サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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基調講演  平成22年7月27日(火) 会場/伊東市
「滞在型観光の仕組みづくり〜どう生かす伊豆の特徴」
阿蘇地域振興デザインセンター事務局長 講師 坂元英俊氏

阿蘇の滞在型観光の考え方

阿蘇地域振興デザインセンター事務局長 講師 坂元英俊氏

 伊豆と阿蘇は結構、構造が似ています。少しでもお役に立てるものがあればと思っています。
 私は日曜日(25日)に阿蘇くまもと空港を10時25分発のFDAに乗って、静岡空港から静岡駅まではバスで移動し、新幹線で熱海へ。そして伊東線と伊豆急線で下田に着いたのが15時40分ごろで5時間かかりました。
 たっぷり時間をかけて南伊豆の良さを味わえるならこの5時間は遠いという感覚はありません。でも多分、4泊、5泊滞在が出来る内容のプログラムはまだ出来ていないと思います。伊豆半島で泊まるところを変えながら宿泊していくことが滞在型観光と見られがちですが、そうではなくて1つの拠点、あるいは2、3カ所に泊まって、その周りをどういうふうに味わえるようにしていくかが、実は地域に経済的な波及効果をもたらす要因であると考えていただきたいと思います。滞在型観光は拠点を決めて、そこで時間を過ごせるようにしていくことだと考えているのが、阿蘇の方法なのです。


早く手をつけていかないと間に合わない

 今回の伊豆の観光圏は、これまで大量に東京からお客様を呼び込んできた中枢のところになるわけです。伊豆の持っている観光のノウハウや取り組みが集中しているわけですが、実はそこから伊豆市だとか西伊豆だとか、そういうところにどう循環させて、本当に伊豆が味わえる山奥などと組み合わせていくことで、今まで見えていなかった伊豆の良さが見えてくるんじゃないかと思います。
 伊豆の多様性や自然、暮らし、風土を含めて、あるいはジオパークに代表される地形、地質の部分といったものが100%あるとするならば、今の観光は恐らくその20%くらいしか使っていないのではないか。あとの80%は地域の中にずっと残されていると思います。
 日本でトップクラスの滞在地域である伊豆半島を作り出そうと考えるなら、早く手をつけていかないと間に合わないのではないかと思います。
 観光圏整備事業をやるだけがこの事業ではなくて、ある中心になる組織体をつくり、3年、5年、10年という時間をかけながら本来の意味の滞在型を促進していくようになっていくと、取り組みが非常におもしろくなってくると思います。
 また観光関係の人たちだけで動いていた部分が地域で暮らす農協や漁協の人、自然を本当に生かすことを得意としてやっている人たち、そういう人たちと組んで伊豆を日本でトップクラスの滞在型モデルにしていただきたいと思います。
 ジオパークというのは、地質や地形だけあっても駄目なんです。昔から使ってきた地質や地形がそこに暮らす人たちにどういう影響を与えてきたか、そこから生まれてきた文化とは何なのか。そういうジオ的なものと人とのかかわりが非常に評価されていくものです。
 世界ジオパークネットワークでいくと基本的には歴史や文化、人々の暮らしの中にジオというサイトがどのように活用されてきたかということが非常に大きいのです。だからかなり広範囲な事柄で申請書を作っていかなくてはならない。子供たちの環境学習などに対してジオ的なものをどう使っているかとか、いろいろな評価基準があるので、ぜひ早めに取り組みをされた方がいいと思います。


来年、「阿蘇ゆるっと博」を展開


 阿蘇の場合は滞在交流型観光と呼んでいますが、その滞在交流型観光を将来的にどのようなものに作り上げていこうかという1つの実験を来年、阿蘇カルデラツーリズム博覧会、通称「阿蘇ゆるっと博」という名称で展開します。
 ちょうど鹿児島まで九州新幹線が全線開通しますので、それに合わせて来年3月から1年間、滞在型の旅の博覧会をやろうということです。
 「阿蘇ゆるっと博」は、市町村が一体になって地域の自然や農村、商店街、温泉街などをパビリオンに見立て、多様なコンテンツで旅行者を楽しませようというもので、博覧会の柱は、エコツーリズム、グリーンツーリズム、タウンツーリズムの3つです。開催に向けて農業体験やトレッキングなどのプログラム、スムーズな移動が可能な二次交通、旅を支援する人材、GPS機能付き携帯サイトの情報発信などを充実させています。
 基本的には滞在交流型観光を進めていくスタートの年でして、2年目も3年目もこの仕組みをドンドン強化しながら阿蘇を九州でダントツ、日本でもトップクラスの滞在型観光地に仕上げていきます。


