシーを利用される。事前にそれらを情報として彼らが持つためにどのような情報発信とか、仕組みでなされていますか。

若杉 運賃が安いためにJTBさん等の旅行商品のマージンとしてお出しできるものはないのです。従って団体には向かないサイズですので、グループ旅行とか個人旅行でホームページで探したり、雑誌で探したりという時、あるいは宿に予約した時にお宿の方が「どういう手段で来られますか」と確認して、時間は半分、料金は10分の1ということを言っていただくことが一つ。もう一つは自治体、市町村、県の広報紙、それから各お宿のホームページ、パンフレット、それに全部出すようにしてもらっています。乗り物として楽しいようにと、今ジャンボタクシーにデザインを変える必要があるんだろうということで、頼んでいるところです。「あれ、何」と指差すような面白い乗り物を。乗り物が目的でということが目標です。


素晴らしい2次交通のアイデアに夢が広がる

青山 ありがとうございます。安田さん、今の若杉さんの取り組みをお聞きになってどのようにお感じになりますか。

安田 若杉さんがおっしゃったような形は素晴らしいアイデアだと思うんですね。これは空港に限らず非常にいい突破口になってくると思います。私たちも考えてやっていかなければなと思います。伊豆には温泉場がたくさんございます。ですから一つの伊豆長岡温泉だけでなくて、修善寺、湯ヶ島、土肥と、これはどんどん取り入れていくべきで、何かちょっと夢が広がるような感じがいたしました。

一つ一つ前進し突破口を開いていきたい

青山 今井さん、伊豆ドリームパス、あれをいかに取り込んで各地独自の着地型の商品の中に取り込んでいくかというような考え方もできると思うんですが、いかがでしょうか。

今井 若杉さんがおっしゃっていたように、最初は私どもも全体にお話し申し上げて、それからこの指止まれという形の実行をしているつもりですし、それから空港ができるという一つのきっかけがあって、決して空港利用のお客様だけではなくて、よくよく考えたら首都圏のお客様とか中京圏とかさまざまなものに使える。今まで静岡県は就航先からいうと中部地区とか西部地区は空白地帯だといわれていまして、秋田の皆さんが観光地は全部県境に近くて遠いというイメージと同じだと思いますが、そういうものは空港というインフラの一つが出来ることで、非常にチャンスが出て来たと思っています。
 今、若杉さんがおっしゃったような乗合タクシー、あるいはワンコインバス等々についてはなかなか壁が厚くて私どもも1社、1社口説きながらやっているんですが、やっていくと事業者は夢なり可能性を持ってくるんですけれど、なかなか全体のバランスの中で進行しないということです。今日アドバイスいただいたような一つ一つ前進するような事例をくっつけながら突破口を開いていきたいと思っています。
 伊豆ドリームパスについても一つのルートが出来て初めて東海バスさんとか伊豆急さんの若手の皆さんが、やはり伊豆に滞留時間を長くしてもらうようなプランを作ろうということですから、これに今、若杉さんがおっしゃったような乗合タクシー版というものを作って、さまざまなコース提案をしていけば土肥を、あるいは三島なり修善寺なり、そういったところを起点にした発想というのはどんどん生まれてくるんではないかと思います。
 いろいろな選択肢があるということは大変その地域に滞在もしやすいし、自分たちの目的を達成しやすいわけですから、全体をまとめるのは難しいかもしれませんが、拠点、拠点でそういったものを作りあげていくことは、こういう形の中で伊豆ドリームパスに並んだような、何か似たような、あるいは少し形を変えたような提案が出来ていくんじゃないかと期待を持ちたいと思いますし、お手伝いもしていきたいと思っています。

個人型にシフトする観光客

鹿野内国裕氏

鹿野内国裕氏
青山 鹿野内さん、行政、あるいは観光サイドで、航空会社に対して空港の利活用に対して非常に熱心なところは、どのような働きかけをされていますか。

鹿野内 航空会社として路線を維持するということは全く就航先、あるいは受け地と一緒なんですね。努力しないとなかなか路線維持が出来ません。私ども観光局、あるいは行政の方に出向が結構増えています。例えば宇和島市、稚内市、津島市、南伊予観光協会に、全日空の社員が出向して地元の人と一緒になって地域おこしを今やっています。航空会社が何を考えているか、あるいはいろいろな首都圏の情報、その他の地区の情報を地元の人たちと一緒になって活性化しようということで、こういう動きというのは非常に高まってきています。なかなか難しいんですが、徐々に効果は出ているというふうには聞いています。

