サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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富士地区分科会 基調講演 3月13日開催
富士山静岡空港の利用促進に向けて
富士山静岡空港代表取締役社長 吉岡 徹郎 氏

数年後に初めて富士山静岡空港の真価が問われる

富士山静岡空港代表取締役社長 吉岡 徹郎 氏
 富士山静岡空港を県民のみなさんで盛り上げていただくということを是非お願いしたいと今日は参った次第です。
 現在の空港の状況は検査を受けて開港に向けて準備中というところで、ダイヤの調整はじめ、飛行機の発着をスムーズに行うための日頃の訓練をどう積み重ねていくかということが非常に大事になっています。それを今、やっております。
 昨年来の世界的な景気落ち込みによって、航空利用客が去年12月のJALとANAが大体18%ぐらい減っております。最近、支店長さんに聞きますと3割近く落ちているという感じだとおっしゃいます。それぐらい航空環境というのは厳しくなっています。とくに国際線が厳しくなっています。国内線でも3、4%の減少です。
 航空会社は容赦なく足りないところはどんどん切っていきます。最近の航空路線の減便・廃止は、これから富士山静岡空港は頑張っていかなければいけないという示唆になると思います。
 例えば、福島空港では関西路線を3本JALが切りました。そのおかげで利用客は57万人から20万人減りました。今、四苦八苦しています。富士山静岡空港がいつそうならないとも限りません。
 また、国際線でもドル箱といわれる成田―ニューヨーク線が14便から10便に減らされ、あるいは自動車産業の停滞のおかげで中部空港―チンタオ線が廃止されています。国内でも関空路線が10本廃止ないし、減便。中部国際空港が4本減便ないし、廃止。神戸空港も3本ということです。そこで富士山静岡空港がターゲットにされないように、頑張っていくというのが大前提になると思います。
 私どもはこの1年、2年はご祝儀相場だと見ています。3年、4年、5年後に初めての富士山静岡空港の真価が問われます。それに向けて頑張っていかないと航空路線の減便・廃止につながっていくことになろうと思っています。

環境のいい富士山静岡空港

 富士山静岡空港の滑走路は東西方向ですので欠航率は、あって1%程度と非常に環境のいいところです。無料駐車場が2000台。私どもの会社がつくっているのがターミナルビルです。静岡県から経済界への空港に対する協力をお願いしたいということで、県内東中西の代表者が集まって、いろいろな方に呼びかけて設立された会社です。その会社がターミナルビルをつくって運営するのが一つの大きな仕事です。
 駐車場は県が造ってその運営を私どもの会社に、空港の滑走路の管理もわれわれにそれぞれ委託されており、私の会社はターミナルビルを中心に空港の運営の一端を担うということで、その第一の仕事がターミナルビルです。3階建てで1万1400平方メートル。ちょっと小さめです。富士山静岡空港の国内線106万人、国際線32万人の需要予測を満たすものとしては適当だろうと思います。ただ、138万人が150万人、200万人になれば、この空港は左右に拡張できるような設計になっています。
 中にあるお店は1階にコンビニ、2階にお土産屋さん1店、3階にレストラン1店、そして国際線のところに免税品の売店があります。「何だ。その程度か」というお話があるのだろうと思いますが、それぐらい地方空港は厳しいです。そこをお客さんを増やすことで、空港ターミナルビルを盛り上げていくんだと考えています。ターミナルビルは狭いなと思われるでしょうが、中に入ると非常にスムーズに飛行機に乗れます。

沼津から車で80分

 空港へのアクセスですが、沼津から車で80分です。岡山空港にこの間行ってきました。地方空港の中でも150万人ぐらいの利用客があり、国際線も4本ほどありますが、無料駐車場が3100台あり、岡山から80キロ離れた姫路、あるいは福山からのお客さんが結構あるということで、やはり無料駐車場はそれなりに価値があると思います。沼津のみなさん、羽田があるよと言わずにどうぞ富士山静岡空港もご利用ください。
 バスの状況は、静岡、島田、菊川から、そして浜松、掛川から運行されると思います。