市町村と熊本県で30億円の基金


 どうやってこういう取り組みになってきたのか。推進母体としてはどういったところがあるのか。紹介したいと思います。
 阿蘇は水資源、自然環境が非常に色濃くあります。九州の中央部に位置し、9万年前には遠く北海道でも約15センチの火山灰の層ができるぐらいのかなり大きな噴火をしています。そういう意味では全国に阿蘇の地層となって散らばっております。
 阿蘇神社は今から2300年前につくられ、大きな噴火がないようにとずっとお祭りしてきました。阿蘇は火山と人の暮らしが、一体的になった地域でもあります。いつ噴火するか分からないような地域に歴史や文化が続いているということが、阿蘇のジオパークの最大のポイントになっています。
 恐らく伊豆でも必要になってくると思いますが、阿蘇では広域的な中核支援組織を持っています。各市町村長、熊本県地域振興部長、阿蘇振興局長が中心になって各市町村の企画担当課長たちが幹事役になっています。もちろん商工会、観光協会はネットワークの中で私たちと一緒にいろいろなことをやっています。旧阿蘇郡12町村、今は7市町村ですが、市町村側で15億円、熊本県が15億円、合わせて30億円で基金運用する財団として展開していますので、基本的には市町村が阿蘇地域振興デザインセンターに負担金を出して運営するということはないです。
 この30億円の基金を運用しながら7000万円くらいの事業収益を得て、それに国の事業をプラスして、1億円から1億2000万円くらいのソフト事業を展開しているわけです。
 役割としては、阿蘇地域全体を考える企画、立案と実際の事業の実施で、シンクタンクであり、実際の事業を行っていく機関でもあると考えていただければと思います。広域連携に関するソフト事業はデザインセンターがコーディネーターをやっていきますので、具体的な施策は助成機関、広域観光関係の機関、それから民間団体として地域住民と広範な連携をはかって、滞在の仕組みを考えていこうということです。
 多様な観光資源というものが今、観光客をひきつけていく時代に変わっていますので、そういう地域づくりをしていくことが実は観光につながっていくんだという考え方を大きく打ち出しています。


時代の変化に対応した「地域づくり型観光」へ

 7、8年前、阿蘇地域には年間1800万人から1900万人の観光客がありましたが、農村集落や商店街は寂れていく。農家の後継ぎはいない。ですから地域の課題は、観光の集客ではカバーできないと考えたわけです。
 時代の変化も個人旅行的なものに変化しています。マイカーのお客様が増え、旅行形態そのものがどんどん多様化しています。地域資源をもっと掘り起こして、商店街や自然にも広げた形で、観光にぶつけていかないと今までの観光というスポット型では対応できない、ということで平成15年に滞在型をやるためのビジョンを作り、地域がらみの情報の集合体という形で、「阿蘇まちめぐりガイドブック」を5年ぐらいかけて作り上げました。
 滞在できる32地域を作り、滞在できるコンテンツを盛り込んで、阿蘇の中でも3つのエリアを持っているのですが、1つのエリアだけで6泊7日、1週間の滞在が出来るようにしています。
 列車、バスの交通ネットワークが全部、32の地区につながっています。列車に乗って来てバスで回ることで全部つながっています。
 滞在交流というのは地域ツーリズム型観光と呼ばれ、農村や商店街、地域が持っている体験、あるいは時間を過ごすアイテムだと考えているんです。これまで観光による地域づくりは観光関係者が観光側からの視点で地域を開発して、そこに観光客を送り込んでいくことによって経済的な波及効果をもたらすことだととらえていたわけです。
 そこを「地域づくり型観光」というふうに見ていくと商店街や農村の住民たちが自分たちの暮らしの中で、その暮らしを楽しみながら地域づくりを行う。あるいは自然資源を有効に活用していくといった考え方に変えているわけです。
 ですから視点を地域側に持つわけです。商店街であれば特産品を生かした商品活用とか商店街の食べ歩きなどを行えるようにしていく。あるいは農村は地産地消の田舎料理の研究だとか、歴史や文化を案内する村めぐりを地元の人たちでやる。その結果として魅力的な地域そのものが生まれてきて、そこに人が集まって、直接的な地域への経済波及効果をもたらしていくという、それが実は観光面からも非常に魅力的なものだというふうに考えているわけです。
 そのときの主役は地域住民です。だから地域づくりによる観光は、主役が地域住民なわけです。地域の住民が自分たちのためにいろいろな取り組みをやっていくんだと。


