サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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富士地区分科会 パネル討論  3月13日開催
「富士山静岡空港を生かした富士地区の地域活性化戦略は」
富士地区分科会 パネル討論

◆コーディネーター
影山 武司 氏 ((財)静岡総合研究機構研究部長)

◆パネリスト
宮崎 善旦 氏 ((社)富士宮市観光協会長)
石川 眞 氏 ((株)丸石製作所社長)
佐野 武男 氏 (丸富製紙(株)社長)
林田 充 氏 ((株)JTB中部沼津支店長)


 富士市で3月13日開かれた「サンフロント21懇話会」富士地区分科会は、静岡県空港部利用推進室長の犬丸淳氏の最新報告、吉岡徹郎富士山静岡空港社長の基調講演に続き、パネル討論を行い、富士・富士宮地区の豊かな自然や産業集積を静岡空港開港のインパクトといかにつなげるか、パネリストが意見を交わした。


影山 6月4日の開港に向けて大きな弾みになるような議論をしていきたいと思います。私は現在富士市に住んでいますが、富士地区の空港開港に向けた具体的な動きというのがなかなか伝わってこないなという印象を持っています。富士市は工業都市として発展してきた町ですから観光都市としてのイメージを市民は持っていません。観光イメージが希薄で、観光資源も富士山を除けば脆弱という地域の中で、他の地域と同じような観光振興をやっても競争に勝てない気がします。では、何をすればいいのかというのが今日の議論としてできればいいのかなと思います。宮崎さんからお話しいただきたいと思いますが、富士地区の観光の現状と課題を含めてお願いします。


環富士山でとらえた空港利用を

宮崎 富士地区も空港への期待が希薄という状態だと思います。なぜかというとやはり首都圏と東部が近いということがあると思います。それと交通アクセスが非常に悪い。ただし富士山をめざして皆さん来ます。そこをどうとらえていくかという問題を富士山地区の方々は真剣に観光を中心に話し合っていないというのが現状かと思っています。そういう意味では今日のこういう会議を設けていただいたことに感謝を申し上げたいと思います。
 富士山があるから富士山地区といわれているんですが、富士山があって恵まれているものですから、何もしなくてもお客さんが来ている。富士宮市だけでも通過観光とはいえ600万人が通過しているというデータが出ています。富士登山にしても7月、8月だけで30万人あり、登山者も去年、一昨年は10万人を超えています。1カ月間でそれだけの人が来る観光地はなかなかないです。白糸の滝は250万人という時代もありましたが、今はどうにもならないと言いながら今も60万人以上が訪れています。観光資源はあるんですが、観光インフラが出来ていないというか、観光のまちづくりが出来ていないというのが富士宮の現状です。
 富士市は工業都市ですから観光という概念を変えた方がいいのではないかと思います。先ほど富士の市長さんも言われたようにスポーツ観光とか産業観光など目的を持った誘客、交流人口を増やす戦略に立った方がいいのではないか。一番の問題は宿泊施設がないということで、コンベンションと言いながらも国際会議ができる会場が一つもない中でコンベンションビューローを立ち上げていこうといっても難しい。そいう問題が山積みしています。いい素材はあるんですが、戦略的にどうも動いていない現状が、富士、富士宮市にもあるんではないかと思います。
 富士山地区というのは富士、富士宮を中心に御殿場、裾野、小山と富士山の西南と北駿に地域性が分かれ、あまり経済的な交流もありません。ただ非常に似ているところがある。富士市は東部の中では一番の工業都市で、富士宮市も沼津を抜く工業出荷高を持っています。御殿場、裾野もれっきとした工業都市です。皆さんのイメージでは富士市は紙の町、富士宮は最近焼きそば等で基本的には自然と食、御殿場はアウトレット。小山は自然とスピードウエイ。共通しているのは富士山です。
 富士宮だけでは空港利用は絶対不可能で、富士と組んだり、環富士山でとらえていかないといけないと思います。富士宮で昼飯を食べていただいて、富士市で見本市とかそういうものを見ていただいて、御殿場に泊まってもらうとか、御殿場のアウトレットで買い物をして、山梨で泊まるか、箱根で泊まるか、伊豆で泊まるか、そいう戦略を今後練っていかないとなかなか生きていけないだろと。空港の利用ができないだろうというのが私の考えです。