空港を拠点とするビジネス機会の増加

 さて、空港の開港がもたらすものですが、一つは空港を拠点とするビジネス機会の増加で、空港の中にいろいろな事業所が張り付きます。そういう意味では空港を一つの核として産業のコミュニティが形成されます。
 まず、航空事業のFDA。この会社は当面はエンブラエルという76人乗りの航空機2機を所有して小松、鹿児島、熊本を飛びますが、パイロットからアテンダントまで含めまして130人ぐらいの事業所になっています。
 そして鈴与さんと静岡鉄道さんが出資して作った会社が航空運営事業を受け持ちます。ここは航空機の牽引とか手荷物を載せたり降ろしたり、チェックインカウンターのお客さんの受け付けも含めて空港の運用事業に関わる会社です。従業員は70人ぐらい。そして空港維持管理事業、滑走路とか警備、これもかなりの事業になります。そういうものを含めて空港管理事業が展開されます。それからターミナルビルのサービス業、われわれは賃貸業ですが、中でいろいろなものをやっていただく。それからサービス、そういうものを含めますと一つの産業コミュニティが出来る。そういうことで空港そのものがビジネス機会を増やしていくと思います。

交流機会の増加

 2つ目は交流機会の増加です。北海道、九州などの遠距離地域やアジア地域との新たな交流が始まります。空路を利用しないと簡単には行き来できない地域です。例えば静岡と北海道の交流人口は平成19年で57万6000人、九州全域とは54万人、そして沖縄では14万人、北陸が石川、富山で35万人強あります。合わせますと静岡と遠距離地域との交流人口は、250万人ぐらいカウントされています。静岡県の観光、流入人口は1億3千万人といわれていますが、その中の0.5%ぐらいしかない。
 というのは57万人が北海道と行き来していますが、静岡県の人が行っている方が多いと思います。そういう意味ではこれから九州、北海道の皆さんとの交流が新たに始まると私は認識しています。
 静岡県の400ぐらいの企業が世界に1280カ所ぐらいの事業所を展開しています。その中でアジア地域が66%を占め、中国には403企業行っている。
 そういうふうな海外、あるいは国内を合わせてかなりな交流がありますが、空港が出来たことによって直接的に結ばれることになるわけです。航空機を利用したお客さんが非常に来やすくなり、新たな交流機会もますます増えてくるだろうと思います。
 例えば、島田市が3年ほど前からグランドゴルフの交流を上海とやっております。こういう小さな交流の積み重ねがこれから大事になって来ます。小さな交流も空港が出来たことによってより開催しやすくなってくるだろうと思います。県内のホテル、コンベンションも当然増えてくるだろうと思います。

新たな企業立地とビジネスの可能性の増加

 3番目に新たな企業立地とビジネスの可能性の増加が考えられます。空港が出来たことによっていろいろな産業が張り付いてくる一つの誘因にはなるだろうということです。高度先端産業が進出することを期待しています。そういう条件が整ったわけですから自治体等が力を合わせて誘致する材料として、この空港がそれなりのものを持っていると思います。
 東部地域ではファルマバレー構想が進められ、浜松ではフォトンバレー構想とかいろいろあります。そういう研究者が来やすい環境をこの空港が提供しており、開港をきっかけに大いに外へ外へと売り込んで、お客様を引っ張ってくることも必要だと思います。努力すればしただけ、地域の振興方向が出てくる事例が各地で見られます。
 もう一つ、経済、雇用に大きな期待がかかってくることです。静岡県が研究機関に推計してもらったところ、ちょっとオーバーかもしれませんが、県内の総生産が年間で556億円、そして雇用が年間で8000人の増加が見込まれるということです。総生産の増加は、観光客も含めた空港利用者の消費による効果です。
 北九州空港では最初の経済効果が251億円という発表がありました。その内訳は地元の航空会社ができそのチケットの販売等が132億円、飛行機に積み込む食料などの産業の広がりで75億円、そして働く従業員の消費効果も含めて44億円、合わせると251億円という計算です。そこには観光消費というものはまだカウントされていません。
 観光の消費はバカになりません。花博の時のアンケートですと、一人当たり大体1泊2日で交通費も含めて3万3000円くらい消費していました。折角静岡に来たお客を静岡に宿泊させるか、山梨に持っていってもらうのか。こちらの頑張り次第ではないのかと思います。