実践していくのは、あくまでも地域住民

 観光圏は滞在型観光を目指しているわけですから、ポイントの1つとして滞在型は観光スポットめぐりだけではなく、地域の中にある自然だとか農村とか商店街、そういったものを活用していくんだということが指摘できます。そして自然空間の活用とか、地域づくりを進めていきながら、農村であれば農家民泊、農村レストラン、農業体験などを組み合わせる。あるいはその地域に滞在しながら自然の中を散策するエコツーリズムや街を歩くタウンツーリズムといったものを地域ごとにネットワーク化していくことを主眼に置きます。
 滞在型の場合、もう一つ、実践する地域住民を育てていくというポイントがあります。結構多様な企画だとか、いろいろなものが出来上がってきて、面白さはここに出ています。だから観光的な部分でどう地域を使うかではなくて、地域の人たちが自分たちのためにやっていく。そういったアイテムを地域の人たちが自分たちの力で作り上げていって、それを滞在というアイテムの中に組み込んでいくというふうに考えているわけです。
 だから地域づくりを実践していくのは、あくまでも地域住民であり、地域の人が育って、そしてその人たちが動き出して、地域の活動が波及していく効果というものが大きく期待できると思います。この地域、地域を結んでいくのが循環バスなどの公共交通だと考えるわけです。
 公共交通で地域をつなぐというのは非常に時間がかかりますから早めにやっていきながらガイドブックを作っていく。特に駐車場、Pマークをいっぱい書き込み、1つのガイドブックで公共交通もマイカー、レンタカーのお客さまも使いやすくするわけです。


大きな広域連携のネットワークが必要

 そういうことを展開していく中で、私たちはスローな旅というものを平成15年に提案しました。
 観光ポイントを回る旅から、ゆっくり時間を過ごすスローな旅へと転換していく。そして阿蘇はゆっくり過ごすところなんだということで、滞在交流を促進していこうと考えたわけです。
 平成15年のときの内容ですが、阿蘇の資源は自然と温泉。この2つが多くの観光客を呼んでいるととらえて、この2つの大きな柱をどう活用していくかというのが、阿蘇を滞在型に持ち上げ、九州外に向かって発信していく核だということです。この自然と温泉が、実はジオパークのネットワークを使っていく上でも大きな魅力になっていければと考えています。
 課題の1つ目は、観光施設としての見所が点在していて、そこに人が動くということで観光スポットめぐりのようになっている。それを地域への波及効果、商店街が復活していくために、滞在型として使っていくために、どうしていけばいいのか。
 課題の2つ目は、観光客の変化です。観光客が例えば火口だとか、レジャー施設、温泉、物産館、食事どころに立ち寄っていく傾向はまだまだ続くわけです。でも、それ以外の阿蘇の持っている大きな自然や暮らしなどを人々が求めていることが分かってきました。
 ですから地域性をもう一度再認識して、滞在型観光を続けていくことで、地域や商店街がもう一度復活していく取り組みに変えていこうというところにきています。
 休日は国道57号線など幹線道路が5キロも10キロも大渋滞になるので、これをどう解消していくか。そのために域内交通網を作り上げて車で行かなくてもいい阿蘇にしていこうという考え方になります。
 阿蘇地域も例外に漏れず1つ1つの観光としては市町村ごとに成り立っています。それをもっと大きい阿蘇という全体のイメージに転換していくためには、大きな広域連携のネットワークが必要になってきたわけです。


大切なもてなしの人づくり


 課題の1つ目の広域回遊に関してはエコ、グリーン、タウンというツーリズムで、回遊するコース作りをやろうと。ゆっくりとまちを歩き、自転車で農村など田園地帯、史跡などの観光地を回る。大自然に触れる。そのような阿蘇ツーリズムや回遊のコースを作っていく。一番大事なのは観光客のニーズの変化を、もてなしの人づくりで対応していくことです。地元の人たちとおしゃべりしながらお茶やお菓子を食べさせてもらう。農家や牧場に立ち寄ったり、いろいろな体験をしたりする。そういうもてなしをしてくれる人材を発掘していって、交流と体験の出来る環境を整える。
 幹線道路の渋滞対策として交通の体系作りをやっていこうと。パーク・アンド・ドライブだとか、自転車を汽車に乗せるサイクルトレインだとか、循環バスだとか、そういったものがこの交通体系作りになっていきます。
 そしてタウン、グリーン、エコ、サイクリング、ハイキングの回遊コース作り。農家であれば立ち寄り農家とかいろいろなアイテムがあり、そして自然を案内する案内人、街中を案内する案内人、あるいは農村の中を案内する案内人たち。この人たちが魅力をどれだけ話せるようになっていくか。そういったものが大きなポイントになるわけです。
 こういったことを総合化して「ゆっくりのんびり阿蘇で」という阿蘇特有の取り組みに変えてきたわけです。