観光という意味自体をもう一度とらえなおす必要がある

林田 充 氏

林田 充 氏
影山 林田さんは唯一地元外の方ですので、客観的に富士地区を見ていただいて、どんな評価なのかも含めてお話を頂ければと思います。

林田 JTBはもともと旅行会社です。3年前に分社化して、静岡、愛知から北陸3県を含めた中部の8県をテリトリーとするのがJTB中部という会社になっております。分社化を機にJTBグループは総合旅行業という看板を降ろしました。現在、社の造語ですが交流文化産業といった分野のリーディングカンパニーをめざそうといった形で向かっています。
 2005年を境に日本は未体験ゾーンに突入をしています。2005年を機に日本の総人口が減少に向かっています。人口が減っていく世の中で単純な旅行業という形では将来的に発展もないだろうと。ただ人口自体が減ったとしても人々の活動を活性化して交流人口が増えていけば社会経済もまだまだ活性化していくだろうと。この交流人口を増やすためにはどうしたらいいのか。交流のもとになるものは何かと突き詰めて考えてみると必ず何かきっかけとなることがあるわけです。きっかけとなるものがなければ人々は交流を始めない。移動しない。きっかけとなるモノやコトの研究開発を進めていって人々の交流を活性化していこうという観点からいろいろビジネスを模索しているところです。
 観光という定義を再認識する必要があると思っています。観光という言葉が最初に世の中に出たのは今から2000年以上前、紀元前に中国の易経という書物の中に出てきます。「国の光を観るは、王に賓たるに用いるがよろし」と。国の光、その地域の一番優れたものを、その国の王様がその国を訪れた他の国の王様にその国の優れたものをお見せする。この言葉から始まっています。
 どうもわれわれも含めて観光というと余暇、レジャーとか主要産業の周辺にあるどうでもいいものというか、産業界の中では一段低いものとされていたと思います。昨年、観光庁という国の組織も立ち上がりまして、実は観光が21世紀のリーディング業界になっていこうという形で、われわれも奮闘しているわけですが、観光という意味自体をもう一度とらえなおす必要があると思います。それを分かりやすく言うと交流文化と置き換えることができるのではないかと思います。
 旅行というのは交流文化の中の、重要ではあるけれど一つのパーツです。旅行に限らず出張や会議、ショッピング、美術鑑賞、ウオーキング、ハイキングと、要は人が活動することすべてを交流文化だと考えると、いわゆる現状でとらえられている観光、旅行以外の分野で人を呼ぼうというのも非常に重要な要素になってくると思います。
 富士山静岡空港の開港に向けた旅行商品はこれまでの旅行業界が、本業であるわけですから韓国や中国をはじめ、今商品造成の真っ只中です。逆のインバウンド商品、この地区にお客様にお越しいただく旅行商品はどうか。まだ全く作れておりません。大手の旅行会社としてまだ乗り込むには時期尚早と判断されているかと思います。
 この地域として魅力を発信することによって自発的にこの地区を訪れるための旅行商品が発生するようなことをこのセッションをきっかけとして、この地域の一員である私も是非考えていきたいと思います。

大変魅力的でコンパクトな飛行場

石川 眞 氏

石川 眞 氏
影山 観光から交流文化産業へというお話がありました。やはりこのあたりがこれからの、この地域の観光交流を考える上でキーワードになりそうだと思いました。石川さん、国内外の市場を相手にビジネスを展開されている観点からみてどうなのかお話をお願いします。