観光需要

 静岡県の観光は、これまでは伊豆がほとんどですが、年間1億3千万人の来県客は首都圏や中部圏からの観光客が中心でした。北海道、九州の方たちに聞きますと静岡県の認知度は大したことはありません。最近、テレビで「富士宮やきそば」と「静岡おでん」が有名になっているおかげで、この前福岡でフェアをやった時に最初に売れたのが富士宮やきそばで、大体、午前中で完売し、静岡おでんが続いたという状況です。テレビの力が大きいなと思いました。
福岡県から見ると静岡は通過地点でしかなかった。知っているのは富士山と伊豆で、あとは出てきません。
 アジアからの来訪客は27万人(平成18年)で、これは韓国から3万人、台湾が5万4千人、そして中国が3万8千人となっています。
 静岡県から外に出ていく人たち、アウトバウンドですが、出国のためのパスポート取得率は全国平均26%くらいのところを静岡県はそれを下回り、出国率は全国平均が14%程度、静岡県は12%程度です。
中国と韓国の航空会社が静岡に目を付けたのは、そういう潜在需要がかなりあるということで、もちろん経済の大きさと人口の大きさがありますが、それに重ねて出国率、パスポート率がまだまだというのが向こうの人たちの見方です。静岡は大きな市場になり得るんだということです。

富士山、熱海、伊豆の認知度が突出している

 静岡県が北海道、九州の観光マーケットを調査した結果によりますと、北海道の人たちは北海道にないものへの志向が非常に強く、とくに歴史とか伝統文化、例えば静岡の東海道史跡、あるいはお茶文化、こういうものや温暖な気候に非常に興味を持っています。旅行の形態は夫婦旅行と女性グループ。
 九州の市場の旅行志向は伝統的、保守的ですが、歴史文化の評価が非常に厳しいところがあります。温泉の質とか味覚も非常に厳しさはありますが、良ければ来るということです。そして旅行のお値段は非常に安さを重んじますが、土産物には出費をおしまないというところがります。
 総じて静岡の認知度が低い中で、富士山、熱海、伊豆の認知度は突出しているのが北海道、九州の観光マーケットです。

富士山を見るだけでは物足りない韓国の旅行者

 国際的なマーケットでは、韓国からの来訪者のマーケットとしてゴルフと温泉に対する人気が非常に高い。そして和風の客室を好む傾向がある。これは年齢の高い層、富裕層で、旅館は離れとか個室の露天風呂を非常に好みます。
 ただし価格体系は高いのと安いのと両極端があり、伝統的な旅館ならば1泊2食付き1人1万5000円まで。最低価格として1泊1食つき4000円ということです。ここでも日本と同じようにパッケージツアーから個人旅行にシフトしています。
 静岡の観光ということになりますと富士登山を絡めた商品。富士山を前面に出しての温泉、ゴルフ、買い物の組み合わせというのが、あちらの方のご所望品だということです。やはり富士山というのは非常に希望が高く、直接聞きますと富士山を見るだけでは物足りなくて、あそこに一歩でも足を踏み込んだという実感を持ちたいようでして、この辺を含めて伊豆から富士にかけての誘客をどういう風に持っていくかというヒントになると思います。
 それからショッピングニーズも非常に高く、アウトレットとかゴルフ用品とか、いろいろの買い物にも若い人は興味がある。どこでも言われるんですが、静岡でしか体験できない観光旅行をしたいというのが韓国の方々です。

富裕層に狙いをつけた新しい商品企画が大事な中国

 中国の観光マーケットはどうか。中国の駐在員からの報告ですと、中国の人たちをターゲットにするときはやはり富裕層、年収10万元以上の所得の人たちの層のようですが、1元15円から16円としますと10万元ぐらいの所得の人だと。これは中国の都市部の中の2%程度、350万人ぐらいいるといわれていますが、その人たちの旅行は年々増加しており、非常に大きな狙い目だということです。
 ただし、ここでも価格が安いのと高いのとあり、安いのは3泊4日の東京中心のツアーで8万円ぐらい。東京と北海道の組み合わせで12、3万円。一番高いのは東京の人間ドックツアーが4泊5日か5泊6日で300万円というものもあるそうです。
 ツアーの中身はどんどん変わっているような状況で、新しい商品企画をどういうふうに富裕層に狙いをつけていくかというところが大事になってくるだろうと思います。日本で好きなものは富士山、桜、日本食、温泉、家電製品がベスト5です。
 考えてみますと静岡には全部あるわけです。どう組み合わせていくかということだろうと思います。情報はやはりインターネット情報、そして中国での直接での情報紹介が重要だということになります。
 静岡県も今、外地にそれぞれ担当者を置いていろいろやり始めていますが、そういうものと組んでやっていくのが非常に大事になってくると思います。