青山 感動案内人という企画をお聞きしましたが、これも現地と一体的に進めた商品ですか。

鹿野内 昨年の国内線の旅行で、スカイホリデーというのが全日空の商品ですが、そこで感動案内人といってその地方でプロと言われている方に案内してもらいお客様に体験していただこうと、北海道、あるいは沖縄で体験型のオプショナルツアーを組んでおります。最近ではマスで大きな団体を運ぶというのはなかなか減ってきております。私どもの飛行機一便当たり、正確には申し上げられませんが、団体旅行は10%を切っていると思います。ほとんど個人型にシフトしていまして、特に沖縄に行かれた方はお気づきだと思いますが、もうほとんど旅行会社、航空会社の役目は運ぶだけということです。お客様は何をしているかというと、現地に行くと現地の施設だとかそういう観光をやっている方がいろいろなプログラムを作っています。私どもも皆さんに現地に行ってもらって本物を体験してもらおうと、これもどんどんそういう風に変えていっています。一番自分たちにあった乗り物で、自分たちにあった宿泊施設で、現地に行ったら自分たちの好きなものを体験していこうということが、増えていくと思います。
 実は私もヨーロッパ時代に10年以上前ですが、現地の旅行も研究のため随分参加しました。ほとんど着地型なんですね。チャーター便でどこかの島に行って、到着してどうするのかなと見たらカウンターに分厚い本が置いてあるんです。そこに食事も含め、音楽もダイビング、ゴルフも含めましてあらゆるものがあり、全部、自分で選べるようになっておりました。ということで日本もだんだんそういう形になってくるんじゃないかと考えております。

キーワードは「昔に戻ろう」

若杉清一氏

若杉清一氏

青山 若杉さんが考える秋田観光のビジョンといいますか、夢といいますか、それをちょっと語っていただけますか。

若杉 いろいろな思いがあって、それが観光だけでなくて地域づくりとか、景観づくりや人づくりになっていて、地域社会の形成に実は観光がきっかけになっていろいろな輪が広がっていくという感じがしています。とくに人口が減ってまいりますと経済がどんどん落ちてしまう。交流人口によって定住人口の減少を支えていくんだという話がありますが、何か観光事業者のためだけだろうと。どうやって地域のものにしていくかというのは、やはりそれぞれ地域の底力によって差が出てくると思います。こういう勉強会だとか検討会などをやっていますと、私もいろいろなところに行きますが、経済団体とか観光事業者が一生懸命に集まってやっていても本当に限界があります。秋田では観光ではなくて地域づくりをするんだということに繋げていかなければいけないなあと思っています。
 それから「昔に戻ろう」というのが次のキーワードです。昔に戻ろう、本物だけが残るんだなと思います。いただくものにしても、着るものにしても、歌とか建物だとか景色だとか温泉だとか、こういったものは実は本物だけが残っている。自分で気がつかないならば他人に教えてもらうことが観光のメリットです。「あなたたち、いいところに住んでいますね」って、他人から言われるとうれしいものだなというのが観光の仕事をしていて一番面白いところです。それで、昔に戻ろうということです。新しいものは古くなります。古いものは止まるんです。新しくするのはものすごく投資が必要です。でも、さわらなくてもそのまま残していると輝くものって結構あるんです。それは昔というキーワードだと思います。
 スキー場のポスターなども昔の写真を出しているんですよ。「昔、スキー、面白かったよな」と。ポスターは全部昔の写真です。私の名刺は子どもが昔、こういうスキーシーンだったとやっています。今年のポスターは5秒後この人は絶対転んでいるよなというような昔の写真を出したりして。そこにはちゃんと温泉があったり、温もりがあったりするという、これは昔ですよね。
 もう一つは、観光は「三しょくひるね(三食昼寝)」ということを私は思っています。3つの「しょく」というのは、まず「食事」。頂くことって文化です。横手焼きそばも地元の人はあまりおいしいとは言わないんですが、それを仕掛けると外から人が来ると。横手は蒸すんじゃなくてゆでるんです。富士宮焼きそばと全然違います。競争相手をつくって切磋していくということで「めんサミット」を作り、私はスキー場だとか、横手の市内でも激突セットという、どっちが旨いんだというのをセットにして出したりしております。それは食事にどれぐらいエネルギーを感じるかということですね。
 もう一つの「しょく」は職業の職。最近は愛知県でも一番の観光地はトヨタだと言われていまして、一生懸命ものをつくっているということを見てもらうという「職」です。職業とか匠の世界ということですね。
 3つ目の「しょく」は「触れる」ということです。体験とか触れ合いです。本当に地元の人達との交流がこの中にあるかということです。
 「ひるね」の「ひ」は人なんですよ。感動体験、誰それさんに会いに行こうという人です。あるいは来て、あの人がいるから行ってみようかなという、こういう魅力です。次の「る」はルートなんです。どこから来てどこへ何で行くかということがはっきり分かっていないと駄目だと。それが分かりやすいような情報の露出をし全員が共有していないと駄目だということです。最後の「ね」は、値段とねぐらです。宿が良くなくてはいけないと。
私はその要素で構成するもので、特に光っているものは何かということだけを町の中で地域の方たちとお話をしていただいて、売りはそこで決まっていくという感じがします。
 いずれにしてもそういうものを作り出し、成功している町というのは、そういうことをちゃんと整理できるということで、人のお話をちゃんと聞いて自分のものにするというような素直さ、けなげさみたいなものまで見せて一生懸命取り組んでいるということです。
 どんどん人が減っていきます。2600年には日本人は7万人となり、絶滅危惧種に指定され保護されるそうです。それを支えるのは交流、特に外国人との交流をはからなくてはいけない。そうすれば7万人の時代にも恐らく日本には1億人くらいいるんじゃないですか。他の国の人たちで日本が成り立つなんてことが恐らくこの後あるんでしょうから、そういった受け入れをする。それは産業にも生かしたいし、そのためにはとりあえず観光で成功するということだと思っています。