石川 私どもは約30%は原料設備の機械、70%は自動の加工機とか紙を断裁したりするメーカーです。ちょっと異色といいますのは、私どもの自社製品は3分の1ぐらいで、その他は海外との技術提携です。最初の技術提携は1970年ですので、40年ほど経ちます。その中で約13社と技術提携をしておりますので、ヨーロッパとの行き来が多いです。東南アジアでも工場建設で3年ほどインドネシアに駐在しました。海外の営業、技術提携の交流等を含めますと技術提携先から大変大勢の方が私どものところに参ります。とくに新機種ができた場合には多くの人が来ております。そんな中で飛行場は切っても切れない関係です。
 6月に空港が開港するということで、大変な魅力があります。非常にコンパクトな飛行場です。私どもビジネスマンにとりましてスピードというものがすごく大事でして、いわゆる時間、スピード、1週間の旅行でどれくらい回れるかと。渡り鳥のような仕事しております。昼間、打ち合わせをして夕方移動ということで、利便性のいい飛行場というのは大変気に入っております。今回は写真を見ましても駐車場から飛行場に入るまでに200メートルも歩かないんじゃないかということです。羽田、セントレア、大阪、とくに成田は延々と歩くわけです。大変小規模で、なおかつ富士からは車で1時間10分で行け、駐車場も無料だということですので、大変使いやすい。
 最近ヨーロッパから来る人たちも例えば韓国のインチョンで乗り換えてくる。中国で仕事をして上海からこちらに来ます。また、製紙の機械は上海が供給地帯で、そんな中で静岡空港が大変仕事の上にも役に立つと思います。

地域の活性化のために空港は大いに利用できる

影山 佐野さん、お願います。

佐野 皆様にとって新しい飛行場ができるというインパクトはいまいち盛り上がりが少ないなと感じています。決して富士市の方が空港に関心がないということではないと思っています。富士の人たちは出来上がると利用度は高くなるだろうと私は思っています。
 思い出してほしいんですが、新幹線の新富士駅ができた時、あれほど利便性が良くなったことはないと思います。東名もそうでした。ですから恐らく出来上がってしまえば富士地区の方々もそれなりに利用するのではないかと思います。
 さて企業人としてこの空港をどのように使っていくかですが、イン・アウトが非常に便利になりますので、製紙というのは大変難しい特殊な紙から私どものようにトイレットロールやティッシュまで幅広いです。私どもは従業員も600名ぐらいおり、工場をオープンにして大勢の方にご覧いただけるようにしたり、企業努力はしているつもりですが、そういった中で販売は全国です。全国発信できる商品だし、消費者の手に直接渡る商品に仕上げるものですから、そうした意味では空港を通して見えてくる姿、また企業が成長していく上での要となるようないろいろな情報を得るためにも、今後十分利用できるんじゃないかと思います。
 業界をみてもいろいろなイベントの開催だとか、こちらから情報発信をするとか、いろいろな意味で富士地域の活性化のためにやれることはたくさんあると思いますので、そんなときにも空港は大いに利用できるのではないかと思います。

富士宮やきそばから「地域力再生総合研究機構」へ

宮崎 善旦 氏

宮崎 善旦 氏
影山 空港ができることによって静岡県の観光市場というのは北は北海道、南は九州、沖縄、それと国外、韓国、中国、東アジアの海外市場に大きく広がるわけです。ただ、観光市場が広がったからといって、ここに人がそれだけで来るわけではない。宮崎さんのお話の中にありましたが、通過して素通りをしていくというそんな地域になっているんじゃないかなと思います。先ほど林田さんからこれからは観光ではなくて、交流文化だというお話がありました。交流という観点から捉えると交流のきっかけになりそうなことはこの地域でもいろいろとありそうで、発想の転換ができるのかなと思います。宮崎さん、これから富士急行が空港から富士、富士宮を経由して河口湖に直行のバスを運行するという話もありますが、少なくとも富士、富士宮で遊んでもらう取り組みをしていかなくてはいけないと思いますが、具体的にどんな戦略を持って取り組まれているのか、お話しいただけますか。