他県の熱心な取り組み事例に学べ

 福島空港の誘客策としてゴルフツアーが非常に熱心に行われてきました。平成18年に2万7000人だったゴルフツアー客が19年には倍増の5万7000人になったそうです。
 韓国の人たちからすると韓国でゴルフをするより日本でゴルフをした方が安くていいということがありますが、その裏には福島県がゴルフ客にターゲットを絞って韓国国内で実施した観光宣伝の実績があります。
 受け入れ態勢も空港から直ゴルフ場、ゴルフ場からホテル、こういうサービスもつけ、韓国人スタッフも雇い入れ、迎えるためにそれなりのサービスを積極的にしています。こういう他県の熱心な取り組み事例を学んでいくことも大事だろうと思います。
 仙台市も外国人をどういうふうに引き込むかという努力をされております。これから外国人観光客が当然のターゲットになりますので、この辺の対応を静岡県の中でも知恵を絞ってやることも大事だと思います。

教育旅行もこれから大事な要素

 アウトバウンドにつきましては、こちらから外に出ていくわけですが、ここは旅行会社、あるいは航空会社と共同した富士山静岡空港ならではの活用メニューを是非お願いしたいと思います。
 その中で教育旅行も大事です。インバウンドとして中国、韓国から修学旅行客を呼ぶことももちろん大事ですが、最近は高校生の多くが結構沖縄とか九州、北海道に行っております。一番は沖縄です。170校の調査で沖縄に66校、九州に32校、北海道16校、海外は58。ただし海外は全世界に広がっている感じで、教育旅行もこれからまた一つ大事な要素になってくると思います。
 富士山静岡空港と中部国際空港と連携して中部国際空港から入って富士山静岡空港から出ていくのも旅行会社、あるいは向こうに直接訴えていく。富士山静岡空港から入って伊豆に行って横浜から羽田にという連携も出てくるのではなかろうかと思います。
 富士山静岡空港利用促進協議会についてですが、県内のいろいろな団体の皆さんがここに入って、それぞれの立場で活動してくださっています。一つは就航促進と利用拡大委員会というのがあり、チャーター便の運航などをやっている。教育旅行委員会、産業交流委員会、自治体空港利活用促進委員会もあります。これに頼るのではなくて、地域それぞれが皆で力を合わせてやっていただくことが大事になってきます。西部には西部空港利活用促進協議会が出来ています。

夜間の貨物専用もこれから工夫

 最後に物流の話をしたいと思います。国際貨物を日本で扱う量が年間で300万トン近くあります。その中で扱い量の7割近くが成田で扱われて、2割ちょっとが関西空港、7%程度がセントレア空港となっていますが、これが最近の景気の低迷で少しずつ落ちています。
 静岡県は航空輸送にかなうようなものが年間10万トンあります。これが今は成田と中部国際あたりで処理されていると思われますので、物流環境を整えることによって、これを富士山静岡空港から出していくことも大事だと思います。ただ輸出入に伴ういろいろな諸施設がどうしても成田に集中していますので、そんなに簡単にはいきません。あるいはトラック輸送もこちらから荷物を運んで向こうから荷物を持ってこないと効率的でないということで、どうしても成田へという形があろうかと思います。
 ただそこに運び入れて、出すだけでは関連の業者が成り立っていかない。そこに難しさがありますが、富士山静岡空港の場合は当面は旅客機のお腹を利用して運んでいくことから始まり、夜間の貨物専用もこれから工夫していくことになるだろうと思います。農産物になりますと、今でも北海道の野菜とか花が空輸されています。山口ではフグなども運ばれています。静岡はこれだけいろいろな農産物、水産物がある県ですから空輸もいける話ではないかと思います。
 今の航空機でいきますと非常に利用が限られた数でしかないと思いますが、だんだんこれが出てくれば専用機という話になるだろうと思います。貨物専用機の場合は滑走路の距離もありますが、空港の利用形態として昼間に工場で梱包されて夜8時ごろ空港に入って来て、そこで積み込まれて出ていくというのが今の形態です。これから対応していく努力も必要かなと思います。

東部の方からも積極的な富士山静岡空港利用を

 5年ぐらいで利用客が倍になるように富士山静岡空港は頑張っていかなければなりません。そのためには東部の方からも積極的に富士山静岡空港をご利用いただく。西部の方々にもセントレアではなくて富士山静岡空港を出来るだけご利用いただきたいと思います。
 私の会社はターミナルビルをつくって運営していくものですから、ターミナルビルの賃料だけでやっています。賃料は今交渉中ですが、これがしっかり取れれば黒字です。航空会社なども非常に渋いものですから、1年ぐらいかかって交渉している状態です。われわれ県からの委託事業を含めて会社として頑張ってまいりたいと思います。皆様方のこれからのご支援をよろしくお願い申し上げたいと思います。


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