10年もたてば博覧会が出来るぐらいの仕組みに

 循環バスの実験とか、阿蘇地域の観光ルネッサンス事業、多言語化していくためのいろいろなサイン計画をどうしていくかというルーツは、ビジョン、フローチャートを作って、この中に経産省の事業だとか国土交通省の事業を全部入れ込んでいきます。だから1年ごとに充実していくわけです。
 事業だけで終わらせるのではなく、そのベースを作っていくために、どういう事業を使っていくかということで考えていくと、10年もたてば博覧会が出来るぐらいの仕組みが出来上がってくるわけです。
 観光地を回るスポット型のつながりと農村や商店街の祭り、イベント、自然散策、温泉などのつながりを常に連携させ、滞在型は平日を多くし、車のお客様は土日に集中しますから、1週間を通して、1年を通して、両方のお客様を受け入れていく工夫によって年間を通じた滞在が成り立っていくように考えていくわけです。
 阿蘇独特の「阿蘇カルデラツーリズム」という名前をつけて、これまで進めてきたのがエコ、グリーン、タウンの3つのツーリズムです。例えば、山田という集落の人たちが案内し、食事も出して、泊まることも出来るので、エコと農村体験と集落の中で時間を過ごすということを一体的に可能にしていくわけです。こういう形で、農村集落、あるいは商店街を使ったいろいろなまちづくりをしていきます。


商店街も息を吹き返してきた

 タウンツーリズムでは、7、8年前はシャッター通りといわれた商店街も今ではにぎわいを見せています。木を植えて、食べながらでも歩けるような滞在型商店街の工夫をたくさんこの中に入れ込んでいます。博覧会をする前からどんどん人が集まって来る。そういう商店街に変ぼうしています。
 こういうところが出来てきたから「ゆるっと博」ができるようになってきました。農村集落も一緒です。歩けば分かる町の楽しさということで、阿蘇は8つの商店街がありますが、商店街そのものが息を吹き返してきて、人が集まって来る。
 商店街は商店街の特徴を作り上げて、町の商店街を味わうこと自体が時間を過ごす大きなアイテムになっていくんです。大体11時ぐらいから歩き始めて商店街の中にあるおいしいスポットを少しずつ試食させてもらうわけです。そうすると2時間ぐらい歩きながら試食していくと終わったころには大体満腹になってきて、おいしいケーキ屋さんで、ケーキとコーヒーで締めるというコースが1000円です。結構人気です。
 温泉ポイントは18カ所ありますから、温泉の特徴をまとめた「阿蘇温泉郷」というパンフレットを作って、自分の行きたい温泉を選んでもらう。ここで公共交通体系として、4つのエリアに対して列車とバスで循環出来る。今後の公共交通体系をどういうふうに作り上げていくかということも、国の事業を使っていきます。


九州観光にとって100年に1度の好機

 インターネット放送局阿蘇テレビの配信だとか、ラジオバンクにガイドブック、それから阿蘇ナビという携帯電話の活用もやっています。携帯電話を開くと自分が今どこにいて、その周り10分ぐらいのところにどういうものがあるか。全部出てくるようになっています。どこかに行きたいとすると今度は行く場所の支援システムが動き始めます。阿蘇の全ての場所の列車やバスの時刻表も全部携帯から取れるようにしています。
 これまでは各市町村なり、観光協会が市町村ごとに展開してきたわけですが、これを最終的な仕上げとして、大きく展開しようとシステム化していく。その総仕上げが来年3月からの「阿蘇ゆるっと博」で、滞在型観光をここから大きく踏み出していこうという考え方です。
 2011年は九州観光にとって九州新幹線の全線開通という100年に1度の好機です。ちゃんとお客様が来て、受け皿になって滞在できるという仕組みを作ってなかったら、それは列車だけ来ても何にもならない。だから滞在出来る仕組みを作って、お客様を受け入れていく。九州が最大限広報していくときに、この「阿蘇ゆるっと博」を大きく打ち出していこうという考え方です。
 交通体系としては福岡から阿蘇まで、今までは大体3時間かかっていましたが、新幹線が出来ることによって1時間35分、乗り換えを入れて1時間45分です。また、阿蘇から鹿児島まで乗り換えを入れて1時間55分で行きます。大分の湯布院とか別府には1時間半で行きますから、九州の観光地の7割が阿蘇から2時間圏域となりますので、阿蘇を大きく打ち出していこうと考えているわけです。