宮崎 環富士山という形で、とくに富士、富士宮は戦略的に、広域圏という形でやっています。一つにはアクセスの問題ですが、富士急さんには富士、富士宮として要望書を出してあります。河口湖まで直通バスを走らせますので、富士、富士宮を通って行かないと行けないんです。ですから寄ってください、拠点に停めてくださいという形のお願いはしてあります。富士急さんも「分かりました」という形で一応内諾はもらってあります。
 環富士山としては、吉田から富士吉田、河口湖町も入り、もちろん静岡県側も全部入って去年10月にできました観光庁の地域競争力支援室長を招いて勉強会を立ち上げました。
 富士宮においては、今までの人集めの鳴り物入りイベントではなくて文化イベントに切り替えようという形でやっています。一つはご神火祭り、宮踊りとかいろいろなイベントをやってきたんですが、それ以外には最近、安全、安心なきれいなまちづくりをテーマに花回廊事業とロウソクの明かりでのイベントを打っていこうと表富士灯回廊事業を展開しております。今年で3年目か4年目になります。また、花を大事にしましょうという事業展開に入っております。そういう形にイベントも富士宮としては切り替えてきている。
 もう1つ大きい展開が「富士宮やきそば」。これは行政が主導したわけではなく、民間の活力の中で起きてきたもので、やきそば学会は人づくり、まちづくりをする組織という形の中でマスコミを最大限に利用しているのが富士宮焼きそばです。情報操作で伸びてきたといっても過言ではない。これが一つのB級グルメブームになり、地域ブランドのブームをつくった形で、B級グルメの総本山と呼ばれているんです。
 今までは九州や北海道に行って富士宮といってもどこですかといわれてしまうのが、今は「ああ焼きそばの富士宮」って言われるようになった。それには一銭の行政の金も使っていない。今では観光客が焼きそばを目的に来ている。浅間大社に大型バスが毎日入って来て年間1500台ぐらい入って来ているんです。これは昔に比べるとすごい数字です。
 焼きそばだけではもったいないとニジマス学会を作りましたらJR東京駅、名古屋駅を中心に新富士駅、静岡駅にます寿司という押し寿司を置いてくれるようになり、セブンイレブンの地域ブランド戦略にのって富士宮ニジマスを使った押し寿司が県下のセブンイレブンで売られています。たった2、3カ月情報発信しただけで、そういう形になっています。
 それではこれだけではもったいないと「最先豚学会」、これは富士宮が種豚の生産の世界的な権威があるということで最先端な豚の町。富士宮の人も知らないぐらいです。それから本土において朝霧高原の酪農が牛乳の4分の1を出していることから「ミルク学会」を立ち上げ、ミルク菩薩をつくって朝霧高原にそれを設置して、ミルク菩薩への道という観光誘客商品を作り上げようということで、春に向けて動き出しています。
 富士地区の4カ所の蔵元ではエネルギッシュに動くということで「エネルギッシュクラブ」という組織を立ち上げ、焼きそば、ニジマスに合わせた日本酒の開発をするということで、焼きそばに便乗する「大便乗酒」を作り上げ、そして2番煎じは「ますます大便乗」というマスに合った日本酒を開発しようと作っているところです。
 おいしいものは当たり前、安いものは当たり前、その上にプラス何があるんですかと考えて情報発信しないと駄目だという形の全国の総本山になって来ているので、それを確立していきたいと「地域力再生総合研究機構」をつくりました。あとは人づくり、まちづくりに力点を置いていこうと動いています。その原点はないものねだりはしないで、あるもの探しをやりましょうということです。