最終的には本物をいかに提供するかに尽きる

青山茂氏

青山茂氏
青山 ありがとうございます。伊豆が空港から遠いとかではなくて距離でなくて、いかにストーリーを作っていくかということになるかと思います。これは若杉さんに最後におっしゃっていただきました地域の底力づくりにもつながってきますし、やはり安田さんもよく言ってらっしゃいます昔ながらのおもてなしというようなところにもつながってくることかと思います。空港が出来て飛行機が飛んでくるということは、その先に何があるか。伊豆独自の本物で飛行機の先、空港の先に何を作り出せるかということが、すべての問題であると思います。伊豆の本物、伊豆の各地域の本物をいかに提供し、何度も原点に戻る。そこに最終的には尽きるのかなと思いました。長時間、ありがとうございました。
 

< 講 師 略 歴 >

◇松井 隆(まつい たかし)
浜松市生まれ。立命館大学法学部卒業。1977年4月県職員に。グランシップや浜名湖花博の事務局で、企画や広報の業務を担当。05〜06年度、広報局広報室専門監。07年度4月、空港部利用推進室参事となり現在に至る。55歳。

◇今井 利昭(いまい としあき)
静岡市生まれ。1961年県立静岡商業高校卒業後、(財)日本交通公社に入社。94年(株)JTB静岡支店長。在任中静岡空港需要調査や空港利用促進チャーター便運行を手掛ける。98年(株)JTBレストラン取締役総支配人。01年代表取締役社長就任、06年顧問に。東名牧之原SAリニューアルの設計から施設運営にかかわる。04年〜08年3月ふじのくに観光客誘致促進事業アドバイザー、開港就航先のマーケット調査や県内各地の観光商品提案にかかわる。08年5月静岡県観光協会しずおかツーリズムコーディネーター、県観光局事業就航先及び大都市圏AGTの企画商品造成販売支援業務委託契約。65歳。

◇青山 茂(あおやま しげる)
早稲田大学法学部卒業。(株)オリエンタルランドを経て、現在(株)シード取締役副社長。日本航空民営化イベント「NewJALレセプシヨン」、第10回全国スポーツレクリエーション祭「スポレクおきなわ」、栃木、群馬、沖縄の観光誘客プロモーション事業、九州沖縄サミット関連事業などをプロデュース。県内では伊豆新世紀創造祭、第15回海の祭典しずおか、東海道四百年祭などに参画。サンフロント21懇話会のシンクタンクTESSの研究員として研究・提言活動をサポート。

◇鹿野内 国裕(かのうち くにひろ)
1981年立教大学社会学部卒業後、全日空ワールド株式会社入社。95年9月ANAHALLOYOURSEUROPE
LTD.出向取締役。02年東京支店長、03年4月ANAセールス株式会社FITセンター長、7月富山支店マネージャー。06年全日本空輸株式会社静岡支店長、現在に至る。53歳。

◇安田 昌代(やすだ まさよ)
沼津市生まれ。1963年成城大学短大英文科卒業、66年伊豆長岡温泉安田家、安田嘉一郎氏と結婚、若女将として入社。85年専務取締役に。92年嘉一郎氏死去にともない社長に就任、女将と社長を兼務し現在に至る。静岡県環境審議員、伊豆の国市合併協議委員、国際ソロプチミスト駿河24期会長を歴任。現在は伊豆の国市観光協会長のほか、県東部コンベンションビューロー副会長。趣味は旅行・読書・日本舞踊。

◇若杉 清一(わかすぎ せいいち)
北海道北見市生まれ。1971年(株)リクルート入社。北海道支店長、通信事業部門総合企画部長などを経て、89年(株)リクルートコスモス広報室長に。92年岩手県・安比総合開発(株)APPI運営企画部長、98年秋田県・(株)秋田ふるさと村代表取締役専務。01年田沢湖高原リフト(株)代表取締役社長兼務、06年3月より専任。08年4月横手市観光協会専務理事兼務、現在に至る。他の役職として、秋田二次アクセスを進める会会長、秋田大学工学資源学部アドバイザー、全国森林レクリエーション協会理事、国土交通省「道のあり方研究会」委員など多数。



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