個人がつくる滞在プログラムも

 「阿蘇ゆるっと博」はパビリオン、コンテンツ、コンシェルジュ、交通ネットワーク、阿蘇ナビ、阿蘇・旅の市場の6つが、滞在を進めていく上では大きな項目だと考えています。パビリオンというのは32の地域が存在するわけです。コンテンツというのは、そこに滞在をどういう形でするかというプログラムがあるわけです。それはエリアごとに、パビリオンごとに存在するわけで、いろいろな体験が出来る。180以上とありますが、実際は500ぐらい持っています。
 そして3番目のコンシェルジュは、全地域に配置されたおもてなし役。観光協会が中心になって自分たちの地域の滞在の仕方を案内するというものです。そして交通ネットワーク、携帯を使ったナビゲーションシステム。例えば今日どんなお祭りがあって、どのお店が、どの新しい商品を開発したかというのも、すぐその日のうちに出てきます。それは地元の人たちが、あるいは観光協会が情報をのせていきますので、自分のところのチラシ替わりに使えるわけです。
 一番大きな部分が「阿蘇・旅の市場」です。例えば3泊4日の例がパンフレットには書いてあります。1日目はJR阿蘇駅で合流して黒川パビリオンに行く。どこに泊まって、どこでお昼を食べて、どこで町めぐりをするというのが全部時系列的に入っています。これが基本的には滞在のメニューになるわけです。それをコンテンツから引っ張り出してきて、個人個人が作り上げていけば個人の滞在プログラムが出来上がっていく。その中で何を切り取って着地型の商品に変えてエージェントと一緒になって旅を作り上げていくという考え方で打ち出しています。


140ページの「阿蘇ゆるっと博」公式ガイドブックを発売

 祭りとイベントを1年分まとめて分かるようにしようと今取り組んでいます。そうするとお客さんは今日どこで何をしているか分かる。あるいはイベントに行きたいお客様が滞在のコンテンツを体験することができる。1年分全部作り上げようと考えています。そういうものが全部つながりあって観光の滞在の仕組み、滞在交流の仕組みづくりをやって来ています。
 今年10月には140ページの「阿蘇ゆるっと博」公式ガイドブックを発売予定です。この1冊を見れば阿蘇で滞在する全てのコンテンツとどういう過ごし方が出来るかというのが分かります。
 阿蘇テレビを見ていただきますと、阿蘇でやっている滞在型ツーリズムの動画サイトが見られます。全部で8時間ぐらい掛かりますが、大体1日のアクセスが1万から1万3千ある動画サイトになっています。一度見ていただければと思います。

 
< 略 歴 >

◇坂元 英俊(さかもと ひでとし)

財団法人阿蘇地域振興デザインセンター事務局長
1954年熊本県南阿蘇村生まれ。1976年東京農業大学農業工学科卒業、1979年九州大学大学院農学研究科研究生修了、2003年熊本大学大学院社会科学研究科修士(前期博士課程)卒業、2010年熊本大学大学院社会文化科学研究科の後期博士課程に在学中。

 明確なビジョンを持ち、温厚な人柄とプロデューサー的存在として、阿蘇地域1市7町村の広域連携プロジェクトを県・市町村・民間団体などと協働し推進。2002年「阿蘇カルデラツーリズム」をスタート。もてなしの人づくりを核にしたエコ・グリーン・タウンツーリズムによる地域振興と温泉や観光などの既存資源を一体化し、JR九州や域内循環バスなどの公共交通連携、モバイル時代に備えた情報発信ツール「阿蘇ナビ」を開発、ゆっくり・のんびり過ごすスローな阿蘇づくりを推進している。2011年春の九州新幹線鹿児島ルートの全線開業時には、これまで進めてきた滞在交流型観光を定着させるための「2011阿蘇カルデラツーリズム博覧会(阿蘇ゆるっと博)」を開催する。趣味は温泉浴。

 



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