ケーブルカーで富士山のパノラマビューを

影山 富士宮焼きそばは、威力がすごいですね。私どもの研究員が北海道に出かけたんですが、向こうの関係者が雑談の中で富士宮焼きそばをぜひ食べたいという話が出ていたそうです。最近富士の吉原で売り出しているつけナポリも知っていたそうです。情報戦略がないと人は呼べないわけで、情報戦略をきちんとやるということが富士宮焼きそばの非常に成功のカギだったのかなと思います。石川さん、世界を回ってみて富士山の魅力と生かし方はどうでしょう。

石川 世界中を飛び回って富士に帰りますと、富士山の姿、裾野のずっと広がった姿を見ると本当にこれが世界の山のベストだなと思います。特に私は富士で生まれましたので富士川の辺りとか、この富士市から見る富士山はたまらないという思いがしています。静岡から車に乗ってきますと富士川のサービスエリアの手前に一つトンネルがありますが、あのトンネルを超えた瞬間、見えてくるのはまさしく富士山だと思っております。
 そんな中で大変優雅で美しい富士山を利用しない手はないなと思っています。そういう話をするために、この部屋の倍くらいの土地をどこかに借りて、静岡市辺りから熱海くらいまでで結構だと思いますが、精巧につくった模型を作ったらどうかなと思っています。外から来た人も、これが10年、20年後の町なんだなと、何か希望が持てるような形にしたいなと前から思っておりました。実は上海に行きますと、上海当局がつくったこれから10年、20年でこういう町にするぞという将来像が見えます。ガラスが張ってありまして、ガラスの上を歩くと下まで全部見えるんです。
 そして、せっかく富士川にサービスエリアがあり、北を見ると新しい第二東名の先進的なブリッジが見えます。サービスエリアであれば、自動車の方はここに停めていただいて、ケーブルカーで西の山の上まで一気に行き、それからいっきに下りて富士川を渡り、岩本山に行って食事でもして帰ってくる。それが富士駅につながってもいいと思いますが、実は30代のころJCの連中と一生懸命、そのことを言った覚えがあります。
 そんな中で富士にいらっしゃった方に、これがまさしく富士だと。強引にここで止めて見せると。富士山のパノラマをケーブルカーで見たら、インパクトがすごいと思うんですね。私は富士山がいいというのは富士山の延々としたパノラマビューです。
 実はアメリカに行った時、あるいはスウェーデンで熱気球が何百機と飛んでいるんです。お正月の1月1日に気球を、例えば日本平から上げて100基でも200基でもいいんですが、それを熱海でも三島でもいいんですが、西から東にパノラマビューをずっと見る。こういうような一つの案はどうかなと思います。
 ハワイにホノルルライドというものがあります。年に1回、5種類の距離がありまして自転車で50キロから5段階で160キロまで走るんです。オアフ島を行って、また戻ってくるんですが、スピードを争うのではなくて楽しみながらということなんで、小学生から80歳くらいのおじいちゃんまで自分のペースに合わせて楽しんでいます。富士山周辺でやったらどうかと思っています。気球とか自転車の世界大会とか、富士山を中心としたイベントをやったらどうかと勝手に考えています。

スポーツイベントを利用する方法も

影山 ケーブルカーというのはハードルが高いかも知れませんが、富士のゲートウエイとしての位置から考えたらそうかと、そういうものもあってもいいかなと思いますが。佐野さんはスポーツマンで富士市の教育委員長でもありますので、スポーツと教育を含めて何かご提案はおありでしょうか。

