今回の地震(東日本大震災)では、われわれコンベンションの業界も東北地区は相当ダメージを受けています。特に仙台の「夢メッセみやぎ」は仙台空港のすぐ近くにあり海際なので大きなダメージを受けたと聞いています。関東地区でも埼玉や福島とかのコンベンションセンターは今、被災された岩手県民や福島県民の避難先になっています。3月11日の震災の日は東京国際フォーラムも24時間オープンして帰宅困難者を受け入れていました。コンベンションセンターの公的な位置づけといいますか、非常時にも役に立つ施設だということをあらためて感じています。
私はMPI(ミーティング・プロフェッショナル・インターナショナル)の理事をしていますが、以前は千葉のコンベンションビューローで20年ほどマーケティングを担当していました。私どものMPI Japanはアメリカのアトランタに本部があるミーティングビジネスにかかわるプロフェッショナルな集団の日本支部です。会員は世界80カ国に約2万4、5千名。個人ベースで属する団体であり、日本には70名程度の個人会員がいます。
静岡県は日本で一番コンベンションビューローが多い地域で、5つのコンベンションビューローがあろうかと思います。次に多いのはたぶん福岡県と長野県でそれぞれ3つです。コンベンションの専門施設も浜松、静岡に2つ、富士宮、沼津と計5つあって、全国で一番多い方でしょう。私は千葉のコンベンションビューローにいた時、2年ほど日本政府観光局のコンベンション誘致セクションに派遣され、東海地方を担当しました。当時こちらでは静岡と浜松が国際会議観光都市に認定され、静岡大学、浜松の情報学部も含めてこちらの方にセールスに来たことがあります。
国内に国際会議観光都市は52あります。政府の国際会議振興法に基づいて指定された都市ですが、これとは別にコンベンションビューローと呼ばれる機関が全国に約70カ所、コンベンションの専門施設はおそらく全国に36カ所。日本という小さな国にしては、世界的にみても非常に多いコンベンション推進機関であり、コンベンション施設ではないかと思います。日々国内だけでも活発な誘致合戦、競争が繰り広げられていることになります。
なぜこれだけ需要があるのか、国内のコンベンション市場が非常に大きいからです。日本と似ているのがアメリカで国内市場で持っている。400ぐらいの都市にコンベンションビューローがあり、非常に活発でコンベンション市場が産業として成り立っています。
日本も医学系を含め国内の市場が大きいとされていますが、さらに発展させるためには誘致が不可欠です。平成22年度はJAPAN・MICE・YEARとして観光庁がMICE(ミーティング・インセンティブ・コンベンション・イベント/エキシビション)産業を活発化させる年ですが、周知されず中途半端な形で年度末を迎えています。コンベンションは以前から未来につながる産業とされてきましたがなかなか真価を発揮していません。
日本のコンベンション元年は東京オリンピックの年でもう45年以上たちます。しかし日本的なコンベンションの振興とか、コンベンションで地域を活性化させる方策は中途半端なまま。再度コンベンションを見直し、新しい産業につなげていく努力が求められている。コンベンションは何のためにあるのか。安倍総理の時代に、国際会議を2011年までに5割増しにすると打ち上げました。国際会議の誘致件数を増やすという数の問題ではなく国際会議を誘致した後、いかに外部経済を誘導して地域経済を活性化させるかが真の課題であり重要だという問題意識が欠落しています。国際会議を誘致するまでは一生懸命ですが、誘致した国際会議を利用してどれだけ地域にお金を落としてもらえる仕掛けを作れるか、経済活動を誘発できるかというところまで知恵が回っていないのが現状であります。
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