佐野 実はフルマラソンを22年もやっています。77歳でボストンマラソンに出たいという目標を持ってやっています。私も今市の陸協の副会長をやっておりまして、ついこの間も田子の浦マラソンに参加しました。田子の浦マラソンは20年余やっています。5、6年前は参加者が6、700人と低迷していましたが、ランニングブームということで今年は1400人ぐらいの参加です。やはりスポーツイベントを何か利用するという方法もあるという気がしています。
 富士山を考えると、富士市は産業の町であって公害と今でも戦っていますが、昔の公害と比べ今はだいぶ進歩したんじゃないかなと思います。製紙業というのは大量の水を使って、大きな機械を使って紙をすいていますので、どうしても大気汚染とか水質の問題と常に背中合わせで生産を続けていかなければならないわけですが、富士山に降った雪が地下水となって大量に湧き出る本当に貴重な水を使わせていただいています。例えば兵庫県は丸富製紙にとってはとても大事な県で、神戸コープという日本で一番大きな生協さんがあり、組合員さんが良く富士に見学に来ますが、富士山から湧き出る水を使って作った紙という良さを感じていると聞きます。ですから富士市から生まれる再生紙はいろいろな意味で富士山の恩恵を受けており、今後は業界全体としてもっとPRしていく必要があるのではないかなと思います。そんなことも含めていろいろな意味での社会貢献も必要じゃないかなと思います。

産業観光を武器に 宿泊は伊豆、山梨も利用を

影山 林田さん、旅行のプロというお立場から富士山静岡空港を活用してお客さんをいかに呼び込むか。そのためには何をしたらいいのか。アドバイスをいただければと思います。その中で産業観光も富士の産業集積を生かした交流の在り方もいいのかなと思うのですが。

林田 旧観光の観点からいくと宿泊が、いわゆる観光業の基本の部分を占めています。4年ほど前のデータですが、静岡県に宿泊した方が1964万2000人いらっしゃり、平均1.56泊しています。私どもJTBが117万6000人で6%となっています。平均の一人当たりの宿泊単価は20141円。JTBの宿泊単価は27065円。これを宿泊者全体にかけますと宿泊者全体で3956億円。これに食事、お土産などを加えると宿泊者による総合的な経済効果は6015億円となります。雇用をどれくらい維持しているかというと宿泊客全体で県内では4万5850人。その宿泊施設の8割以上が伊豆半島です。富士、富士宮は仕事に来たお客様は大丈夫ですが、純粋にどこかに泊まろうという人はどうしても伊豆に流れます。
 富士山静岡空港が開港すると、戦える戦略が見えてくるんじゃないかと思います。2005年の愛知の時、名古屋市内のホテルは平均稼働率100%を超えたホテルもあり万博のお客さんは岐阜県の長良川温泉や下呂温泉、高山、愛知県の蒲郡、知多半島などの周辺地区に泊まっています。
 ちょうど静岡県の富士地区は、これに置き換えることができるのではないでしょうか。ビジネスミーティングなどに来た方は周辺の観光地に泊まる。このモデルを利用できるではないだろうかと思います。観光は「国の光」を見るもの。富士地区で今ある一番強いものを見ていただく。いわゆる産業観光のハシリという形で佐野さんの丸富製紙では来場者の見学を30年近く続けています。そうしたこの地域の優れたものを武器にしてその後ろにある伊豆も山梨も利用してしまえばいいじゃないかと思います。
 富士急さんが河口湖へのバスを運行して途中でこの地区にも停めると。まさにこれを利用して河口湖に行くお客様に対してこの地区のいいものをアピールしていくことによって、この地区の交流人口を増やしていく。これで非常に大きな背骨ができたなと思います。
 産業観光と富士山と伊豆半島、県の東部地域計画の中に県東部の産業観光をコンパクトにまとめたものがあります。富士山プラスアルファのこの地域の優れたものをです。
 課題は2つあると思います。情報発信とアクセスです。情報発信としては「富士のぐるぐるマップ」のような良くまとまったパンフレットが、例えば福岡空港にあり、静岡空港に着いたら、この店があるから富士で昼御飯を食べようと。こういった行動にも繋がってきます。情報発信と併せて重要なのはアクセスです。河口湖へのバスはできますが、肝心の伊豆の方へのアクセスはお手上げ状態ということです。今、旅行はほとんど個人グループです。せめて沼津、三島ぐらいまででもバスが運行できるようにできないか。空港から沼津、三島まで片道の運賃をペイしようとすると6000円くらいになりそうだということです。これでは誰も乗らない。仮に片道1000円だったら乗るでしょうが、そうなると補助金として数千万円かかりますが、近い将来、安く便利に空港からバスで動けるような交通手段が出来ないものかなと考えています。

定年後の有能な人材活用を

影山 交通アクセスが基本的な問題だということで、皆さん協力してバスを運行するようなことに是非取り組んでいただきたいと思います。最後に地域の産業振興という観点から皆さんのご意見を伺いたいと思います。

石川 製紙業といいますと、紙を漉く技術だけではなく、それを支える機械、メンテナンス、薬品会社と裾野が広いわけです。その中で世界的に一つの町で数といい、種類といい、大変コンパクトにまとまっています。アメリカ、ドイツ、フィンランドと海外にも紙関係の有名な見本市がいろいろあります。総合技術ということから見ると、この地区は大変有能な人材が大勢います。他の産業も同じことだと思います。富士にはそういった現在60歳で定年ですが、いわゆるリタイアされた方たちがものすごい技術をもっています。そいう経験者をリストアップし、そういう方を市内、または県内で把握しながら、国内、海外、発展途上国を含めて、安心して指導できる、交流ができるとなれば大変いいかなと思います。

家庭紙の見本市を

佐野 武男 氏

佐野 武男 氏
佐野 全国のトイレットペーパーの3分の1は富士市から出荷されています。しかもそれはすべて再生紙です。世界でもこれだけトイレットペーパーで再生紙の多いところはどこにもないと思います。
 家庭紙は家で使われる紙のことで、トイレットペーパー、キッチンペーパー、ティッシュの3つ含めてティッシュといわれています。その見本市としてティッシュワールドをフランス、アメリカ、中国でほぼ毎年のようにやっています。日本では開かれていません。私はティッシュワールドではないですが、こうしたものを開いたら面白いと思います。
 裾野は広いですし、家庭紙メーカーで使っている機械も輸入品が多い。製品を含め、そんなところの見本市的なものを商工会議所さんも巻き込んで産業振興のために開いて富士市のいいところをPRして地元の産業を元気になるようにしたらどうかと思います。


影山 家庭紙の見本市というお話ですが、静岡市のツインメッセでプラモデルの見本市が毎年5月に開かれます。地場の産業集積を生かしたメッセは、産業振興という観点からも有望なんじゃないかなと思います。そうしたコンベンションを富士観光ビューローで誘致なり、開催支援に取り組んでいらっしゃると思いますが、観光サイドからこういったコンベンションをサポートしていくというか連携していくという観点で宮崎さん、どんな取り組みをされていますか。

必要な富士、富士宮の連携
 
宮崎 東部コンベンションビューローを沼津市で立ち上げ、その後富士にビューローを立ち上げたいという中で富士宮にも入ってくれないかという話がありまして、それなら富士山観光ビューローという形でやらないと富士市だけでは成り立たないということで、富士と富士宮ということになったんです。
 富士山があるのは当り前、富士と富士宮は地理的には明日にも合併してもいいようなところがあるが、それでいて本当に話し合っているんですかというと、ほとんど話し合っていないんです。
 私はコンベンションビューローというのはあくまでも地域連携だと思います。富士と富士宮がいい意味で友達という形で、いろいろ話し合っていくべきじゃないかと思っています。富士宮焼きそば一つとってもそうです。デザートに何か食べなければならない。それだったら富士のナシを食べてみようかとか、杉山フルーツさんのゼリーとか、あれは日本でも有名なんですね。そういう形のデザートと組み合わせるとか、お弁当をつくる以上は紙のパッケージをつくらなければならないでしょう。そういう形で富士との連携はすごくあるんです。その一つとして水をキーワードにして連携ができるのではないか。今、富士宮で水ミュージアムをつくろと私は提唱しているんですが、富士市も製紙は水が命ですから、そういう形で連携が取れるのではないか。ビューローを通じて提携していったらいいんではないかなと私は思っています。地域活性化にもつながると思っています。

富士山を1周する乗り物を
 
影山 会場から何かご意見がありましたらお受けしたいと思います。

遠藤会頭 富士商工会議所の遠藤です。それぞれの夢のある、私は空港ができることによって、環富士山ですか、富士山を1周する乗り物のようなものをつくってみたらどうかと。それを最終的には空港まで結びつける。富士山を一周することによって、国有地がたくさんあるので国を動かさないと駄目ですね。何かをつくるというと反対が多いが、場合によっては誘致されると。名所旧跡を循環してお客さんを呼ぶと。まさに22世紀に繋がるんじゃないかと思う。何か実現するきっかけが、逆にいうと今じゃなかろうかと感じられる。石川さんが一度模型を作ってみたらどうかといわれましたが、模型だったらできそうですから、それを見てもらって皆がどう感じるかという投げかけが必要ですね。

キーワードは水と元気印
 
影山 最後にこれだけはやるべきだということを一言ずつ頂きたいと思います。

宮崎 富士宮は先に計画を言ってしまってそれで実現に向けていくという方法を取っていますから、富士市も今、会頭が言われたように夢とかロマンを打ち上げて、それに近づける努力をされるのも、富士市は体力があるものですから、それはできるのではないかと思っています。富士宮は水ともう一つのキーワードが元気印という形で、町に元気がなければやはり物事は何もできないので、元気を出そうと。沼津プロレスに対抗して富士宮プロレスを立ち上げ、5月15日に体育館でやります。まちづくり富士宮プロレスを行います。富士市はものすごくいろいろなことをやっているんですが、情報が出ていない。やりたいということを思うと8割はできるとよく言われるものですから、富士宮と一緒に夢を打ち上げてやっていけたらいいんじゃないかなと思っています。

飛行場の真下に新幹線の駅を
 
石川 新しい広域的なお話ですので、まず静岡の新しい飛行場は皆さんのものだと思うんです。一部の人のものではないということですので、仕切りをつくらず、いろいろな形でディスカッションしたらいいと思います。もう1点は飛行場の真下に新幹線の駅をつくっていただければ大変利用率はが上がると思います。

佐野 教育関係に携わっていますが、やはり子供たちと話をすると、自分の県に空港ができるというと子どもたちは何か非常にうれしく思っているようです。富士山と結びつけてあるものですから、富士山を大いに利用させていただいて製紙だけでなく、あらゆる産業が富士山と一緒にいけるんじゃないかなと思います。

静岡空港を利用して産業観光体験、酪農体験と修学旅行の組み立てを
 
林田 一つは国の光の再発見と磨き上げるということに尽きると思います。富士山も国の光の一つです。2つ目は広域連携。伊豆、山梨も含めて静岡全県もこの地区としてうまく利用していけるようにすべきだと思います。先ほど佐野さんからお話のあったティッシュワールド、これを是非この地区の官民一体となって誘致出来たらと思います。石川さんがおっしゃったスポーツイベント、これももっと地域ぐるみで是非力を入れていただきたい。最後に教育旅行の地としてこの地域は素晴らしいと思っています。産業観光の工場見学プラス富士宮の酪農体験とか。産業体験をするための修学旅行や研究旅行のツアーというのは、どんどん新しいものを求めています。まずは近くの学生さんたちがたくさん来ていますからもっとここを磨き上げていけば、静岡空港を利用して産業観光体験、酪農体験をしてからディズニーランドに行く修学旅行を組み立てることは十分可能だと思います。

影山 ぜひ今日出たいろいろなアイデアをヒントにして本気になって活用し、取り組むことを皆さん、やっていただきたい。もう一つ紙の見本市、あるいは家庭紙の見本市のように地元の産業を核にしたメッセを是非やっていただきたいと思います。


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